愛の物語を囁いて

ひなた翠

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秘密の協定

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『……と、いうことで。貴重なお時間をどうも、小暮先生』

 ガチャリと進路指導室のドアが開いて、英先生が出てきた。

「先生!!」と僕は顔をあげると、先生の前に立ちふさがった。

 黒い出席簿の合間に何かが挟まっているのが見える。

「それ……なんですか?」

 僕が指でさすと、先生が悪意に満ちた表情でにっこりと笑った。

「まあ、よくある取引材料とでも言っておこうか」

「小暮に、何をしたの?」

「何も。向こうが勝手に墓穴を掘ったから、せっかく掘ってくれた穴をそのまま埋めるのは勿体ないだろ?」

 先生が「使わなくちゃな、そういうのは」と言い、僕の視界から出席簿を外すように背中に隠した。

「さて。今日から家に帰ってもいいぞ。て、いうか、帰ってくれ」

 先生が右手を僕の頭の上に置いて、苦笑した。

「僕はまだ先生のアパートに居たい」

「居なくていい。高校卒業したら、同棲でも何でもしてやるから」

「ほんとに?」

「……ああ? ああ、まあな。だから卒業までは俺の生徒でいてくれ」

「わかった。そうする」

 僕の頭の上にある先生の手を握りしめると、口の前に持ってきてチュッとキスを落とした。

「そういうのは、生徒がやることじゃないだろ」

「今だけ。ね?」

 僕は上目づかいで先生を見やる。

 先生が呆れた表情で、「全く」と呟いた。

「好き、先生。僕は先生が好きだよ」

「わかったよ」と先生が返事をすると、僕の額にキスを落としてくれた。

 僕は幸せだ。今、きっと世界で一番幸せな人間に違いない。

 僕は自然と緩む口元に、きゅっと力を入れて笑顔を引っ込ませた。

 先生にとって、迷惑のかからない生徒でいなくちゃ。高校卒業まで、先生に僕を好きでいてもらえるように、僕は頑張らないと。

 先生、好きです。凄く好きです。溢れ出るこの感情をどうやったら、伝わるのか……。

 ううん。今は隠さないと、いけないのか。

 溢れ出る感情に蓋を閉めて、僕は先生の一生徒として、ひっそりと生活していこう!!

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