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4 気をつけてても呪いからは逃れられなかったお兄ちゃん、家族が疲れた夜。
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すっかり食事も終わり、お兄ちゃん以外の皆でテレビを見ていた時。
電話が鳴った。
不思議な顔で「和人の携帯から・・・・。」
お母さんがつぶやいて、お父さんが出た。
「もしもし、赤城です。」
『あの、赤城和人君のお父さんでよろしいですか?』
「はい。和人は息子です。」
そのセリフに私とお母さんはテレビを消して、お父さんに注目した。
誰?
『和人君の友達の萩と言います。』
「萩君。名前は和人から聞いたことがあります。あの・・・・和人は?」
『それがすごく酔っぱらってしまって・・・・・。』
お父さんの耳元にくっつくようにさんしていた私とお母さん。
ちょっとだけ安心した。
「どういう状態ですか?」
『電車は無理そうです。ふにゃふにゃしてます。気分が悪い訳じゃないみたいなんですが。』
さらに安心。
そうなると飲み過ぎるなと言ったのに・・・・とお母さんの眉間にしわが寄る。
「迎えに行きます。どこにいるんでしょうか?」
学校から少し移動していたらしい。
大きな駅でお店からは出たらしいけど、電車が無理と判断されたらしい。
「電車で行きます。タクシーで連れて帰ります。近くの交番に連れて行って放り込んでもらえませんか?」
お父さん、大胆な提案。
確かにずっと友達に付き合わせるのも申し訳ないだろう。
すっかりくつろいでパジャマのお父さん。
連休前の夜でのんびりモードだった。
お母さんが急いでお父さんの準備をする、そしてなんとなく私も着替えた。
定期の入ったバッグを持って、電話の終わったお父さんとすぐに家を出た。
優しい友達萩さんは交番の近くで待っていてくれるらしい。
萩さんにはお兄ちゃんの携帯を通して連絡をして、到着時間を知らせた。
電車に乗ってる間にお母さんとメッセージのやりとりをした。
『お母さん、お兄ちゃんダメだったのかな?玉砕して飲み過ぎたのかな?』
『そうかもね。残念だけど、まだ傷は浅いかしら。やっぱり明日からは好きなものを作ってあげることにするから。』
『そうだね。私の不吉な予言のせいだとか言われたら、謝るしかないよね。』
『覚えてたらね。しょうがない、お兄ちゃんの限界だったって事で。』
『まあね。まだ若いしね。』
そんなやり取りで、きっとお兄ちゃんは振られたんだろうと決めつけられていた。
それ以外、ひどく酔う理由がないから。
萩さんは愚痴られただろうか?
ついでに私の悪口も言っただろうか?
最後は頑張ってと気持ちを込めて楽しんでと言ったつもりだけど、伝わらなかった?
それにこんな騒動になったと知ったら、もっと嫌われるよ。呆れられるよ、次もなかなかだよ。
そんな先のことまで心配をしていた優しい妹の私。
しばらくお通夜のような食卓は我慢しよう。
連休に忘れられたらいいのにね。
世の中上手くいかないよね。
関係ないのに、ついでの様に安藤君のこともちょっとだけ思い出した。
でも、今はお兄ちゃん。
電車で着いた大きな駅。
まだまだ大勢の人が連休前の夜を楽しんでる。
交番は分かりやすかった。
そして萩さんは本当に親切で、ついでに交番のお巡りさんも親切だったらしい。
座りこんでいるのがお兄ちゃんとお巡りさんと・・・・・・女の人。
女の人はどう見ても座り込まされてる気がするんだけど。
気のせいかな?
お兄ちゃんを優しく支えてくれてる??
そんな人いたの?
結城さんよりそっちに希望があるかもよ、お兄ちゃん。
最悪は萩さんの彼女。
もしくは幹事の人、責任感ゆえの付き添い中。
その一団を見てるのは私とお父さんだけじゃないと思う。
若い奴らが・・・・と大人は呆れてるだろう。
反省すべきはお兄ちゃんただ一人の気がする。
視界に入ってからいろんな可能性を吟味するのに忙しかった。
お父さんも気がついてる。
まっすぐにそこに向かう二人。
萩さんも気がついてくれたみたい。
一応心配そうな表情をしてると思う私。
とても女性との関係を知りたいという好奇心だけじゃなく。
お父さんはうっすらと『呪われた一族の血』の事を思ってるだろうか?
呪いの犠牲者候補のお兄ちゃん、とばっちりの友達皆様と勤務中のお巡りさん。
「すみません、お待たせしました。警察の方も、皆さんもありがとうございます。まったく愚息には再教育が必要です。とりあえず皆さん、お帰りの電車は大丈夫でしょうか?お金の支払いなどはどうでしたか?何分迷惑をかけたと思いますが、被害はどれくらいでしょうか?」
お巡りさんは安心して持ち場に戻って行った。
私も深々とお辞儀をしてお礼を言った。
若い人だった。
お兄ちゃんは小心者だから、注意されてたとしても警察官に絡むことなどしないだろう。
さほど悪い印象は残さなかっただろう。
そう信じたい。
「支払いはきちんともらいました。もともと会費制だったので先に徴収してたんです。粗相はないので被害はないのですが・・・・。」
視線がお兄ちゃんに行く。
隣の女性にも。
「結城さん、お別れ?寂しいなあ。あ~あ・・・・生意気な優の代わりに家に来ればいいのに。」
なんと!!結城さんだった、噂の結城さんだった。
そこに驚いて、とりあえず後半は聞き流してあげた。
ただ、この場面を写真に撮りたい、動画にして残して後でお兄ちゃんに見せたい。
それくらいの仕打ちはさっきの言葉で相殺されるよね。
こっそりお母さんに連絡するふりで動画を撮る。
ちょっとぶれてもいい、しっかり映ってなくていい、声だけでも残したい。
こっそり手に持ってレンズを向けた。
内心面白くなってきたと思った私。
最悪と無難なパターンはなかった。
思いもかけない可能性が残っていた。
こんなお兄ちゃんを支えてくれてたらしい・・・・とりあえず横にいてくれたらしい結城さん。
表情を見る限り呆れてもいない?
「和人、立てるのか?」
「お父さん。あ、優まで。何しに来た。せっかく結城さんと楽しく飲んでたのに、邪魔しに来たのか?」
ここは怒るところだけど、今は録画中。
どんどん喋ればいい。
後で見せてやる、呪われた姿を・・・・・、もうそれは明らかだろう。
さっきから手をつないで腕を絡めて、もたれてる。
そしてお父さんがゴンとお兄ちゃんの頭にグーをヒットさせた。
座り込んでいたお兄ちゃんがさらに一瞬縮んだ。
記憶にある限りそんな鉄拳をお父さんが子供にふるうのを見たことがない。
「優も母さんも心配したんだ。帰るぞ。横にいる方にも迷惑をかけたんだろう。」
それは簡単に想像できたお父さん。そりゃあそうだ。
古くて痛い記憶が刺激されてるんだろう。
「本当にすみません。あの和人の手など振り払ってください。本当に愚息が失礼いたしました。」
痛む頭を撫でるために手を離したお兄ちゃん。やっと解放されたらしい結城さん。
もしかしてずっとくっついてたの?
「グソク・・・・グソクムシ?」
漢字変換は出来ない理系のお兄ちゃん。残念だ。ここで披露してしまうなんて。
酔いが冷めたら教えてあげよう。
大きなダンゴムシのことじゃない、お前のことだ~!!
大きく漢字も書いて説明してあげよう。
「あの、じゃあ、僕たちはこれで。」
萩さんが言う。
「はい。本当に迷惑をかけました。連絡ありがとうございました。その他にもいろいろと。本当にお世話になりました。」
萩さんにお礼を言うお父さん。
「本当に失礼はなかったですか?申し訳ありませんでした。」
お父さんが結城さんに謝る。気持ちもこもるよね・・・・。
「結城さん・・・帰るの?」
立ち上がった結城さんを見上げて小さくお兄ちゃんが言う言葉は、思った以上に寂しそうだった。
ちょっとだけお母さんが誤解した気持ちも分かる。
お父さんもこんな感じだったんだ・・・・・。
「あの、本当にお兄ちゃんがすみませんでした。」
まずは萩さんに謝り、ついで結城さんに。
「本当に楽しみにして出かけたんですがこんなことになって、明日どっぷりと反省すると思います。ちゃんと謝らせます。何でも言いつけてください。何でも言うことを聞かせますので。家では便利でまあまあいい奴です。面倒な事でもなんだかんだやってくれるので、便利に使いまわしてもらっていいです。お詫びに喜んで命令に従うと思います。」
これで連絡しても変じゃないだろう。
さり気なくいい奴アピールが出来たと思う。
二人で会ってご飯を奢るでもいい、買い物の荷物持ちでもいい、なんなら部屋の電球をかえたり、賞味期限の切れた豆腐の後始末でも。もうなんでも。
大量に買い過ぎたピーマンの処分だって、もしかして喜んでやるかも。
結城さんに向かって妹らしさを出しながら、不吉な予言の分を挽回すべく謝りながらお願いをした。
「あの、大丈夫です。」
まあ、そう言うしかないだろう。
でもビックリしただろう。
どう思っただろうか?
最最最悪の印象じゃないかも。
もしかしたらこの後グチグチと誰かに文句を言うだろうか?
掴まれた腕をゴシゴシ洗うだろうか?
洋服の腕の部分を嫌そうに見つめたり・・・・・しないで欲しいです。
お父さんが力の抜けたお兄ちゃんを立たせた。
ふらりと立ち上がった。
背中をバンと叩かれてすくっと背筋が伸びた。
見事!
「じゃあ、ありがとうございました。本当にお世話になりました。」
まだ電車が動いてる。
萩さんが手を振って、お兄ちゃんに声をかけて。
結城さんも『おやすみなさい。』とお兄ちゃんに挨拶をしてくれた。
萩さんには軽く手を振るくらいだったのに、結城さんにはきちんと声を出して反応した。
「結城さん、じゃあ、またね。今度は明るい時間に、是非!!」
自分でもアピールしてる。
寂しい病は終わったみたいだ。
「寂しいけど、我慢して帰ります。またお酒を飲んでください。」
お兄ちゃん一人が現実を見れてない事実。
飲むのはもうこりごりだと思うけど、明るい笑顔で手を振っていなくなった結城さん。
いい人・・・だと思いたい。
二人の背中を見送って、お父さんが一礼して、お兄ちゃんに向き合った。
「どのくらい飲んだんだ?」
「そんなに飲んでない。結城さんとおしゃべりしてたし。」
もはや隠すこともしないらしい。
後でお父さんには教えよう。
ああ・・・・忘れていた動画を止めた。
とりあえずお母さんに連絡した。
面白い動画が撮れただろうことを。
「電車に乗れるか?」
「は~い。」
そんな返事でまた背中をバンと叩かれた。
「お父さん、ここで吐かれたりしたら迷惑だから。今度こそお巡りさんに呆れられる。」
さすがに息がつまって、ついでに吐いたりしたら大変。
「お兄ちゃん、しっかりして。明日が楽しみだね。面白いことになってるね。」
笑顔で言った。
「優、何言ってるんだ?・・・・変な顔。」
なぁにぃ~、覚えておけ。明日お返ししてやる。
倍にしてお返ししてやる。
動画がうまく撮れてますように。
呪いの発症がしっかりと記録に残ってますように。
両脇から腕を掴んで、交番で一礼させてから、改札に入った。
歩いてくれた。とりあえずふにゃふにゃは時間が経つと何とかなるらしい。
まあ、教えてやってもいい。
えらくご機嫌なお兄ちゃん。
鼻歌をふんふんと歌いながら歩く。
もはや支えもいらない。
お父さんと二人で呆れながらついて行く。
もしかして上手くいったんだろうか?
雰囲気はいい所までいったんだろうか?
手応えはあったんだろう。
だからつい手を取ったんだろう。
その後気が変ってない事を祈るばかり。
まさかお兄ちゃんはそんなことは思ってないだろう。
まだまだ落ち込むパターンもありうる、予断は禁物だ、楽観視は出来ない。
ただ、浮かれてたのも家に帰り玄関を入るまでだったらしい。
呑気にピンポンを鳴らして、お父さんに鍵を開けてもらって、らんらんと玄関に入ったのに。
一気に目が覚めただろう?
仁王立ちのお母さんがいた。
背後には立派な火炎が見える・・・・ああ、私も気をつけよう・・・・そう思ったくらい。
「お帰りなさい。お父さんも、優も着替えてきたらいいわよ。さて、和人はどうするの?」
「・・・・・僕もお風呂と着替えがまだです。ご飯はいりません。食べました。」
『お兄ちゃん、そこは謝って。』
後ろから囁いた。
お母さんのこめかみがピクピクしてるよ。怖いよ・・・・。
「遅くなりました。ちょっと飲み過ぎてしまいました。気をつけます。」
『あと一声。心配かけてごめんなさい、だよ。』
さっきより囁きは大きくなってしまった。
「申し訳ありませんでした。」
このシーンも録画したいけど、お母さんに見つかると怖い。
そそくさと上がり込み、お父さんとその場から逃走した。
玄関でおかあさんから怒られているお兄ちゃん。
反省すればいい。
リビングにお父さんと二人。
「あのね、今日はお兄ちゃんが好きな結城さんも来てくれるって、すごく楽しみにしてたの。だから舞い上がったのかな?話は出来たみたいだし。いい人だよね。でも最悪な展開でどうなったかな?」
「結城さん・・・・か。甘えてたなあ、べったりくっついて。」
「お父さんもお母さんにあんな感じだったんだろうね。」
無反応。
違うとは言えないらしい。
「どうなるんだろう。お母さんは友達だったし、お父さんの事を知ってたから上手くいったけど、お兄ちゃん・・・・振られたらどうしよう・・・・・本当にやけ酒飲むかも、それか断酒するか。」
「とりあえずしばらくは飲ませない。あの二人と他の人々にも迷惑かけた分を反省して、お酒はそれからだ。」
「やっぱりお父さんと同じ一族だからね。呪われてるなあ~。」
気の毒にと思う反面、仲間が出来てうれしいだろうか、とお父さんのことも思った。
玄関が静かになった。
お母さんも疲れたらしい。
お兄ちゃんはやっとお風呂の時間だ。
「優、動画は?」
「あ、これこれ。ちゃんと撮れてるかなあ。さすがに結城さんにバレると失礼だから、声だけ取れてればいいかなあって思ったんだけど。」
お父さんも知らない動画の事。
携帯を真ん中に置いて三人で覗き込んだ。
お父さんが父親らしく皆に謝るところ。
お兄ちゃんがふにゃふにゃと甘えた声を出すところ。
結城さんとくっついてる部分は写ってた。
その前にちらりと結城さんの顔も映ってた。
「美人さんね・・・・・。」
お母さんが言う。
「そこもお父さんと同じ血が流れてるんだよ。」
お母さんも美人さんだったよねとくすぐるように。
「お母さんに似てるんだ。」
「お兄ちゃんはお父さん似だよ。ついでに私も。」
「違う、結城さんだよ。雰囲気が若い頃のお母さんに似てた。」
お父さんがしんみりと言う。
ちょっと戻って動画を止めた。
結城さんが映ってるところ。
似てるの?
お母さんも分からないって感じだ。
夜だし、動画は暗いし。
「やっぱり呪われた一族の血だね。」
続きを見る。
お兄ちゃんのグダグダのセリフと、グソクが分からないらしいつぶやきと。
頭にグーを落とされたお兄ちゃんはしっかり映ってた。
よし!
なかなかいい感じに撮れている。
その後も画面はぶれるけど、まあまあわかる。音声は問題ない。
しかも私がお兄ちゃんを褒めるところまでも、しっかりはっきり声は拾われている。
終わった。
最後は目が覚めたところで終わった。
「お兄ちゃんに見せるんだ。楽しみ~。」
「結局どうだったのかしら?」
「ああ、そうか。結果によっては塩を塗り込むね。しばらく保存したままにしておくか。」
「明日すぐに連絡して謝るでしょう。本当にどうなるのか、楽しみだけど心配だし。」
「お兄ちゃんもお酒は一杯までだね。可哀想に。代々男に受け継がれていく呪いなのかなあ?」
「たまには反対に酒豪が生まれるかもね。」
お母さんが孫に期待するようなことを言う。いつの事?
「酔って寝るとかならまだいいのに、甘え癖って言うか・・・・何だろう?」
お父さんを見た。
「甘え癖でしょう。寂しい寂しいってうるさいから。べたべたと所かまわないし。」
お母さん、最初の事を思い出してるんじゃないみたい。
明らかに怒りに触れた二回目を思い出してそう。
やっぱり忘れてないよね。
「気を付ける・・・ように和人にも言うから。」
「当たり前です。」
「はい。」
とんだとばっちりだ。
お父さんは大人しく小さい缶ビール一本にしてるのに。
お兄ちゃんのせいでお母さんの古い古い記憶は簡単によみがえった。
お兄ちゃんが戻ってきた。
ご機嫌モードはお終いらしい。
すっかり目が覚めたんだろう。
ぼんやりしてる。
「お兄ちゃん、とりあえず寝たら?」
音もなく立ち上がり一礼して二階に行ったお兄ちゃん。
「眠れればいいけどね。」
お母さんがつぶやいた。
「さあ、もう終わりにしましょう。疲れたわ。」
「眠い、疲れた。無駄に電車に乗った気分。」
「ああ・・・・疲れた。」
お父さんも言った。
そりゃあそうだ。
まざまざと昔の自分の再現映像を見せられてる感じだっただろう。
だからお母さんに似てるなんて思ったんだろう。
ああ・・・・・、とりあえずは明日だな。
どうなるんだろう。
どう思ってるんだろう、結城さん・・・・・いい人だよね・・・お願いします。
電話が鳴った。
不思議な顔で「和人の携帯から・・・・。」
お母さんがつぶやいて、お父さんが出た。
「もしもし、赤城です。」
『あの、赤城和人君のお父さんでよろしいですか?』
「はい。和人は息子です。」
そのセリフに私とお母さんはテレビを消して、お父さんに注目した。
誰?
『和人君の友達の萩と言います。』
「萩君。名前は和人から聞いたことがあります。あの・・・・和人は?」
『それがすごく酔っぱらってしまって・・・・・。』
お父さんの耳元にくっつくようにさんしていた私とお母さん。
ちょっとだけ安心した。
「どういう状態ですか?」
『電車は無理そうです。ふにゃふにゃしてます。気分が悪い訳じゃないみたいなんですが。』
さらに安心。
そうなると飲み過ぎるなと言ったのに・・・・とお母さんの眉間にしわが寄る。
「迎えに行きます。どこにいるんでしょうか?」
学校から少し移動していたらしい。
大きな駅でお店からは出たらしいけど、電車が無理と判断されたらしい。
「電車で行きます。タクシーで連れて帰ります。近くの交番に連れて行って放り込んでもらえませんか?」
お父さん、大胆な提案。
確かにずっと友達に付き合わせるのも申し訳ないだろう。
すっかりくつろいでパジャマのお父さん。
連休前の夜でのんびりモードだった。
お母さんが急いでお父さんの準備をする、そしてなんとなく私も着替えた。
定期の入ったバッグを持って、電話の終わったお父さんとすぐに家を出た。
優しい友達萩さんは交番の近くで待っていてくれるらしい。
萩さんにはお兄ちゃんの携帯を通して連絡をして、到着時間を知らせた。
電車に乗ってる間にお母さんとメッセージのやりとりをした。
『お母さん、お兄ちゃんダメだったのかな?玉砕して飲み過ぎたのかな?』
『そうかもね。残念だけど、まだ傷は浅いかしら。やっぱり明日からは好きなものを作ってあげることにするから。』
『そうだね。私の不吉な予言のせいだとか言われたら、謝るしかないよね。』
『覚えてたらね。しょうがない、お兄ちゃんの限界だったって事で。』
『まあね。まだ若いしね。』
そんなやり取りで、きっとお兄ちゃんは振られたんだろうと決めつけられていた。
それ以外、ひどく酔う理由がないから。
萩さんは愚痴られただろうか?
ついでに私の悪口も言っただろうか?
最後は頑張ってと気持ちを込めて楽しんでと言ったつもりだけど、伝わらなかった?
それにこんな騒動になったと知ったら、もっと嫌われるよ。呆れられるよ、次もなかなかだよ。
そんな先のことまで心配をしていた優しい妹の私。
しばらくお通夜のような食卓は我慢しよう。
連休に忘れられたらいいのにね。
世の中上手くいかないよね。
関係ないのに、ついでの様に安藤君のこともちょっとだけ思い出した。
でも、今はお兄ちゃん。
電車で着いた大きな駅。
まだまだ大勢の人が連休前の夜を楽しんでる。
交番は分かりやすかった。
そして萩さんは本当に親切で、ついでに交番のお巡りさんも親切だったらしい。
座りこんでいるのがお兄ちゃんとお巡りさんと・・・・・・女の人。
女の人はどう見ても座り込まされてる気がするんだけど。
気のせいかな?
お兄ちゃんを優しく支えてくれてる??
そんな人いたの?
結城さんよりそっちに希望があるかもよ、お兄ちゃん。
最悪は萩さんの彼女。
もしくは幹事の人、責任感ゆえの付き添い中。
その一団を見てるのは私とお父さんだけじゃないと思う。
若い奴らが・・・・と大人は呆れてるだろう。
反省すべきはお兄ちゃんただ一人の気がする。
視界に入ってからいろんな可能性を吟味するのに忙しかった。
お父さんも気がついてる。
まっすぐにそこに向かう二人。
萩さんも気がついてくれたみたい。
一応心配そうな表情をしてると思う私。
とても女性との関係を知りたいという好奇心だけじゃなく。
お父さんはうっすらと『呪われた一族の血』の事を思ってるだろうか?
呪いの犠牲者候補のお兄ちゃん、とばっちりの友達皆様と勤務中のお巡りさん。
「すみません、お待たせしました。警察の方も、皆さんもありがとうございます。まったく愚息には再教育が必要です。とりあえず皆さん、お帰りの電車は大丈夫でしょうか?お金の支払いなどはどうでしたか?何分迷惑をかけたと思いますが、被害はどれくらいでしょうか?」
お巡りさんは安心して持ち場に戻って行った。
私も深々とお辞儀をしてお礼を言った。
若い人だった。
お兄ちゃんは小心者だから、注意されてたとしても警察官に絡むことなどしないだろう。
さほど悪い印象は残さなかっただろう。
そう信じたい。
「支払いはきちんともらいました。もともと会費制だったので先に徴収してたんです。粗相はないので被害はないのですが・・・・。」
視線がお兄ちゃんに行く。
隣の女性にも。
「結城さん、お別れ?寂しいなあ。あ~あ・・・・生意気な優の代わりに家に来ればいいのに。」
なんと!!結城さんだった、噂の結城さんだった。
そこに驚いて、とりあえず後半は聞き流してあげた。
ただ、この場面を写真に撮りたい、動画にして残して後でお兄ちゃんに見せたい。
それくらいの仕打ちはさっきの言葉で相殺されるよね。
こっそりお母さんに連絡するふりで動画を撮る。
ちょっとぶれてもいい、しっかり映ってなくていい、声だけでも残したい。
こっそり手に持ってレンズを向けた。
内心面白くなってきたと思った私。
最悪と無難なパターンはなかった。
思いもかけない可能性が残っていた。
こんなお兄ちゃんを支えてくれてたらしい・・・・とりあえず横にいてくれたらしい結城さん。
表情を見る限り呆れてもいない?
「和人、立てるのか?」
「お父さん。あ、優まで。何しに来た。せっかく結城さんと楽しく飲んでたのに、邪魔しに来たのか?」
ここは怒るところだけど、今は録画中。
どんどん喋ればいい。
後で見せてやる、呪われた姿を・・・・・、もうそれは明らかだろう。
さっきから手をつないで腕を絡めて、もたれてる。
そしてお父さんがゴンとお兄ちゃんの頭にグーをヒットさせた。
座り込んでいたお兄ちゃんがさらに一瞬縮んだ。
記憶にある限りそんな鉄拳をお父さんが子供にふるうのを見たことがない。
「優も母さんも心配したんだ。帰るぞ。横にいる方にも迷惑をかけたんだろう。」
それは簡単に想像できたお父さん。そりゃあそうだ。
古くて痛い記憶が刺激されてるんだろう。
「本当にすみません。あの和人の手など振り払ってください。本当に愚息が失礼いたしました。」
痛む頭を撫でるために手を離したお兄ちゃん。やっと解放されたらしい結城さん。
もしかしてずっとくっついてたの?
「グソク・・・・グソクムシ?」
漢字変換は出来ない理系のお兄ちゃん。残念だ。ここで披露してしまうなんて。
酔いが冷めたら教えてあげよう。
大きなダンゴムシのことじゃない、お前のことだ~!!
大きく漢字も書いて説明してあげよう。
「あの、じゃあ、僕たちはこれで。」
萩さんが言う。
「はい。本当に迷惑をかけました。連絡ありがとうございました。その他にもいろいろと。本当にお世話になりました。」
萩さんにお礼を言うお父さん。
「本当に失礼はなかったですか?申し訳ありませんでした。」
お父さんが結城さんに謝る。気持ちもこもるよね・・・・。
「結城さん・・・帰るの?」
立ち上がった結城さんを見上げて小さくお兄ちゃんが言う言葉は、思った以上に寂しそうだった。
ちょっとだけお母さんが誤解した気持ちも分かる。
お父さんもこんな感じだったんだ・・・・・。
「あの、本当にお兄ちゃんがすみませんでした。」
まずは萩さんに謝り、ついで結城さんに。
「本当に楽しみにして出かけたんですがこんなことになって、明日どっぷりと反省すると思います。ちゃんと謝らせます。何でも言いつけてください。何でも言うことを聞かせますので。家では便利でまあまあいい奴です。面倒な事でもなんだかんだやってくれるので、便利に使いまわしてもらっていいです。お詫びに喜んで命令に従うと思います。」
これで連絡しても変じゃないだろう。
さり気なくいい奴アピールが出来たと思う。
二人で会ってご飯を奢るでもいい、買い物の荷物持ちでもいい、なんなら部屋の電球をかえたり、賞味期限の切れた豆腐の後始末でも。もうなんでも。
大量に買い過ぎたピーマンの処分だって、もしかして喜んでやるかも。
結城さんに向かって妹らしさを出しながら、不吉な予言の分を挽回すべく謝りながらお願いをした。
「あの、大丈夫です。」
まあ、そう言うしかないだろう。
でもビックリしただろう。
どう思っただろうか?
最最最悪の印象じゃないかも。
もしかしたらこの後グチグチと誰かに文句を言うだろうか?
掴まれた腕をゴシゴシ洗うだろうか?
洋服の腕の部分を嫌そうに見つめたり・・・・・しないで欲しいです。
お父さんが力の抜けたお兄ちゃんを立たせた。
ふらりと立ち上がった。
背中をバンと叩かれてすくっと背筋が伸びた。
見事!
「じゃあ、ありがとうございました。本当にお世話になりました。」
まだ電車が動いてる。
萩さんが手を振って、お兄ちゃんに声をかけて。
結城さんも『おやすみなさい。』とお兄ちゃんに挨拶をしてくれた。
萩さんには軽く手を振るくらいだったのに、結城さんにはきちんと声を出して反応した。
「結城さん、じゃあ、またね。今度は明るい時間に、是非!!」
自分でもアピールしてる。
寂しい病は終わったみたいだ。
「寂しいけど、我慢して帰ります。またお酒を飲んでください。」
お兄ちゃん一人が現実を見れてない事実。
飲むのはもうこりごりだと思うけど、明るい笑顔で手を振っていなくなった結城さん。
いい人・・・だと思いたい。
二人の背中を見送って、お父さんが一礼して、お兄ちゃんに向き合った。
「どのくらい飲んだんだ?」
「そんなに飲んでない。結城さんとおしゃべりしてたし。」
もはや隠すこともしないらしい。
後でお父さんには教えよう。
ああ・・・・忘れていた動画を止めた。
とりあえずお母さんに連絡した。
面白い動画が撮れただろうことを。
「電車に乗れるか?」
「は~い。」
そんな返事でまた背中をバンと叩かれた。
「お父さん、ここで吐かれたりしたら迷惑だから。今度こそお巡りさんに呆れられる。」
さすがに息がつまって、ついでに吐いたりしたら大変。
「お兄ちゃん、しっかりして。明日が楽しみだね。面白いことになってるね。」
笑顔で言った。
「優、何言ってるんだ?・・・・変な顔。」
なぁにぃ~、覚えておけ。明日お返ししてやる。
倍にしてお返ししてやる。
動画がうまく撮れてますように。
呪いの発症がしっかりと記録に残ってますように。
両脇から腕を掴んで、交番で一礼させてから、改札に入った。
歩いてくれた。とりあえずふにゃふにゃは時間が経つと何とかなるらしい。
まあ、教えてやってもいい。
えらくご機嫌なお兄ちゃん。
鼻歌をふんふんと歌いながら歩く。
もはや支えもいらない。
お父さんと二人で呆れながらついて行く。
もしかして上手くいったんだろうか?
雰囲気はいい所までいったんだろうか?
手応えはあったんだろう。
だからつい手を取ったんだろう。
その後気が変ってない事を祈るばかり。
まさかお兄ちゃんはそんなことは思ってないだろう。
まだまだ落ち込むパターンもありうる、予断は禁物だ、楽観視は出来ない。
ただ、浮かれてたのも家に帰り玄関を入るまでだったらしい。
呑気にピンポンを鳴らして、お父さんに鍵を開けてもらって、らんらんと玄関に入ったのに。
一気に目が覚めただろう?
仁王立ちのお母さんがいた。
背後には立派な火炎が見える・・・・ああ、私も気をつけよう・・・・そう思ったくらい。
「お帰りなさい。お父さんも、優も着替えてきたらいいわよ。さて、和人はどうするの?」
「・・・・・僕もお風呂と着替えがまだです。ご飯はいりません。食べました。」
『お兄ちゃん、そこは謝って。』
後ろから囁いた。
お母さんのこめかみがピクピクしてるよ。怖いよ・・・・。
「遅くなりました。ちょっと飲み過ぎてしまいました。気をつけます。」
『あと一声。心配かけてごめんなさい、だよ。』
さっきより囁きは大きくなってしまった。
「申し訳ありませんでした。」
このシーンも録画したいけど、お母さんに見つかると怖い。
そそくさと上がり込み、お父さんとその場から逃走した。
玄関でおかあさんから怒られているお兄ちゃん。
反省すればいい。
リビングにお父さんと二人。
「あのね、今日はお兄ちゃんが好きな結城さんも来てくれるって、すごく楽しみにしてたの。だから舞い上がったのかな?話は出来たみたいだし。いい人だよね。でも最悪な展開でどうなったかな?」
「結城さん・・・・か。甘えてたなあ、べったりくっついて。」
「お父さんもお母さんにあんな感じだったんだろうね。」
無反応。
違うとは言えないらしい。
「どうなるんだろう。お母さんは友達だったし、お父さんの事を知ってたから上手くいったけど、お兄ちゃん・・・・振られたらどうしよう・・・・・本当にやけ酒飲むかも、それか断酒するか。」
「とりあえずしばらくは飲ませない。あの二人と他の人々にも迷惑かけた分を反省して、お酒はそれからだ。」
「やっぱりお父さんと同じ一族だからね。呪われてるなあ~。」
気の毒にと思う反面、仲間が出来てうれしいだろうか、とお父さんのことも思った。
玄関が静かになった。
お母さんも疲れたらしい。
お兄ちゃんはやっとお風呂の時間だ。
「優、動画は?」
「あ、これこれ。ちゃんと撮れてるかなあ。さすがに結城さんにバレると失礼だから、声だけ取れてればいいかなあって思ったんだけど。」
お父さんも知らない動画の事。
携帯を真ん中に置いて三人で覗き込んだ。
お父さんが父親らしく皆に謝るところ。
お兄ちゃんがふにゃふにゃと甘えた声を出すところ。
結城さんとくっついてる部分は写ってた。
その前にちらりと結城さんの顔も映ってた。
「美人さんね・・・・・。」
お母さんが言う。
「そこもお父さんと同じ血が流れてるんだよ。」
お母さんも美人さんだったよねとくすぐるように。
「お母さんに似てるんだ。」
「お兄ちゃんはお父さん似だよ。ついでに私も。」
「違う、結城さんだよ。雰囲気が若い頃のお母さんに似てた。」
お父さんがしんみりと言う。
ちょっと戻って動画を止めた。
結城さんが映ってるところ。
似てるの?
お母さんも分からないって感じだ。
夜だし、動画は暗いし。
「やっぱり呪われた一族の血だね。」
続きを見る。
お兄ちゃんのグダグダのセリフと、グソクが分からないらしいつぶやきと。
頭にグーを落とされたお兄ちゃんはしっかり映ってた。
よし!
なかなかいい感じに撮れている。
その後も画面はぶれるけど、まあまあわかる。音声は問題ない。
しかも私がお兄ちゃんを褒めるところまでも、しっかりはっきり声は拾われている。
終わった。
最後は目が覚めたところで終わった。
「お兄ちゃんに見せるんだ。楽しみ~。」
「結局どうだったのかしら?」
「ああ、そうか。結果によっては塩を塗り込むね。しばらく保存したままにしておくか。」
「明日すぐに連絡して謝るでしょう。本当にどうなるのか、楽しみだけど心配だし。」
「お兄ちゃんもお酒は一杯までだね。可哀想に。代々男に受け継がれていく呪いなのかなあ?」
「たまには反対に酒豪が生まれるかもね。」
お母さんが孫に期待するようなことを言う。いつの事?
「酔って寝るとかならまだいいのに、甘え癖って言うか・・・・何だろう?」
お父さんを見た。
「甘え癖でしょう。寂しい寂しいってうるさいから。べたべたと所かまわないし。」
お母さん、最初の事を思い出してるんじゃないみたい。
明らかに怒りに触れた二回目を思い出してそう。
やっぱり忘れてないよね。
「気を付ける・・・ように和人にも言うから。」
「当たり前です。」
「はい。」
とんだとばっちりだ。
お父さんは大人しく小さい缶ビール一本にしてるのに。
お兄ちゃんのせいでお母さんの古い古い記憶は簡単によみがえった。
お兄ちゃんが戻ってきた。
ご機嫌モードはお終いらしい。
すっかり目が覚めたんだろう。
ぼんやりしてる。
「お兄ちゃん、とりあえず寝たら?」
音もなく立ち上がり一礼して二階に行ったお兄ちゃん。
「眠れればいいけどね。」
お母さんがつぶやいた。
「さあ、もう終わりにしましょう。疲れたわ。」
「眠い、疲れた。無駄に電車に乗った気分。」
「ああ・・・・疲れた。」
お父さんも言った。
そりゃあそうだ。
まざまざと昔の自分の再現映像を見せられてる感じだっただろう。
だからお母さんに似てるなんて思ったんだろう。
ああ・・・・・、とりあえずは明日だな。
どうなるんだろう。
どう思ってるんだろう、結城さん・・・・・いい人だよね・・・お願いします。
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