年下αの一途な愛〜離さない、諦めない〜

ひなた翠

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プロローグ:

給料は身体で

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 土曜日の夕方、自分が経営するクリニックで、最近発表された論文を読んでいた。

土曜日は大学の後輩である神宮寺涼太が、患者のカウンセリングを行なっている。毎週土曜日は、僕が患者を出迎えたあと、別室で事務作業をしたり論文を読んだりして、カウンセリングが終わるのを待っていた。

『先輩、俺が普段着ている白衣です。午後はこれを着て待っていてください』
(普段、白衣なんて着ないくせに)

 心の中で呟きながら、僕は神宮寺の白衣に袖を通した。濃厚なアルファの匂いが染み付いている白衣は、オメガである僕には辛すぎる。

 セックスを知らなければ、なんとなく惹かれる匂い程度で終われたのに。

 アルファとの快楽に一度でも溺れたあとは、この匂いは身体を熱くしてお腹の奥が疼きだす。あの快感をまた味わいたくて、下着が濡れていく。

(論文が全く頭に入ってこない)
 腹がたつ。

 せっかくの休日。クリニックにいるのだから、少しでも今後の医療に関する知識を頭に入れておきたいのに。
 神宮寺の匂いのせいで、何も手につかない。

 診察室の方からドアが開く音がして、廊下を歩く足音が近づいてきた。ドアがノックされると、神宮寺の声が聞こえてきた。

「先輩、カウンセリング終わりました」

 僕はペンを置いてカルテを閉じる。立ち上がって待合室へと向かうと、患者の女性が椅子に座っていた。僕は穏やかな笑顔を作って、患者に近づいていった。

(良かった。すごく明るい表情になってる)

「お疲れ様でした。次回の予約はどうされますか?」

 患者が来週も予約を入れてから帰っていく。軽やかな足取りで帰宅していく背中を見送ってからドアを閉めると、クリニック内に静寂が戻った。

僕が診察室に足を踏み入れると、神宮寺が椅子に座ってこちらを見ていた。いつもの柔らかい笑顔ではなく、どこか熱を帯びた視線で僕を捉えていた。

「今日の給料、いただけますか?」
「アパートで」

 神宮寺が立ち上がって近づいてきた。神宮寺の手が僕の腰に回り、もう一方の手が僕の顎を持ち上げる。

 唇が重ねられると、舌が侵入してくる。深く濃厚なキスに抗う気力が失せていき、僕は神宮寺の白衣を掴んだ。

 神宮寺の舌が口内を蹂躙し、僕の舌を絡め取って吸い上げていく。膝の力が抜けていって、午後からずっと神宮寺の白衣を着ていた身体は、簡単に陥落していく。下着がさらに濡れ、欲しいと自らの腰を神宮寺へと擦り付けてしまう。

 キスが終わると、神宮寺が僕の耳元で囁いた。

「先輩、待てません。今すぐ欲しい」
 神宮寺の手が僕のズボンのベルトに伸びてきて、僕は神宮寺の手を払おうとした。

「アパートで」
「嫌です」

 神宮寺が僕を診察机の方へ押していく。

「俺の白衣を着たままで、ズボンと下着を下ろして、机に手をついて尻を突き出して」

 命令口調に背筋が震える。僕は唇を噛んだ。僕はズボンのベルトを外してズボンと下着を一緒に下ろす。白衣だけを纏った状態で机に手をついた。

 冷たい机の表面が手のひらに触れる。背後に神宮寺の気配を感じて、足音が近づいてくる音が聞こえた。白衣の裾を持ち上げられ、神宮寺の視線が僕の尻に注がれているのがわかり、恥ずかしさで顔が熱くなる。

「先輩、いつから期待してました? 俺に抱かれること。孔はぐちょぐちょだし、前からは涎のように滴っていますよ――ああ、ほら、先輩ので床が汚れましたよ?」

 神宮寺の指が後ろの孔に触れた瞬間、僕は声を噛み殺した。くちゅりと濡れている音が聞こえて、恥ずかしさで顔が熱くなる。

 神宮寺の指が孔の周りをなぞって入口を押し広げていく。指先が滑らかに動き、濡れた孔が簡単に神宮寺の指を飲み込んでいく。

 全身が火照てり、午後からずっと神宮寺の白衣を着ていた身体は、ようやく求めているものが入っていきたと言わんばりにヒクついた。

「うるさい。さっさと突っ込んで爆ぜろ」
「焦らないでください。先輩の身体、じっくり味わいたいんです」

 僕は奥歯を噛み締めて、指が一本、中に入ってくる感覚に身体を震わせた。

 異物感と快感が混ざり合って腰が浮き、、中を掻き回される。奥の一点を擦られるたびに声が漏れそうになって、僕は唇を噛んだ。

 神宮寺が僕の唇から血が滲んでいるのを見つけると、僕の顎を掴んで振り向かせた。

「声、聞かせてください」

 神宮寺が僕の唇にキスを落として、舌で血を舐め取る。僕は目を閉じて、神宮寺の指が三本に増えた。中を丁寧にほぐされて、腰が勝手に動いて神宮寺の指を求めてしまう。

「先輩、腰が動いてますよ。欲しかったんですね」
「うるさい」
「素直じゃないですね。でも、身体は正直ですよ」

 神宮寺の指が奥の一点を執拗に擦り、快感が波のように押し寄せる。僕は机を掴む手に力を込めた。

「先輩、すごく柔らかい。午後からずっと俺の白衣を着て、どうでした? 一人で抜きました?」
 神宮寺の声が耳元で響く。僕は机を掴む手に力を込めて、首を左右に振った。

「抜いてない。ずっと論文、読んでた」
「ああ、それは残念――でも下着まで濡らして……本当に論文、読んでました?」
「うるさい!」

 背後でゴムを装着する音が聞こえて、すぐに神宮寺の熱が僕の入口に触れた。

「だから、さっさと……んあああああっん」

 一気に奥まで貫かれた瞬間、僕は机を掴む手に力を込めた。痛みはなく、ただ満たされる感覚だけが全身を駆け巡る。

 神宮寺が腰を引いてまた奥まで突き入れて、ゆっくりとした律動が始まり、僕は声を殺すために唇を噛んだ。神宮寺の熱が奥まで入り、中を擦り上げていく。強い快感に全身が震えた。

「すごい、中までヌルヌル。ほら? 聞こえますか? 先輩の音」

 神宮寺がわざと音を立てるように腰を振る。ぐちゅぐちゅという水音が部屋に響いて、僕は顔を机に伏せて神宮寺の白衣の袖を噛んだ。

 甘い悲鳴が喉から漏れ、神宮寺の律動が速くなる。奥を突かれるたびに快感が全身を駆け巡って、午後からずっと神宮寺の匂いに包まれていた身体は、否応なしに神宮寺を求めていく。中が神宮寺の熱を強く締め付けた。

「いい声。先輩のシてるときの声って本当にそそります」
「いちいち、言わなくていい」
「言わないと伝わらないでしょう? 俺がどれだけ先輩に夢中か」
「知ってる、からぁっ、ああっ、んぅ、いきなり……速くするな」

 神宮寺の腰の動きが激しくなる。奥の一点を執拗に突かれて、快感で身体が痺れる。全身が熱くなって、イキそうになった瞬間、神宮寺がピタリと動きを止める。繋がりが解かれて物足りなさが残った。

 僕は振り返って神宮寺を見上げると、神宮寺が満足そうに微笑んでいた。

「知ってるなら、付き合って、先輩」
 甘いマスクで、囁いてくる。

「付き合わないって、言ってるだろ」
「じゃあ、イカせません」

 神宮寺が奥まで挿入すると、また腰を動かし始める。僕は机にしがみついて、快感が積み重なり、イキそうになると神宮寺が動きを止めた。

 寸止めを繰り返されて、僕の身体がおかしくなりそうだ。

「先輩、俺……イキそうっ」
 神宮寺が腰の律動を速めた。

(ああっ、僕も――)

 ぎゅっと強く前の熱を大きな手で強く握り締められると、僕はその痛みですっかりイキそびれてしまった。
神宮寺だけが奥で達して熱いものが注がれる感覚がある。ゴムをしているはずなのにまるで熱が直接注がれているような錯覚に陥った。

 涙が滲んで、視界が歪む。僕は神宮寺の白衣の袖を噛んで声を殺した。

(イカせてもらえなかった……)

「先輩、今、どんな顔してるか……わかります? すごく色っぽい顔で俺を誘ってますよ」
「誘ってない……」

 お前がイカせてくれないからだろう、と言い返したかったが、声が震えて言葉にならない。

 神宮寺が繋がりを解いて、ゴムを外すとゴミ箱に捨てる音が聞こえた。僕は机に手をついたまま、荒い呼吸を整える。

「先輩、まだ終わりませんよ。診察台に行きましょう」

 神宮寺の声に、僕は顔を上げた。膝の力が抜けて立てないのに、神宮寺が僕を支えて診察用のベッドまで歩かせた。

 診察用のベッドに寝かされると、新しいゴムを装着する音が聞こえた。準備が整うと僕の足を大きく開かせてくる。神宮寺が僕の上に覆い被さり、額にキスを落とす。

「先輩、俺と付き合いますか?」
「付き合わない」
「強情ですね」

 神宮寺が笑いながら、ゆっくりと入ってくる。神宮寺の熱が奥まで達する感覚に身体が震えた。神宮寺が腰を動かし始めて、僕は神宮寺の肩を掴んだ。

 解き放てない快感が簡単に積み重なり、またイキそうになる。神宮寺の動きが速くなると、奥を執拗に突かれた。

イく寸前で神宮寺が動きを止めて、僕だけがイケないまま神宮寺だけが達した。

(また――。苦しい。辛い……)

 正常位で繋がったまま、神宮寺が僕の額にキスを落とす。神宮寺が僕を見下ろし、満足そうに微笑んで、僕の頬を撫でた。

「苦しい。イキかせて――」
 本音がぽろりと口から出て、僕は自分の声に驚いた。

「付き合いますか?」
「無理」

 神宮寺がまたゴムを新しいものに替える。今度は僕を抱き起こして、対面座位で繋がり、神宮寺が僕の腰を掴んで動かす。

 キスをされて舌が絡み合って、甘い吐息が漏れた。

 神宮寺の舌が僕の口内を蹂躙し、唾液が混ざり合う。キスの合間に漏れる甘い吐息が耳をくすぐって、神宮寺の手が僕の腰を掴んで上下に動かす。奥の弱い箇所を執拗に擦られて、快感が限界へと近づいていく。僕は唇を離すと神宮寺の肩に顔を埋めて、声を殺そうとしたが、甘い悲鳴が漏れてしまった。

「ああっ、イっ、くぅ……」
 身体が震え、全身が快感に包まれる。神宮寺が僕の耳元で囁いた。

「先輩はだめです」

 声とは裏腹に前の熱を強く握りしめられる。射精を止められて中だけが激しく収縮を繰り返した。

 世界が真っ白になって全身が痙攣する。前からは何も出ていないのに、中が勝手に痙攣して神宮寺の熱を締め付ける。快感が波のように押し寄せて止まりそうにない。

「ん、んぅぅぅ、あ、やっ。んんあああああ」

 声が止まらず、僕は神宮寺にしがみついた。中だけでイく感覚に脳が溶けていき、神宮寺の肩にしがみついたまま動けなくなる。快感の波が全く引いていかずに、体力だけが奪われていく。

「先輩……すごい噛みついてくる。中が……最高に気持ちいいですよ」

 僕は神宮寺の肩に顔を埋めたまま、痙攣がおさまっていくと全身の力が抜けていった。
 優しく髪を撫でられて、額にキスを落とされる。僕は神宮寺の温もりに包まれたまま余韻に浸る。

「初めてのメスイキ、どうでした?」
「苦しかった。お前のせいだ!」

 僕は神宮寺を睨みつけたが、声が震えて何の凄みもなかった。神宮寺が嬉しそうに笑い、僕の髪を撫でる。

「こんなん着せるからだ!」
 僕は神宮寺の白衣を脱ぐと、顔面に投げつけると満足そうに僕を見つめてくる。

(その顔、むかつく!)

「満足しただろ。帰れ」
「帰りません。給料は月曜の早朝まで有効ですから。続きは先輩のアパートで」

 神宮寺が僕を診察台に寝かせると、繋がりを解いてゴムを捨てた。先に立ち上がり、服を整え始める。

 僕は力が入らずに、ベッドに横になったままで神宮寺を見上げた。神宮寺が腰を折るとキスを求めてきた。唇が重ねられ、舌が絡み合って、深いキスに息が詰まる。神宮寺の舌が僕の口内を蹂躙し、唾液が混ざり合う。キスが終わると名残しそうに糸が伸びて、ぷつりと切れた。

「先輩、好きです」

 囁かれた言葉に胸が痛む。思わず視線を逸らしてしまう。

「先輩のアパート、行きましょう」
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