支配者の刻印〜愛を知らない獣が、借金オメガを溺愛する〜

ひなた翠

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第五章:過去の向き合い方

超絶不機嫌な恋人

 篤志と別れて、僕は鷹臣さんの会社に戻ってきた。

(相当、怒ってるだろうなあ……鷹臣さん)

オフィスに入ると、鉄平さんが慌てたように駆け寄ってきた。表情は真っ青で、それを見ただけで鷹臣さんのご立腹度が伝わってくる。

「柊くん! 社長のご機嫌を直してぇ」
 拝むように両手を合わせられて、僕は思わず後ずさった。

「直してって……」
「超絶不機嫌なんだよ! さっきから誰が話しかけても無視するし、書類に目を通すだけで舌打ちするし、もう手がつけられない!」

 鉄平さんが必死に訴えてくる。他の社員たちも「やれやれ」と言わんばかりの呆れた表情で笑っていた。

「わかりました。行ってきます」

 諦めたように答えると、鉄平さんがホッとした表情を浮かべた。社員たちからも安堵のため息が聞こえてくる。僕は深く息をついて、鷹臣さんの部屋へと向かった。

(鷹臣さん……もうちょっと大人になれないかなあ)

 ドアをノックすると、低い声で「入れ」と返事があった。ドアを開けて中に入ると、鷹臣さんが机に足を乗せて座っていた。

 机の上には僕が買ってきたばかりのお菓子の袋が散乱しており、食べ散らかされていた。

「時間をくれてありがとうございました」
「ん」

 素っ気ない返事だった。不機嫌さが声に滲み出ていて、僕は小さくため息をついた。ドアを閉めて、鷹臣さんの机に近づく。

「何をそんなに怒ってるんですか?」
「わかるだろ」

 眉を寄せて、不満そうに睨みつけてくる。

「わからないから聞いているんです」
「カフェで男とお茶をしていた。それも柊を好きな男と!」

「僕は鷹臣さんが好きですよ」

 僕の返答に、鷹臣さんが一瞬だけ頬を綻ばせて嬉しそうに微笑むがすぐにむすっとした表情に戻ってしまった。

「気に入らない」
 子どもっぽい拗ね方に、僕は思わず笑いそうになった。

「僕たちが付き合ってるって相手が知っていたのに?」
 問いかけると、鷹臣さんが机に足を乗せたまま、さらに不機嫌そうな顔になった。

「知ってても、気に入らないものは気に入らない」

 不貞腐れた声だった。この前酔ったときに、篤志との関係を知っていたと話してくれたときとは大違いだ。あのときは、僕が二股でも構わないみたいな言い方をしていた。もっと別の関係になっていたんじゃないかと、冷静に分析していた鷹臣さんはどこに行ったのだろう。

 僕は小さく息を吐いた。

「どっちが本物の鷹臣さんですか?」
「――はい?」

 僕の問いに鷹臣さんの眉間に皺が寄る。

「二股でも構わないってクールに話していた鷹臣さんと、高校の友人とお茶するだけで嫉妬丸出しで怒る鷹臣さん。どっちが本心?」
「どっちも本心だが?」

「矛盾してません?」
「……そんなことを言われても」

 ぶつぶつと鷹臣さんが口籠る。

 デスクにのせていた足を下ろすと、居心地悪そうにお菓子の小袋をあけて口に放る。もぐもぐと噛みながら、視線が定まらずに泳いでいた。

「お菓子、食べ過ぎです!」
 さらにもう一袋、手を伸ばしかける鷹臣さんからお菓子の大袋を取り上げる。

「ちょっと!」
「僕のことでイラつくのは勝手にしてください。ただそのせいで、せっかく鷹臣さんの下で働いてくれている社員の皆さんの空気を悪くしないでください。いいですか?」

「――は?」
「いいですか?」

 僕がさらに念を押して、鷹臣さんを睨みつけた。

「……わかった」
 小さく呟く鷹臣さんを見て、僕は息をついた。

「篤志とはもう会いませんよ。高校のときにひどいことを言ったので、それを謝ってきました」
「――そうか」

 力無く返事をする鷹臣さんが、なんだか小さく見えた。

「それとお菓子の量、減らしてください」
「なんで?」

「食べ過ぎだからです」
「食べたいから食べる」

「じゃあ……午後のお菓子を我慢できたら、その日は一回セックスしていいというルールに変更するなら?」
「――条件を飲む。じゃあ、今すぐ抱かせて」

 低く、甘い声で囁かれて、僕の心臓が跳ね上がった。

「……今? 食べてましたけど?」
「今から食べない」

 鷹臣さんが席を立つと引き寄せられて、唇が塞がれる。鷹臣さんの舌が侵入してきて、深くキスをされた。息が苦しくなって、膝の力が抜けていく。

 キスをしながら、机に押し倒された。背中が硬い木の感触に触れて、書類とお菓子床が散らばる音が聞こえた。鷹臣さんが僕の上に覆い被さってきて、激しくキスを深めてきた。

「待って……」

 唇を離して抗議すると、鷹臣さんが僕の首筋にキスを落とした。

「柊の身体から、さっきのやつの匂いがする。すごく腹立たしい」
 吐き捨てるように言われて、僕の心臓が大きく跳ねた。

「嫉妬? ヤキモチ?」
「――独占欲だ」

 低く囁かれて、僕の身体が震えた。鷹臣さんの瞳が欲望に染まっていて、獣のような危険な光を宿している。
 鷹臣さんが僕の服を脱がし始めた。シャツのボタンを外して、肩から滑り落とす。冷房の冷たい空気が肌を撫でて、鳥肌が立った。

「鷹臣さん……」

 名前を呼ぶと、鷹臣さんが僕の唇を奪った。深く、激しいキス。舌が絡み合って、唾液が混じり合う。息が苦しくなって、僕は鷹臣さんの肩を掴んだ。

 ズボンも脱がされて、下着だけの姿になる。恥ずかしさで顔が燃えるように熱くなったが、鷹臣さんは構わずに僕の身体を愛撫してきた。

 胸に触れられて、敏感な突起を指で転がされる。

「んっ……」
 小さく声が漏れた。鷹臣さんが満足そうに微笑んで、さらに刺激を強めてくる。

「声、出すな。外に聞こえる」
 囁かれて、僕は慌てて口を手で塞いだ。鷹臣さんが僕の手を掴んで、机に押し付ける。

 鷹臣さんの手が下腹部を撫でた。下着の上から優しく触れられて、敏感な場所が反応してしまう。恥ずかしさで目を閉じたが、鷹臣さんの愛撫は止まらなかった。

「ここ、もう濡れてる」
 囁かれて、僕の顔がさらに熱くなる。鷹臣さんの指が下着を脱がせて、直接肌に触れてきた。

「ああ……っ」
 声が大きくなってしまう。慌てて口を塞ぐ。

 鷹臣さんの指が割れ目をなぞって、入口を撫でる。

「こんなに濡れて……俺のこと、欲しがってるのか?」
 意地悪く問いかけられて、僕は素直に頷いた。

 嫉妬する姿を見て、性欲を紛らわそうとお菓子を目の前で食べている姿を見ていたら、僕だって抱かれたくなる。少しでも好きな人の欲を解消してあげたい。

 鷹臣さんの指が中に入ってきた。ゆっくりと押し込まれて、内壁を擦られる。

「んん……っ」

 声を堪えようとするが、勝手に漏れてしまう。鷹臣さんが満足そうに微笑んで、さらに指を奥へと進めてきた。

「柊、可愛い」

 甘く囁かれて、僕の下腹部がさらに疼く。鷹臣さんの指が奥の敏感な場所を擦って、快感が全身を駆け巡った。

「ああ、だめ……そこ……」

 懇願するように呟くが、鷹臣さんは容赦なく刺激を続けてくる。もう一本指が加えられて、内壁を押し広げられた。
 鷹臣さんが指を抜いて、ベルトを外す音が聞こえた。ファスナーを下ろす音が響いて、僕の心臓が激しく跳ねる。

 鷹臣さんの熱いものが太腿に触れて、入口に当てられた。

「入れるぞ」

 低く告げられて、ゆっくりと押し込まれてくる。机の上に寝かされたまま、鷹臣さんの熱を受け入れていく。身体の奥が押し広げられて、熱い塊が侵入してくる感覚に息が詰まった。

「んんっ……!」
 声を堪えようとするが、大きな声が漏れてしまう。鷹臣さんが僕の口に手を当てて、声を塞いだ。

「静かに」
 囁かれて、僕は頷くことしかできない。鷹臣さんが腰を動かし始めて、奥を何度も突き上げてきた。

「柊……」
 鷹臣さんが僕の名前を呼んだ。低く、甘い声に、僕の心臓が大きく跳ねる。

「俺だけを見ろ」

 命令するように告げられて、僕は鷹臣さんを見つめた。鷹臣さんの瞳が優しく細められていて、愛おしそうに僕を見つめている。

「他の誰のものでもない。お前は俺のものだ」

 独占欲に満ちた言葉に、僕の胸が熱くなった。鷹臣さんの激しい動きが、少しずつ優しくなっていく。奥を突く動きが丁寧になって、愛撫するように身体の中を満たしてくる。

「愛してる」
 鷹臣さんが囁いた。

「柊を愛してる」
 もう一度、はっきりと告げられて、嬉しかった。

「鷹臣さん……」

 名前を呼ぶと、鷹臣さんが優しくキスをしてくれた。深く、愛おしむような口づけ。舌が絡み合って、お互いの息遣いが重なる。

「好き……」
 僕が囁くと、鷹臣さんの動きが止まった。

「もう一度言ってくれ」
 懇願するような声だった。僕は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、もう一度告げた。

「好き。鷹臣さんが好き」
 鷹臣さんの表情が蕩けるように柔らかくなった。嬉しそうに微笑んで、僕を強く抱きしめてくる。

「柊……」

 名前を呼ぶ声が震えていた。鷹臣さんが再び腰を動かし始めて、今度はゆっくりと、丁寧に、愛おしむように僕を愛してくれた。

 激しい嫉妬が、溺愛に変わっていく。

 鷹臣さんの動きが優しくて、身体の奥を丁寧に愛撫してくる。快感が優しく全身を包み込んで、幸福感が胸いっぱいに広がった。

「イッていいぞ」

 鷹臣さんが囁いた。その言葉を聞いた瞬間、身体の奥から何かが弾けた。視界が真っ白になって、全身が痙攣する。

「ああああっ……!」

 鷹臣さんも奥に腰を沈めて、動きを止めた。身体を強張らせて、熱いものが中に注がれる感覚があった。ドクン、ドクンと脈打つように、熱い液体が注ぎ込まれていく。

 荒い息を整えながら、鷹臣さんが僕を抱きしめた。繋がったまま、優しく抱きしめてくれる。温かい体温が伝わってきて、心臓の音が聞こえた。

「愛してる」
 もう一度、鷹臣さんが囁いた。僕は鷹臣さんの首に腕を回して、抱きしめ返す。

「僕も……」
 小さく囁くと、鷹臣さんが嬉しそうに笑った。額にキスを落として、頬を撫でてくる。

「柊はもう俺の匂いしかしないな」

 満足そうに呟かれて、僕は思わず笑ってしまった。独占欲が強すぎる鷹臣さんに、呆れながらも愛おしさが込み上げてくる。

「鷹臣さんの匂いしかしないよ」
 囁くと、鷹臣さんが満足そうに微笑んだ。もう一度キスをして、優しく僕を抱きしめてくれた。
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