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13 空っぽ、愚痴も吐き出し終えたみたい。 愚痴レベル測定せず。

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そして向かってたどり着いた入り口を前にしても立ち止まられなかった。
ぐんぐんと歩く私についてきてくれて、何も聞かれずに、部屋の写真の前で立ち止まって横を見たら、さっとお金を入れてくれた。

でも、チラリと見たその横顔は無表情だった。


当たり前だ。


どこまで甘えるんだと、何がしたいんだという話だろう。
どう思ってるんだろう?
無表情以外、本当に表情には出てない。

今日何度か見た表情だった。
そんな表情の時にすごく怒ってるんだろうか?
それでも表には出さないでいてくれてるんだろう、今は。

さすがに誰かに愚痴りたいくらいの暴挙の私。
それは分かってる。
誰かに話すだろうか?
こんなことがあったんだけど、とムカついた気分を思い出すように。

キーを持って狭いエレベーターに乗り、ランプのついてる部屋に入った。


短い廊下と、大きなベッドと、小さなソファとテレビとテーブルと。
そのほかにも何かある。
いろいろある。


ソファに座り、手を離した。

その途端体が離れた。


言葉はないらしい。もしかしてすごく心の中でののしられてるかもしれない。

同期だからってどこまで面倒見させるんだって、怒ってるかも。


ゆっくり顔を上げて見たら、やっぱり無表情だったし、私が見てると気がついてるだろうけど、目も合わせてもらえなかった。



黙ってソファに座り込んだ二人、微妙以上にはっきりと他人の距離があった。




「なんで何も聞かないの?」



「じゃあ、はっきり聞く・・・。」




「彼女がいるって知ってるんだよね・・・・・。」


びっくりした。
知らない。
そんなこと少しも話に出てない。
さっきだって週末の過ごし方を聞いたのに。
そんな『誰か』の存在ちらりとも出てこなかったよね。


「ごめんなさい、・・・・本当にごめんなさい。」


「もう何度も謝られたけど。」


「これで最後にします。もう、甘えないし、変なことばっかり聞いたり、聞かせたりしない。」



「最後だから、何?・・・・はっきり言えばいいんじゃない。別に驚かないし。前田さんの代わりをして欲しいの?それとも喧嘩してしまった年上の彼氏の代わり?」


こっちを見て言ってくれたけど、言われたことは思ってたことと違ってびっくりした。


「何で?前田さんとか・・・。」


「見てれば分かるよ、最初に飲みに誘われたときにさり気なさを装って聞かれたよね。僕は誘われてうれしかったのに、まさか先輩のことを聞きたかったんだって、さすがに分かったよ。その後やっぱりあきらめようって思ったの?食堂で友達と出来立ての彼氏の話をしてたのも聞こえてきたよ。別に聞いてたわけじゃないよ。先に座ってたのは僕だったんだから、近くにいて大きな声で話をしてたから、聞こえてきただけだし。」



「この間も元気なかったのに、すっかり元気になって。うれしそうに前田さんと同行してたじゃない。他に彼氏がいても、前田さんに彼女がいてもやっぱりうれしいんだね。あの日は直帰だったし食事くらいは出来たんじゃないの?・・・・それともあの日も今日みたいにぐんぐんと誘ったの?」


「変な感じじゃないし、それはないなあって思ってるけど。前田さんもそんな人じゃないと思ってるし。」

そこまで言われて私の声も低くなる。


「当たり前じゃない。前田さんは尊敬する先輩だし、私はただ、成績のいい前田さんがどうしてるのか見たいだけだったから、お願いしただけだし。変に思うのは前田さんにも失礼!」

低くても大きな声が出た。


「そう、悪かった。てっきり・・・・。じゃあ、彼氏?先週のことでしょう?ホテルに誘われて拒んだんだ。謝ればすむことじゃない。恥ずかしかったからちゃんと言えなかったけど、出来ないときだったって。今週はもう大丈夫ですって。」


何を言いたいかもわかった。

目が合ってそれだけ言ったら、また視線をそらされて、表情もないまま、固いまま。






「さっき、何で止めてくれなかったの?」

「止めて欲しいと思ってるなら、自分で止まってくれる?」


そういわれたのは最大に怒ってるような声だった。
当たり前だ。勝手にぐいぐいと引っ張ってきてお金まで払わせて。



「本当に・・・・・、知らなかったから、裏切らせたいとか壊すつもりもない。ちゃんとここの料金は返すから、帰っていいから。まだ全然話をしただけだし。まだ間に合う。」




「『まだ』間に合うとか、言うの?・・・・分かった。」


そう言ってしばらくしたら隣で立ち上がる気配がした。

歩いていく姿も足音も見ない、聞かない。
俯いてきつく目を閉じて。

それでも耳は塞いでなかった。


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