公園のベンチで出会ったのはかこちゃんと・・・・。(仮)

羽月☆

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3 捨て猫を任されたバイトの人は。

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いつものようにバイトに行くとさやかちゃんが泣いていた。
手には小さなタオルを抱きしめている。

「おはよう、さやかちゃん。どうしたの?」


「真奈姉ちゃん。ねえ、お姉ちゃん猫飼えない?」

こっちを見たさやかちゃんがタオルを差し出し聞いてきた。
そのタオルの中には小さな猫がいた。
まだまだ母親の世話が必要そうな赤ちゃん猫がいた。

「かわいい、どうしたの?」

「お店の前にいたの。段ボールに入ってたの。」

さやかちゃんの足下にあった段ボール。
猫の誕生日と『育ててください』というメモが入っていたらしい。

「あ、おはよう真奈ちゃん。」

今日子さんが出てきた。

「おはようございます。」

「さやか、何度も説明したでしょう。家はお店だから飼えないし、お祖母ちゃんも動物は体に良くないのよ。何とかするから、もうすぐバスが来るわよ。」



「はい。」

悲しそうな返事。泣く泣くタオルごと段ボールに入れてバッグを手にする。
段ボールの中でさやかちゃんを見上げる子猫。
ああ、かわいい。私は猫派、小さい頃飼っていたこともある。


「今日子さん、どうするんですか?」

「そうね、まあ、こういうの得意な人に心当たりあるから連絡してみる。すぐ来てくれると思うし。」

「かわいいですもんね。さやかちゃんじゃなくても飼いたくなります。」

「真奈ちゃん心当たりある、もしくは飼う?」

「う~ん。家を空ける時間を考えたらかわいそうで。一人暮らしじゃあこの子が寂しがりますよね。」

「そうね。やっぱり簡単には飼えないわよね。とりあえずは家に連れて行くわ。」

そう言って段ボールごと持って二階へ上がる今日子さん。
かわいいなあ。

私はいつものようにお店の掃除をして、カフェの方もざっとチェックして準備をする。
店内はいい匂いがする。
今日も一日頑張ろう。

朝から来てくれるお客さんですっかり猫の事は忘れていた。
昼前にお店のドアが開いて男の人が入ってきた。

「!」 あの人。

「あ、おはようございます、真奈さん、本当にいた。うれしいなあ。」

笑顔で声をかけてくれる。しかも名前もしっかり覚えてるらしい。

「佐野さん、おはようございます。」一応私も覚えてる。名刺をもらったし。

「僕の名前覚えてくれてたんですね、うれしいなあ。」

そう言って評判のメロンパンをトレーにのせてコーヒーを頼まれた。
いつものようにお皿にパンをのせてコーヒーをセットする。
「席に運びますよ。」そう声をかけると「大丈夫取りに来るから。」と。

「ねえ、真奈さん、今日は今日子さんに呼ばれたんだ。手が空いたらお願いって伝えてくれる?」

「はい、分かりました。」

コーヒーが落ちる間に考えた。そういえば猫。得意な人って佐野さんの事かな?
ドアを開けて今日子さんに佐野さんが来たことを伝える。今お食事されてますとも。
しばらくしてコーヒーを注いでると佐野さんがとりに来てくれた。

「ありがとう。」

佐野さんにお礼を言われたけど、お礼は私が言うところよね?

「ああ、佐野さん。良かった来てくれて。」

「そりゃあ、今日子さんからの電話ですからすぐに来ますよ。」

「どうしたの?なんか調子狂うわね。あのね・・・あ、そうそう、この子がバイトに来てくれてる真奈ちゃん。やっと紹介できたわ、よろしくね。」

二人で見合う。

「えっと、この間公園で偶然会って、仕事手伝ってくれたんです。だから知ってました。」

「え、そうなの?」今日子さんがこっちを見る。

「はい、偶然、手伝ったっていうほどでもないですが。」

「なんだ~、知ってたのか。ね、かわいいでしょう。」

「はい、商店街で噂になってましたから。いい人が来てくれてよかったですね。」

今日子さんが佐野さんと話をする、恥ずかしい。

「それで早速だけど」と言いながら今日子さんが佐野さんの席へ。

「子猫が店の前に捨てらえてたのよ。飼い主探してくれないかしら?誰か飼ってくれる人の心当たりない?」

「う~ん、今すぐには何とも。ちょっと写真撮って広めてもいいですか?あと張り紙したりします。連絡先は僕の携帯にしますので。これ食べたら写真撮らせてください。」

「ありがとう。やっぱり頼りになるわ。」

「じゃあ、ごゆっくり。コーヒーお代わりしたかったら真奈ちゃんに頼んでね。一杯サービスするから。」

そう言って今日子さんは消えた。
まだまだ焼き上がりを待つパンはある。お昼に向けてサンドイッチも作る。
奥の方が実は忙しいのだ。
それでも今日はいつものお客さんは一通り来てくれたのであとはパラパラと来てくれるお客さんの対応になる。静かな店内。ぼんやりとカフェスペースを見ると佐野さんがこっちを向いていて目が合った。

「あ、コーヒー淹れますか?」

「ううん、まだいいよ。真奈さん、猫見た?」

「はい。すっごくかわいいです。多分あと少しミルクが必要なくらいの時期だと思います。雑種だと思うけどすっごくかわいい猫です。」

「真奈さんのところは飼えないんだよね。」

「はい、ここにいる時間が長いので一人暮らしで飼ったらかわいそうかなあと。本当は連れて帰って一緒に暮らしたいんですけど。」

「優しいですね。確かに家族が多いほうが猫もいいですよね。」

「佐野さんは猫派ですか、犬派ですか?」

「僕は猫派ですけど、犬も飼ってましたからどっちもです。本当に大好きです。」

まっすぐに言われて何故か照れてしまう。
犬も猫も好きって事なのに。
わざわざ椅子から身を乗りだしてこっちを見て話してくれる。
しばらく誰も来なくて話が続いた。

「ねえ、お邪魔かしら?」

「今日子さんが顔を出す。」

「今日子さん、すみません。今お客様いなくて。あ、サンドイッチ並べます。」

「佐野さん、じゃあ、そろそろお仕事お願いしていいかしら?」

「はい、僕も会いたいです、子猫。」

嬉しそうに今日子さんの後についていく佐野さん。
またお店に一人になった。さっきまで話をしていたので急に静かになって寂しくなった。
サンドイッチはすっかり並べ終わっていた。
お客さんが来るより前に2階から佐野さんが下りてきた。
嬉しそうな佐野さんの顔を見た途端ついつい前のめりで聞いていた。

「佐野さん、どうでした?子猫。」

「真奈さん、すっごくかわいいです。」

「ですよね。写真可愛く撮れました?」

佐野さんが持っていたカメラの中の写真を見せてもらう。
2、3枚とかじゃない、かなりたくさん撮っているみたい。
欲しい。

「真奈ちゃん、写真送ってもらったら?」

今日子さんが提案してくれる。欲しい!

「あ、いいですよ。携帯に送りましょうか?」

「はい、お願いします。」

えっと、携帯はバッグの中、ロッカーの中。

「あの、渡した名刺まだ持っていてくれたらそこにアドレス送ってもらえれば、後で送りますけど。」

「あ、じゃあ、夜、部屋に戻ったら送ります。よろしくお願いします。」

「じゃあ、今日子さん、行ってきます。また後で。」

手を振って出て行った。やっぱり佐野さんがいなくなるとまた静かになった。

「佐野君、張り切ってるわ。じゃあ、あとお願いね。」

今日子さんがまた消える。
夜メール送るのを忘れないように。
数日はあのままさやかちゃんが可愛がれるのだろうと思っていたのに、あっさりと飼い主が見つかってしまった。いいことだから喜ぶべきだった。

夕方男の子とお母さんが一緒にやってきた。

「あの、佐野さんに聞いて。猫を見せていただけませんか?」

お母さんも男の子もワクワクとした表情。
2階から段ボールがおりてくる。
お店の外に出て親子で猫を挟んで話をしている。

「あの、飼いたいと家族の意見もまとまりましたので飼わせていただいていいですか?」

「ええ、勿論です。大切に育ててもらえるときっとここに置いていった人も安心すると思います。」

「ありがとうございます。じゃあ、連れて帰ります。」

私は外までお見送りをした。
外では男の子が膝にゲージをのせて中の猫を指で撫でていた。
すっかり仲良くなって男の子の指を甘噛みしている子猫。
ああ、さよなら。

「ばいばい。仲良くしてね。」

「うん。ありがとう。」

私と今日子さんに手を振って帰っていった親子。

「ああ、さやかが大泣きしそう。早かったわね。」

「そうですね。佐野さんやっぱり頼りになるんですね。」

「そうなのよね。」

「佐野さんが昔今日子さん達に助けてもらったって言ってました。」

「そう?こっちも助かったわよ。ビラ配りにポスティング、商店街の盛り上げ役と。いろいろね。同じころに仕事初めた仲間みたいなものよ。」

「そうなんですか。佐野さん一体何歳何でしょうか?最初虫取り網を持ってかごを持って公園に出没してビックリしたんです。しかも探してたのがカエルで。今日はまた少し印象が違いました。」

「カエルって。手広いのね佐野君。年齢とかは直接聞いたら教えてくれるじゃない。今夜にでもメールで聞いたら?」

そういうと今日子さんはまた消えていった。
そうか。少し話題を残さないとメールもしにくいしな。
予想通り帰ってきたさやかちゃんは猫がもらわれて行ったと知って大泣きした。
分かる、その気持ち。
今日子さんが一生懸命なだめる。
食べ物を扱うって言うのもそれなりの責任がある。
アレルギーは当人にしか分からないけど人によってはとても恐いものだ。
猫にアレルギーある人はなんてかわいそうなんだろう。触れないなんて、撫でられないなんて。

そのあと佐野さんがやってきた。
小さな子のスイミングのお迎えが終わって今日の仕事が終わりらしい。
カフェスペースでコーヒーを飲んでいてさやかちゃんに怒られていた。
仕事だから、いい人にもらわれたからと言い訳もせずにごめんねと繰り返し謝ってる困り顔の佐野さん。
ぼんやりとそれを見てると今日子さんが残った少しのパンの袋詰めをし始めた。

「すみません、私がやります。」

トングを持って横に行く。

「じゃあ、これ。お土産。」

ふくろを2つ渡された。

「さやか、いい加減にしなさい。佐野君は悪くないでしょう、猫が幸せになるお手伝いしてくれたんだからありがとうよ。」



「・・・ありがとう。」

さやかちゃんがしょんぼりとしながら謝る。可愛いなあ。

「本当にごめんね。」

佐野さんはさやかちゃんの頭を撫でてまだ謝っている。

「佐野君、もういいわ。それより真奈ちゃんに渡した袋1つもらって。あとこれバイト代ね。真奈ちゃんもさやかと一緒。残念そうで泣きたい気分みたいだから、今から食事にでも連れて行ってやって。」

ポチ袋を佐野さんに渡す。佐野さんが私を見る。

「えっと・・・・。」

断るべき?バイト代減るよ。それにあんまりよく知らない人と食事しても楽しいの?
佐野さんが私の方へ手を出す。ハッと気がついてパンの袋を一つ渡す。

「じゃあ、ちょっとだけ食事しますか?」

私は今日子さんを見る。

「おごられてくれば?」

「はい、あのでも自分で出します。」

「いいのいいの、年上にはごちそうになること。真奈ちゃんが佐野さんの年齢を聞きたいみたいだけど、明らかに年上よ。」

「それは分かります。」いくら虫取り網を持っていたとしても。

「え~、そんなにオジサンみたいに言わないでください。」

「さあ、真奈ちゃんもういいわよ。着替えて帰り支度をどうぞ。」

「はい。失礼します。」

確かにパンはもうない。
着替えをしてお店に戻る。

「あの、明日早く来て掃除しますので。今日子さん残しててください。」

「そう?ありがとう。じゃあお願いね。じゃあ、後は佐野君に任せてと。」

お疲れさまと言って仕事場を後にした。
佐野さんは自転車で私は歩き。
一緒に商店街を抜ける。
駅向こうのお店に行くことにした。

「商店街だと誰彼と邪魔されそうだから。」と。

知り合いが多いようだ。

一人で外食することがないので駅向こうとなると全くお店を知らない。
お任せにしてに賑やかなイタリアンのお店に席を見つけた。

「よく来るんですか?」

「ううん、行くとしても向こうの商店街の居酒屋だね。もっぱらオジサンたちと飲んでる。」

「そうですか。あの佐野さん年齢は?」

「僕32歳。真奈さんは?」

「23になります。」

「そうか、・・・・やっぱりおじさんだったね。」

「虫取り網を持って公園にいるオジサンに心当たりありません。」

「あれは特別だけど。夏休みは時々あんな感じ。子供の宿題の手伝いするからね。この間はスーツ着ておしゃれなところでおいしいもの食べたり飲んだりする仕事だったよ。久しぶりで肩凝っちゃった。」

「そんな仕事あるんですか?いろいろ書いてましたけど、何か面白い仕事あるんですか?」

「大体なんでも楽しんでやるようにしてる。今日の猫もかわいかったし。たくさん撮っちゃった。」

「そうですね、2、3枚だと思ってました。」

「うん、今日子さんもウンザリしてた気がする。」

「やっぱり。」


適当にお酒もすすみ、ボリュームあるパスタとお肉を取り分けながら食べる。
佐野さんはよく食べる。大きな口でおいしそうに。
それでもあんなに引き締まってるんだからうらやましい。
つい最初の日に見た体の線を思い出す。おじさんじゃない、全然。
確かにスーツも似合うかも。
お酒とお食事付きなんてどんな仕事なんだろう?

一人で仕事する前にいた便利屋の時の仕事の話もしてくれた。
話では聞いたことあるけど本当に結婚式に代理人として出席する仕事あるんだ。浮気と不倫調査はやらないという。探偵みたいな仕事だ。
逆に知ってる人には頼みにくいし、尾行もバレそうだし。

佐野さんに私の事も聞かれた。
お酒も飲んでいたせいもありいつもより軽く就職全滅のトラウマの話もした。

「本当にやりたいことは決められなくて、とりあえずいろんなところを受けたんです。でも本当に丸ごと自分を否定された気分になりますよね。悲しくて悲しくて。最初は悔しかったのに。何の魅力もない空っぽな自分を見せられます。もう2度とあんな思いはしたくないと思って逃げてるんです。今日子さん達はいい人だし、さやかちゃんも懐いてくれて、商店街の人も優しくて、両親もうるさく言わなくて。甘えてるんです。友達はどんどん素敵になっていくのに、私は全く変われません。大学生の頃と変わらない、大人になり切れない私はなんだか一人置いて行かれた気分です。そうなると会うのもつらくなるんです。違いを見せられて。」

なんてことを。
せっかく楽しくお食事をと思っていただろうに、結局自分の悲観的な言葉を聞かせてしまう。

「すみません、ぐちぐちと暗い話を。あの、でも今の生活も1日1日は楽しくて気に入ってますので。」

「なんであのお店だったの?」

「友達が昔住んでて何度か行ったことがあったんです。美味しくて優しくて。冬の終わりにふと思い出したら食べたくなって。たまたまその時に募集の紙を見て。」

「そうなんだ。でもそれもご縁だよね。今日子さんや務さんやさやかちゃんに商店街の人も、みんな歓迎してるよ。僕も実際にはここは全く関係ない場所だけど、とってもあったかい場所だと思うし。僕も・・・・出会えてよかったと思ってる。感謝したいくらいだから。置いて行かれたりはしてないよ。きっと今は別の道をそれぞれが歩いていて、でもいつかまた交わるかもしれないし。そのまま離れるかもしれないけど、そうしたらその道で出会う人と仲良くすればいいよ。商店街で人気者なんだから自信もって。それに僕は2人があのお店を始めた時から知ってるんだ。当時赤ちゃんだったさやかちゃんを抱えて大変だったと思う。おばあちゃんの助けを借りてるとは言え体力的にもね。今やっと真奈さんのおかげで今日子さんはさやかちゃんと一緒にいる時間が取れるし、務さんとの時間も取れるし。真奈さんがお客さんと上手くやってくれてるから安心して任せられるって。とてもいい子が来てくれたって今日子さん達もそうだけど、商店街の人も言ってるのを前から聞いてたんだ。あの優しいお店にあった優しい女の子、僕もずっと会いたかったんだ。」

「ありがとうございます。」嫌な顔せず聞いてくれて励ましてくれる。

「佐野さんは優しいんですね。本当に。」

「・・・そういうんじゃないよ。」

「私の行動範囲はあのお店と家と図書館くらい。本当に狭い世界です。新しい人と知り合うのに自分の世界を飛び出すのはまだ無理なんです。その時が来るのか、それがいつになるのか全く分かりませんが。」

「僕で良かったら一緒に行くから。どこでも、行きたいところに。」

どうしてこんなに人に寄り添うような話し方がが出来るんだろう。

「ありがとうございます。」

そのあとも商店街の名物の話をして、しばらくして帰ることにした。
遠回りになるからと断ったけど遅いからとマンションの前まで送ってくれた。

「あの、メールもらえるかな?猫の写真送りたいし。疲れてるだろうから明日にでも。」

「はい。今、すぐにでも眠れそうで、明日のお昼でもいいですか?」

「うん、勿論。待ってるから。」

さよならと言ってもお互いに背を向けず。
私は先にくるりと向きを変えてオートロックの扉の前に立つ。
鍵を出し扉を入り向こうを見るとまた手を振られた。
手を振り返した後は階段を上りそのまま部屋に入った。
いまごろ暗い中自転車で部屋に向かってると思う。
バイト代をもらったからとご馳走もしてもらった。
部屋に戻ってもじんわりとした温かさが心に残る。
いい人だと思う、子供にも好かれて、その母親たちにも信頼されてる。
さやかちゃんの頭を撫でる優しい横顔が浮かんだ。
目を閉じてその困ったような笑顔を思い出し自分で頭を撫でてみた。
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