合掌 ~お地蔵さまに教えてほしいこと~

羽月☆

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16 いつの間にか地蔵の心を授かりました ~桐乃~

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そして金曜日。
いつ来るのか分からない。
今日か、明日か、まさか明後日?
相変わらず『一緒にいたい。』だけは言っていた。


もうその辺も気を遣うのをやめた。
来たかったらくればいい、連絡したうえでだったら泊めてあげよう。
何も言ってこないけど今日来るんだろう。
まだ仕事が終わらないらしく、真面目に仕事をしていた顔を見て先に帰る。
もちろん待ってたりはしない。
それに待ってるにしても自分の方の最寄り駅でだから。

少し前を友近が歩いてるのが見えた。
早足で近寄ろうと思ったら、後ろから名前を呼ばれた。
振り返る瞬間友近も気がついたらしいと分かった。

立ち止まったら走ってきた草野君。
笑顔満点で走ってくる・・・・犬の様だ。

「桐乃さん、お疲れ様です。」

「お疲れ。」

それだけ言うために呼び止めるわけはない。
一緒に帰りたいんだろうけど・・・・・。

「桐乃、久しぶり。」

やっぱり聞こえたよね、そして普通に加わろうとしてる。
そっちも気がついた?

ゆっくり振り向いた。
笑顔満点の犬から、にんまり笑顔の友近へ・・・・・。
やっぱり・・・・・。

「桐乃のとこの後輩君、もしかしたら世話の焼ける後輩君じゃない?名前は・・・・・・聞いてないかも・・・・・・。」

「草野 匠です。桐乃さんにお世話になってます。」

少し緊張してるのが分かる。
さっきも今も下の名前で呼んでるし・・・・・。
でもバレたなんて思っても無くて、ただ『世話の焼ける』にがっかりしつつ、先輩に話しかけられて普通に緊張してるのだろう。

「ああ、桐乃、意外に・・・近くにね。」

「まさかだなあ・・・・・。」

「春ごろからかな、たまに愚痴られてた気がしたのに・・・・・。」

「本当にびっくりだなあ。」

ずっと草野君を見て友近がつぶやいて。
さすがに草野君も気がついただろう。
ああっって顔でこっちを見た。

「週末だしね。じゃあ、桐乃をよろしくね。桐乃、今度飲みに行こうね、金曜日以外で。」

そう言って手を振って先に歩き出した。
すごく満足してるだろう。

いくらか知ってる子だったら根掘り葉掘りと探る手も緩まないだろう。
次の飲み会を楽しみにしてるんだろう、背中がそう言ってる。

そして元凶は、笑顔から一転、反省の顔をしていた。

「すみません。」

「まあ、いいから。草野君、終わったの?」

そう言って駅に向かう。
普通の先輩後輩の様に話をする。

「来週提出します。今度こそ頑張りました。」

「じゃあ、今度こそって、楽しみにしてる。」

改札をくぐり、どうするんだろうと思って聞いた。

「草野君は、今日はどこかに行くの?まっすぐ部屋に帰る日?」

「寄り道です。同じ電車です。」

「そう。」

来るらしい。長い寄り道をするつもりらしい。まあまあいつも通りだ。

一緒に階段を上り、電車を待つ。

「毎週寄り道して部屋の掃除とか出来てるの?」

「出来てます。寄り道しない日にコツコツしてます。」

そうなんだ。

「最近柏木君と飲んでる?」

「いいえ、誘われないんです・・・・ランチの時の話だけで満足されてます。」

小さく言われた。

全部バレてはいるらしい。
私も休憩が一緒にならないとあえて話しかけられたりはしない。
きっと仲良し同期の事が気になるだろうけど、そこは自然にタイミングを待つ派らしい。
好奇心を押さえられてるか、草野君から十分聞き出せてるか、あるいは心配いらないと安心してるのかもしれないけど。

相変わらずたまに失言があり、砲丸投げの妄想は時々あるけど、まだ妄想だけで済んではいる。

本当にそこは愚痴りたい。
本人が気がついてないんだと、誰かに言いたい。
友近には言うだろう。




「今度はそんな愚痴?」

友近が言う、共感はされてない。

「ご馳走様。まさかこれ以上なく褒められて愛されてるって自慢したいんじゃないよね?」

「そんなんじゃないよ。本当に失言が多いんだから。」

「しょうがない、事実だし。だいたいは年齢のことじゃない。年下を食べてるんだから、そこは我慢しなさい。」

食べてるんじゃない、そこはびっくり器用で、食べられてるくらいなんだから・・・なんてもっと言えない。
友近に共感されないとすると柏木君なんてもっとかも。
柏木君の『俺のもの』は同じ年のかわいい子だって聞いた気がするし。

「まさかのストレスチェックが嬉しい誘いだったなんて。全然感じてなかったの?」

「まったく。」

「そこが鈍くて二年前にチャンスを逃したんだね。」

「違う、そこは別に違う。春からちょっと仕事を組むようになったから、それで距離が近くなったの。」

「それが怖がられていたはずなのに逆に・・・・って、結局惚気か。」


「でも近すぎるよね、本当に数メートルの距離に居るってどう?」

「仕事は仕事。相変わらず手がかかるから、やさしくはしてない。」

「そこがむしろいいのかな?仕事ではキリリで二人の時はとろろんで。」

とろろんって何?
そんな私を想像できるの?
自分でもできなかったけど、まあ、近い状態にはあるかも。そこは驚きだ。

「年下は可愛い?」

「それは可愛い。意外に楽しい。」

やっぱり惚気か、そうつぶやいた。

「まあ、良かったじゃない。占いの効果って言うのかな?」

「どうだろう?違う気がするけど、話題の一つでその話もしたしね。」

「とりあえずおめでとう。楽しいならしばらくは飽きないでしょう?ダメなところも許せそうだし、桐乃にはぴったりなタイプだったのかな?」

そういえばそうかも。不器用だって知ってるし、素直だって分かるし、褒め上手だし・・・・なによりも楽しいって笑顔が可愛い。年下最高!ってたまに思うくらい。

「良かった事。」

「ありがとう。」

そう言えばそうらしい。
なんだか減点ポイントが明らかだとあえて責めることはしない。
年下だしと諦めてるし、不器用なのは知ってるし。
なにより愛情表現はちょっと無礼だとしても心に響く。
イラっとした分、もっと響く。

いつの間にか地蔵も取り出されることなく、安定した精神状態にまでなってる。

ちょっといい事ばかりじゃないの?

占いは当たったことになるの?
運と実力を発揮したことになる?

まあ、いい、なるようになる運命で。

先の事は、その時々で地蔵に聞こう。

滅多にない相談だったら最高に有効なアドバイスをくれるかもしれないじゃない。


心を丸く穏やかに。
肩に乗った頭を撫でながら癒されながら・・・・無礼な言葉は器用に無視しながら。
まだ一度も玄関先に放り出してない、偉いじゃない。

いつの間にか地蔵効果は身についたみたい。

感謝。   合掌。

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