完璧な義兄は不完全な愛に溺れる~義弟の甘い蜜~

ひなた翠

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第二十話「赤い薔薇が咲く肌」

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 課題を終えて、兄さんのマンションに向かった。いつもの「ちか」の格好ではなく、普段着のパーカーにジーンズ姿で、リュックを背負っている。エントランスのインターフォンを押すと、「どうぞ」という兄さんの声が聞こえて、自動ドアが開いた。エレベーターに乗り込んで、兄さんの部屋がある階へと向かう。

 玄関の扉を開けると、スーツ姿の兄さんが待っていた。ネクタイを緩めた姿が色っぽくて、心臓が高鳴る。

「お邪魔します」

 靴を脱ぐと、兄さんに抱きしめられた。激しいキスが降ってきて、舌が口の中に侵入してくる。絡み合う舌、混ざり合う唾液、熱い吐息が顔にかかって、身体が熱くなった。

「んっ……兄、さん……」

 名前を呼ぶと、兄さんの腕が僕をさらに強く抱きしめた。玄関で立ったまま、濃厚なキスを貪られる。息が苦しくなって、兄さんの肩を掴んだ。

 ようやく唇が離れると、酸欠でぼうっとする頭で、兄さんを見つめる。

「僕、今日は……ちかの格好じゃない」
 僕の言葉に、兄さんが口元を緩めた。

「女の格好しているから欲情してるわけじゃないよ。千景だから、いつも抱きたいって思うんだよ」
 兄さんの言葉と柔らかい眼差しに、顔が火照った。

「千景、寝室に行こう」
 僕は頷くと、手を繋いで寝室へと向かう。

 部屋のドアが閉まると兄さんの手が僕のズボンに伸びて、ベルトを外していく。金属が擦れる音が響いた。

「兄さん……」

 ズボンがゆっくりと下ろされていく。下着も一緒に脱がされて、下半身が露わになる。

「恥ずかしい……」
 両手で隠そうとすると、兄さんがそっと手を取った。

「隠さないで。全部見せて、千景」

 兄さんの低い声に、力が抜けていく。パーカーとシャツは着たままで、下半身だけが裸という状態が余計に恥ずかしくて、顔が熱くなった。

(私服を脱がされるのって、まだ慣れないな)

 兄さんが僕の足を大きく開かせて、膝を立てさせた。太腿が露わになって、兄さんの視線が僕の肌に注がれている。

「綺麗な肌だね、千景」

 兄さんが小声で言って、太腿に唇を這わせた。熱い舌が内腿をゆっくりとなぞって、肌を舐めていく。

「んっ……」

 小さく声が漏れて、腰が震える。兄さんの唇が太腿の柔らかい肉に触れて、何度もキスを落とす。繰り返されるキスに、肌が熱を持っていった。

「あっ……兄さん……」

 甘い声が出て、自分の声だと分かって恥ずかしくなる。兄さんの舌が太腿の内側を這い上がってきて、敏感な場所に近づいていく。心臓が激しく鳴って、息が荒くなった。

 兄さんの唇が太腿の柔らかい肉を強く吸い上げた。痛みと快感が混ざり合って、腰が浮き上がる。

「あっ、あっ……」

 甘い声が部屋に響いて、自分でも止められない。兄さんの舌が太腿を這い回って、吸われた場所がジンジンと痛みだす。

 膝の裏、太腿の付け根、至る所に吸い付かれて、キスマークをつけられていく。兄さんの手が反対側の太腿を撫でていて、指が内腿の柔らかい肉を揉みしだく。

「ここも、綺麗な色になるよ」

 兄さんが耳元で告げて、反対側の太腿も吸い上げた。左右の太腿に赤い痕がついていって、身体が熱くなる。

「兄さん、明日――僕、バイトが……」
 震える声で告げると、兄さんが顔を上げた。唇が濡れていて、目が熱を帯びている。

「わかってるよ」

 兄さんが答えて、今度は上半身へと手を伸ばした。パーカーの裾を掴んで、ゆっくりと引き上げていく。腕を上げさせられて、パーカーが頭を通り抜けた。下に着ていたシャツも脱がされて、上半身が露わになる。

「んっ……」

 全裸になって、兄さんの視線が僕の全身に注がれている。恥ずかしさで顔が紅潮して、目を逸らした。
 兄さんの唇が胸に触れて、先端を吸い上げる。舌で転がされて、軽く歯を立てられた。

「あああっ……」

 声が大きくなって、シーツを握りしめる。兄さんの手がもう片方の胸を揉みしだいて、指が先端を摘んだ。前と後ろから同時に責められて、腰が震える。

 胸から腹へ、脇腹から腰へ。兄さんの唇が身体中を這い回って、至る所にキスマークをつけていく。時には歯を立てられて、甘噛みされた場所が熱を持った。首筋にも強く吸い付かれて、痛みと快感が混ざり合う。

「んっ……ああっ……兄さん……」

 甘い声が止まらなくて、身体が敏感になっていった。長い愛撫に身体が蕩けていって、兄さんを求める気持ちが募る。

 長い愛撫の末に、兄さんも裸になって一つに繋がった。兄さんの剛直が中に入り、奥まで満たされていく。圧迫感と快感が同時に押し寄せてきて、息が荒くなった。繋がった瞬間、身体の奥が熱く満たされる感覚に包まれる。

「あああっ……兄さん……」

 最初から激しく突かれて、身体が大きく揺れる。ベッドがきしむ音が響いて、肌が打ち付けられる音が部屋に満ちた。兄さんの手が僕の腰を掴んで、逃がさないように固定している。

「千景……綺麗だよ……」

 兄さんが静かに言って、さらに深く突いてきた。奥の一点を何度も擦られて、視界が白く染まる。身体の芯から快感が湧き上がってきて、快楽の階段を駆け上っていく。

「そこっ……あっ、そこ……!」

 叫んだ瞬間、絶頂が訪れた。全身が痙攣して、兄さんのものを強く締め付ける。白い光が僕の世界を包み込んだ。

「兄さん、もうっ、無理……」
 震える声で訴えると、兄さんがにっこり笑った。

「千景、可愛い」

 兄さんの言葉に、顔が熱くなる。兄さんは動きを止めず、容赦なく突き続けてくる。一度目の絶頂の余韻が残っている身体を、さらに責められて敏感になった場所が何度も擦られる。

「やっ……待って……まだ……!」

 必死に訴えるが、兄さんは聞いてくれない。奥を突かれるたびに、快感が波のように押し寄せてくる。抗おうとしても、身体が勝手に反応してしまって、腰が兄さんの動きに合わせて揺れた。

「あああっ……!」

 二度目の絶頂が訪れて、声にならない叫びが漏れる。目頭が熱くなって、涙が止まらなくなった。兄さんがそっとキスを落としてくれて、涙を舐め取ってくれる。

「もう少し、千景。我慢して」
 兄さんの声に、僕は頷いた。兄さんに抱かれている幸せが心を満たす。

「ダメ……もう……」
 三度目の絶頂を迎えて、身体がガクガクと震える。空イキの痙攣だけが続く。

「んっ……あああっ……!」

 続けて四度目も空イキで、身体が弓なりに反る。兄さんのものが奥を擦るたびに、電流のような刺激が全身を走った。

「兄さんっ……もう……本当に……!」

 悲鳴のような嬌声をあげて、五度目の空イキを迎える。身体がぐったりとして、呼吸を整えることさえ難しくなった。涙と汗で顔が濡れていて、視界がぼやける。

 それでも身体の奥から快感が湧き上がってきて、全身が激しく痙攣する。何も出ないのに、絶頂の波が何度も押し寄せてきては、意識が飛びそうになった。

「ああああっ……兄さんっ……!」

 叫びながら、身体が弓なりに反る。兄さんのものが最奥まで突き刺さって、熱いものが中に注がれていくのがわかった。

「千景……愛してる……」
 兄さんが耳元で告げて、そっとキスを落としてくれる。

 全身の力が抜けて、荒い呼吸を繰り返す。兄さんがそっと抱きしめてくれて、体温が染み込んできた。

「おやすみ、千景」

 兄さんが小声で言って、僕を抱きしめたまま目を閉じた。疲れた様子で、すぐに寝息を立て始める。僕も兄さんの腕の中で、深い眠りに落ちていった。

 朝、目が覚めると隣には兄さんの姿がなかった。

(兄さん?)

 下着だけ履いて寝室を出ると、兄さんがスラックスとワイシャツ姿で朝食の用意をしてくれていた。キッチンからいい匂いが漂ってきて、胃が鳴る。

 僕に気づいた兄さんが「おはよう」と声をかけてくれた。キッチンから出てきた兄さんが軽くキスをして、僕の頬を撫でる。柔らかい手のひらが肌に触れて、心地よい感覚が広がった。

 兄さんの手が下に降りていって、満足そうに僕の身体に視線を向けている。僕も兄さんの手の動きに目を落として、身体中に点在するキスマークと歯形に驚いた。

「ちょっと……兄さん! これ!」
 声を上げると、兄さんが口元を緩めた。

「うん、付けちゃった」
 兄さんが嬉しそうに答えて、僕は顔が火照った。

「付けちゃった……じゃないよ? 僕、昨日言ったよね? バイトだって」
「言ってたね」

 兄さんが頷いて、僕は自分の身体を見た。太腿、胸元、首筋、至る所に赤い痕がついている。

「これは、僕の持ってる服ではどれも隠せないよ」
「いいんじゃない?」

 兄さんが平然と答えて、僕は慌てた。

「良くないから。どうしよう――」

 オロオロして、その場を行ったり来たりする。兄さんが楽しそうに笑っていて、余計に焦りが増した。

「兄さん、笑い事じゃないよ」

 僕が訴えると、兄さんがさらに笑った。低く、柔らかい笑い声が聞こえて、心が温かくなる。コンシーラーで隠せるだろうか。

(ああ、きっと玲司に冷たい目で見られる)


     ◇◇◇


 夜、バイト先の更衣室で鏡を見ながら、コンシーラーで首筋のキスマークを消そうとしていた。ファンデーションを重ねても、赤い痕が透けて見える。太腿のキスマークは諦めた。座るときに、なんとなく見えないように工夫するしかない。

「あら、ちかちゃんの彼氏さん、昨日の夜は頑張ったのねえ」
 更衣室に入ってきた環さんがにっこりと笑って、僕の身体に視線を向けた。

「すみません。頑張って消すので」
 慌てて答えると、環さんと一緒に入ってきた玲司が口を開いた。

「消さなくていいんじゃない?」
 玲司の言葉に、僕は首を傾げた。

「え?」
「だって、千景にたくさんの薔薇を咲かせてきてって命令したの……環さんだし」

 玲司が淡々と答えて、僕は驚いた。

「は?」

 玲司の言葉の意味が分からなくて、僕は環さんに目を向けた。環さんが楽しそうに笑っていた。

「ふふっ。ちかちゃんのキスマーク、意外とお客様に人気があってね。彼氏に愛されるちかちゃんっていつも以上に輝いてて、色っぽいんですって。それにキスマークが見えないように必死にスリットの位置を調整したり、胸元を引き上げたりする姿が可愛いって人気があるのよ。だから、昨日彼氏さんが来たときにお願いしておいたの。次の出勤日までにつけておいてって」

 環さんの説明に、僕は呆然とした。

「昨日? 次の出勤日?」
 首を傾げると、玲司が答えた。

「飲みに来たんだよ、彼氏が」
「玲司くん指名でね」

 環さんが嬉しそうに付け加えて、玲司が顔を歪めた。

「俺はそういう接客はしないのに」
 玲司が呟いて、僕は驚いた。

「来たの?」
「ああ。でも環さんの命令があるから、急いで帰ったけど」

 玲司の言葉に、平日の夜に急に「きて」と言われたのかを理解した。玄関に入るなり、あんな激しいセックスを――思い出すだけで顔が熱くなった。

「やだぁ、ちかちゃん! 彼氏との激しいのを思い出してお顔が真っ赤!」
 環さんが楽しそうに笑って、僕は顔を覆った。

「もうっ! 環さんのせいでしょう!」

 朝の兄さんが満足そうにキスマークと歯形を見て笑っていたのを思い出して、納得した。兄さんだって、朝のうちに僕に教えてくれればいいのに。内緒にして笑っていたなんて。

(ずるい。僕が一日、どんな思いをしたか……)

 環さんは嬉しそうに笑いながら、更衣室を出て行った。華やかなドレスの裾が揺れて、扉が閉まる音が響く。

「千景、あの人には伝えたけど。今度の定休日に俺のマンションに来て」

 玲司が真剣な顔つきで言って、僕は首を傾げた。あの人とは、兄さんのことだろう。

「なんで?」
「千景の荷物、全部持っていって。俺の家はもう出入り禁止。鍵も返して。荷物は全部、彼氏さんの家に運ぶことで了承は得ているから」

 玲司の言葉に、喉が詰まった。

「兄さんに話したの?」
「ああ。千景と別れたら、千景ごと衣装も返してって言ったら、『別れない』って言ってたよ。即答で」

 玲司の声が少し寂しそうで、心が痛んだ。

「――あ、うん」

 玲司の言葉に、嬉しさと恥ずかしさで頬が染まった。兄さんが即答で別れないと言ってくれた。その事実が心を温かくする。

「今まで、いろいろ助けてくれてありがとう」
 僕は玲司に深く頭を下げた。玲司がいなければ、今の僕はいない。

「俺が千景とのつながりを断ち切れなかっただけだから。気にしないで。女性が恋愛対象なら、いつかは千景がフラれるってどこかで期待してた。フラれて悲しむ千景の隙間に入り込んで、また付き合えたらっていう下心があって優しくしてただけ。その望みがないなら、優しくする必要はないからね」

 玲司の切ない表情を見て、苦しくなった。玲司の想いが伝わってきて、心が痛む。

 僕はリュックからマンションの鍵を取り出して、玲司に手渡した。冷たい金属が手のひらから離れて、玲司の手に渡る。鍵を受け取った玲司が、小さく息を吐いた。

「ありがとう、玲司」

 僕が静かに言うと、玲司が柔らかく笑った。少し寂しそうな笑顔で、でも穏やかで。玲司の目が僕を捉えていて、言葉にならない想いが伝わってくる。

「幸せになれよ、千景」

 玲司の言葉に、僕は頷いた。目頭が熱くなって、必死に堪える。玲司が僕の頭を撫でてくれて、柔らかい手のひらが心地よかった。
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