1 / 13
1
しおりを挟む
「家が……燃えている」
桔梗は手に持っていた裁縫道具を下に落とすと、人ごみを掻き分けて家に近づいていく。
(どうして?)
黒煙を吹き上げる家は、真っ赤な炎に包まれていた。
(何で?)
「よう、燃えておるのう。わしに逆らうからいけないのじゃ」
遠くから聞こえてくる声に、桔梗は反応する。
扇子を持っている中年の男が、満足そうに微笑んでいるではないか。
(新撰組の芹沢鴨だ!)
下唇を噛むと、彼のことを睨む。
さっきまで自分は新撰組の近藤のところにいたのに……。
彼らの動きに気づくことが出来なかった。
屯所を出て行く芹沢たちとすれ違った。
彼らが出かけたのは、もしかして家を焼くためだった?
(悔しい)
逆らってなんかいない。
芹沢が買った服の代金も払わず、脅して金を巻き上げるのがいけないんだ。
『出世払いだ』なんて嘘をついて、大金を持っていく。
こっちだって商売。
お金が大事。
少しでいいから返金していってほしい、そう両親がお願いしただけなのに。
(もしかしたら、まだ助けられるかもしれない)
桔梗は人の輪から飛び出すと、家に向って走り出した。
「桔梗ちゃん! 駄目だ……」
後ろから、誰かに呼ばれた気がした。
それでも桔梗は振り返ることもなく、燃える家の中に入っていった。
家の中は、火と煙で目を開けているのが辛い。
桔梗は手に持っていた裁縫道具を下に落とすと、人ごみを掻き分けて家に近づいていく。
(どうして?)
黒煙を吹き上げる家は、真っ赤な炎に包まれていた。
(何で?)
「よう、燃えておるのう。わしに逆らうからいけないのじゃ」
遠くから聞こえてくる声に、桔梗は反応する。
扇子を持っている中年の男が、満足そうに微笑んでいるではないか。
(新撰組の芹沢鴨だ!)
下唇を噛むと、彼のことを睨む。
さっきまで自分は新撰組の近藤のところにいたのに……。
彼らの動きに気づくことが出来なかった。
屯所を出て行く芹沢たちとすれ違った。
彼らが出かけたのは、もしかして家を焼くためだった?
(悔しい)
逆らってなんかいない。
芹沢が買った服の代金も払わず、脅して金を巻き上げるのがいけないんだ。
『出世払いだ』なんて嘘をついて、大金を持っていく。
こっちだって商売。
お金が大事。
少しでいいから返金していってほしい、そう両親がお願いしただけなのに。
(もしかしたら、まだ助けられるかもしれない)
桔梗は人の輪から飛び出すと、家に向って走り出した。
「桔梗ちゃん! 駄目だ……」
後ろから、誰かに呼ばれた気がした。
それでも桔梗は振り返ることもなく、燃える家の中に入っていった。
家の中は、火と煙で目を開けているのが辛い。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる