夢にまで見たい二次元恋愛、現実にはあり?なし?

羽月☆

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11 臨時で手にした四千円の正しい使い方について。

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「僕はどこでもいい、お酒入ってもいいし。」

答えられずに立ち止まる私。
両手に二枚づつのお札が握られている。
なんだかおかしな感じだと思う。

見つめ合ってしまった時間、急に顔が赤くなったのが分かった。
どうしよう、焦る。ちゃんと話が出来る?
二人で会話が成り立ったことなんてないのに・・・。
不安寄りの緊張でドキドキする、断った方がいいと思う。
そうでないとせっかくの二千円と金曜日の解放感がもったいない時間になる気がする。

「金曜日だから用事があるなら・・・・また今度でもいいし。」

中止じゃなくて延期の提案?

「いえ、大丈夫・・・です。」

あくまでも私の時間は空いてますが、その内容に大丈夫と言えるほどの自信がないです・・・・・。

「じゃあ、駅の方に行こう、とりあえず。」


決定らしい。
あああ・・・どうしよう。
何で急に二人で飲みたくなったの?
何か相談でもありますか?それともありがたくもお節介なアドバイスとか、まさかここに来て同期の親睦を深めたいって思い立ちましたか?
あとは何??

駅前に来て、お店の相談をされた。

「あんまり飲むこともないから、お店を知らないんだけど。どこか知ってるところある?」

「じゃあ、何度か行ったところでいい?」

「うん、いいよ。」

質問をやり取りすれば何とか会話は成り立つらしい。
早急に向き合うべき議題があるならなんとかなるらしい。
お店に着くまでにそんな話題を探すしかない。


でもお店にはすぐに着いた。
そして席も空いていて、すんなり席に収まった二人。
とりあえず注文。

二千円・・・・少ないですよ・・・部長・・・・・。

お酒を一杯と軽い料理を二人で三品くらい、それで設定額一杯になる。
まあ、いい。それで終わりでいい。


注文を済ませると途端に話題に困った。

「この間は本当にありがとう。気を遣ってもらって。」

「ああ。」

ああ・・・もう会話に行き詰った。
疑問形じゃなかったからだろう。
何かを聞く形で話を進めるべきだと分かってるのに・・・・。

あ・・・・。

「ごめんなさい、お母さんに連絡しないと。夜ご飯の事。」

そう言って携帯を出してササッと連絡をした。
返事はどうでもいい。終わってから謝るしかない、突発事故です。


「最近、飲みに行ってないみたいだって、湯田君が言ってたけど。」

「そう・・・だね。生井君は?三人で行ってるの?それとも二瓶さん達も一緒?」

「三人だよ。筒井さんが断ったら二瓶さんもあえては加わらないみたいだよ。」

今のは責められてるんじゃないよね?
そもそも別に女の人と飲みたいわけじゃないよね?

あ・・・・・今日は・・・・。

「何?」

「え?」

「たまに何か思いついたようにして、聞こうとするのに、言わずにやめることあるよね。」

たまにって・・・・・多分三回くらいじゃない?
そもそもそんなに話はしてないじゃない。
三木君との方がずっとしてるよ。

「生井君の今日の予定は良かったのかなって思って。」

「今更?」

「・・・そうだね。」


グラスをとり、少しづつ運ばれてきた料理に手を出す。
疑問形の会話で押し通すしかなくて、好き嫌いを聞き、正体不明の素材や味の吟味を持ち掛け、感想は全部疑問形にして。

ゆっくりやり取りをした。
料理について考えて話をしたから味わえてたのは確かだ。


「これでだいたい一人二千円くらいだね。」

満足そうに言ってしまったかもしれない。


「・・・・別に後は・・・・奢るけど。」

「いえいえいえいえいえ。」

大げさに遠慮した。

「じゃあ、割り勘でもいいし。」

飲みたいらしい。一杯じゃあ足りないらしい。
相手はもはやどうでもいいのだろう。

「三木君が心配してた。元気がないって。」

「三木君が?」

この間生井君がそう言ってたって言われたけど、・・・・なに?
それに食堂で話したけど。


「何かあったら相談に乗るって。何か相談することあるの?」

会話は疑問文で何とか成り立ってる。

でも聞かれても何とも答えることもなく。

「別に、何も思い当たらない・・・・よ。」

「そうなんだ。」

そう言って不満そうにグラスを空けてテーブルに置いた生井君。
ここに来て不機嫌モードがちらりと見える。
だから4千円で終わりにしても良かったよね?


それなのに、まだ飲む気らしい。メニュー表をズルズルと引き寄せて開いている。
酔わないよね?普通に飲めるよね?

逆に何かあった?


「生井君は?逆に相談したい事ってあるの?」

そう聞いたらいつもの半目で見られた。

「あ、なんだか三木君と仲がいいみたいだから。別にいいです。」





「あるよ。相談。丁度いいから相談に乗ってもらおうかな?」

「そうだよね。話しやすいよね。聞き上手なのかな?」

三木君を褒める。
悩みは誰かに相談するとスッキリすることはある。
そう、そうと決めたら早く帰って電話するなり、明日の約束をするなり・・・・。
後は三木君に引き継ぎたい・・・。

「それが・・・・なんだかよくわからない人がいて。今一つ捉えどころがないんだよね。他の友達はそんな事言わないから感じてないみたいなんだけど。気のせいかな?気になるんだけど。」


何の話?


注文したお酒が来た。
私も飲みたいのに。そう思ってたら店員さんがこっちを見てくれて、つい同じものを頼んでしまった。
いよいよ延長戦になった。


「明らかに異次元を見てる気がする。つい観察してしまうんだけど、どこか上の空なんだよね。」


「ふ~ん。・・・・・それで?」


つい促した。なんの話?それにどう答えろと言うの?


「何考えてるんだろう?」


グラスを受け取りながら聞いて、反応はしなかった。

「時々携帯を見て変な顔してる時があったり、難しい顔をしてる時があったり。」


「そんなものじゃないの?携帯ってずっと見てるからつい表情を変えちゃうと思う。」


そんなのをずっと観察されてるのも可哀そうに。
適当に料理をつつきながら聞いていた。
だいたいそんな事を三木君も相談されても、そうなんだぁ・・・・としか言えないと思う。
本当に変・・・・。


あ・・・・あれ?まさか紀伊さんとか言わないよね?変じゃないよね?
彼女いたし、だって相談も彼女にすればいい・・・・って女性のことは無理か?
あれ。そもそも女性って言ってる?

やっぱり何が言いたい?

ついぼんやりと咀嚼を止めて上を見て考えた。

なんだろう?


酔ってる?


「好きなのかなあ・・・って思い始めた。」

「なるほど・・・・・。」

どっち?女性?やっぱり紀伊さん?
彼女とは別れた?

上を向いたまま首をかしげる。

流れに乗せて聞いていようと思った。
相談というより独り言?

私の独り言が多いって言ってたのに、今独り言言ってるよって教えたい気分。
私に指摘されるなんて、ちょっとムッとしそう・・・やっぱり余計な指摘はしないでおこう。

今週も無事に一週間が終わった。
最後に部長にねぎらわれたって思うだけでもうれしい。
来週からもまあまあ気分転換に手伝ってあげよう。
しばらくは二千円分の余韻を残してあげよう。

お酒も飲み切ってごちそうさまでした。
後はデザートでも・・・・・。
そう思って顔を下げたら、バッチリ見られてた。

頬杖をついて半眼で、グラス片手に。

何?


メニュー表をそっと手にしてデザートのページを捲る。

チラリと見て、二個くらい美味しそうなものもあるし・・・・食べてもよくない?
でもテーブルには食事が残ってる。
私は半分くらい食べて、後は生井君の分と思ってる。


「食べないの?ちょっとだけ冷たくなって残念だけど。」

テーブルの上の食事を指さしてみた。

「分かってる。」

そうですか・・・・・。


後は・・・・何を話す?

独り言も終わったらしく相変わらずぼんやりの半眼。
そのまま寝たら・・・先に帰りたい。

やっぱり締めのデザートを頼んで、終わり感を出そうか?

手にあったメニュー表をもう一度開いた。

さっき二個に絞ったのに、ちょっとの間にもう一つ気になるものが増えた。
う~ん、甘いもの好きかな?
そもそもあんまり食べてないみたいだし。
三択のうれしい悩み。

キョロキョロして他のテーブルに同じ物がないか見てみるけど、まだデザートには早いらしい。
どのテーブルも美味しそうな食事の最中、楽しそうに盛り上がってるようにすら見える。

「ねえ、何考えてる?」

「・・・デザート食べたい。最後はやっぱりデザート食べたい。甘いもの好き・・・・・じゃないよね?」

正直に聞いた。

「食べていいよ。どうぞ。」

やっぱり食べたいとは言ってくれない。
どうぞとは言われたから一個選んで頼もう。

手をあげて店員さんに来てもらい、頼んだ。
ついでにコーヒーも。

生井君を見たけど、ぼんやり半眼で、コーヒーもいらないみたい。

「お水も頂けますか?」

生井君に目を覚ましてもらおう。
駅まで歩くくらいの時間でいいから、しっかり覚醒をお願いしたい。


「誰か、一緒の配属だったら良かったのになあって、そう思う奴いる?」

「・・・別にいないよ。でも女子が一人いたらうれしかったなあ。」

もっと心強かったのに。ランチももっと楽しめる。

「生井君は?誰かいる?」

「いや・・・・・今のままでいい・・・・十分満足してるし。」

「そうなんだ。一人でも平気そうだもんね。」

運ばれてきたお水を目の前に置いてみる。

私はデザートに冷たいシャーベットとアイスの盛り合わせを。
そしてコーヒーでしめる。

店員さんが気を利かせてくれて、お水は二人分、更にスプーンも二人分つけてくれた。
とりあえずお水のコップの上に余分なスプーンを渡らせて、目の前のデザートに集中する。

ここばかりは私が余分に注文したことになる。
残っている料理を見てもほとんど私が食べてる気がしてる。

やっぱり半々でいい・・・・・よね?

やっと生井君が手を出したと思ったら、何を思ったのかスプーンを手にして、私の目の前のアイスを掘り始めた・・・・・・食べるの?
気分的には批難する感じの気持ちで言いたい。

とりあえず二人分つけてくれたのは店員さんの気配りなだけで、一人で食べる気満々だったのに。


一人で選んで一人で頼んだ。
お会計のことはともかく、私が頼んだもの・・・・。

無口で無感動で、でもスプーンは規則的に往復してる。

じゃあ・・・・・。

お皿を真ん中に進めて取りやすいようにした。
私だってまだまだ堪能したいから、その位置で止めた。


「三木君の事、どう?」

アイスに視線を固定したまま聞かれた。

それは誰が知りたいの?三木君ってことはないよね?ないよ・・・・ね?
ちょっとドキドキしてきた。
普通だったよね?
ちょっとだけ顔を寄せた二回も普通だったよね・・・・?


「喋りやすいし、いい人だし。休憩で一緒になったら声をかけようって普通に思える。」

本人の了解ももらってるし、そう言った。

ただ、やはり顔が熱い。
アイスを深堀りして、大きくとって食べてみた。

「じゃあ・・・僕は?」



思わず顔をあげて、見た。
変な顔をしてる。すくなくとも半眼じゃない。目は覚めたらしい?

手はアイスの方へ伸びたまま、往復運動は止まってる。

印象でいいんだよね?
だいたい本人を前にして悪く言う訳ないのに。

「この間も助けてもらったし、いい人なんだなあって思ったよ。」


精一杯あの時の記憶を掘り起こして伝えた、感謝とともに。
それ以外で言えるのは・・・・あんまりいい事じゃない気がする。
無口、無感動、壁がある、理解しづらい、どちらかというと苦手・・・・。

せっかく伝えたのに、やっぱり響かなかったらしい。
もっと賞賛されると思ってるの?
そもそもそんな関りがなさ過ぎて、いっそ判定不能でいいくらいなのに。

カランと音がした。


スプーンはアイスに突き刺さったまま放置され、溶けたアイスに動かされて、落ちた。
テーブルのそれを拾って皿に乗せる。

そんな私の動きはやっぱり無視されてる気がする。
水を飲んでるその無表情な顔を見る。


やっぱりもっと褒めてもらいたかったんだろうか?

私に?・・・ねえ、相手間違えてるよ。


心の中でそう言ったら視線を動かされた。
目が合った・・・・・睨まれたんだろうか?


急いでアイスに取り掛かった。
溶けるから、ちゃんと食べる。私が頼んだデザートだし。

アイスを引き寄せ、スプーンだけはテーブルの真ん中に残されたまま。
別にいいよね。

残り少ないデザートを食べきった。

コーヒーを飲んで終了。


どっちが終わりを言い出す?
やっと金曜日の仕事後の時間が終わった。
のんびりした週末が始まる。

帰りたい・・・・・。

しばらく静かなテーブルで二人でぼんやりしてる感じになった。
そう見えてても、私はすごく急いでる。
心は急いでるけど、帰ろうと言い出しにくくて、少し時間を待った。


もういいだろう。時間がもったいないよね。


「美味しかった。生井君たちのチョイスもいいね。」

褒めた。今更だけどちょっとだけ褒め言葉をささげた。

「お腹いっぱい、そろそろ帰ろうか。」

ゆっくりバッグを引き寄せて、ソワソワとしたら、無言で立ち上がられた。
その手にはバッグがあったので、つられるように立ち上がってお会計に向かった。

財布を出して二人で並ぶ。


「僕が出すからいい。」

カードで支払ってくれたから、部長からもらったお礼はそのまま渡した。

「来週忘れずに部長にごちそうさまを言わなきゃ。」

その金額がだいたい半分くらいだった。

外に出て、もう一度言ってみた。

「ねえ、アイスもコーヒーも私が頼んだし、払うよ。」

そう言ったらまた半眼で見られた。
それは前にコンビニのお昼に『払う』と言った時と同じ不機嫌な顔にも見えた。

「いい。」

一言。

「ごめんなさい。・・・・・・ありがとう。ご馳走になります。」

ちょっとづつ小さくなった声。



やっぱり気が合わないんだと思う。
私はその反応をうかがうように気を遣ってしまう。
気がついてないの?
他にもそんな反応の人、いない?

もっとありがとうを前面にごちそうさまって言いたいのに。
それだったら『今度は私が奢るよ。』くらい言えるのに。
今度なんて言葉、絶対出ない。


もう一度お礼を言って、二人で駅に向かった。

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