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第三の石碑 レゴラントの町
02話 涙
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コルセア王国の王都・カリーンの聖神殿に安置されている石碑を見る前に、なんとコルセア国王であり、アレンシアの“烈翔紅帝”と恐れられ、崇められ、尊敬されているオリヴィア女王さまご本人に謁見できた。
凄い人だと、すぐにわかった。
群雄割拠していたここフェーン地方を、僅か一代で統一するという偉業を成し遂げたのも頷ける。
そして石碑を見たけれど、やっぱり、今はその文章の内容を思い出せない。
しかし、あの光景は思い出せる。
セレンディアの時は自然豊かな辺境の坂道で、その上に石碑があった。
そしてカリーンでは、山道で落石事故に遭った馬車の背後だった。
この辺りは聖神殿のマール経典に記述があった。
第一の石碑は最初にマールが滅ぼしてしまった村の光景で、第二の石碑は最初に不幸に遭わせてしまった旅の道連れの末路だろう。
マールはそれらが自分にかけられた呪いだと知った時、筆舌に尽くしがたいほど悲しんだという。
故に、石碑を建てる時、その悔恨の想いを込めたんじゃないだろうか。
マールは今でこそ神として崇め奉られているけれど、当時は紅の魔女と呼ばれ、災厄の象徴だった。
それがどんなに辛いことか。
どれほど苦しいことか。
僕はこの石碑巡りが終わったら、立派な聖神官を目指そうと決意している。
ユーリエはどうするんだろう。
一緒にマール信徒になってくれたら嬉しいけれど……。
ユーリエは優秀だから、あっという間に聖神官どころか司祭、司教にまで出世しそうだなあ。
そうなると僕は、ユーリエにこき使われるのかもしれない。
……今とあまり変わらないか。
そう思うと、苦笑してしまった。
でも……大好きなユーリエと一緒って、いいなあ。
ずっと二人でいたいなあ。
シャワールームから聞こえてくるお湯が、ユーリエを身を打つ音を聞きながら、僕は天井を見上げる。
こんな幸せが続くといい。
もし一人で石碑巡りをしていたら、マールのことばかりを考えていたに違いない。
ところが今は、ユーリエのことしか考えていない。
考えられない。
「マール信徒、失格だね」
僕がそう呟いた時、ユーリエがシャワールームから出てきた。
「はー、気持ちよかったよ~。カナクも入れば?」
「ああうん、そうす――」
紡ごうとした言葉が、ユーリエの姿を見て断ち切られる。
大きめのバスタオル一枚を巻きつけただけの姿。
そのせいで太ももが露わになり、とても色っぽい。
左手でタオルを抑え、右手に持った小さなタオルで、濡れたすみれ色の髪をかしかしと拭いていた。
「何故、そんな格好で出てくるの!?」
ユーリエの姿を目に入れないよう、身体反転しながら叫ぶ。
「え、ああ、ごめん。暑かったから。はしたなかったかな?」
そうじゃない!
やっぱり、あれかな、僕は異性として見られてないのかな?
「ほらほら、次はカナクの番だよ。旅の汗を流すのって気持ちいいよ!」
「あ、ああ、うん」
僕は目を閉じながら、急いでシャワールームに入った。
脱衣所の籠に……ユーリエの服と、下着がある。
わざとかな?
僕はこれもマールの試練だと思い直し、ユーリエの服を綺麗にたたんで、その上に僕の服を乗せた。
シャワーを浴びて雑念と汚れを綺麗に洗い流すと、確かに体温が上がって、服を着るのが憚られた。
なるほど、タオル一枚で出たくもなる。
そうだ、と、思いつく。
毎回毎回、僕を試すようなこととか、からかってくるユーリエを、逆に照れさせてみようか。
僕はバスタオルを下半身だけに巻き、シャワールームを出た。
「確かにいい湯だったよ、ユー……」
そこに、ユーリエの姿はなかった。
「あれ?」
不思議に思いながら、辺りを見渡す。
テーブルの上には大きな蝋燭の明かりがある。陰影がくっきりとしているので、部屋の中は明るいところと暗い部分がハッキリとわかれていた。この影の中に潜んでいるのかなあ、と思うと同時に、一瞬、ゾッとした考えが脳裏をよぎる。
僕は急いで部屋の扉を確認すると、内側から鍵がかかっていた。
ふう、と安堵の息を吐く。
どうやら誰かに浚われたわけではないらしい。
なにせユーリエは、誰の目から見ても可愛い。
この宿屋に入る時、誰かに目をつけられた可能性だってある。
「はあ、どこに行っちゃったのかな……」
僕は心配で胸が張り裂けそうになりながら、ベッドに腰掛ける。
「ユーリエ……」
「なぁに?」
「!?」
突然、掛け布団が舞い、ユーリエの腕が僕の両肩を掴んで、そのまま僕はベッドに押し倒された!
倒された先にあったのは、柔らかな太ももだった。
「えっへへ~、驚いた?」
「…………」
ユーリエ、バスタオルを巻いたままじゃないか。
そしてふと、思い出す。
ユーリエは着替えを持たずにシャワールームに入り、出た時はタオルを巻いた姿。
服もインナーも下着も全部、脱衣所にあったということは、こ、このバスタオルの下は……。
「あれ? カナクも、その、あれなんだね。裸?」
「う、うん。暑かったからさ」
「そっか」
「それで済むの!?」
やっぱりユーリエって、わからない。
「もう……ちゃんと服を着よう」
僕は、はじけ飛びそうに高鳴る鼓動を抑えながら起き上がろうとして、ユーリエに遮られた。
「ねぇカナク、こ、このまま、二人で寝てみない? 最近、夜は少し冷えるしさ」
「……え、え、えええ!?」
僕が返事をする前に、ユーリエは布団をかけて横になり、両手を僕に向けてきた。
「きて」
「う、うん」
僕はユーリエに誘われるまま、その両手の間に吸い込まれた。
初めて、僕とユーリエは抱き合った。
それがまさか、お互いに裸で、しかも一つのベッドの中だなんて。
マールよ、試練にしては強烈すぎます。
「ん~、あったかい~」
「さっきは暑いって言ってたよね?」
「う~ん? 言ってな~い」
「そんな……」
うう……。
あのユーリエが、僕の胸に納まっている。
触れ合うユーリエの肌が、艶美な温もりをじかに感じさせる。
これは、現実なんだろうか。
「カナクは?」
「え?」
「あったかい?」
「……あ、あったかいよ。それに、いい匂いがする」
「あは。それはちょっと恥ずかしい、かな」
「僕はちょっとどころじゃない」
ああ、理性が壊れそうだ。
涎がだくだくと溢れてくる。
「カナクって、思ったより筋肉質なんだね」
「あ!」
しまった。
ここまではローブで隠してきたけれど、僕は人間じゃない。
銀獣人の姿にならなくても、人間よりずっと筋力がある。
だから細く見えても、実はかなり力があるのだ。
学校生活でも、わざと手を抜くのに苦労した。
「ねえユーリエ、どうして急に、こんな、大胆に……」
「ん~、それはカナクが悪い」
「僕!?」
さすがはユーリエ。
とんでも展開に、ついて行けない!
「私って、女として魅力ないかなあ?」
「ありすぎるから自制するのに困ってるんだよ!」
反射的に、そう答えてしまっていた。
ユーリエはがばっ、と起きて、今度は僕に顔を近づけてきた。
「ホント!? 本当に!?」
ユーリエがずい、と、更に顔を寄せてくる。
僕はそんなユーリエに欲情も食欲も吹き飛び……。
ただ、素直に愛おしいと思った。
「マール信徒は、想い人以外を見てはいけない。でも僕の想い人はさ、すみれ色の髪が魅惑的で、緑青色の大きな瞳に、白い肌がとても綺麗で、猫かぶりが得意で、本当は不器用で理不尽で乱暴で、強引で色っぽくて、とっても可愛い魔法使いの女の子なんだ」
想いが溢れて止まらない。
いつの間にか僕は、目から涙があふれ出ていた。
「うん……うん……」
ユーリエの大きな瞳が、潤んで輝く。
僕はユーリエを強く抱き締めて、言葉を紡ぐ。
「僕の想い人はユーリエ、ずっと前から君だよ。だから石碑巡り、一緒に行こうって言われた時、断ろうとしたんだ。君が欲しくてたまらない。そんな気持ちを抑えられる精神を鍛えたかったから」
「なるほど……そういうことだったのね」
全てを、吐露してしまった。
もう怖いものは、なにもない。
僕はユーリエが好きだ。
愛してる。
更にユーリエが顔を近づけてくる。
僕は目の前にあるユーリエの唇を、奪った。
そして……。
頭の先からつま先まで、お互いの全てを絡ませあって。
一緒に、眠りに落ちた。
凄い人だと、すぐにわかった。
群雄割拠していたここフェーン地方を、僅か一代で統一するという偉業を成し遂げたのも頷ける。
そして石碑を見たけれど、やっぱり、今はその文章の内容を思い出せない。
しかし、あの光景は思い出せる。
セレンディアの時は自然豊かな辺境の坂道で、その上に石碑があった。
そしてカリーンでは、山道で落石事故に遭った馬車の背後だった。
この辺りは聖神殿のマール経典に記述があった。
第一の石碑は最初にマールが滅ぼしてしまった村の光景で、第二の石碑は最初に不幸に遭わせてしまった旅の道連れの末路だろう。
マールはそれらが自分にかけられた呪いだと知った時、筆舌に尽くしがたいほど悲しんだという。
故に、石碑を建てる時、その悔恨の想いを込めたんじゃないだろうか。
マールは今でこそ神として崇め奉られているけれど、当時は紅の魔女と呼ばれ、災厄の象徴だった。
それがどんなに辛いことか。
どれほど苦しいことか。
僕はこの石碑巡りが終わったら、立派な聖神官を目指そうと決意している。
ユーリエはどうするんだろう。
一緒にマール信徒になってくれたら嬉しいけれど……。
ユーリエは優秀だから、あっという間に聖神官どころか司祭、司教にまで出世しそうだなあ。
そうなると僕は、ユーリエにこき使われるのかもしれない。
……今とあまり変わらないか。
そう思うと、苦笑してしまった。
でも……大好きなユーリエと一緒って、いいなあ。
ずっと二人でいたいなあ。
シャワールームから聞こえてくるお湯が、ユーリエを身を打つ音を聞きながら、僕は天井を見上げる。
こんな幸せが続くといい。
もし一人で石碑巡りをしていたら、マールのことばかりを考えていたに違いない。
ところが今は、ユーリエのことしか考えていない。
考えられない。
「マール信徒、失格だね」
僕がそう呟いた時、ユーリエがシャワールームから出てきた。
「はー、気持ちよかったよ~。カナクも入れば?」
「ああうん、そうす――」
紡ごうとした言葉が、ユーリエの姿を見て断ち切られる。
大きめのバスタオル一枚を巻きつけただけの姿。
そのせいで太ももが露わになり、とても色っぽい。
左手でタオルを抑え、右手に持った小さなタオルで、濡れたすみれ色の髪をかしかしと拭いていた。
「何故、そんな格好で出てくるの!?」
ユーリエの姿を目に入れないよう、身体反転しながら叫ぶ。
「え、ああ、ごめん。暑かったから。はしたなかったかな?」
そうじゃない!
やっぱり、あれかな、僕は異性として見られてないのかな?
「ほらほら、次はカナクの番だよ。旅の汗を流すのって気持ちいいよ!」
「あ、ああ、うん」
僕は目を閉じながら、急いでシャワールームに入った。
脱衣所の籠に……ユーリエの服と、下着がある。
わざとかな?
僕はこれもマールの試練だと思い直し、ユーリエの服を綺麗にたたんで、その上に僕の服を乗せた。
シャワーを浴びて雑念と汚れを綺麗に洗い流すと、確かに体温が上がって、服を着るのが憚られた。
なるほど、タオル一枚で出たくもなる。
そうだ、と、思いつく。
毎回毎回、僕を試すようなこととか、からかってくるユーリエを、逆に照れさせてみようか。
僕はバスタオルを下半身だけに巻き、シャワールームを出た。
「確かにいい湯だったよ、ユー……」
そこに、ユーリエの姿はなかった。
「あれ?」
不思議に思いながら、辺りを見渡す。
テーブルの上には大きな蝋燭の明かりがある。陰影がくっきりとしているので、部屋の中は明るいところと暗い部分がハッキリとわかれていた。この影の中に潜んでいるのかなあ、と思うと同時に、一瞬、ゾッとした考えが脳裏をよぎる。
僕は急いで部屋の扉を確認すると、内側から鍵がかかっていた。
ふう、と安堵の息を吐く。
どうやら誰かに浚われたわけではないらしい。
なにせユーリエは、誰の目から見ても可愛い。
この宿屋に入る時、誰かに目をつけられた可能性だってある。
「はあ、どこに行っちゃったのかな……」
僕は心配で胸が張り裂けそうになりながら、ベッドに腰掛ける。
「ユーリエ……」
「なぁに?」
「!?」
突然、掛け布団が舞い、ユーリエの腕が僕の両肩を掴んで、そのまま僕はベッドに押し倒された!
倒された先にあったのは、柔らかな太ももだった。
「えっへへ~、驚いた?」
「…………」
ユーリエ、バスタオルを巻いたままじゃないか。
そしてふと、思い出す。
ユーリエは着替えを持たずにシャワールームに入り、出た時はタオルを巻いた姿。
服もインナーも下着も全部、脱衣所にあったということは、こ、このバスタオルの下は……。
「あれ? カナクも、その、あれなんだね。裸?」
「う、うん。暑かったからさ」
「そっか」
「それで済むの!?」
やっぱりユーリエって、わからない。
「もう……ちゃんと服を着よう」
僕は、はじけ飛びそうに高鳴る鼓動を抑えながら起き上がろうとして、ユーリエに遮られた。
「ねぇカナク、こ、このまま、二人で寝てみない? 最近、夜は少し冷えるしさ」
「……え、え、えええ!?」
僕が返事をする前に、ユーリエは布団をかけて横になり、両手を僕に向けてきた。
「きて」
「う、うん」
僕はユーリエに誘われるまま、その両手の間に吸い込まれた。
初めて、僕とユーリエは抱き合った。
それがまさか、お互いに裸で、しかも一つのベッドの中だなんて。
マールよ、試練にしては強烈すぎます。
「ん~、あったかい~」
「さっきは暑いって言ってたよね?」
「う~ん? 言ってな~い」
「そんな……」
うう……。
あのユーリエが、僕の胸に納まっている。
触れ合うユーリエの肌が、艶美な温もりをじかに感じさせる。
これは、現実なんだろうか。
「カナクは?」
「え?」
「あったかい?」
「……あ、あったかいよ。それに、いい匂いがする」
「あは。それはちょっと恥ずかしい、かな」
「僕はちょっとどころじゃない」
ああ、理性が壊れそうだ。
涎がだくだくと溢れてくる。
「カナクって、思ったより筋肉質なんだね」
「あ!」
しまった。
ここまではローブで隠してきたけれど、僕は人間じゃない。
銀獣人の姿にならなくても、人間よりずっと筋力がある。
だから細く見えても、実はかなり力があるのだ。
学校生活でも、わざと手を抜くのに苦労した。
「ねえユーリエ、どうして急に、こんな、大胆に……」
「ん~、それはカナクが悪い」
「僕!?」
さすがはユーリエ。
とんでも展開に、ついて行けない!
「私って、女として魅力ないかなあ?」
「ありすぎるから自制するのに困ってるんだよ!」
反射的に、そう答えてしまっていた。
ユーリエはがばっ、と起きて、今度は僕に顔を近づけてきた。
「ホント!? 本当に!?」
ユーリエがずい、と、更に顔を寄せてくる。
僕はそんなユーリエに欲情も食欲も吹き飛び……。
ただ、素直に愛おしいと思った。
「マール信徒は、想い人以外を見てはいけない。でも僕の想い人はさ、すみれ色の髪が魅惑的で、緑青色の大きな瞳に、白い肌がとても綺麗で、猫かぶりが得意で、本当は不器用で理不尽で乱暴で、強引で色っぽくて、とっても可愛い魔法使いの女の子なんだ」
想いが溢れて止まらない。
いつの間にか僕は、目から涙があふれ出ていた。
「うん……うん……」
ユーリエの大きな瞳が、潤んで輝く。
僕はユーリエを強く抱き締めて、言葉を紡ぐ。
「僕の想い人はユーリエ、ずっと前から君だよ。だから石碑巡り、一緒に行こうって言われた時、断ろうとしたんだ。君が欲しくてたまらない。そんな気持ちを抑えられる精神を鍛えたかったから」
「なるほど……そういうことだったのね」
全てを、吐露してしまった。
もう怖いものは、なにもない。
僕はユーリエが好きだ。
愛してる。
更にユーリエが顔を近づけてくる。
僕は目の前にあるユーリエの唇を、奪った。
そして……。
頭の先からつま先まで、お互いの全てを絡ませあって。
一緒に、眠りに落ちた。
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