黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~

ひなた翠

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「……ああ、マヤ。最高だよ。もっと吸って」
 じゅるっと音を立てると、小林の身体がぴくっと動く。瞼を閉じて、熱い吐息が漏れるあいつは、相当、気持ちよさそうだ。

「もっと……吸って。早く擦って……ああ、イキそうだ。……ん、くぅ……」
 デスクに両手をついた小林が、白濁の液を僕の口の中に放出しながら、ビクビクと小刻みに震えた。苦い液体が喉の奥へと流れていく。喉仏を上下させて、飲み込むと気持ち悪くて咳き込んだ。

「おいしい?」
「マズイ」

「俺はマヤのが甘くておいしいけど」
「変態」

「先輩はツンデレだよね?」
「小林……顔が……態度が。プライベートモードになってる」

「先輩、今夜は早く帰ってきてね」
「……わかったから。仕事モードに戻れよ」

 僕はデスクの中から出ると立ち上がった。オフィスを出ると、目の前にデスクがある美鈴さんがニヤニヤしながら僕を見ていた。

「甘いの?」
「……なわけないだろっ! 小林の味覚がおかしいんだ」

「デレッデレねえ。あいつ……麗香さんが一緒に仕事させたくないわけわかるわあ。いきなり勃起されてもねえ」
「身も蓋もない言い方やめてえ。僕の身体がもたないから」

「いっそのこと奥さんになれば? 専業主婦で、あっちだけに専念!」
「まじで……やめて」

 クスクスと楽しく笑う美鈴さんの声を背中に、僕は歩き出した。口の中にはまだ、あいつの苦みが残ってる。熱いコーヒーを飲んで、口の中をさっぱりしたい。






「へえ、そういうこと」
 休憩所でホットコーヒーを飲んでいると、しゃがれた低い声が右耳のすぐ後ろから聞こえてきて、心臓が跳ね上がった。吹き出しそうになって口元を抑えながら、僕はゆっくりと首を捻ると、意味ありげな表情で笑っている佐藤がいた。

 ち、近いんですけど?

 立ち位置がおかしい。恋人同士でもないのに、身体と身体がくっつきそうな位置にいるっておかしいだろ。

「佐藤……さん?」

 会議で小林と大喧嘩したって聞いた。僕を能無しだと言い、小林がキレた、と。この笑み、嫌な予感しかしない。さっきの……見られていたのだろうか。ガラス張りのオフィスだ……可能性が高すぎて……。

 僕は佐藤さんから視線を外した。これから何を言われるのか、心構えをしつつ、恐怖でコーヒーを持っている手が震えた。

「最初は美作のヒモだと思ったんだが……。それを知っている小林が、忠誠心を売るために守っているだけか、と。それにしても小林があんたを買いかぶりすぎてる。普段、誰が貶されていようとも気にとめもしないくせに……で、さっきのオフィスでのやり取りでわかった」

『いいから。早くっ、咥えて』
『ちょ……んぅ!』
『……ああ、マヤ。最高だよ。もっと吸って』

 スマホから、さっきのやり取りが聞こえてきた。

 え? なんで?
 僕は眉間に皺を寄せて佐藤を睨み、距離をあけようとするが、手を回されて股間を掴まれた。
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