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14 ちなみ ~自分の事だけで思い出もうれしさもいっぱいなんです~
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可愛い悩みだと思ってた。
水鳥ちゃんがクリスマスの予定が決まらないと、誘ってもらいたくて待ってるのに言い出してもらえないと。
ただのデートじゃなくて、もっと特別な日にしたいって思ってるのは分かる。
水鳥ちゃんでも言いだせないんだあ・・・・なんて思って。
それでもあの手この手で誘導するんだろう、最終的になかなか切り出さない有田君にじれて、水鳥ちゃんが真っ赤になって言い出すんだろう、なんてそんな事を想像していた。
気がついたら変っていた水鳥ちゃんの丸い写真。
新しい一枚に変えるまでのつなぎだろうと思ってた。
何でもないデザートの写真だったけど、その内また二人の写真になるんだと思ってた。
『フラれたんです。親孝行のクリスマスになりそうです。』
そんなメッセージが来た時はびっくりした。
新さんが知ってるのか分からない。
さり気なく話題にしたら、まったく聞いてない感じだった。
私から言い出すこともできずに。
何と言っていいかも分からない。
『喧嘩したの?何て言ってあげたらいいか分からない。大丈夫だよね。』
『喧嘩より前に、普通に振られました。本当に悲しかったけど、何とか元気に振舞えてます。お兄ちゃんにお年玉奮発してもらう予定です。次に会える時にはきっと笑顔ですから大丈夫です。』
『新さんは知らないみたい。教えてないよ。でもビックリすると思う。』
『そうですね。しばらく内緒でお願いします。私の分もハッピーなクリスマスにしてください。』
『ありがとう。何かあったら聞くからね。』
『大丈夫です。楽しかったと振り返れるくらいにはなりました。』
無理してるとは思ってるけど、誰かにそう言うことでそんな気分になっていくかもしれない。そう思いたい。
ただ、こっちは順調で。
申し訳ない位順調で。
言われた通りハッピーなクリスマスを満喫できそうだった。
平日でも、仕事後がスタートだとしても。
水鳥ちゃんの話題が出ることも無くて、本当のことを言えず心苦しいこともなかった。
だって・・・・忘れてたくらいだった。
ごめんね、水鳥ちゃん。
「最近グッと大人っぽくなったじゃない。三文字の人のお陰よね。」
二人でランチをとってる時に朱里にそう言われた。
照れるより笑顔になる。
そうです、三文字の人のお陰です。
「私も雨の日には玄関でぼんやり空を見上げるようにしてるんだけど、なかなか立ち止まってくれる人はいないんだよね。みんな足早に通り過ぎていく。」
「そんなことしてるの?」
「まあ、ちょっとだけね。いいじゃない、これでもし何かがあったら面白いでしょう?」
「まあ、ね。」
ちょっと前に別れたらしい朱里。
「『何で、今?』そう思うよね・・・。」
そう言ってた悲しそうな顔を思い出す。
それは水鳥ちゃんのセリフでもあったんだろうか。
何かがきっかけですれ違う想いはある。
だから自分にだって起こるかもしれないのに、一緒にいるとそんな事忘れる、思いもしない。
「ちなみ。」
耳元でそう呼ばれて、返事はしない。
二人の隙間を限りなくなくすように、ぎゅっとしがみつくように両腕に力をこめる。
「新さん。」
三文字の人を最後の一文字で呼んでる自分。
何の呪文感もない。
突然の誕生に急いで決められたらしい名前。
それでもぴったり合ってる。
名前はそう馴染むものだから。
それでもこんな近い距離で、暗い中で、明るい時とは違う響きで呼ぶとすごく特別だと思えるからいい。そう思ってもらいたい。本当に特別。
「最近水鳥が何も言ってこないんだけど。有田君に迷惑かけてないかな?」
携帯の水鳥ちゃんの写真が変って、その後無機物になったままなのに、まったく気がついてないらしい新さん。
そんな細かい所、女性よりは気にしないんだろうか?
だってプリンの写真だよ。二つでもない、誰かの手も写ってない、自分の部屋のテーブルだと思われるくらいの、ただのプリンの写真。
ついでにクリスマスのおねだりもないんだろう。
本当にダメだったんだろうか?
来週に向けて、楽しみだと何度も思ってる私。
そして新さんもそんな思いを見せてくれる。
きっと思いもしてない。
妹が寂しがってるなんて。
「ちなみ、どうしたの?もしかして何か企みを聞いてる?」
嬉しそうに聞いてくる。
期待してるの?
「もしかしたら、有田君とはダメになったのかもしれない。」
「なんで?何か相談してきた?」
「なんとなくそんな感じの事を教えられたの。『振られました』って。」
「そうだったんだ・・・知らなかった。話を聞いてくれてありがとう。」
「私も何も言えないです。ただちょっとだけ報告のような連絡が来ただけです。親孝行のクリスマスにするって言ってましたよ。一応新さんには内緒にしますって言ったんです。」
「わかった。知らないふりをする。まあ、その内元気になるだろう。」
せっかくの楽しい時期だったのに・・・・。
そうつぶやいてた。本当にがっかりしてるのが分かる。
そうだよね。
「じゃあ、お年玉多めにしてやるか。」
多分そのつもりでしょうけど。
その後、元気になったとか、どういうクリスマスにするとか、そんな連絡もなく。
もちろん会う予定もなかった。
お正月に新さんが帰ったら元気だったかどうかの報告はあるだろうって思ってた。
すっごく楽しみにして予定通りに、おしゃれなレストランで食事をして、お酒を飲んで、平日の夜を一緒に過ごした、慌ただしいまでの夜にはやっぱり水鳥ちゃんのことを思い出す時間はなかった。
次の日、ぼんやりしないように平常心で仕事をするだけで精いっぱいだった。
楽しかったイブの思い出も、ちょっと眠たい気分も、当日の追加のお泊りの予定も誰にもバレないように。
水鳥ちゃんがクリスマスの予定が決まらないと、誘ってもらいたくて待ってるのに言い出してもらえないと。
ただのデートじゃなくて、もっと特別な日にしたいって思ってるのは分かる。
水鳥ちゃんでも言いだせないんだあ・・・・なんて思って。
それでもあの手この手で誘導するんだろう、最終的になかなか切り出さない有田君にじれて、水鳥ちゃんが真っ赤になって言い出すんだろう、なんてそんな事を想像していた。
気がついたら変っていた水鳥ちゃんの丸い写真。
新しい一枚に変えるまでのつなぎだろうと思ってた。
何でもないデザートの写真だったけど、その内また二人の写真になるんだと思ってた。
『フラれたんです。親孝行のクリスマスになりそうです。』
そんなメッセージが来た時はびっくりした。
新さんが知ってるのか分からない。
さり気なく話題にしたら、まったく聞いてない感じだった。
私から言い出すこともできずに。
何と言っていいかも分からない。
『喧嘩したの?何て言ってあげたらいいか分からない。大丈夫だよね。』
『喧嘩より前に、普通に振られました。本当に悲しかったけど、何とか元気に振舞えてます。お兄ちゃんにお年玉奮発してもらう予定です。次に会える時にはきっと笑顔ですから大丈夫です。』
『新さんは知らないみたい。教えてないよ。でもビックリすると思う。』
『そうですね。しばらく内緒でお願いします。私の分もハッピーなクリスマスにしてください。』
『ありがとう。何かあったら聞くからね。』
『大丈夫です。楽しかったと振り返れるくらいにはなりました。』
無理してるとは思ってるけど、誰かにそう言うことでそんな気分になっていくかもしれない。そう思いたい。
ただ、こっちは順調で。
申し訳ない位順調で。
言われた通りハッピーなクリスマスを満喫できそうだった。
平日でも、仕事後がスタートだとしても。
水鳥ちゃんの話題が出ることも無くて、本当のことを言えず心苦しいこともなかった。
だって・・・・忘れてたくらいだった。
ごめんね、水鳥ちゃん。
「最近グッと大人っぽくなったじゃない。三文字の人のお陰よね。」
二人でランチをとってる時に朱里にそう言われた。
照れるより笑顔になる。
そうです、三文字の人のお陰です。
「私も雨の日には玄関でぼんやり空を見上げるようにしてるんだけど、なかなか立ち止まってくれる人はいないんだよね。みんな足早に通り過ぎていく。」
「そんなことしてるの?」
「まあ、ちょっとだけね。いいじゃない、これでもし何かがあったら面白いでしょう?」
「まあ、ね。」
ちょっと前に別れたらしい朱里。
「『何で、今?』そう思うよね・・・。」
そう言ってた悲しそうな顔を思い出す。
それは水鳥ちゃんのセリフでもあったんだろうか。
何かがきっかけですれ違う想いはある。
だから自分にだって起こるかもしれないのに、一緒にいるとそんな事忘れる、思いもしない。
「ちなみ。」
耳元でそう呼ばれて、返事はしない。
二人の隙間を限りなくなくすように、ぎゅっとしがみつくように両腕に力をこめる。
「新さん。」
三文字の人を最後の一文字で呼んでる自分。
何の呪文感もない。
突然の誕生に急いで決められたらしい名前。
それでもぴったり合ってる。
名前はそう馴染むものだから。
それでもこんな近い距離で、暗い中で、明るい時とは違う響きで呼ぶとすごく特別だと思えるからいい。そう思ってもらいたい。本当に特別。
「最近水鳥が何も言ってこないんだけど。有田君に迷惑かけてないかな?」
携帯の水鳥ちゃんの写真が変って、その後無機物になったままなのに、まったく気がついてないらしい新さん。
そんな細かい所、女性よりは気にしないんだろうか?
だってプリンの写真だよ。二つでもない、誰かの手も写ってない、自分の部屋のテーブルだと思われるくらいの、ただのプリンの写真。
ついでにクリスマスのおねだりもないんだろう。
本当にダメだったんだろうか?
来週に向けて、楽しみだと何度も思ってる私。
そして新さんもそんな思いを見せてくれる。
きっと思いもしてない。
妹が寂しがってるなんて。
「ちなみ、どうしたの?もしかして何か企みを聞いてる?」
嬉しそうに聞いてくる。
期待してるの?
「もしかしたら、有田君とはダメになったのかもしれない。」
「なんで?何か相談してきた?」
「なんとなくそんな感じの事を教えられたの。『振られました』って。」
「そうだったんだ・・・知らなかった。話を聞いてくれてありがとう。」
「私も何も言えないです。ただちょっとだけ報告のような連絡が来ただけです。親孝行のクリスマスにするって言ってましたよ。一応新さんには内緒にしますって言ったんです。」
「わかった。知らないふりをする。まあ、その内元気になるだろう。」
せっかくの楽しい時期だったのに・・・・。
そうつぶやいてた。本当にがっかりしてるのが分かる。
そうだよね。
「じゃあ、お年玉多めにしてやるか。」
多分そのつもりでしょうけど。
その後、元気になったとか、どういうクリスマスにするとか、そんな連絡もなく。
もちろん会う予定もなかった。
お正月に新さんが帰ったら元気だったかどうかの報告はあるだろうって思ってた。
すっごく楽しみにして予定通りに、おしゃれなレストランで食事をして、お酒を飲んで、平日の夜を一緒に過ごした、慌ただしいまでの夜にはやっぱり水鳥ちゃんのことを思い出す時間はなかった。
次の日、ぼんやりしないように平常心で仕事をするだけで精いっぱいだった。
楽しかったイブの思い出も、ちょっと眠たい気分も、当日の追加のお泊りの予定も誰にもバレないように。
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