20 / 37
20 少しだけ思い出した小さな出来事。
しおりを挟む
洗濯が終わり畳んだタオルがソファにおいてあった。
あの日、枕代わりのクッションにかぶせたタオルだった。
ソファに座りタオルを手にした。
いっそ不器用だと思えたら、そんなすれ違いもあるかもと思える。
でも全然で、手際はいい、仕事も、あのときの対応も。
だからそんなにいきなり不器用に伝えられても。
答えを求めてるのかも分からないまま終わった。
何かを始めたいとか、まったく感じたこともなかった。
あまりにもそんな存在からは遠かった。
・・・それに彼女もいるよね、たしか、そんな話もしたと思う。
林は勿論、浩美も知っていて、企んだ飲み会、それがあの土曜日だった。
林はわざとここに来るように何度も勧めていた。
明日の朝が早いからって、ゴルフでもするのかって、新聞配達でもやってるのかって、魚市場にでも行くのかって・・・・・。
でも、そんな言い訳も嘘だったのかも。
友達のための嘘が結局最悪な結果になったと、なんとも皮肉な。
少し反省すればいい。
二人とも。もちろん、私以外のあの二人が。
そして何もなかったようになるんだと思う。
社内でこれ以上噂の種を育てるつもりはないから。
そう決めたばかりだったし。
それでも、さっきシャワーの下で目を閉じて髪を洗ってる間、
『味覚障害っぽいんだ、昔から・・・・。』
そう言って私に向けたなんともいえない顔を思い出してしまった。
何を食べても味がしない?変わらない?美味しくない?
どんな感じなんだろう?
先輩たちには言えないまま、ずっと今まで一人でランチをしていたんだろうか?
それともちゃんと伝えていたんだろうか?
あんないい人達で仲もいいから、きっと伝えてるんだろう。
そう思いたい。
さっきから思い出してばかりで。
気になって仕方ない。
やっぱり不器用なのかもしれない。
でも、それは私も同じ。
最近の習慣になってしまった缶ビールに手を伸ばす。
結局だらしない姿勢でおつまみとビールを目の前にする。
一人で飲んでも美味しくない。
特にこんな夜は。
携帯にまた浩美から連絡が来た。
『聞いた。それでいいの?』
そんなシンプルなメッセージ。
早速林に報告が行って、浩美にも伝わったらしい。
さすがインスタントのチームとは言え、連携がいい。
仲間のつもりだったのに、ひとり知らされてなかったらしい私。
やっぱり変わってる。
佐々木君は変だ。
趣味悪い。
浩美には何も返さずにそのままぼんやりした。
明日からは普通の空気に戻るだろう。
臨時の相棒はとっくに解散してるから、ひとまずのインスタントのチームも解散で。
そう思うのにちょっとだけ寂しく思うのは、あの部屋での二週間で育った『情』のせいだと思う。
その位の感情の『情』は私にもあるから。
次の日からは普通の空気に戻った、と思うことにした。
浩美もランチに行っても彼氏の話をして相変わらず楽しそうで。
それ以外、私のことは何も聞いてこない。
特に報告するような出来事も起こらず。
金曜日、休憩してたら林がやってきた。
狙ってたんだろうタイミング。
「メールが来た。もう心配ないって。」
芦屋さんのことだろう。
とっくに忘れてた。
安心してた。
「ありがとう。」
それでも改めて教えてもらうともっと安心する。
きっと佐々木君が例の人事部の友達から聞いたんだろう。
「初恋はいつ?」
「何よ、いきなり。そんなの覚えてない。」
「ここ以外にも他の会社を何社か受けてるだろう?」
「そうだけど、何?」
「きっとどっかで会ってるんだよ、佐々木と。」
びっくり、そんな話知らない。
さっきの初恋の話は何?
佐々木君・・・・同級生にはいなかった、クラスには一人くらいいそうな名前だけど思い出せない。それは確実。だって下の名前が特徴的だし。
名前・・・・。
あ、・・・・・そういえば、いたかも。
女子と間違えられた男子。
どうしてそうなったのか分からないけど、受付で名前がないって言われて。
書類を見せながら、男ですって言ってた人。
すみませんでした。こちらの手違いでしたって言われてた人。
隣の席に来た。
鈴鹿と佐々木で、もし女子だったら隣だった。
ただ、男子と分かっても、そこに席があったから隣に来た人。
一人女子グループに混じってた人。
居心地悪そうで、話しかけた。
「今は皆仲間でライバルだから、隣が誰でも気にしないよ。」
「内定貰って制服を用意される段階で間違いに気がつかれるよりは良かったね。」
「ありがとう。」そう小さく言われた気がした。
小声のやり取りだった。
よく顔も見てなかった。
その会社は女子には制服があった。
営業の人にはなかったけど、それ以外の部署だと制服が支給されていた。
あの時は、入社式で男の人が女子社員用の制服を手にして唖然とするのを想像してちょっと笑った。
緊張してた合間のちょっとした気分転換にもなった。
私の印象だって今みたいな可愛げない印象じゃなかったと思う。
何で気がついたんだろう。
あの会社は他のところと予定が重なって途中であきらめた。
あの会社でなら覚えてもらえても不思議じゃないけど。
ここでの試験中はまったく接点はなかったと思う。
同じような業種っていうだけ。
あの頃佐々木君ももっと素直で、可愛かったとか?
緊張してたところを私が話しかけて少し緊張がほぐれて助かったとか?
そんなタイプにも思えないけど?
「俺が先に初恋の相手で、幼馴染だったって、そう言ったから、ずっと言えなかったんだと思う。佐々木にしてみれば、結構話題にはしてたから仲がいいとは思ってただろうし、俺とのことを疑ったりもしただろうし。」
林がまだいたらしい。
すっかり忘れてましたが。
思い出したことに気がついただろうか?
聞かれることはなかった。
初恋といわれても昔のこと過ぎて、だいたい林のことも少しも思い出さなかったから、あの時の隣の人の事なんて、思い出すという以前、覚えてもいない。
そんなたいしたことでもなかったから。
「また飲もう、佐々木も飲みたいと思う。ただの同期としてでも。」
そう言っていなくなった。
そう、同期だったら普通。
二度と部屋に泊めることはないけど。
飲みに行くくらいは別に・・・・。
ちょとだけそう思った。
あの日、枕代わりのクッションにかぶせたタオルだった。
ソファに座りタオルを手にした。
いっそ不器用だと思えたら、そんなすれ違いもあるかもと思える。
でも全然で、手際はいい、仕事も、あのときの対応も。
だからそんなにいきなり不器用に伝えられても。
答えを求めてるのかも分からないまま終わった。
何かを始めたいとか、まったく感じたこともなかった。
あまりにもそんな存在からは遠かった。
・・・それに彼女もいるよね、たしか、そんな話もしたと思う。
林は勿論、浩美も知っていて、企んだ飲み会、それがあの土曜日だった。
林はわざとここに来るように何度も勧めていた。
明日の朝が早いからって、ゴルフでもするのかって、新聞配達でもやってるのかって、魚市場にでも行くのかって・・・・・。
でも、そんな言い訳も嘘だったのかも。
友達のための嘘が結局最悪な結果になったと、なんとも皮肉な。
少し反省すればいい。
二人とも。もちろん、私以外のあの二人が。
そして何もなかったようになるんだと思う。
社内でこれ以上噂の種を育てるつもりはないから。
そう決めたばかりだったし。
それでも、さっきシャワーの下で目を閉じて髪を洗ってる間、
『味覚障害っぽいんだ、昔から・・・・。』
そう言って私に向けたなんともいえない顔を思い出してしまった。
何を食べても味がしない?変わらない?美味しくない?
どんな感じなんだろう?
先輩たちには言えないまま、ずっと今まで一人でランチをしていたんだろうか?
それともちゃんと伝えていたんだろうか?
あんないい人達で仲もいいから、きっと伝えてるんだろう。
そう思いたい。
さっきから思い出してばかりで。
気になって仕方ない。
やっぱり不器用なのかもしれない。
でも、それは私も同じ。
最近の習慣になってしまった缶ビールに手を伸ばす。
結局だらしない姿勢でおつまみとビールを目の前にする。
一人で飲んでも美味しくない。
特にこんな夜は。
携帯にまた浩美から連絡が来た。
『聞いた。それでいいの?』
そんなシンプルなメッセージ。
早速林に報告が行って、浩美にも伝わったらしい。
さすがインスタントのチームとは言え、連携がいい。
仲間のつもりだったのに、ひとり知らされてなかったらしい私。
やっぱり変わってる。
佐々木君は変だ。
趣味悪い。
浩美には何も返さずにそのままぼんやりした。
明日からは普通の空気に戻るだろう。
臨時の相棒はとっくに解散してるから、ひとまずのインスタントのチームも解散で。
そう思うのにちょっとだけ寂しく思うのは、あの部屋での二週間で育った『情』のせいだと思う。
その位の感情の『情』は私にもあるから。
次の日からは普通の空気に戻った、と思うことにした。
浩美もランチに行っても彼氏の話をして相変わらず楽しそうで。
それ以外、私のことは何も聞いてこない。
特に報告するような出来事も起こらず。
金曜日、休憩してたら林がやってきた。
狙ってたんだろうタイミング。
「メールが来た。もう心配ないって。」
芦屋さんのことだろう。
とっくに忘れてた。
安心してた。
「ありがとう。」
それでも改めて教えてもらうともっと安心する。
きっと佐々木君が例の人事部の友達から聞いたんだろう。
「初恋はいつ?」
「何よ、いきなり。そんなの覚えてない。」
「ここ以外にも他の会社を何社か受けてるだろう?」
「そうだけど、何?」
「きっとどっかで会ってるんだよ、佐々木と。」
びっくり、そんな話知らない。
さっきの初恋の話は何?
佐々木君・・・・同級生にはいなかった、クラスには一人くらいいそうな名前だけど思い出せない。それは確実。だって下の名前が特徴的だし。
名前・・・・。
あ、・・・・・そういえば、いたかも。
女子と間違えられた男子。
どうしてそうなったのか分からないけど、受付で名前がないって言われて。
書類を見せながら、男ですって言ってた人。
すみませんでした。こちらの手違いでしたって言われてた人。
隣の席に来た。
鈴鹿と佐々木で、もし女子だったら隣だった。
ただ、男子と分かっても、そこに席があったから隣に来た人。
一人女子グループに混じってた人。
居心地悪そうで、話しかけた。
「今は皆仲間でライバルだから、隣が誰でも気にしないよ。」
「内定貰って制服を用意される段階で間違いに気がつかれるよりは良かったね。」
「ありがとう。」そう小さく言われた気がした。
小声のやり取りだった。
よく顔も見てなかった。
その会社は女子には制服があった。
営業の人にはなかったけど、それ以外の部署だと制服が支給されていた。
あの時は、入社式で男の人が女子社員用の制服を手にして唖然とするのを想像してちょっと笑った。
緊張してた合間のちょっとした気分転換にもなった。
私の印象だって今みたいな可愛げない印象じゃなかったと思う。
何で気がついたんだろう。
あの会社は他のところと予定が重なって途中であきらめた。
あの会社でなら覚えてもらえても不思議じゃないけど。
ここでの試験中はまったく接点はなかったと思う。
同じような業種っていうだけ。
あの頃佐々木君ももっと素直で、可愛かったとか?
緊張してたところを私が話しかけて少し緊張がほぐれて助かったとか?
そんなタイプにも思えないけど?
「俺が先に初恋の相手で、幼馴染だったって、そう言ったから、ずっと言えなかったんだと思う。佐々木にしてみれば、結構話題にはしてたから仲がいいとは思ってただろうし、俺とのことを疑ったりもしただろうし。」
林がまだいたらしい。
すっかり忘れてましたが。
思い出したことに気がついただろうか?
聞かれることはなかった。
初恋といわれても昔のこと過ぎて、だいたい林のことも少しも思い出さなかったから、あの時の隣の人の事なんて、思い出すという以前、覚えてもいない。
そんなたいしたことでもなかったから。
「また飲もう、佐々木も飲みたいと思う。ただの同期としてでも。」
そう言っていなくなった。
そう、同期だったら普通。
二度と部屋に泊めることはないけど。
飲みに行くくらいは別に・・・・。
ちょとだけそう思った。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】泡になった約束
山田森湖
恋愛
三十九歳、専業主婦。
夫と娘を送り出し、静まり返ったキッチンで食器を洗う朝。
洗剤の泡が立っては消えるその繰り返しに、自分の人生を重ねながら、彼女は「ごく普通」の日常を受け入れている。
愛がないわけではない。けれど、満たされているとも言い切れない。
そんな午前中、何気なく出かけたスーパーで、背後から名前を呼ばれる。
振り返った先にいたのは、かつて確かに愛した男――元恋人・佐々木拓也。
平穏だったはずの毎日に、静かな波紋が広がり始める。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
春燈に咲く
naomikoryo
恋愛
春の名をもらいながら、寒さを知って育った。
江戸の外れ、貧しい百姓家の次女・うららは、十三の春に奉公へ出される。
向かった先は老舗呉服屋「蓬莱屋」。
そこで出会ったのは、何かとちょっかいをかけてくる、
街の悪ガキのような跡取り息子・慶次郎だった――
反発しながらも心に灯る、淡く、熱く、切ない想い。
そして十五の春、女として、嫁として、うららの人生は大きく動き出す。
身分の差、家柄の壁、嫉妬と陰謀、
愛されることと、信じること――
それでも「私は、あの人の隣に立ちたい」。
不器用な男と、ひたむきな少女が織りなす、
時代小説として風情あふれる王道“和風身分差ラブロマンス”。
春の灯の下で咲く、たったひとつの恋の物語を、どうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる