全ては小さい頃の『可愛い暴君』ということで許してもらえますか?

羽月☆

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12 こうして敵がいなくなり、代わりに要注意人物が一人出来ました。

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雑務も時間のあるときは手伝うと言った。
そう、確かに言ったけど。

・・・・・・さっそく、今日も居残りになった。

出来たら明日の朝欲しいと言われた。
だったらこっちを先に頼めばよかったじゃん。

つい背中を向けたときにそうブチッと口が動いた。

端から見ると相変わらずいじめられてる疑惑がありそうな関係。



席に戻るとやっぱり杉野ちゃんに見られてた。
その目は気の毒に・・・・と言ってる。
笑うしかない。
評判が落ちるのも可哀相だし。

みんなが帰ると、明日じゃなくていいといきなり言われた。
間違ったの?

残業のお詫びに奢るとまで言われて、もしかしてと思った。

「キリのいいところまでやります。お腹も空いてます。」

そう言った。



そんなことで、ちょっとだけ手伝いは続けてる。まあまあ一緒に帰れるくらいになってる。
お礼に奢られると食費も浮くからいい!
時々は奢り返してる。
たった一歳差だとあんまり甘えられないよね。


「そう言えば、また杉野さんに探られた気がする。」

・・・・また・・・なにを?

もしかして・・・・・ばれたの?

「『もし手伝えることがあるようでしたら私達も手伝います。』なんてことを言われた。」

ああ、そっちか・・・・。
やっぱり何かのハラスメントだと思われてるかもしれない。

「今度ちゃんと言っておきます。何と答えたんですか?」

「十分やってもらってるとお礼を言った。」

外面がいい。

だいたい直の先輩でもないから、新人に仕事を割り振ってるのは他の先輩だ。
なんならもっと偉い人だ。

それでも気を遣ってくれたのかもしれない。
何かの機会にお礼を言おう。
『私が』じゃなくて『私達』となってるところに逃げがあると思うけど、まあ、いいや。

そんなあるランチの時、二人だけで食べることがあって顔を近くに寄せられて言われた。
さっきから何か言いたそうだとは思ってた。

マイペースに食べる私をチラリと見て、とりあえず食事をすることにした、そんな感じだった。
そして食事がほとんど終わりお茶を飲んだあと、顔が近寄ってきた。

「私、最近気がついたことがあるんですけど・・・・・・。」

ジワリと肌が総毛だった・・・・・・何?

「最近寧々先輩と辺見さんを見てて思ったんですけど・・・・。」

やばい・・・どう言ったらいいんだろう。
正直に昔兄妹状態で育ったと言った方がいいだろうか?
期待するよね・・・・・。

「辺見さん、寧々先輩が気になるんじゃないですか?はっきり好きなのかなと、そういう意味です。」

驚いた・・・・・。表情はそのまま出来たと思う。

私たちのことじゃなく、辺見さん限定のこととして語られた。

「なんだか仕事も凄く押し付けられてる気がするんですが、好きな子をいじめる感じとか、そんなタイプなのかなって。」

杉野ちゃん、すごく当たってる。
ちょっと前まではムキになって押し付けられてたから。
あれは本当に意地の張り合いだったけど、向こうも大人げない感じはあったんだから・・・・・。
まあ、いい。お互い様だと、そう謝ったことだし。

「・・・・・・よく、分からない。」

何と答えれば正解なのか、分からない。

「寧々先輩は感じませんか?最近、見つめられてますよ。」

顔が赤くなるのは止められないと思う。

「仕事を終業時間からはみ出るくらいに押し付けるのも、本当は二人きりになって、話しかけたり食事に誘いたいんじゃないかって気もするんです。」

本当に尊敬してきた。
冷静に見て、分析して、きちんと正解にたどり着いてる。
後は・・・・私の態度を観察しないで欲しい。
でもこの話をしたんだから、しばらく観察対象決定だと思う。
とりあえず私の返事は待たれてない。
上を向いて考えてる振りをしたけど、まっすぐ見て視線を合わして、首を倒した。

やっぱり心当たりはないよ、そう言う感じに。

何と思ったかは知らない。

午後に入る前にトイレから急いで報告はした。

今日はさっさと帰ってやる。

お供残業も無し。
せめて違う課だったら良かったのに。
なんて思っても今までお互い気がつかなかったんだから、違う課だったらきっと知らないまま過ごしてただろう。
何かのきっかけで私の名前を聞くことがあっただろうか?
その時に初めてあれって思ってくれただろうか?
どんな可能性があったのか分からない。
全くなかった可能性だってあるんだから。

しょうがない、再会はこんな形になったから。

これでもすごくいい再会だったから。

これ以上は文句は言えないだろう。

じゃあ、いろいろと困ることはあってもしょうがない。

受け入れる。
後輩に揶揄われるくらい、大したことじゃないから。
そう思えると思う。
多分。



『とりあえず気をつけながら様子を見るけど、秘密を守れそうならさっさと白状したい。』

そんな返事をさっき見た。

嫌です!
まだ堪えたい。
いよいよ問い詰められるまで、そこまではなんとか誤魔化したい。

夜にそう言おう。

そしていろいろ相談しよう。
何と言っても侮れない、一番厄介な相手だから、協力して向き合うしかない。
揶揄われてもいいと思ったけど、それはもっと先でいい。


それにしてもきっと杉野ちゃんも小さいころポチ飼いしてたと思う。
そんなタイプだよね。
私よりポチをうまくしつけそうだよね。

だから珍しくないんだと思う。
女の子の方が成長が早いって言うじゃない。
きっと幼なじみの関係の中ではよくある事だと思う。

それでもその中でもずっと後になってまで縁が続くのは、珍しいかもしれない。

だったら少しくらい残業を手伝ってやってもいい。
基本女の子は優しいんです。
決して男の子だけじゃないんです。
身勝手に振舞ってたとしても、きっと心は優しい気持ちでいっぱいなんです。
だって、好きな人には優しく出来るんだし。

こんな私でも。

だから、残業を手伝って付き合って居残りするくらい大人ポチに優しい私は変じゃないよね?

全部がバレたとしてもきっと褒められると思う。
杉野ちゃんが自分の勘の良さを自画自賛した後、私の事も褒めてくれると思う。

その辺も気の利く、よく気の付く子だから。


それでも自分からはバラしたりはしないけどね。

しばらくはその観察眼との闘いです。


きっと驚くんだろうなあ。
初めて会社の人にポチ話をしてるパターンを想像して笑顔になる。


おおっと・・・・・振り向けないけど横顔に視線を感じてる。

集中集中。



金曜日、さっさと仕事を終わらせる約束だから。


緩みそうな表情を引き締めて仕事をしましょう。


隣から小さなつぶやきが聞こえた。『やっぱり?』


お願いだから杉野ちゃんも仕事に集中して欲しい。




本当に油断もなにも、もう遅いの?



                   終わり
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