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18 家族の中の秘密はとうとう一つ、私の事はまだまだ内緒です。
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怖いくらいご機嫌なお兄ちゃん。
そりゃあそうだろう。家族誰もが知ってる、久しぶりの外泊。
友達の家なんかじゃない。
そんな急展開を予想してなかった私はお母さんに全部言ってしまった。
「お母さん、お兄ちゃんね、好きな人が出来たの。」
「椎名の知ってる人じゃないでしょうね?」
「当たり前だよ。それはやばいじゃん。同じ会社の後輩の阿里ちゃん。新人で入って来てから片想いしてて、やっとこの度二人で出かけるくらいには仲良くなったみたい。」
「何で椎名が詳しいの?」
「相談役だから。」
お母さんもさすがに無言になった。
「怖がられてて、全然ダメだったのを、同僚が仕組んでくれてめでたく仲良くなったらしい。」
「仲がいいだけ?彼女じゃないの?」
「その辺は、ちょっとまだなかなかみたい。でも阿里ちゃんって呼んでいいって言ってくれたみたい。今日もデートしてる?」
「そう、いい子だといいわね。そろそろ独り立ちしてもいいのにね。」
「そうしたら太郎が寂しがるし、揶揄えないからつまらない。」
一ヶ月はそんな感じかなって思ってた。
だからお母さんには黙っていられなくて教えて、もちろん口止めもした。
ただ、隣で途中からお父さんも聞いてたみたいで、仲間に入ってきた。
お父さんにもバレた。
ごめん。しょうがないよね。どうせバレるから、だって隠せないでしょう?
私もちょっと浮かれてたんだと思う。
そしてその夜帰ってこなかった。
家族の誰も気にしなかった。
次の日、太郎を頼むと連絡があった。
部屋をノックしても返事はない。玄関にも靴がない。
最悪の引きこもり落ち込みで太郎にも会いたくない、そんな状況じゃないらしい。
そしてお母さんに聞いた。
帰って来てないみたいだと。
洗濯物でわかった、兄の外泊。
えっえ~、もう?まさか、阿里さんのところ?
お茶を飲むお母さんと顔を見合わせて、知らないふりをしてもらうことを約束した。
太郎を散歩に連れて行った。
「太郎、どう思う?阿里さんのところかな?」
「そうだよね。きっとそうだよね。」
「あとで聞いてみてもいいかな?」
「邪魔じゃないよね?」
「それとも待った方がいいかなあ?」
もう歩きながらずっと太郎に聞いてたのに、それ以降連絡もないし、聞くことも出来なくて。
夕方遅くにご機嫌に帰って来た。
わざわざコンビニ袋に着替えも持って帰って来た。
洗濯してもらえないの?
阿里さんのところじゃなかった?
部屋に来てお土産をもらった。
チョコレートを少し。
「椎名、太郎の散歩ありがとう。」
「午前中しか行ってない。」
「分かった。ちょっと行ってくる。」
チョコレートは机の上において、階段の上からお兄ちゃんが太郎と出て行くのを確認して、下に降りた。
「お母さん、どう思う?何か言ってた?」
「別に何も。」
「太郎の散歩のお礼にチョコレートもらった。高いチョコ。」
「そう。良かったわね。いい事あったのかもね。」
「そうだね。」
お母さんはさすがに男の子にはクールに対応できる。いい大人だし。
お父さんにも昨日のうちに軽く口止めはした。
だいたい、そんなに興味を持ってるなんて・・・気にもしてなかった。
もっとちゃんと口止めするべきだったらしい。
それはうっすらと変な空気が漂う夕食の時の事。
「文土、彼女出来たって?」
いきなりのその一言で、お兄ちゃんの口からお味噌汁が食卓へ飛んだ。
そして睨まれるのは私。
私はお父さんを睨んだ。
「私はお兄ちゃんに好きな人が出来たって教えただけ。」
まさかこんなに早く外泊してくるなんて予想外だし。
「文土、外泊するときは教えてくれないと、食事の用意があるからね。」
「分かった。」
そうそう、太郎の散歩もね。
ちょっとだけ心配したし、今度は前日までに連絡をお願いします。
そう言って続けたいけど、赤くなってる。
不意打ちだし、昨日の今日、さすがに揶揄わないだけの情けはある。
暴露したお父さんは別に質問をするでもなく。
ただ黙っていられなかっただけ?
私の時は絶対内緒にしたい!!
食事が終わって部屋に戻ってしばらくしても、全然報告には来ない。
わざわざ確かめることでもないけど、でもこのままじゃ、何か気になって。
お兄ちゃんの部屋をノックして入った。
「お兄ちゃん、チョコありがとう。」
「ああ、散歩ありがとう。潤君は楽しんでた?」
「うん、もちろん。太郎も嬉しそうに歩いてた。ねえ、それよりうまくいったんだよね?ちゃんと伝えてもらえたんだよね?」
「ああ。」
その顔は誇らし気でもあり、恥ずかし気でもあり、自慢げでもあり、・・・・・とにかく嬉しそうだった。
「良かった。お母さんも喜んでたし、私もうれしい。じゃあね。」
部屋に帰って携帯を手にした。
『ご機嫌なお兄ちゃんから美味しいチョコレートをもらったの。一緒に食べよう、コーヒーを飲みに行こう!』
そう誘った。
もちろん友達じゃない、・・・・潤君だった。
週末でもいい、賞味期限は見るまでもなく大丈夫。
週末に会う約束をした。今回は一緒に勉強しようと約束した。
苦手な英語を教えてもらい、得意な数学を教えることにした。
でも、大丈夫?
自信もって得意だよ、数学を教えると言ったけど、よく考えるまでもなく、工業系の学校だと思う。よくは分からないけど、もしかしてレベルが潤君の方が上って事だったりする?
ちょっと後悔してきた。
『潤くん、ねえ、数学が得意と言ったけど、もしかして全然潤君の方が頭いいかも。その時はごめんなさい。その他にお勧めできるものがないです。』
『気にしないで。その時は英語頑張ろう!一緒に勉強できればいい。』
『ありがとう。せめてチョコレートは忘れないようにする。』
『うん。楽しみにしてる。前日までに場所と時間を考えようね。』
『うん。そうだね。またね。』
『またね。』
そう言ってもちょっとでも何かあるとメッセージを送ったりするんだけど。
その日はそれだけだった。
「ねえ、それで、どうなってるの?全然報告がないけど。」
教室で放課後、友達を待つ間英語の単語帳を見ていたらそう聞かれた。
何のことかは分かってる。
丁度、守屋君と知り合いの亜紀ちゃんがいない時。
何のこと?そういうような顔で単語帳から顔をあげた。
「だからあの男の子とどうなったの?」
「友達だよ。この間一緒にうちの太郎の散歩をしたんだ。」
「それで?」
「太郎が一緒に入れるテラスのあるカフェでご飯を食べて話をした。」
「それは何?ただの友達?」
「うん、まあ、英語が苦手だと言ったら、今度教えてくれるって言われたけど、どうなるかな?」
半分事実だけど、一番甘い部分は隠した。
内緒の内緒。
「なんだか本当に友達?」
「うん、普通にいい人だよ。」
「なんだか中途半端だなあ。これから展開していくのかどうなのか、何だか期待していいの?」
「そんな・・・・別に、どうなんだろう?あんまりピンとこない。」
嘘はうまくなるらしい。
隠したいことは結局お兄ちゃんにもお母さんにもバレてない・・・と思う。
「あ、でもね。」
「何何?」
「ああ・・・ごめん。兄の話です。」
「・・・いいよ。どうぞ。」
「この間外泊しました。上手くいきました。相手の女の人がちゃんと答えてくれました。」
「おめでとう・・・なんて勝手に。」
「家族中でその話題を楽しみました!もうやっと心が落ち着いた。しばらくは大丈夫だと思う。は~、やっと私も自分のことに集中できるもん。」
「椎名は自分と誰の事?」
「えっ・・・・別にまだ決めてはいないけど、何かいいことないかなあって。」
危ない危ない・・・・うっかり自分でバラしてしまうところだった。
特に不審がられてはいないと思う。
だから、もう少し内緒でいさせてください。
理由は・・・・・その方がドキドキするから、かな?
「でも、いいよね。大人だとそんな事も自由で。」
ビックリ発言。どうしたの?
「しょうがないよ。あと数年後、せめて二年後、その頃デビューでも大丈夫。」
「好きな人いるの?大人?」
気になる。
「うん・・・・バイト先の人。素敵なんだけど、多分子供にしか見えないんだよね。全然相手にされてない気がする。」
「それは、ほら、いろいろ厳しいし。」
「そうだよね。」
ああ・・・・・・、楽しいお兄ちゃんのネタだったのに。
羨ましい、それはそうかも。
でも、大人になって不自由になることだってあると思う。
取りあえず今のこの時に出来ることを楽しむしかない。
英語を教えてもらうのだって、それで成績が上がったりするかもしれないのだってテストがあるからだし、それが学生だからだし。
今のところ仲良し仲間の中で彼氏が出来ました報告はない。
似てる子が友達になるとしたら、やっぱりそうなのかも。
彼氏がいて楽しんでる子はやっぱり同じグループにいるのが当たり前みたいだし、そんなグループとみられるし。
そりゃあそうだろう。家族誰もが知ってる、久しぶりの外泊。
友達の家なんかじゃない。
そんな急展開を予想してなかった私はお母さんに全部言ってしまった。
「お母さん、お兄ちゃんね、好きな人が出来たの。」
「椎名の知ってる人じゃないでしょうね?」
「当たり前だよ。それはやばいじゃん。同じ会社の後輩の阿里ちゃん。新人で入って来てから片想いしてて、やっとこの度二人で出かけるくらいには仲良くなったみたい。」
「何で椎名が詳しいの?」
「相談役だから。」
お母さんもさすがに無言になった。
「怖がられてて、全然ダメだったのを、同僚が仕組んでくれてめでたく仲良くなったらしい。」
「仲がいいだけ?彼女じゃないの?」
「その辺は、ちょっとまだなかなかみたい。でも阿里ちゃんって呼んでいいって言ってくれたみたい。今日もデートしてる?」
「そう、いい子だといいわね。そろそろ独り立ちしてもいいのにね。」
「そうしたら太郎が寂しがるし、揶揄えないからつまらない。」
一ヶ月はそんな感じかなって思ってた。
だからお母さんには黙っていられなくて教えて、もちろん口止めもした。
ただ、隣で途中からお父さんも聞いてたみたいで、仲間に入ってきた。
お父さんにもバレた。
ごめん。しょうがないよね。どうせバレるから、だって隠せないでしょう?
私もちょっと浮かれてたんだと思う。
そしてその夜帰ってこなかった。
家族の誰も気にしなかった。
次の日、太郎を頼むと連絡があった。
部屋をノックしても返事はない。玄関にも靴がない。
最悪の引きこもり落ち込みで太郎にも会いたくない、そんな状況じゃないらしい。
そしてお母さんに聞いた。
帰って来てないみたいだと。
洗濯物でわかった、兄の外泊。
えっえ~、もう?まさか、阿里さんのところ?
お茶を飲むお母さんと顔を見合わせて、知らないふりをしてもらうことを約束した。
太郎を散歩に連れて行った。
「太郎、どう思う?阿里さんのところかな?」
「そうだよね。きっとそうだよね。」
「あとで聞いてみてもいいかな?」
「邪魔じゃないよね?」
「それとも待った方がいいかなあ?」
もう歩きながらずっと太郎に聞いてたのに、それ以降連絡もないし、聞くことも出来なくて。
夕方遅くにご機嫌に帰って来た。
わざわざコンビニ袋に着替えも持って帰って来た。
洗濯してもらえないの?
阿里さんのところじゃなかった?
部屋に来てお土産をもらった。
チョコレートを少し。
「椎名、太郎の散歩ありがとう。」
「午前中しか行ってない。」
「分かった。ちょっと行ってくる。」
チョコレートは机の上において、階段の上からお兄ちゃんが太郎と出て行くのを確認して、下に降りた。
「お母さん、どう思う?何か言ってた?」
「別に何も。」
「太郎の散歩のお礼にチョコレートもらった。高いチョコ。」
「そう。良かったわね。いい事あったのかもね。」
「そうだね。」
お母さんはさすがに男の子にはクールに対応できる。いい大人だし。
お父さんにも昨日のうちに軽く口止めはした。
だいたい、そんなに興味を持ってるなんて・・・気にもしてなかった。
もっとちゃんと口止めするべきだったらしい。
それはうっすらと変な空気が漂う夕食の時の事。
「文土、彼女出来たって?」
いきなりのその一言で、お兄ちゃんの口からお味噌汁が食卓へ飛んだ。
そして睨まれるのは私。
私はお父さんを睨んだ。
「私はお兄ちゃんに好きな人が出来たって教えただけ。」
まさかこんなに早く外泊してくるなんて予想外だし。
「文土、外泊するときは教えてくれないと、食事の用意があるからね。」
「分かった。」
そうそう、太郎の散歩もね。
ちょっとだけ心配したし、今度は前日までに連絡をお願いします。
そう言って続けたいけど、赤くなってる。
不意打ちだし、昨日の今日、さすがに揶揄わないだけの情けはある。
暴露したお父さんは別に質問をするでもなく。
ただ黙っていられなかっただけ?
私の時は絶対内緒にしたい!!
食事が終わって部屋に戻ってしばらくしても、全然報告には来ない。
わざわざ確かめることでもないけど、でもこのままじゃ、何か気になって。
お兄ちゃんの部屋をノックして入った。
「お兄ちゃん、チョコありがとう。」
「ああ、散歩ありがとう。潤君は楽しんでた?」
「うん、もちろん。太郎も嬉しそうに歩いてた。ねえ、それよりうまくいったんだよね?ちゃんと伝えてもらえたんだよね?」
「ああ。」
その顔は誇らし気でもあり、恥ずかし気でもあり、自慢げでもあり、・・・・・とにかく嬉しそうだった。
「良かった。お母さんも喜んでたし、私もうれしい。じゃあね。」
部屋に帰って携帯を手にした。
『ご機嫌なお兄ちゃんから美味しいチョコレートをもらったの。一緒に食べよう、コーヒーを飲みに行こう!』
そう誘った。
もちろん友達じゃない、・・・・潤君だった。
週末でもいい、賞味期限は見るまでもなく大丈夫。
週末に会う約束をした。今回は一緒に勉強しようと約束した。
苦手な英語を教えてもらい、得意な数学を教えることにした。
でも、大丈夫?
自信もって得意だよ、数学を教えると言ったけど、よく考えるまでもなく、工業系の学校だと思う。よくは分からないけど、もしかしてレベルが潤君の方が上って事だったりする?
ちょっと後悔してきた。
『潤くん、ねえ、数学が得意と言ったけど、もしかして全然潤君の方が頭いいかも。その時はごめんなさい。その他にお勧めできるものがないです。』
『気にしないで。その時は英語頑張ろう!一緒に勉強できればいい。』
『ありがとう。せめてチョコレートは忘れないようにする。』
『うん。楽しみにしてる。前日までに場所と時間を考えようね。』
『うん。そうだね。またね。』
『またね。』
そう言ってもちょっとでも何かあるとメッセージを送ったりするんだけど。
その日はそれだけだった。
「ねえ、それで、どうなってるの?全然報告がないけど。」
教室で放課後、友達を待つ間英語の単語帳を見ていたらそう聞かれた。
何のことかは分かってる。
丁度、守屋君と知り合いの亜紀ちゃんがいない時。
何のこと?そういうような顔で単語帳から顔をあげた。
「だからあの男の子とどうなったの?」
「友達だよ。この間一緒にうちの太郎の散歩をしたんだ。」
「それで?」
「太郎が一緒に入れるテラスのあるカフェでご飯を食べて話をした。」
「それは何?ただの友達?」
「うん、まあ、英語が苦手だと言ったら、今度教えてくれるって言われたけど、どうなるかな?」
半分事実だけど、一番甘い部分は隠した。
内緒の内緒。
「なんだか本当に友達?」
「うん、普通にいい人だよ。」
「なんだか中途半端だなあ。これから展開していくのかどうなのか、何だか期待していいの?」
「そんな・・・・別に、どうなんだろう?あんまりピンとこない。」
嘘はうまくなるらしい。
隠したいことは結局お兄ちゃんにもお母さんにもバレてない・・・と思う。
「あ、でもね。」
「何何?」
「ああ・・・ごめん。兄の話です。」
「・・・いいよ。どうぞ。」
「この間外泊しました。上手くいきました。相手の女の人がちゃんと答えてくれました。」
「おめでとう・・・なんて勝手に。」
「家族中でその話題を楽しみました!もうやっと心が落ち着いた。しばらくは大丈夫だと思う。は~、やっと私も自分のことに集中できるもん。」
「椎名は自分と誰の事?」
「えっ・・・・別にまだ決めてはいないけど、何かいいことないかなあって。」
危ない危ない・・・・うっかり自分でバラしてしまうところだった。
特に不審がられてはいないと思う。
だから、もう少し内緒でいさせてください。
理由は・・・・・その方がドキドキするから、かな?
「でも、いいよね。大人だとそんな事も自由で。」
ビックリ発言。どうしたの?
「しょうがないよ。あと数年後、せめて二年後、その頃デビューでも大丈夫。」
「好きな人いるの?大人?」
気になる。
「うん・・・・バイト先の人。素敵なんだけど、多分子供にしか見えないんだよね。全然相手にされてない気がする。」
「それは、ほら、いろいろ厳しいし。」
「そうだよね。」
ああ・・・・・・、楽しいお兄ちゃんのネタだったのに。
羨ましい、それはそうかも。
でも、大人になって不自由になることだってあると思う。
取りあえず今のこの時に出来ることを楽しむしかない。
英語を教えてもらうのだって、それで成績が上がったりするかもしれないのだってテストがあるからだし、それが学生だからだし。
今のところ仲良し仲間の中で彼氏が出来ました報告はない。
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