悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

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20 少しだけ思い出した小さな出来事。

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洗濯が終わり畳んだタオルがソファにおいてあった。
あの日、枕代わりのクッションにかぶせたタオルだった。

ソファに座りタオルを手にした。

いっそ不器用だと思えたら、そんなすれ違いもあるかもと思える。

でも全然で、手際はいい、仕事も、あのときの対応も。
だからそんなにいきなり不器用に伝えられても。
答えを求めてるのかも分からないまま終わった。
何かを始めたいとか、まったく感じたこともなかった。
あまりにもそんな存在からは遠かった。

・・・それに彼女もいるよね、たしか、そんな話もしたと思う。


林は勿論、浩美も知っていて、企んだ飲み会、それがあの土曜日だった。
林はわざとここに来るように何度も勧めていた。
明日の朝が早いからって、ゴルフでもするのかって、新聞配達でもやってるのかって、魚市場にでも行くのかって・・・・・。

でも、そんな言い訳も嘘だったのかも。

友達のための嘘が結局最悪な結果になったと、なんとも皮肉な。

少し反省すればいい。
二人とも。もちろん、私以外のあの二人が。

そして何もなかったようになるんだと思う。

社内でこれ以上噂の種を育てるつもりはないから。
そう決めたばかりだったし。


それでも、さっきシャワーの下で目を閉じて髪を洗ってる間、
『味覚障害っぽいんだ、昔から・・・・。』
そう言って私に向けたなんともいえない顔を思い出してしまった。

何を食べても味がしない?変わらない?美味しくない?
どんな感じなんだろう?
先輩たちには言えないまま、ずっと今まで一人でランチをしていたんだろうか?
それともちゃんと伝えていたんだろうか?
あんないい人達で仲もいいから、きっと伝えてるんだろう。
そう思いたい。


さっきから思い出してばかりで。
気になって仕方ない。
やっぱり不器用なのかもしれない。
でも、それは私も同じ。


最近の習慣になってしまった缶ビールに手を伸ばす。
結局だらしない姿勢でおつまみとビールを目の前にする。

一人で飲んでも美味しくない。
特にこんな夜は。


携帯にまた浩美から連絡が来た。


『聞いた。それでいいの?』

そんなシンプルなメッセージ。


早速林に報告が行って、浩美にも伝わったらしい。
さすがインスタントのチームとは言え、連携がいい。
仲間のつもりだったのに、ひとり知らされてなかったらしい私。

やっぱり変わってる。
佐々木君は変だ。
趣味悪い。


浩美には何も返さずにそのままぼんやりした。

明日からは普通の空気に戻るだろう。

臨時の相棒はとっくに解散してるから、ひとまずのインスタントのチームも解散で。


そう思うのにちょっとだけ寂しく思うのは、あの部屋での二週間で育った『情』のせいだと思う。
その位の感情の『情』は私にもあるから。



次の日からは普通の空気に戻った、と思うことにした。


浩美もランチに行っても彼氏の話をして相変わらず楽しそうで。
それ以外、私のことは何も聞いてこない。
特に報告するような出来事も起こらず。


金曜日、休憩してたら林がやってきた。
狙ってたんだろうタイミング。


「メールが来た。もう心配ないって。」

芦屋さんのことだろう。
とっくに忘れてた。
安心してた。

「ありがとう。」

それでも改めて教えてもらうともっと安心する。
きっと佐々木君が例の人事部の友達から聞いたんだろう。




「初恋はいつ?」

「何よ、いきなり。そんなの覚えてない。」


「ここ以外にも他の会社を何社か受けてるだろう?」

「そうだけど、何?」

「きっとどっかで会ってるんだよ、佐々木と。」


びっくり、そんな話知らない。
さっきの初恋の話は何?

佐々木君・・・・同級生にはいなかった、クラスには一人くらいいそうな名前だけど思い出せない。それは確実。だって下の名前が特徴的だし。

名前・・・・。

あ、・・・・・そういえば、いたかも。
女子と間違えられた男子。
どうしてそうなったのか分からないけど、受付で名前がないって言われて。

書類を見せながら、男ですって言ってた人。

すみませんでした。こちらの手違いでしたって言われてた人。


隣の席に来た。
鈴鹿と佐々木で、もし女子だったら隣だった。
ただ、男子と分かっても、そこに席があったから隣に来た人。
一人女子グループに混じってた人。
居心地悪そうで、話しかけた。

「今は皆仲間でライバルだから、隣が誰でも気にしないよ。」

「内定貰って制服を用意される段階で間違いに気がつかれるよりは良かったね。」

「ありがとう。」そう小さく言われた気がした。

小声のやり取りだった。
よく顔も見てなかった。

その会社は女子には制服があった。
営業の人にはなかったけど、それ以外の部署だと制服が支給されていた。
あの時は、入社式で男の人が女子社員用の制服を手にして唖然とするのを想像してちょっと笑った。
緊張してた合間のちょっとした気分転換にもなった。

私の印象だって今みたいな可愛げない印象じゃなかったと思う。
何で気がついたんだろう。

あの会社は他のところと予定が重なって途中であきらめた。
あの会社でなら覚えてもらえても不思議じゃないけど。
ここでの試験中はまったく接点はなかったと思う。
同じような業種っていうだけ。


あの頃佐々木君ももっと素直で、可愛かったとか?
緊張してたところを私が話しかけて少し緊張がほぐれて助かったとか?
そんなタイプにも思えないけど?



「俺が先に初恋の相手で、幼馴染だったって、そう言ったから、ずっと言えなかったんだと思う。佐々木にしてみれば、結構話題にはしてたから仲がいいとは思ってただろうし、俺とのことを疑ったりもしただろうし。」


林がまだいたらしい。
すっかり忘れてましたが。


思い出したことに気がついただろうか?
聞かれることはなかった。


初恋といわれても昔のこと過ぎて、だいたい林のことも少しも思い出さなかったから、あの時の隣の人の事なんて、思い出すという以前、覚えてもいない。
そんなたいしたことでもなかったから。


「また飲もう、佐々木も飲みたいと思う。ただの同期としてでも。」

そう言っていなくなった。

そう、同期だったら普通。
二度と部屋に泊めることはないけど。
飲みに行くくらいは別に・・・・。

ちょとだけそう思った。
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