悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

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8 半笑いで話をしてくる内容は。

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ビルに入りエレベーターにかけ乗るようにして扉が閉まったらホッとした。
言われた通り資料課の部屋へ戻り、灯りをつけて席についた。


静かで、まだまだ慣れないその部屋。
よそよそしさが自分の肌を刺すようで、体を小さくして自分の腕を回して自分を抱いた。

早く来てほしい・・・・・。

廊下を歩く足音がした。
佐々木さんだと思う、そうだよね・・・・。

入って来た姿を見て、本当にホッとした。


思わず立ち上がって・・・・・・・、お礼を言った。

「ありがとう。」

気にしてくれて、あそこにいてくれて、教えてくれて、電話をかけてくれて。

「とりあえず間に合ったらしいね。」

それだけ言って自分の席に座る。

「どうしてあそこにいたの?」

「あのままじゃあ気になるし。噂じゃ本当にやばいって、そう書かれてたでしょう?」

「私のために?」

「今回はね。別に他の人でも同じことをしたよ。全然、・・・・そんな、特別じゃないよ。」


「そんな意味じゃない。そんなの分かってる。それでも、ありがとう、ございました。」

嫌われてるのも知ってるから。
さっきはすごく安心したその姿なのに、言葉は感謝を伝えながらも可愛くない言い方になる。

荷物に手をかけて立ち上がった。


「お疲れさまでした。まっすぐ帰ります。」

「まだ待って。タクシーで送るから。しばらくここにいた方がいい。せっかくだから本当に仕事する?」

机には新しい資料が山となっていた。

お酒も飲んでるのに、そんな集中力なんてないし。
何で仕事しようなんて思うの?


「まあ、いいか。でも、一時間くらい、ここにいた方がいい。」

「・・・・本当にそんなにひどい人なの?」


ここにきても信じられない気持ちも少しはあって、それも隠せない。


「噂じゃそうだね。知り合いのアドバイスもそう言ってるし。あいつと同じ会社の奴のメールを見せたんだけど。たまたま知り合いがいるんだ。前にうっすら聞いていた名前が、廊下から偶然聞こえてきてビックリした。」

そうですか・・・・。
丸聞こえだったらしいから、思い当たったと。



「なんだか、林君からはすごいぞって言われてたのに、ちょっとガッカリだなあ。もっと違う感じで楽しめると思ってたのに。普通だね。噂もなかなか凄いのに。」

「何がですか?」

「『悪評高い鈴鹿さん』って聞いてたから。それなのに普通に仕事してるだけだし、こんな罠にひっかかりそうになるし。ちなみに何で知り合ったの?今日コーヒー奢ってもらったって、午後だよね。急に元気になってたし。違う会社なのに、そこは評判通りなのかな?」

半笑いしながら、おかしそうに聞いてくる。

その神経が分からない。

酷い目に合うところだったのに、そのいきさつを話せと言う。
無神経なヤツ。
もしかして嫌がらせの続き?
嘘だったの?
全部丸ごと嫌がらせ?

こっちを見て興味深そうにしてるその顔を、眼鏡が壊れるくらい殴りたい。
目つきが正直にそう言ってたかもしれない。

「ごめんごめん、デリカシーないから止める。あいつにとっては最高の獲物だったかもしれないのに、ガッカリしてるかな。また狙われるかもしれないから、気を付けて。」

脅しともとれる発言。
そこまで私を怖がらせたいの?

怖がってやるもんか、頼ったのも、お礼を言ったのも今回だけ。
あとは何とかする、自分で始末つけるし。

睨んだ。

「無理だよ、自分で何とかしようとしても無理な事あるし、有名だって自覚ないの?」

あるわよ。噂が勝手に形を変えて、大きくなって伝わってるって。
誰もがそれを信じてるって。


「あんなの噂だけじゃない、私は悪くない!誘われて、たまにそれに応じてるだけ、それも食事してるだけ、普通に話しをしてるだけ、なのに勝手に被害者を名乗られて、詰め寄られたり、噂話のネタになったり、こっちだって被害者だから。はっきり断ってもどうせののしる癖に。それにちゃんと自分の分の食事代は払ってる、関係ない人に奢られるようなこともしてない、無駄に駆け引きして気を持たせるようなことはしない。」


「一度会うくらい。だって会社の人だし、誘われたら、時間があったら一度は付き合う事があるだけなのに・・・・。食事くらいいいかなって。」


だって、それを無くしたら、私に出会いのチャンスはないじゃない。
そんなの皆同じことしてる。軽く誘いにのってるはず。
とりあえずって、一度くらいは会うじゃない。
たまたまそれが一度でうんざりして、すぐ二度目はないと伝えたり、向こうに他に大切な人がいて、その人に内緒だったりとか、何でそれまで全部私のせいになるのよ。

「そうなんだろうね。林君もそう言ってた。言い訳しないから、今じゃあ悪女のレッテルがべったりはりついてるって。」

いつもご丁寧にはがれかけたところを修復してるくせに。
そんな林が何を言うんだ。

林と本当に仲がいいのは分かった。


「私の知らないところで勝手に話のネタにして欲しくない。」

そう言ったらきょとんとした顔をする。

「だって一緒に飲むことなんてないから、知ってるところで話なんてすることもないじゃない。昔からの知り合いって聞いたけど、仲が良かったんでしょう?」

小学生の頃の距離感の事を言われても、ピンとこないし。

「もしかして林君が初恋の相手だったりして。」

またまた半笑いで聞いてくる。

呆れた顔しかできない。
全く違う。

「ただのご近所。」

「聞いてた話と違うけど、まあそういうことにしておこうか。林君には言わない方がいいよ、思い出を壊すよ。男は女の人よりロマンチストみたいだし。」

どんな話をしてるのよ。




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