呪文のような名前が気になって・・・・もしかして本当に幸せの呪文でしたか?

羽月☆

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15 水鳥 ~やっぱり自分が決めてしまった楽しい予定~

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「お母さん、クリスマスどうするの?」

「お父さんと食事に行こうかな。水鳥は?」

「私も一緒に行っていい?」



「予定は?」


「全くない。残念でした。あ~あ。悲しすぎていまさら友達の中に合流も出来ない。」



そう言ったからそれ以上は聞かれなかった。
まだまだそんなセリフの後は恨み事をつぶやきたくなるくらい。
でも涙は出ない。

来週、もっと元気になって、おしゃれなクリスマスプレートに食欲もモリモリで、両親と過ごす素敵なクリスマスになると思う・・・・・と言っても近所だろうなあ。




最近授業が終わっても、誰ともつるまずに帰ることが増えた。
皆おかしいって思ってるかな?
誰も聞いて来ない。

もっと興味を持ちそうなのに、全然聞いて来ない。
気がついてるのかな?


とぼとぼと人の少なくなった校内を歩く。
勝手に冬休みに突入してる人が多いのか、慌ただしいこの時期のバイトに明け暮れる子もいるのかもしれない。本当に人が少ない時期だった。

「余計に寒々しいよ。」

ポケットに手を入れて歩いていた。

あれからもう1週間、連絡がないのに、消せないIDと会話ログ。
私の写真が変わったのは気がついたかな?
有田君も消してないみたいだ。

まだ二人の会話はお互いの携帯に残ってる。

でもあれから読み直すこともない。

ただ、消してないだけ。


ポケットの中の携帯は、今日も大人しい。



「あ~あ。無駄な時間だなあ。」


独り言はぼんやりと浮かぶだけ。



ため息が出る。
文句をつけてくる友達もいないから許して欲しい。


「水鳥ちゃん。」


誰かと楽しくしゃべってたら聞き逃したかもしれないくらいの声、でも正面に立たれて呼ばれたから、すぐに立ち止まって顔をあげた。
懐かしいくらいの呼び方で、声で、でも大好きだった笑顔はなくて。
もう私には向かないのかと、改めて思ったりして。



「こんにちは、有田君。」


私も笑顔はない。声も固かった。


「水鳥ちゃん、・・・・最後にもう一度、話がしたいんだけど。」


「久しぶりの最後?」

ついでに今年最後でもあるし、人生最後かもね・・・・何て言わないけど。



「ごめん。でも本当に・・・・あと一回だけ。」

そう言って先を歩き始めた有田君。
同じ方向だからついて行く。
どうせ駅に向かうんだろう。
途中で曲がるなら、声をかけてくれないと、ついて行くとは限らないから・・・・・。


隣に並ぶこともなく、後ろを歩く。
前みたいに先導するなんて事もない。



これで実家に帰るときの手土産の相談、なんて言われたら怒るからね。

じゃあ、何を話される?


スルッと改札を入った有田君。
途中まで一緒だから、そこまで行くのかもしれない。


前後で並んで電車に乗って。


前後して降りた。

やっぱりそうだった。


改札を出て、コーヒー屋さんの列に並んで、一緒に注文を聞かれて指をさした。

テイクアウト用の紙コップに入れてもらって、外の立ち席に荷物を置いた。
こんな夕方、足元が冷えそうで、他に誰もいなかった。




「クリスマスの予定決まった?」




「そうだね。」


両親とご飯、親孝行のクリスマス。
まさか邪魔じゃないよね?


「如月君と過ごすの?」


顔をあげた。
何で?


「何で如月君?最近授業終わりに二人で一緒にコーヒー飲んだけど。」



「前に二人でいるのを見た。楽しそうだったし、ずっと誘いたかったんだと思う、なんとなくそんな話は聞いたことがあったし。」


そんな話って何?

そう言えばあの日だったかも。
本当ならデートする曜日なのになあって思った日だった。
そういえば如月君にはクリスマスは有田君と過ごすって話をしたなぁ。



「誘われなかった?」


「誘われてない。有田君と過ごすんでしょうって聞かれたけど。」



「なんて答えたの?」


何で今更そんな事を聞きたいの?
まさか嫌がられてるなんて思ってなかったから、あの時までは期待いっぱいの楽しいクリスマスの予定だったのに。


「ねえ、私はそんなに嫌な子になったの?大切な日に一緒にいたくないくらい、そんなに嫌われてたなんて思いもしなかった。優しい有田君は言い出せなかった?クリスマスの予定を立てられそうで、いよいよヤバいって思ったんだよね。それについつい約束しちゃったプレゼントを無駄だと思いながら買うのも耐えられないよね。」



「まだ懐かしいって思えるくらいの思い出には出来ないの。でもクリスマスは両親とご飯を食べるから心配しないで。お正月にはお兄ちゃんに盛大にお年玉をもらうつもりだし。」



「これ、クリスマスプレゼントだと思おうかな。ありがとう。」

奢られたコーヒーを指して言った。
400円くらいならいいよね。

そう思って顔を見たら驚いていた。

いいじゃない、400円くらい。
誘ったのはそっちなのに。



「水鳥ちゃん、本当に如月君とは会わないの?」




「会うよ、多分。授業が一緒なのもまだあるし、あと少しは会うと思うけど。」


「水鳥ちゃん、ちゃんと答えてよ!二人で会うのって聞いてるんだから。」


さっきまでのぼそぼそ喋りじゃなくて普通の声を出した有田君。なんだか口調がきつい、責められてるみたいじゃない。

「二人でなんて聞かなかったじゃない。会うのって聞かれただけだよ。」

こたえる私も可愛げもない口調だけど、しょうがない。


「クリスマスの話をしてるんだから、そんな授業の話なんかしてないよ。」


「そんなのはとっくに終わりにした話題です。」


「最後だって言ったんだからちゃんと答えてよ。」


「何で会うと思うの?そんな事一言も言ってない。誘われてもいないって言ったじゃない。ちゃんと答えてるんだから、聞いてないのは有田君の方じゃない。」


あああ・・・・まるで痴話げんか。
お店の前で、寒い中、顔を赤くして怒って。

入り口ではツリーがちかちかと楽しそうに点滅してるのに。
雰囲気ぶち壊しの二人。


「じゃあ、なんで・・・・僕との予定は無しになったの?どんな風に過ごしたいか、水鳥ちゃんに任せるって言ったのに。二日とも空けてるのに。全然返事ももらえなかったじゃない。考えるって言ってそのままで、何も言ってこないし。」


「だってその後、嫌だって言ったじゃない。わざわざ待ち伏せまでして、返事をするより前に、やっぱり嫌だって。」


「だって如月君とのデートを一番に決めて、残りの日を一緒にって、そう誘われると思ったら・・・・だから嫌だって言ったんだけど、本当に誘われてない?両親と過ごす日じゃない日は空いてるの?」


「空いてるよ。お母さんにちょっとだけ言ってみただけだし、予約もまだしてないし、行くとしても近くのお店だろうし、楽しみじゃないし、一人で家にいてもいいと思ってたし。だって振られたと思ったんだもん。クリスマスを一緒に過ごすのは嫌だって言われて、文字より直接言いたかったんだろうと思ったんだもん。あんな言い方されたら、そう思うよ。」


「ごめん、なさい。誤解して嫉妬して、勝手に・・・・・言葉足らずで。」


「傷ついた。そんな子だと思ってたんだ。すごくラブラブだと思ってたのに、適当に付き合って遊んでると思ってたんだ。お兄ちゃんにも、その彼女にも彼氏だって紹介したのに。」


あとからあとから恨み言が出てくる。

本当はまだまだ出て来るけど、飲み込んだ。
今度ぶちまけてやる。
忘れなかったら、いつか言いたくなった時に言ってやる。
忘れるくらいハッピーな時間を過ごさせてくれるなら、その間は忘れてあげてもいい。


顔を見た。何で泣くのよ。目がウルウルしてるよ。

そう思ったけど私だって怒りながらも涙目だし。
痴話喧嘩がドローで二人で反省みたいになったじゃない。
私が悪いんじゃないよ。
絶対有田君が悪い!!
いまなら遠慮なくそう思う、そう言える、言いたいけど、その前に。



「じゃあ、誘ってよ。ちゃんと誘ってよ。ずっと待ってたのに、少しも誘ってくれないから、二日とも空いてるなら二日続けて一緒にいてもいいじゃない。」


結局私が決めた・・・決めてしまった。誘ってと言ったその口で、自分が予定を決めてしまったけど。


「そうしたい。」


反対意見も出なかった。
意味わかってる?
『二日続けて』って言ったんだよ。
帰らないよ、居座るよ、泊まるよ。


分かってるの???

強い視線で聞いてみた。

「ごめんなさい。」

怒ってることは隠せなかったみたいで、ただ謝られた。


痴話げんかに勝利した気分になった。
多分聞いてる人がいたらそう判断したと思う。


「じゃあ、両親との食事はやめにする。」


「うん。」



「・・・・イブの夜、有田君の部屋に泊まりたい。」


「うん。」



分かってるの?ってさすがに聞けない。

じゃあ、もろもろよろしく、そんな気分で終わりにした。



そんなこんなぎりぎりでまた楽しい予感に包まれて、浮かれてしまう自分を押さえられない。




「水鳥、来週は楽しい予定になったの?」


鼻歌がついつい止まらなくて、同じフレーズを飽きもせずに繰り返していた。
明らかにクリスマスの曲、ああ、分かりやすい自分。


「楽しい予定が出来ました。」


お父さんがいない今、お母さんに打ち明けた。
外泊の許可ももらった。
良かった、そこは良かった。

だって『ダメだって言われた。』って有田君に言う自分なんて想像もできなかった。


「どうせそのつもりなんでしょう?お兄ちゃんにも紹介してるなら、いいわよ。かわいい子らしいじゃない。」


「お兄ちゃんに聞いたの?」


「前にね。一応は気になるからね。」


「いい人だよ。優しいし・・・・・・・いい人。」


あれ?褒め言葉が出てこない。
いい人以外、何だろう。
『普通にいい人』の有田君。

特別かっこいいとか、特別かわいいとか、そこも普通。

笑顔が優しい、性格も穏やかで優しい。
優しいの一言。


う~ん。


まあ、いいや。



部屋に戻った後、許可をもらえたことを伝えた。
もうお泊り気分が満々で楽しみにしてるって伝えてる文章で。

先週まで少しも進まなかった会話がグンと進んでる。


そしていよいよ。

当然お兄ちゃんにプレゼントの催促をすることもなく、本当に忘れてたし、お年玉でいいとも思ってた。
だからお兄ちゃんから何かを聞かれることもなかった。

代りにお母さんにしつこく聞かれて、二人で撮った最近の写真もちょっとだけ見せて。


最後には自慢するようにもっとくっついた写真とか、有田君の油断した写真まで見せてしまって、『もういい。』そう言われるくらいだった。

もう浮かれまくりです。
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