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「殺されますよ」
「殺されても、殺したいのよ!」
沖田は桔梗から離れると、障子の近くに腰を落とす。
その際に腰についている刀を外して、畳に静かに置いた。
「その覚悟があるなら、僕を殺してから先生のところへ行ってください」
(え?)
殺されるとわかっているなら、行ってもいいと?
彼は、何を考えているのか。
桔梗は、暗闇の先にいる黒い塊を見つめた。
「貴女が殺されるところを僕は見たくありません。だから僕を殺してからにしてくださいね」
「は?」
思わず声をあげる桔梗。
彼が考えていることがわからない。
二人の距離は畳二枚分。
顔の表情がわからず、彼の気持ちを推測することも出来ない。
「私が貴方に襲い掛かっても、勝てないってわかっているから、そんなことを言えるのね」
「近藤さんが心配しています」
話題を変えた彼の声が、急に低くなる。
『近藤勇』
再び彼の顔が脳裏に浮かぶ。
身寄りのなくなった自分に、彼は優しくしてくれた。
全身に火傷の大怪我をした彼女に医師の手配をしてくれ、さらにどこか良い仕事先を……と探してくれた。見つかるまでの間、宿も手配してくれ、まさに至れり尽くせりだった。
でもそこから桔梗は逃げ出した。
新撰組の手を借りる気はないと……。
つまらない意地を張り、宿を飛び出して、舞妓になった。
「殺されても、殺したいのよ!」
沖田は桔梗から離れると、障子の近くに腰を落とす。
その際に腰についている刀を外して、畳に静かに置いた。
「その覚悟があるなら、僕を殺してから先生のところへ行ってください」
(え?)
殺されるとわかっているなら、行ってもいいと?
彼は、何を考えているのか。
桔梗は、暗闇の先にいる黒い塊を見つめた。
「貴女が殺されるところを僕は見たくありません。だから僕を殺してからにしてくださいね」
「は?」
思わず声をあげる桔梗。
彼が考えていることがわからない。
二人の距離は畳二枚分。
顔の表情がわからず、彼の気持ちを推測することも出来ない。
「私が貴方に襲い掛かっても、勝てないってわかっているから、そんなことを言えるのね」
「近藤さんが心配しています」
話題を変えた彼の声が、急に低くなる。
『近藤勇』
再び彼の顔が脳裏に浮かぶ。
身寄りのなくなった自分に、彼は優しくしてくれた。
全身に火傷の大怪我をした彼女に医師の手配をしてくれ、さらにどこか良い仕事先を……と探してくれた。見つかるまでの間、宿も手配してくれ、まさに至れり尽くせりだった。
でもそこから桔梗は逃げ出した。
新撰組の手を借りる気はないと……。
つまらない意地を張り、宿を飛び出して、舞妓になった。
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