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1 始まりのきっかけは
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今日も多くの人がビルの入り口に吸い込まれていく。
都内の大きな駅周辺には、同じようなビルがにょきにょき建っている。
毎日毎日ぼんやりした頭でも、ちゃんと自分の席までたどり着ける。
私の会社のあるフロアは27階。
高層階である。
それでも上には他にもたくさんの会社が入っている。
10フロアごとに区切られたエレベーターで一気に上昇して、21階から少しづつ人が降りていく。
誰の背中にも『憂鬱』と書かれていそう。
私と同じように、惰性でここ会社までたどり着いた・・・・みたいなスーツの群れだ。
なんだかそんな事を考えたりしながら上を見てる。
誰もが回数表示をぼんやり見上げている状態だ。
ポンッ。
優しく到着音が響くと前にいた人々と一緒にエレベーターから降りる。
実際には何度か乗り合わせてるだろうけど、他の会社の人のことは全く知らない。
それに同じ会社の人についても有名な人しか知らないから。
同じように私だってほとんど無名。
目立たない女子社員の中のひとり。
目立つのは見目麗しい人、成績のいい人、問題のある人、あとは・・・かなり個性的な人。
そう目の前をふらふら歩いてる人が最後のくくりの中にいる人だ。
細い体は完全に洋服の中に入ってるという感じだ。
システム部のひとり。
仕事の時からかけてるメガネはブルーライト対応だろう。
時々外してることもあるがたいていは顔の上か、首元にある。
今はどうだろうか、後ろからだと分からないけど。
スーツを着ている社員の中で見ると本当に異様。
ジーンズにくたびれた靴に、もっさりとしたパーカー。
それだって洗ってるのは分かる、色が褪せてるから。
でも干し方にもう少し気を遣えばいいと思う。
肩に洗濯ばさみの後が残ってる。
明らかな型崩れがみられるのは、干し方に問題があるんだろう。
昨日取り替えてハンガーから直接取って着たのだろうと思われる。
いつも俯き加減の猫背で、顔もボサボサの髪が邪魔してよく見えない。
その変わった雰囲気から誰も期待はしてないと思う。
それでも知識とスキルはすごいらしい。
よくわからないけど最終的にトラブルを解決するのはその人らしい。
七尾 隆さん。名前はわりと普通なのだ。
以上が『変な人』以外でその人について知る事だった。
その個性的な姿は、先にシステム部の部屋に入って消えた。
私はそのまま奥の自分の課まで歩く。
ちょっとおかしな生き物を見つけられたような、そんな小さな喜びを感じながら歩く。
「おはようございます。」
すっかり頭が働いて目も覚めて、元気よく挨拶して自分の席を目指す。
私の所属は栄養管理部門。
大学では栄養学専門の知識と資格を取った。
いろんな働き方がある中で私は普通の会社員になった。
会社の扱う商品は治療食に特化した宅配お弁当から、サプリメントまで。
病院や地域医療と連携したサポートからスポーツジムと提携したり、もっと若い世代に向け商品を開発して、企画イベントまでやったりしている。
いろいろ販路を広げて現在模索状態とも言える会社である。
食は人間の基本。
出来るだけそこは充実させたいだろうけど、病気や、自己実現やそれぞれの目的があって欲望のままに取っていいというものではない。
特に制限された食事しかとれない人は多い。
とらなきゃいけない人も多いはず。
偉そうなことを言っても、私もその一人。
知識があるからと言って、自分のコントロールが完璧にできるかどうかは別問題だ。
「先輩、また乗ってる量が増えてませんか?」
隣の沙良ちゃんにぶにっと腰の肉をつままれた。
正確にはスカートの上に乗ってしまっている肉だった。
一つ下の後輩の癖に最初から遠慮なく私に接してくる。
完璧なスタイルを維持してる後輩沙良ちゃんは今日も容赦ない。
「痛いっ。」
思わず身をよじる。
「もう、すず先輩、まだ立ち直れないんですか?」
「まだです。まだ1週間です。悲しみに沈んでもいいでしょう。」
何故か丁寧語で返してしまう。
「沈むのは勝手ですが内臓も脂肪の中に沈みそうです。はっきり言ってやばいです。」
人の体に対しても厳しい、そんなハッキリ言わなくても。
私を見ながら立ち上がると体重計を持ってきた。
「はい、すず先輩、どうぞ。」
椅子の横に体重計を置かれた。
目盛りはゼロになる。
ふたりで見つめることしばし。
「いい加減現実を見てください。なんで勝手に失恋して毎回毎回そんなに丸くなれるんですか?」
とうとう声が大きくなった。隣の課まで響き渡りそうです。
恥ずかしい。
はい、沙良ちゃんの言う通り、間違いは一つもありません。
だって泣きながら愚痴ったのは私だから。
いろんな人にぼんやりと好意を抱き、思ったのと違う、彼女がいた、既婚者だった・・・などなどと勝手に失恋モードで落ち込んでるのは私です。
『勝手に失恋病』と言われてます。
そして、形としては失恋だから落ち込んでるはずなのに、私は食べながら悲しむ方のタイプで、隣の沙良ちゃんが知ってるだけでも4キロ・・・・ちょっとくらいは太ってる。
入社してからだともっと。
本当は標準だったはずなのに。
今は柔らかそうな感じです。
でも決してそうおデブではないつもり。
たとえ少しくらい腰のお肉はつまめるとしても・・・・。
「はい、どうぞ。」
消えた液晶をもう一度ゼロにして私に目で乗れと命じる。
靴を脱いで乗ってみたけど、液晶に恐ろしい数字が並んだ気がして、確定する前に怖くて飛び降りた。
「はい、来週からの試食係決定です。良かったですね。食費が浮きますよ。」
そう言って私にチケットと記録用紙を回してくる。
治療食や宅配弁当などの定期購入してもらう商品は、季節によってメニューを変えるのは当たり前。
勿論商品として出す前に、社内でもきちんと味わい一つ一つ感想を記入して、かつ、2週間の初めと終わりに血液検査もあり、体重と血圧も毎日測定して提出することになっている。一つのデータとして社員に協力させているのだ。
それは公平に輪番となっている。
ただ、それは美味しくないのだ。はっきり言って。
塩分が控えめだし、ヘルシー過ぎて。
元気で健康で若い私には・・・・、食事が楽しみな、もはやそれしか楽しみのない私にとっては・・・・・苦行・・・。
社員で順々に回してるこの2週間の『試食係』
好評なはずはない。
喜んでるのは働き盛りのサラリーマンの奥さんだけ。
夕食を作らなくていいから楽が出来るし、その間は節制するのでお酒代などもかからない。昼も会社でそれを食べることになってるので、夕方とお昼の分のお小遣いを減らせるのだ。結果、確実に痩せる。
私たちは2週間だけど、さすがに営業などの付き合い、接待がある課の人々は1週間でお役御免になっている。
それでも真面目にやればそれなりに健康になる。
いつもがいかに不健康か分かるってもので。
もちろん私はそこまでではない。
ただ痩せれらる。血液検査はまだ問題ないし、血圧も然り。
ただ、確実に体重は落ちる。
この用紙一式持ってると言うことは・・・・。
「沙良ちゃん、来週からは沙良ちゃんが試食当番だったの?」
「はい、そうです。」
「でも先輩のこの自堕落ぶりに、私は全面的に協力します。使ってください、このチケット。」
嬉しそうな顔で、机に置かれた一式を更に押し出してくる。
「2週間で3キロは落としましょう。そうしたらご褒美に美味しいものを食べに行きましょう。」
満面の笑顔で言われた。
「別に、今痩せたいわけじゃ・・・・。」
「じゃあ、いつ痩せます?」
控えめに反論したらかぶせるように言われた。
痩せなきゃいけない前提?
せめて太らないでいたら、ちょっとふんわりした優しい感じの私じゃダメなの?
「ダメです。」
心の声に答えてくれたらしい。
「すず先輩、ね、ちゃんと自分に自信を取り戻して、今度こそいい恋愛しましょう!」
私は自信を失ってたの?
別にそんな話になってるつもりはない。
この間もちょっと愚痴っただけなのに。
毎回毎回呆れるような目をしながらも聞いてくれる沙良ちゃん。
それに痩せたからって・・・・、別に。
体重計をさっさと片付けられた。
机の上のチケットを見る。
そして自分の腰の肉をつまむ。
スカートをはくのに上を見ながら気合を入れる毎日。
さすがに・・・・。
チケットを手に取り、後で申請手続きをしようと思った。
半分は会社のお昼に、半分は自宅に配送してもらう。
医務室で採血、診察も受けなくてはいけない。
「沙良ちゃん、2週間後の食事は奢り?」
「先輩、意外に図々しいです。浮いた食費で奢って欲しいくらいなのに。でもそれでやる気が出るなら。5キロ痩せたら奢ります。どうですか?やる気出ますよね。」
二週間で5キロ。
それはちょっと厳しい。
食事だけでどうにかなるの?
運動しないとダメじゃない?
「結構お父さんたちは痩せてるみたいです。頑張って記録を出してください。」
だから、それはメタボで不摂生してるオジさんサラリーマンの話でしょう?
私にはそんなに余分なものはないはず・・・まだ。
ん?1週間で5キロ落としてるの?
普段どんだけ食べてるの?
やばいのはそっちです。
「じゃあ、約束。2週間で5キロ。奢り。」
「いいですよ。お店探しておきます。盛大にお祝いするので他の人にも声かけますね。」
「えっ、何で。ランチでいい。他の人はいい。」
「ダメです。集まった人皆に披露されると思うと一層やる気が出るじゃないですか。」
「せっかく痩せたのに美味しいものとお酒でまたすぐにリバウンド来ちゃう。」
「先輩、やる気は認めます。リバウンドするほど飲ませませんし、食べさせませんし。ちゃんと見張ってますから大丈夫です。2週間の間も当然チェックします。結果が楽しみですね。」
凄い『飴と鞭』とさらに『鞭』持参の食事会まで考えてる。
やる気を出すしかない、やる。
痩せる。5キロ。2週間。
早速パソコンで来週からの2週間の手配をした。
金曜日、忘れないように医務室に行くこと。
卓上カレンダーに予定を書き込んだ。
ちょっとフライングで金曜日から二週間と二日にしてしまおう。
頑張ればいい、頑張る。
その日は血液検査があるので朝抜きで来ないといけない。
しょんぼりとした気分だ。
電車の中で貧血で倒れたらどうする?
なんて、健康な私が一食抜いても貧血にはなりません。
空腹で倒れることはあるかも。
食費が浮くことを喜ぼう。
痩せた自分を想像しよう。
浮いたお金で似合う服を買いに行こう、ラインのきれいな服を買いに行こう。
5キロ痩せたら、おしゃれも楽しそう。
前向きに行こう。
せめてそう思ってやる気を出そう。
都内の大きな駅周辺には、同じようなビルがにょきにょき建っている。
毎日毎日ぼんやりした頭でも、ちゃんと自分の席までたどり着ける。
私の会社のあるフロアは27階。
高層階である。
それでも上には他にもたくさんの会社が入っている。
10フロアごとに区切られたエレベーターで一気に上昇して、21階から少しづつ人が降りていく。
誰の背中にも『憂鬱』と書かれていそう。
私と同じように、惰性でここ会社までたどり着いた・・・・みたいなスーツの群れだ。
なんだかそんな事を考えたりしながら上を見てる。
誰もが回数表示をぼんやり見上げている状態だ。
ポンッ。
優しく到着音が響くと前にいた人々と一緒にエレベーターから降りる。
実際には何度か乗り合わせてるだろうけど、他の会社の人のことは全く知らない。
それに同じ会社の人についても有名な人しか知らないから。
同じように私だってほとんど無名。
目立たない女子社員の中のひとり。
目立つのは見目麗しい人、成績のいい人、問題のある人、あとは・・・かなり個性的な人。
そう目の前をふらふら歩いてる人が最後のくくりの中にいる人だ。
細い体は完全に洋服の中に入ってるという感じだ。
システム部のひとり。
仕事の時からかけてるメガネはブルーライト対応だろう。
時々外してることもあるがたいていは顔の上か、首元にある。
今はどうだろうか、後ろからだと分からないけど。
スーツを着ている社員の中で見ると本当に異様。
ジーンズにくたびれた靴に、もっさりとしたパーカー。
それだって洗ってるのは分かる、色が褪せてるから。
でも干し方にもう少し気を遣えばいいと思う。
肩に洗濯ばさみの後が残ってる。
明らかな型崩れがみられるのは、干し方に問題があるんだろう。
昨日取り替えてハンガーから直接取って着たのだろうと思われる。
いつも俯き加減の猫背で、顔もボサボサの髪が邪魔してよく見えない。
その変わった雰囲気から誰も期待はしてないと思う。
それでも知識とスキルはすごいらしい。
よくわからないけど最終的にトラブルを解決するのはその人らしい。
七尾 隆さん。名前はわりと普通なのだ。
以上が『変な人』以外でその人について知る事だった。
その個性的な姿は、先にシステム部の部屋に入って消えた。
私はそのまま奥の自分の課まで歩く。
ちょっとおかしな生き物を見つけられたような、そんな小さな喜びを感じながら歩く。
「おはようございます。」
すっかり頭が働いて目も覚めて、元気よく挨拶して自分の席を目指す。
私の所属は栄養管理部門。
大学では栄養学専門の知識と資格を取った。
いろんな働き方がある中で私は普通の会社員になった。
会社の扱う商品は治療食に特化した宅配お弁当から、サプリメントまで。
病院や地域医療と連携したサポートからスポーツジムと提携したり、もっと若い世代に向け商品を開発して、企画イベントまでやったりしている。
いろいろ販路を広げて現在模索状態とも言える会社である。
食は人間の基本。
出来るだけそこは充実させたいだろうけど、病気や、自己実現やそれぞれの目的があって欲望のままに取っていいというものではない。
特に制限された食事しかとれない人は多い。
とらなきゃいけない人も多いはず。
偉そうなことを言っても、私もその一人。
知識があるからと言って、自分のコントロールが完璧にできるかどうかは別問題だ。
「先輩、また乗ってる量が増えてませんか?」
隣の沙良ちゃんにぶにっと腰の肉をつままれた。
正確にはスカートの上に乗ってしまっている肉だった。
一つ下の後輩の癖に最初から遠慮なく私に接してくる。
完璧なスタイルを維持してる後輩沙良ちゃんは今日も容赦ない。
「痛いっ。」
思わず身をよじる。
「もう、すず先輩、まだ立ち直れないんですか?」
「まだです。まだ1週間です。悲しみに沈んでもいいでしょう。」
何故か丁寧語で返してしまう。
「沈むのは勝手ですが内臓も脂肪の中に沈みそうです。はっきり言ってやばいです。」
人の体に対しても厳しい、そんなハッキリ言わなくても。
私を見ながら立ち上がると体重計を持ってきた。
「はい、すず先輩、どうぞ。」
椅子の横に体重計を置かれた。
目盛りはゼロになる。
ふたりで見つめることしばし。
「いい加減現実を見てください。なんで勝手に失恋して毎回毎回そんなに丸くなれるんですか?」
とうとう声が大きくなった。隣の課まで響き渡りそうです。
恥ずかしい。
はい、沙良ちゃんの言う通り、間違いは一つもありません。
だって泣きながら愚痴ったのは私だから。
いろんな人にぼんやりと好意を抱き、思ったのと違う、彼女がいた、既婚者だった・・・などなどと勝手に失恋モードで落ち込んでるのは私です。
『勝手に失恋病』と言われてます。
そして、形としては失恋だから落ち込んでるはずなのに、私は食べながら悲しむ方のタイプで、隣の沙良ちゃんが知ってるだけでも4キロ・・・・ちょっとくらいは太ってる。
入社してからだともっと。
本当は標準だったはずなのに。
今は柔らかそうな感じです。
でも決してそうおデブではないつもり。
たとえ少しくらい腰のお肉はつまめるとしても・・・・。
「はい、どうぞ。」
消えた液晶をもう一度ゼロにして私に目で乗れと命じる。
靴を脱いで乗ってみたけど、液晶に恐ろしい数字が並んだ気がして、確定する前に怖くて飛び降りた。
「はい、来週からの試食係決定です。良かったですね。食費が浮きますよ。」
そう言って私にチケットと記録用紙を回してくる。
治療食や宅配弁当などの定期購入してもらう商品は、季節によってメニューを変えるのは当たり前。
勿論商品として出す前に、社内でもきちんと味わい一つ一つ感想を記入して、かつ、2週間の初めと終わりに血液検査もあり、体重と血圧も毎日測定して提出することになっている。一つのデータとして社員に協力させているのだ。
それは公平に輪番となっている。
ただ、それは美味しくないのだ。はっきり言って。
塩分が控えめだし、ヘルシー過ぎて。
元気で健康で若い私には・・・・、食事が楽しみな、もはやそれしか楽しみのない私にとっては・・・・・苦行・・・。
社員で順々に回してるこの2週間の『試食係』
好評なはずはない。
喜んでるのは働き盛りのサラリーマンの奥さんだけ。
夕食を作らなくていいから楽が出来るし、その間は節制するのでお酒代などもかからない。昼も会社でそれを食べることになってるので、夕方とお昼の分のお小遣いを減らせるのだ。結果、確実に痩せる。
私たちは2週間だけど、さすがに営業などの付き合い、接待がある課の人々は1週間でお役御免になっている。
それでも真面目にやればそれなりに健康になる。
いつもがいかに不健康か分かるってもので。
もちろん私はそこまでではない。
ただ痩せれらる。血液検査はまだ問題ないし、血圧も然り。
ただ、確実に体重は落ちる。
この用紙一式持ってると言うことは・・・・。
「沙良ちゃん、来週からは沙良ちゃんが試食当番だったの?」
「はい、そうです。」
「でも先輩のこの自堕落ぶりに、私は全面的に協力します。使ってください、このチケット。」
嬉しそうな顔で、机に置かれた一式を更に押し出してくる。
「2週間で3キロは落としましょう。そうしたらご褒美に美味しいものを食べに行きましょう。」
満面の笑顔で言われた。
「別に、今痩せたいわけじゃ・・・・。」
「じゃあ、いつ痩せます?」
控えめに反論したらかぶせるように言われた。
痩せなきゃいけない前提?
せめて太らないでいたら、ちょっとふんわりした優しい感じの私じゃダメなの?
「ダメです。」
心の声に答えてくれたらしい。
「すず先輩、ね、ちゃんと自分に自信を取り戻して、今度こそいい恋愛しましょう!」
私は自信を失ってたの?
別にそんな話になってるつもりはない。
この間もちょっと愚痴っただけなのに。
毎回毎回呆れるような目をしながらも聞いてくれる沙良ちゃん。
それに痩せたからって・・・・、別に。
体重計をさっさと片付けられた。
机の上のチケットを見る。
そして自分の腰の肉をつまむ。
スカートをはくのに上を見ながら気合を入れる毎日。
さすがに・・・・。
チケットを手に取り、後で申請手続きをしようと思った。
半分は会社のお昼に、半分は自宅に配送してもらう。
医務室で採血、診察も受けなくてはいけない。
「沙良ちゃん、2週間後の食事は奢り?」
「先輩、意外に図々しいです。浮いた食費で奢って欲しいくらいなのに。でもそれでやる気が出るなら。5キロ痩せたら奢ります。どうですか?やる気出ますよね。」
二週間で5キロ。
それはちょっと厳しい。
食事だけでどうにかなるの?
運動しないとダメじゃない?
「結構お父さんたちは痩せてるみたいです。頑張って記録を出してください。」
だから、それはメタボで不摂生してるオジさんサラリーマンの話でしょう?
私にはそんなに余分なものはないはず・・・まだ。
ん?1週間で5キロ落としてるの?
普段どんだけ食べてるの?
やばいのはそっちです。
「じゃあ、約束。2週間で5キロ。奢り。」
「いいですよ。お店探しておきます。盛大にお祝いするので他の人にも声かけますね。」
「えっ、何で。ランチでいい。他の人はいい。」
「ダメです。集まった人皆に披露されると思うと一層やる気が出るじゃないですか。」
「せっかく痩せたのに美味しいものとお酒でまたすぐにリバウンド来ちゃう。」
「先輩、やる気は認めます。リバウンドするほど飲ませませんし、食べさせませんし。ちゃんと見張ってますから大丈夫です。2週間の間も当然チェックします。結果が楽しみですね。」
凄い『飴と鞭』とさらに『鞭』持参の食事会まで考えてる。
やる気を出すしかない、やる。
痩せる。5キロ。2週間。
早速パソコンで来週からの2週間の手配をした。
金曜日、忘れないように医務室に行くこと。
卓上カレンダーに予定を書き込んだ。
ちょっとフライングで金曜日から二週間と二日にしてしまおう。
頑張ればいい、頑張る。
その日は血液検査があるので朝抜きで来ないといけない。
しょんぼりとした気分だ。
電車の中で貧血で倒れたらどうする?
なんて、健康な私が一食抜いても貧血にはなりません。
空腹で倒れることはあるかも。
食費が浮くことを喜ぼう。
痩せた自分を想像しよう。
浮いたお金で似合う服を買いに行こう、ラインのきれいな服を買いに行こう。
5キロ痩せたら、おしゃれも楽しそう。
前向きに行こう。
せめてそう思ってやる気を出そう。
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