転生したら女装オメガになってました〜運命の番を拒んだ第二王子に溺愛されています〜

ひなた翠

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第二章:秘恋の進展どこいった?

嫌がることはしないって言ったのに

 度重なるキスで、僕は酸欠状態になりベッドにぐったりと横たわる。

 全身の力が抜け、指先一つ動かすのも億劫だ。エドガー様からの執拗なキスで、苦しくなって口を開けて荒く呼吸を繰り返した。視界が僅かに滲み、天井がぼやけて見える。

(酸欠だ……キス、長すぎ問題)

 隣にエドガー様も横になり、後ろから僕の身体を愛おしそうに撫でていた。肩から腕へ、腕から腰へと手が移動していく。優しく、慈しむような手つきで、服の上から身体の線をなぞっていく。触れられるたびに身体が震え、まだ興奮が冷めていないのだと理解した。

「リオ、大丈夫?」
 耳元で囁かれ、頷こうとしたが首が動かなかった。

「――はい」

 かすれた声で返事をすると、エドガー様が後ろから優しく抱きしめてくれた。温かい体温が背中に伝わり、安心感が広がっていく。

 呼吸は徐々に落ち着いて、クラクラしていた頭も少しずつ正常に戻っていく。イッたときの気だるさがまだ身体に残っており、できるなら動きたくない。荷物を届けたし、帰るべきなのはわかっているが……ベッドに沈み込んで、このまま眠ってしまいたかった。

「リオ、落ち着いたらもう一回――」
「落ち着いていません!」

 エドガー様が言い終わる前に、僕は首を左右に振りながら返事をした。お尻に当たっていた。硬く大きくなった熱が、服越しに感じられる。エドガー様が言葉にしなくても、身体全身で「またしたい」と訴えられている。

 二十一歳の性欲は恐ろしい。

 四歳違うだけで、ここまで差が生まれるのだろうか。それともエドガー様が優秀なアルファだからなのだろうか。僕は性欲が強いほうではないと思う。ヒートのときは別として、普段はあまり欲を感じたことがなかった。

 ただ知らないだけかもしれない。

 前世でも恋愛らしい恋愛はしたことがなかった。恋人いない歴イコール年齢で、恋愛の知識はすべて小説からしか得たことがない。恋も常に片想いで、誰かと両想いになったことなど一度もなかった。

 リオナとしての記憶にあるものは、父への恐怖と服従しかなかった。恋だの愛だのというものは夢物語だと思うような生活。暴力と罵声の中で育ち、人を愛するということがどういうことなのか理解できなかった。

 前世も今世も、恋愛とは程遠い人生だった。

 ゆえに欲に対して強いか弱いかもわからない。自分の身体がどこまで耐えられるのか、何を求めているのか、何もかもが未知だった。

 したくないわけではない。

 振り返ってエドガー様を見つめた。琥珀色の瞳が僕を見つめ返している。優しい笑みを送ってくれて、胸が温かくなった。

「私は今まで、恋愛をしたことがありません」
 告白するように口にすると、エドガー様の表情が変わった。

「してたほうが、嫌なんだけど」
 低い声で囁かれ、彼の独占欲を感じる。

「こういうとき、どんなふうに対応するのがいいのか――わからないんです」
 正直に打ち明けると、エドガー様が後ろから強く抱きしめてくれた。

「したいか、したくないか。それだけ教えてくれればいいよ。俺はリオが本気で嫌がることはしたくない」
 優しい声に、涙が滲んできた。エドガー様の温もりが心地よくて、このまま抱きしめられていたかった。

「もう一回してもいい?」
 囁かれた言葉に、僕は頷いた。

「――はい」

 身体を起こすと、さっきと同じ四つん這いになった。ベッドに手をついて、腰を上げる。恥ずかしい体勢だと理解していたが、エドガー様に求められると嬉しいのは事実。

「向かい合ってしたい」
 エドガー様が僕の肩に手を置いて言った。

「後ろからで――」

(向かい合ったら、すぐ男だと知られてしまう)

 それは絶対、嫌だ。エドガー様は僕が女だと思っているから、誘っている。抑制剤で効かない部分の処理をしているんだ。

「わかった」

 エドガー様が僕の気持ちを汲んでくれて、首筋にキスを落とした。柔らかい唇が肌に触れ、身体が震える。
 スカートの上から尻を撫でられ、少しずつ裾を上げられていく。冷たい空気が太腿に触れ、鳥肌が立った。

 エドガー様が僕の下着に指をかけたとき、仮眠室のドアがノックされた。

「エドガー様、お休みのところ申し訳ありません」
 エリーゼの声だった。

 ドアの向こうから聞こえてくる声に、僕の胸が締め付けられた。エドガー様には運命の番となる人がいる。

エリーゼという運命の相手がいる。なのに僕は何をしようとしているのだろうか。お尻を突き出し、淫らな格好をしている。罪悪感が込み上げてきて、身体を起こそうとした。

「リオ、逃げないで」

 腰を掴まれて動きを封じられた。覆い被さってきたエドガー様が耳元で囁き、下着に手を入れてきた。濡れそぼった入口に指が触れ、ゆっくりと中に入ってくる。

「……っ!」
 声が出そうになり、慌てて口を押さえた。

「声は出しちゃだめだよ」

 にっこりと微笑むエドガー様が、ゆっくりと指の出し入れを開始した。くちゅっと水音が下着の中から聞こえてくる。

エリーゼがすぐそこにいるのに。ドア一枚隔てた向こうに人がいるのに。

(無理。絶対に無理。声が出る)

「――ぁ、……っ」

 口を手で押さえて、必死に声を殺した。喉の奥から這い上がってくる甘い声を、どうしても抑えられなかった。

(本気で嫌がることはしないと言ったのは誰!)

 またドアがノックされ、「エドガー様?」とドアの向こうから呼びかけられる。エリーゼの不安そうな声が聞こえてくるが、エドガー様は気にすることもなく、指の本数を増やして中をかき回した。ぐちゅりと中から蜜が溢れ、下着を湿らせていく。

「……ん、っふ」
 声が漏れた。手で口を押さえているのに、指の隙間から零れ落ちていく。

「可愛いよ、リオ。もっと早くするね。我慢せずに、イクんだよ」

 エドガー様が囁いた。指を奥まで入れると、指先だけを動かして弱い場所だけを狙って刺激してきた。さっき見つけたばかりの敏感な場所を、執拗に攻められる。

「んー、んぅ……っんんんんんぅぅぅ」
(そこはだめ。イってしまう)

 僕は腰を大きく動かして痙攣した。全身が震え、視界が真っ白になった。

「はあ……はあ」

 呼吸を乱し、僕はぐったりとベッドに倒れ込んだ。身体に力が入らず、動けそうにない。ぬるっとエドガー様の指が抜けていった。

(下着が濡れた――気持ち悪いかも)

 前から出した白濁の液で下着がすっかり濡れてしまった。

「下着、びちょびちょだね」
 嬉しそうに笑うエドガー様が、僕の下着を足からゆっくりと丁寧に抜いていく。

(だめ。脱がさないで。男だとバレる)

 慌てて下着を掴もうとしたが、間に合わなかった。僕の下着は足から抜けて、エドガー様の手の中に移動した。さらにドアがノックされて、僕は驚いてビクっと肩が跳ねた。

「エドガー様」
「うるさい」

 舌打ちをすると、至極面倒くさそうにエドガー様が呟いた。

 僕の下着を愛おしそうに見つめた後、ベッドの端に置いて立ち上がる。壁に掛けてある軍服のズボンを素早く履き、苛立ちを隠すこともなくドアへと向かった。

「なに?」

 少しだけドアを開けると、冷淡な声色で対応を始めた。氷のように冷たい声だ。さっきまで僕に優しく囁いていた声とは全く違う。

「エドガー様、お話が……」
「無理。仮眠中に起こすな。お前と話す気はない。帰れ」

 それだけ言うと、エドガー様はドアをすぐに閉めた。さらにわざとらしく大きな音を立てて、鍵を回す。ガチャリという音が部屋中に響いた。

(ちょっと待って)

 今の人こそ運命の番なのに。めちゃくちゃ冷たい態度だった。愛を交わすのはエリーゼで、僕とじゃないのに。原作ではあんなに優しく愛し合っていたのに。

「リオ、お待たせ」

 エドガー様が僕に抱きついて、深呼吸を繰り返した。顔を首筋に埋め、僕の匂いを嗅いでいる。

「ああ、いい匂い。リオの匂い、最高だ。あいつのせいで気分が削がれた。このまま、一緒に寝よう? リオの匂いに包まれて、仮眠したい――」

 優しい声で囁かれ、胸が痛くなった。

 下着を履いていない。
 足がスースーして心許なかった。

 エドガー様に言おうとしたが、眠さの極限だったらしく、エドガー様はすぐに寝息を立てて眠ってしまった。深い眠りに落ちたはずなのに、僕の身体をしっかりとホールドしており動けない。こっそり抜け出して帰るという選択肢が失われ、諦めてエドガー様の温もりを心地よく思っているうちに、僕もすっかり眠ってしまった。

 僕が目覚めたとき、外はすっかり夕闇に包まれていた。

 窓から差し込む光がオレンジ色に染まり、部屋全体が夕焼けの色に包まれている。隣に寝ていたはずのエドガー様の姿はなく、さらに脱がされた下着も消えていた。シーツの上を探し、ベッドの下を覗き、布団の合間を確かめた。何度も探したが、どこをどう探しても見つけられなかった。

 夕方から警備の仕事があると聞いていたから、エドガー様がいない理由はわかる。
 でもどうして下着がないのか。

 まさかエドガー様が持っていったのだろうか。考えたくない可能性が頭に浮かび、顔が真っ赤になった。

(ルナ様の警備中に僕の下着を持ってるとか――あり得ないって!)
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