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8 小さな友達にも背中を押されてあのベンチへ!
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次の日、木曜日から元気に仕事に復帰したと今日子さんが教えてくれた。
ついでに聞かれた。噂を知っているかと。
何のことか分からなくて、何?って答えた。
しばらく返信はなかった。
午後その返信が来た。
『知ってたのね。月曜日、真奈ちゃんが男の人と会ってたのを。その後送ってくれたって言ってたわ。偶然って怖い。その人はうちのお客さんで最初から真奈ちゃんに声かけてたけど本人がピンと来てなかったし、深く考えずにランチの誘いに行ったって言ってた。気まずくなってもう二度と会わないし、男の人がパンを買いに来ることもないだろうって、逆にお得意さんをなくしてごめんなさいって謝られたくらいの関係、以上。』
ありがたいことだった。もう二度と会わないと言わせるくらいなら大歓迎。
とりあえず良かった。
次の日、また今日子さんからメールが来た。
『ちょっと話があるんだけど。自宅に、時間のある時に連絡の上来てくれる?真奈ちゃんには内緒でね。』と。
そう言われてお店の営業後にお邪魔することにした。
さやかちゃんとひとしきり喋った後、今日子さんと務さんとテーブルに落ち着く。
「ねえ、真奈ちゃんにこのお店手伝ってたこと言ったわよね。」
「ちょとだけ開店当初にって言ったけど。」
「今日になって真奈ちゃんにバイト募集でほしかったのは務の役に立つ人間じゃなかったのかって聞かれたわ。素人じゃない人って意味で。」
「そう思ったんだ・・・・。」
「ねえ、真奈ちゃん、明るくて元気ってイメージを持ってたんだけど、どう?」
「このお店だとそうだけど、全然。本当に自己否定が激しくて。就活の失敗が人格否定につながって、友達が就職して仕事をバリバリやっておしゃれになって大人になっていくって、自分はダメだって思いが強くて、いろいろ言葉を使ってもダメみたい。もう一度就活なんてできないほど怯えてるし。ここは本当に気に入ってるけどそれも自分は今日子さんや務さんや商店街の人や実家の両親にまで甘やかされてるからだって。なんとなく生きていて、自分の世界は小さいって、外の世界には怖くて行けないって。」
「最初に飲みに行った時にそう言ってた。なんとか励まして元気が出たって言ってくれたんだけど。根が深いね、すぐに落ち込む。この間もぜんぜん。」
「この間って?」
今日子さんが聞いてくる。当然だ。
「あ・・・風邪ひいてお見舞いに行った日。」
「話したの?部屋で?」
「え~、まあ。元気になってお腹も空いてきたから一緒にって。すみません。報告しませんでした。」
「それはあとでね。で、どうだったの?」
「同じことのくり返し。僕の言葉は全く心に残らないって言われた。優しい言葉をかけてもらっても残らないって。だからそんな無駄なことはもうやめてほしいって。もったいないからって。今日子さんにもそう言っておくって。今日子さんから僕がバイト代を貰って、僕はいろいろと買い込んでいったから、そんなのもお金を使わせるだけだからって。」
「で、そのまま帰らないでしょう。」
「うん、また同じように伝えた。心を込めて。やさしいとありがとうは言われた。でも少し伝わったかな?昨日の夜、初めてメールをもらってお礼は言われたけど。そんなにすぐには無理かもって感じだなあ。」
「まあね、昨日は大分良かったと思うけど。」
「分からないね。」と務さん。
「もともとは明るいんだと思うけど。就活って厳しいから。友達のきれいなところばかり見て羨ましがってるって、そのうち気がつくと思うんだけど。」
「気長にそれを待つの?部屋に入ってどうしたの?」
「え、別に隣に座って大人しく泣き止むのを待って頭を撫でて慰めて。さやかちゃんと同じような感じです。」
「へえ、ある意味、ザ忍耐修行。」
「弱ってるところにはつけ込みません、もうお気づきでしょうから言いますが。」
「はぁ~、とりあえずプライベートと闇の部分は任せた。こっちは何としても梅雨のキャンペーンを成功させて役に立ったって思わせたいわね。」
「うん、そうだね。考えよう、いろいろ。」
今更だけど片思いがばれてしまった、というか暴露して認めた自分。
とりあえず忍耐修行ってことにしておいた。
まあ、大して後ろめたいことはしてないが。
2人と別れて真奈さんの部屋を回ってみる。
まだ明かりがついている。ここで見上げてると彼女の部屋のカーテンが開いて・・・なんて漫画の様なこともなく、警察に通報される前に自分のマンションに戻った。
彼女の部屋はとてもあっさりしている。
もっと可愛らしいものであふれていてもいいと思うけど。色味こそ明るいが部屋を飾るという点ではほとんど無駄がない。実用的なもののみ。
それでもこの間行った時に猫の写真が飾ってあった。あの里猫だった。
同じ思い出を持つ写真をもっと増やしたいと思った、料理でもいい、景色でもいい、でも出来れば二人の笑顔の写真を。
週末ちょっと仕事が忙しくてなかなか会いに行けなかった。
明日は月曜日。とりあえず月一の商店街掃除に行く。
様子を聞いて、公園に行こう。
月曜日に行って会えるのはそこしか思いつかない。
そして会えないようならメールして部屋か、外かで会えないだろうか?
何をするのと言われればそれまでだけど、月曜でも開いてるお店もある。駅向こうはしばらくなしとして・・・。
月曜日、務さんとさやかちゃんに会った。
特に変わりないようだ。
見せたいものがあるというので掃除の後に家に寄らせてもらう。
今日子さんに慰労されてコーヒーをいれてもらった。
そこには数枚のスケッチと漫画のようなものがあった。
手に取るとカエルの絵だった。
カラフルで擬人化してるけどメルヘンチックな女子受け、子供受けしそうな絵。
ただどの絵にもタイトルがついていた。
『虹を渡るかこちゃん』『晴れの日を願うかこちゃん』『渦巻と旅に出るかこちゃん』
どれも同じカエルが描かれている。緑ではない、ちょっと黒っぽいカエル。
物語は色黒を気にして引きこもっていたかこちゃんが雨の日にカラフルな雨粒に誘われて外に出て友達と虹を見上げるカエルの話。
どの絵も描いた日が書かれていた、サインも。
間違いない、あの日の『かこちゃん』だ。真奈さんの中の『かこちゃん』
「これ、真奈さんの絵ですよね。」
「そう、見たことあった?」
首を振る。ない。でも、この感動は自分が一番分かってる。
あの日、自分と別れて一日を振り返ったんだ、そして印象的なカエルを絵にした。
名前も同じにして。
2人が初めて会った日の事を先に今日子さんに聞かれた。
「ねえ、カエルを探して公園で出会ったって聞いたけど、確か。」
「はい、最初の出会いはそうです。ついでにカエルの名前も同じです。」
やっぱり隠せない。
「そう。」
ため息をついて二人は顔を見合わせる。
「ねえ、真奈ちゃんに子猫の写真あげたでしょう?プリントして飾って、名前までつけてるらしいわよ。聞いてみたけど教えてくれないのよ、内緒だって。佐野さんにならその内教えてくれるかもね。」
「猫はここで見つけたんだから『キノコ』とかじゃないんですか?」
「本当にそう思ってる?そんな名前だったら教えてくれるでしょう?」
「誰かさんの名前をもじってたりするかなって思ったんだけど。」
そんな・・・・、なんと呼ばれてるんだ?
「ボケボケしてると真奈ちゃんは若いからいいけど、佐野君はお爺さんになるわよ。」
「せめてオジサンでしょう。」
「これ見せたの内緒にしてる?どうする?」
「う~ん、成り行きで。自分で聞いてしまったら言いますから。」
「そう、じゃあよろしく。今日あたり公園にいるんじゃない?かこちゃんと誰かと偶然会った公園に。」
「言われなくても行きます。」
「いってらっしゃ~い。吉報待ってる。行き過ぎた時は控えめな報告でいいわ。でも明日はバイトに来てもらいたいからね。」
「何考えて、期待してるんですか?」
そう聞いてみたけど恥ずかしくて答えを聞く前に背中を向けた。
部屋に戻って着替える。
だから、掃除でちょっと汗をかいて、今日子さんに揶揄われ冷や汗もかいたからだってば。
自分に言い訳をしながらもちょっと焦る。
まだいて欲しい。あの公園に。あの場所でもう一度出会いたい。
ちょっとロマンティックな感じで。
直樹からメールが来た。
『今、暇?』
小学生に32歳の大人が聞かれる質問か、今日は月曜日だぞ。学校はどうした?
『一仕事終わり自宅にいる。夕方まで空いてるよ。』
そう返すと返事もすぐで。
『ねえ、パン姉来てるみたい。この間のベンチで待ち合わせ?』
『違う。』
『でも誰かを待ってる感じみたい。早く行かないと。』
『行く、10分以内。』
『本を出したから大丈夫だと思うけど、間に合わなければ引き止めてもらうから。』
『ありがとう。お礼は今度まとめてする。』
『いいから、早く。』
そのまま部屋を出る。
あのベンチから仕切り直しだ。
今日子さんに乗せられたわけじゃない。
小学生にここまで助けられて、行くしかないだろう、32歳。
公園に着いて、ベンチ寄りの出入り口から入る。
いた!かこちゃん発見以上の感激。いや、さすがにそれは、同じくらいか。
いや、やっぱりそれ以上だ。
「見つけた!あ、だめ、動かないで、そのままで。足をあげてもらえますか?」
同じように声をかけた。分かってるって背中が言ってる。
それでも少し足先をあげて付き合ってくれる。振り向きはしない、動かない。
ゆっくりと正面に行く。
「こんにちは、真奈さん。元気そうだね。」
同じように返事をされた。ありきたりのやり取り。
でもお互いに視線を向けたまま。
彼女が先にそらした。
ベンチのスペースを空けてくれたのでそこに落ち着いた。
どこかで直樹か誰かが観察してるかもしれないと思うと恥ずかしいのだが。
目の前の真奈さんに集中する。
前回同様コーヒーとパンを持ってきてるようだ。
本は閉じられて脇に置かれてる。
真奈さんは正面を見たまま、今日の仕事を聞いてくる。
商店街の掃除に参加しているというと驚いていた。
「最近はペットの家出もなく短時間の仕事をいくつか重ねてるんだ。真奈さんも元気に働いてるって今日子さんから聞いてたし。元気になってよかった。」
真奈さんの方を向いて話してもその視線は正面を向いたままだった。
その横顔に、初めて真奈さんからメールをもらえてうれしかったと伝えた。
「佐野さんは『すぐ』って言ったらどのくらいを考えますか?」
唐突に聞かれた。
ちらりとこっちを見た顔の表情は何かをこらえてるように見えた。
流れの読めない質問にどう答えたらいいのか考えてると、真奈さんが話をし始める。
自分の考えなんて求めてなかったんだろうと思いながら、ただ聞いていたのだが。
これはどう聞いても『言葉通りすぐに会いに来てくれると思ってたので待っていた』ということだよなあ。
「それは待ってくれてたってことですか?」
そう聞いたらすぐに否定されてしまった。そういうのではないと。
下を向きながら首をゆっくり振っている。耳が赤くなっている。
さすがにこの反応はわかり易い。
「そういうのではない・・・か。残念」
そう言いながらも、つい、笑顔になってしまう。
揶揄うようにそういうとこちらに顔を向けてくれた。
また失礼なことを言いました、と反省するような顔をしていたけどこちらの表情を見るとちょっと変な顔になった。
それからこの間酷いことを言ったと謝ってきた。きちんと謝りたかったと。
自分の言葉は暖かく優しく、真奈さんの心にちゃんと届いていると。
ありがとうとお礼を言った。
今日は真奈さんの考えてることがよくわかる。伝わる。
そういえば直樹が誰かを待っているみたいと教えてくれた時、不安と同時にそれを上回る期待もあった。自分が声をかけて正面からその表情を見た時、うぬぼれじゃなくて自分を待ってくれてたんだと思えた。
何かが変わったんだろうか?
相変わらずパンとコーヒーには手を付けず二人でベンチにいる。
読みかけの本も脇に置かれたまま。
「この後時間がありますか?」
「はい。大丈夫です。」
「じゃ、夕方までデートしませんか?もちろん僕とです。」
その後の一瞬一瞬の表情の変化がとても可愛かった。
ビックリして戸惑って嬉しそうになって、視線が逸れる瞬間は恥ずかしそうに赤くなっていた。外した視線を取り繕うように荷物をまとめ始める。それすら可愛くて。
多分自分も同じような顔をしていたかもしれない。公園を見まわして直樹を探す。
遠くにそれらしい小さな影が見える。
今日はたまたま休みだったんだろうか?
それとも全然違う子かもしれない。
でも、彼女が下を向いてる間に背伸びするように手をあげてマルを作る。
見えたかどうかは分からない。
もし直樹じゃないとしたら・・・それでもきちんと伝わるだろう。
ただここにこれ以上いても観察されるだけだ。
できれば場所を移したい。
「真奈さん、どこか行きたいところありますか?」
「あ、あります。商店街の渋いコーヒー屋さん。前から髭のおじいさんに誘われててもなかなか一人じゃ入りにくくて・・・・と今日休みでしょうか?」
「ああ、カフェ、ノーティーだと思います。パンメニューは真奈さんのところのパンを使ってますよね。」
「はい。」
「多分今日もやってますよ。営業時間が不定ですが今なら開いてるコアタイムです。」
時計を見ながら答える。
「行きますか?」
立ち上がり声をかけて促す。
いつか手を取って立ち上がらせたいけど、今日は観察眼鋭い誰かの目が気になって出せなかった。一緒に商店街を歩く。
月曜定休が多いのでいつもより静かだ。
朝早く一緒に掃除した店主たちは今頃自宅でくつろいでる事だろう。
・・・・・と思っていたのに。
懐かしいカウベルの鳴るノーティーのアンティーク調のドアを開けるといろんな視線がこっちを向いた。
なんだ、ちょっと古狸の吹き寄せみたいな・・・・・。
「あ、佐野君、商店街のアイドル連れて恋人気取りですか?」
「な、なんでこんな時間に集合してるんですか?僕は真奈さんが一度行きたい店があるって言ったので案内してきたんです。」
「え~、バイトでもないのに?」
「そんななんでもかんでも仕事じゃないです。」
「じゃあ、やっぱりプライベートデートじゃない。」
「あ、稲葉さん。」
奥の席に稲葉さんも見えた。僕より隣の真奈さんを見てる。
しょうがない、紹介するか。隠せることでもない、あのカエルフェアを知った今だし。
稲葉さんを呼んで紹介する。
「稲葉さん、かこちゃんを見つけるのを手伝ってくれた女の人です。今日子さんところでバイトしている真奈さん。」
「真奈さん、カエルのかこちゃんの飼い主さん、稲葉さんです。」
「あ、こんにちは。」
稲葉さんがそれを聞いて、真奈さんの顔と足下と僕に視線が往復する。
そういえば真奈さんはあの時と同じような膝下のワンピース姿。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、かこちゃんから噂は聞いてました。可愛くて、スラリと足がきれいだと。」
「稲葉さん、それセクハラです。」
全力でたしなめた。真奈さんが引いている。
そりゃそうだ、足下にまだ視線が行っている。
「あれ?佐野君がしきりにかこちゃんとその話題で盛り上がってたような気がするんですが。」
うっ、確かにそんな話をしたのは自分。それに初対面の真奈さんの前でもした気がする。
ちょっとだけ舞い上がっていたんだから許してほしい。
「それにお礼が言いたいから紹介してって言ったのに、笑ってはぐらかしたよね、商店街のパン屋さんじゃ知らなかったはずないよね。」
ぐっと近づいてこられる。
「本当に知らなったんです。今日子さんに若い女の子がバイトに入ったとは聞いてたけど、あの日までは会ったことなかったし・・・・・。」
ああ~、こんなやり取り聞かれたくない。
あのベンチで確かに自分は確認した。
親近感を持ってもらいたくて、パン屋のバイトの真奈さんですかって聞いた、知った。
そして稲葉さんには隠した。バレた~。
体を引くふりで後ろにいるはずの真奈さんを見ると・・・・いない。
すっかりマスターと商店街のおじさんの渦の中へ。
聞かれてないことにホッとした。
「ほら、稲葉さん、せっかくなんですからちゃんとお礼しないと。」
稲葉さんの視線を真奈さんの方へ戻す。
嘘はつき通そう。小さなタイミングの違いだ。
真奈さんが空いてるソファに荷物を置いていた。
そのソファに座り真奈さんが解放されて戻ってくるのを待つ。
まだまだ次の仕事までは時間があるし。
しばらくして真奈さんが戻ってきた。
後ろに稲葉さんがくっついてるのはしょうがない。
何故か三人で座り話をする。稲葉さんは自慢のペットを紹介したいらしいが。
「稲葉さん、タランチュラとかカイマンとか、女性受けしそうなペットからかけ離れてます。」
「そうかなあ、かわいいんだけど。」
さすがにかこちゃんでドン引きしていた真奈さんは珍ペットが好きという特殊嗜好もなかった。
「かこちゃんは元気ですか?家出してませんか?」
それでもお礼を言われてうれしそうに話している。
隣でにやけた稲葉さんの顔はかこちゃんにも似ている気がする。
しばらくしてマスターにコーヒーをご馳走になりお店を後にする。
一緒に並んで真奈さんの部屋に向かう。送っていくだけだ。
また部屋に入れてもらえるのだろうか?もう少し話をしたい、一緒にいたい。
ついでに聞かれた。噂を知っているかと。
何のことか分からなくて、何?って答えた。
しばらく返信はなかった。
午後その返信が来た。
『知ってたのね。月曜日、真奈ちゃんが男の人と会ってたのを。その後送ってくれたって言ってたわ。偶然って怖い。その人はうちのお客さんで最初から真奈ちゃんに声かけてたけど本人がピンと来てなかったし、深く考えずにランチの誘いに行ったって言ってた。気まずくなってもう二度と会わないし、男の人がパンを買いに来ることもないだろうって、逆にお得意さんをなくしてごめんなさいって謝られたくらいの関係、以上。』
ありがたいことだった。もう二度と会わないと言わせるくらいなら大歓迎。
とりあえず良かった。
次の日、また今日子さんからメールが来た。
『ちょっと話があるんだけど。自宅に、時間のある時に連絡の上来てくれる?真奈ちゃんには内緒でね。』と。
そう言われてお店の営業後にお邪魔することにした。
さやかちゃんとひとしきり喋った後、今日子さんと務さんとテーブルに落ち着く。
「ねえ、真奈ちゃんにこのお店手伝ってたこと言ったわよね。」
「ちょとだけ開店当初にって言ったけど。」
「今日になって真奈ちゃんにバイト募集でほしかったのは務の役に立つ人間じゃなかったのかって聞かれたわ。素人じゃない人って意味で。」
「そう思ったんだ・・・・。」
「ねえ、真奈ちゃん、明るくて元気ってイメージを持ってたんだけど、どう?」
「このお店だとそうだけど、全然。本当に自己否定が激しくて。就活の失敗が人格否定につながって、友達が就職して仕事をバリバリやっておしゃれになって大人になっていくって、自分はダメだって思いが強くて、いろいろ言葉を使ってもダメみたい。もう一度就活なんてできないほど怯えてるし。ここは本当に気に入ってるけどそれも自分は今日子さんや務さんや商店街の人や実家の両親にまで甘やかされてるからだって。なんとなく生きていて、自分の世界は小さいって、外の世界には怖くて行けないって。」
「最初に飲みに行った時にそう言ってた。なんとか励まして元気が出たって言ってくれたんだけど。根が深いね、すぐに落ち込む。この間もぜんぜん。」
「この間って?」
今日子さんが聞いてくる。当然だ。
「あ・・・風邪ひいてお見舞いに行った日。」
「話したの?部屋で?」
「え~、まあ。元気になってお腹も空いてきたから一緒にって。すみません。報告しませんでした。」
「それはあとでね。で、どうだったの?」
「同じことのくり返し。僕の言葉は全く心に残らないって言われた。優しい言葉をかけてもらっても残らないって。だからそんな無駄なことはもうやめてほしいって。もったいないからって。今日子さんにもそう言っておくって。今日子さんから僕がバイト代を貰って、僕はいろいろと買い込んでいったから、そんなのもお金を使わせるだけだからって。」
「で、そのまま帰らないでしょう。」
「うん、また同じように伝えた。心を込めて。やさしいとありがとうは言われた。でも少し伝わったかな?昨日の夜、初めてメールをもらってお礼は言われたけど。そんなにすぐには無理かもって感じだなあ。」
「まあね、昨日は大分良かったと思うけど。」
「分からないね。」と務さん。
「もともとは明るいんだと思うけど。就活って厳しいから。友達のきれいなところばかり見て羨ましがってるって、そのうち気がつくと思うんだけど。」
「気長にそれを待つの?部屋に入ってどうしたの?」
「え、別に隣に座って大人しく泣き止むのを待って頭を撫でて慰めて。さやかちゃんと同じような感じです。」
「へえ、ある意味、ザ忍耐修行。」
「弱ってるところにはつけ込みません、もうお気づきでしょうから言いますが。」
「はぁ~、とりあえずプライベートと闇の部分は任せた。こっちは何としても梅雨のキャンペーンを成功させて役に立ったって思わせたいわね。」
「うん、そうだね。考えよう、いろいろ。」
今更だけど片思いがばれてしまった、というか暴露して認めた自分。
とりあえず忍耐修行ってことにしておいた。
まあ、大して後ろめたいことはしてないが。
2人と別れて真奈さんの部屋を回ってみる。
まだ明かりがついている。ここで見上げてると彼女の部屋のカーテンが開いて・・・なんて漫画の様なこともなく、警察に通報される前に自分のマンションに戻った。
彼女の部屋はとてもあっさりしている。
もっと可愛らしいものであふれていてもいいと思うけど。色味こそ明るいが部屋を飾るという点ではほとんど無駄がない。実用的なもののみ。
それでもこの間行った時に猫の写真が飾ってあった。あの里猫だった。
同じ思い出を持つ写真をもっと増やしたいと思った、料理でもいい、景色でもいい、でも出来れば二人の笑顔の写真を。
週末ちょっと仕事が忙しくてなかなか会いに行けなかった。
明日は月曜日。とりあえず月一の商店街掃除に行く。
様子を聞いて、公園に行こう。
月曜日に行って会えるのはそこしか思いつかない。
そして会えないようならメールして部屋か、外かで会えないだろうか?
何をするのと言われればそれまでだけど、月曜でも開いてるお店もある。駅向こうはしばらくなしとして・・・。
月曜日、務さんとさやかちゃんに会った。
特に変わりないようだ。
見せたいものがあるというので掃除の後に家に寄らせてもらう。
今日子さんに慰労されてコーヒーをいれてもらった。
そこには数枚のスケッチと漫画のようなものがあった。
手に取るとカエルの絵だった。
カラフルで擬人化してるけどメルヘンチックな女子受け、子供受けしそうな絵。
ただどの絵にもタイトルがついていた。
『虹を渡るかこちゃん』『晴れの日を願うかこちゃん』『渦巻と旅に出るかこちゃん』
どれも同じカエルが描かれている。緑ではない、ちょっと黒っぽいカエル。
物語は色黒を気にして引きこもっていたかこちゃんが雨の日にカラフルな雨粒に誘われて外に出て友達と虹を見上げるカエルの話。
どの絵も描いた日が書かれていた、サインも。
間違いない、あの日の『かこちゃん』だ。真奈さんの中の『かこちゃん』
「これ、真奈さんの絵ですよね。」
「そう、見たことあった?」
首を振る。ない。でも、この感動は自分が一番分かってる。
あの日、自分と別れて一日を振り返ったんだ、そして印象的なカエルを絵にした。
名前も同じにして。
2人が初めて会った日の事を先に今日子さんに聞かれた。
「ねえ、カエルを探して公園で出会ったって聞いたけど、確か。」
「はい、最初の出会いはそうです。ついでにカエルの名前も同じです。」
やっぱり隠せない。
「そう。」
ため息をついて二人は顔を見合わせる。
「ねえ、真奈ちゃんに子猫の写真あげたでしょう?プリントして飾って、名前までつけてるらしいわよ。聞いてみたけど教えてくれないのよ、内緒だって。佐野さんにならその内教えてくれるかもね。」
「猫はここで見つけたんだから『キノコ』とかじゃないんですか?」
「本当にそう思ってる?そんな名前だったら教えてくれるでしょう?」
「誰かさんの名前をもじってたりするかなって思ったんだけど。」
そんな・・・・、なんと呼ばれてるんだ?
「ボケボケしてると真奈ちゃんは若いからいいけど、佐野君はお爺さんになるわよ。」
「せめてオジサンでしょう。」
「これ見せたの内緒にしてる?どうする?」
「う~ん、成り行きで。自分で聞いてしまったら言いますから。」
「そう、じゃあよろしく。今日あたり公園にいるんじゃない?かこちゃんと誰かと偶然会った公園に。」
「言われなくても行きます。」
「いってらっしゃ~い。吉報待ってる。行き過ぎた時は控えめな報告でいいわ。でも明日はバイトに来てもらいたいからね。」
「何考えて、期待してるんですか?」
そう聞いてみたけど恥ずかしくて答えを聞く前に背中を向けた。
部屋に戻って着替える。
だから、掃除でちょっと汗をかいて、今日子さんに揶揄われ冷や汗もかいたからだってば。
自分に言い訳をしながらもちょっと焦る。
まだいて欲しい。あの公園に。あの場所でもう一度出会いたい。
ちょっとロマンティックな感じで。
直樹からメールが来た。
『今、暇?』
小学生に32歳の大人が聞かれる質問か、今日は月曜日だぞ。学校はどうした?
『一仕事終わり自宅にいる。夕方まで空いてるよ。』
そう返すと返事もすぐで。
『ねえ、パン姉来てるみたい。この間のベンチで待ち合わせ?』
『違う。』
『でも誰かを待ってる感じみたい。早く行かないと。』
『行く、10分以内。』
『本を出したから大丈夫だと思うけど、間に合わなければ引き止めてもらうから。』
『ありがとう。お礼は今度まとめてする。』
『いいから、早く。』
そのまま部屋を出る。
あのベンチから仕切り直しだ。
今日子さんに乗せられたわけじゃない。
小学生にここまで助けられて、行くしかないだろう、32歳。
公園に着いて、ベンチ寄りの出入り口から入る。
いた!かこちゃん発見以上の感激。いや、さすがにそれは、同じくらいか。
いや、やっぱりそれ以上だ。
「見つけた!あ、だめ、動かないで、そのままで。足をあげてもらえますか?」
同じように声をかけた。分かってるって背中が言ってる。
それでも少し足先をあげて付き合ってくれる。振り向きはしない、動かない。
ゆっくりと正面に行く。
「こんにちは、真奈さん。元気そうだね。」
同じように返事をされた。ありきたりのやり取り。
でもお互いに視線を向けたまま。
彼女が先にそらした。
ベンチのスペースを空けてくれたのでそこに落ち着いた。
どこかで直樹か誰かが観察してるかもしれないと思うと恥ずかしいのだが。
目の前の真奈さんに集中する。
前回同様コーヒーとパンを持ってきてるようだ。
本は閉じられて脇に置かれてる。
真奈さんは正面を見たまま、今日の仕事を聞いてくる。
商店街の掃除に参加しているというと驚いていた。
「最近はペットの家出もなく短時間の仕事をいくつか重ねてるんだ。真奈さんも元気に働いてるって今日子さんから聞いてたし。元気になってよかった。」
真奈さんの方を向いて話してもその視線は正面を向いたままだった。
その横顔に、初めて真奈さんからメールをもらえてうれしかったと伝えた。
「佐野さんは『すぐ』って言ったらどのくらいを考えますか?」
唐突に聞かれた。
ちらりとこっちを見た顔の表情は何かをこらえてるように見えた。
流れの読めない質問にどう答えたらいいのか考えてると、真奈さんが話をし始める。
自分の考えなんて求めてなかったんだろうと思いながら、ただ聞いていたのだが。
これはどう聞いても『言葉通りすぐに会いに来てくれると思ってたので待っていた』ということだよなあ。
「それは待ってくれてたってことですか?」
そう聞いたらすぐに否定されてしまった。そういうのではないと。
下を向きながら首をゆっくり振っている。耳が赤くなっている。
さすがにこの反応はわかり易い。
「そういうのではない・・・か。残念」
そう言いながらも、つい、笑顔になってしまう。
揶揄うようにそういうとこちらに顔を向けてくれた。
また失礼なことを言いました、と反省するような顔をしていたけどこちらの表情を見るとちょっと変な顔になった。
それからこの間酷いことを言ったと謝ってきた。きちんと謝りたかったと。
自分の言葉は暖かく優しく、真奈さんの心にちゃんと届いていると。
ありがとうとお礼を言った。
今日は真奈さんの考えてることがよくわかる。伝わる。
そういえば直樹が誰かを待っているみたいと教えてくれた時、不安と同時にそれを上回る期待もあった。自分が声をかけて正面からその表情を見た時、うぬぼれじゃなくて自分を待ってくれてたんだと思えた。
何かが変わったんだろうか?
相変わらずパンとコーヒーには手を付けず二人でベンチにいる。
読みかけの本も脇に置かれたまま。
「この後時間がありますか?」
「はい。大丈夫です。」
「じゃ、夕方までデートしませんか?もちろん僕とです。」
その後の一瞬一瞬の表情の変化がとても可愛かった。
ビックリして戸惑って嬉しそうになって、視線が逸れる瞬間は恥ずかしそうに赤くなっていた。外した視線を取り繕うように荷物をまとめ始める。それすら可愛くて。
多分自分も同じような顔をしていたかもしれない。公園を見まわして直樹を探す。
遠くにそれらしい小さな影が見える。
今日はたまたま休みだったんだろうか?
それとも全然違う子かもしれない。
でも、彼女が下を向いてる間に背伸びするように手をあげてマルを作る。
見えたかどうかは分からない。
もし直樹じゃないとしたら・・・それでもきちんと伝わるだろう。
ただここにこれ以上いても観察されるだけだ。
できれば場所を移したい。
「真奈さん、どこか行きたいところありますか?」
「あ、あります。商店街の渋いコーヒー屋さん。前から髭のおじいさんに誘われててもなかなか一人じゃ入りにくくて・・・・と今日休みでしょうか?」
「ああ、カフェ、ノーティーだと思います。パンメニューは真奈さんのところのパンを使ってますよね。」
「はい。」
「多分今日もやってますよ。営業時間が不定ですが今なら開いてるコアタイムです。」
時計を見ながら答える。
「行きますか?」
立ち上がり声をかけて促す。
いつか手を取って立ち上がらせたいけど、今日は観察眼鋭い誰かの目が気になって出せなかった。一緒に商店街を歩く。
月曜定休が多いのでいつもより静かだ。
朝早く一緒に掃除した店主たちは今頃自宅でくつろいでる事だろう。
・・・・・と思っていたのに。
懐かしいカウベルの鳴るノーティーのアンティーク調のドアを開けるといろんな視線がこっちを向いた。
なんだ、ちょっと古狸の吹き寄せみたいな・・・・・。
「あ、佐野君、商店街のアイドル連れて恋人気取りですか?」
「な、なんでこんな時間に集合してるんですか?僕は真奈さんが一度行きたい店があるって言ったので案内してきたんです。」
「え~、バイトでもないのに?」
「そんななんでもかんでも仕事じゃないです。」
「じゃあ、やっぱりプライベートデートじゃない。」
「あ、稲葉さん。」
奥の席に稲葉さんも見えた。僕より隣の真奈さんを見てる。
しょうがない、紹介するか。隠せることでもない、あのカエルフェアを知った今だし。
稲葉さんを呼んで紹介する。
「稲葉さん、かこちゃんを見つけるのを手伝ってくれた女の人です。今日子さんところでバイトしている真奈さん。」
「真奈さん、カエルのかこちゃんの飼い主さん、稲葉さんです。」
「あ、こんにちは。」
稲葉さんがそれを聞いて、真奈さんの顔と足下と僕に視線が往復する。
そういえば真奈さんはあの時と同じような膝下のワンピース姿。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、かこちゃんから噂は聞いてました。可愛くて、スラリと足がきれいだと。」
「稲葉さん、それセクハラです。」
全力でたしなめた。真奈さんが引いている。
そりゃそうだ、足下にまだ視線が行っている。
「あれ?佐野君がしきりにかこちゃんとその話題で盛り上がってたような気がするんですが。」
うっ、確かにそんな話をしたのは自分。それに初対面の真奈さんの前でもした気がする。
ちょっとだけ舞い上がっていたんだから許してほしい。
「それにお礼が言いたいから紹介してって言ったのに、笑ってはぐらかしたよね、商店街のパン屋さんじゃ知らなかったはずないよね。」
ぐっと近づいてこられる。
「本当に知らなったんです。今日子さんに若い女の子がバイトに入ったとは聞いてたけど、あの日までは会ったことなかったし・・・・・。」
ああ~、こんなやり取り聞かれたくない。
あのベンチで確かに自分は確認した。
親近感を持ってもらいたくて、パン屋のバイトの真奈さんですかって聞いた、知った。
そして稲葉さんには隠した。バレた~。
体を引くふりで後ろにいるはずの真奈さんを見ると・・・・いない。
すっかりマスターと商店街のおじさんの渦の中へ。
聞かれてないことにホッとした。
「ほら、稲葉さん、せっかくなんですからちゃんとお礼しないと。」
稲葉さんの視線を真奈さんの方へ戻す。
嘘はつき通そう。小さなタイミングの違いだ。
真奈さんが空いてるソファに荷物を置いていた。
そのソファに座り真奈さんが解放されて戻ってくるのを待つ。
まだまだ次の仕事までは時間があるし。
しばらくして真奈さんが戻ってきた。
後ろに稲葉さんがくっついてるのはしょうがない。
何故か三人で座り話をする。稲葉さんは自慢のペットを紹介したいらしいが。
「稲葉さん、タランチュラとかカイマンとか、女性受けしそうなペットからかけ離れてます。」
「そうかなあ、かわいいんだけど。」
さすがにかこちゃんでドン引きしていた真奈さんは珍ペットが好きという特殊嗜好もなかった。
「かこちゃんは元気ですか?家出してませんか?」
それでもお礼を言われてうれしそうに話している。
隣でにやけた稲葉さんの顔はかこちゃんにも似ている気がする。
しばらくしてマスターにコーヒーをご馳走になりお店を後にする。
一緒に並んで真奈さんの部屋に向かう。送っていくだけだ。
また部屋に入れてもらえるのだろうか?もう少し話をしたい、一緒にいたい。
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