眠れる獅子と眠らない獅子

ひなた翠

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第一幕 ハイランドとローランドの締結

契りの紅き徴7

「結婚しておいてなんだが……ああいうのは趣味ではない」
「趣味であろうがなんであろうが、結婚とはそういうものだと知っているはずです」

「胸がない」
「感度が良いかもしれない」

 ……だな、確かに。感度は良かった。初夜のときに弄った乳首を思いだす。

「ガリガリ過ぎる」
「肌さわりは気持ち良いかもしれない」

 ああ、確かに。触り心地は良かった。
 男とは思わないほどきめ細やかで…って、なんで私があの男を抱く想像をしなくてはいけないのだ。

「それだけ好みの女と前座をしているのです。準備は万端ですよね? ちょちょっと妻の膜を破るくらい簡単でしょ」
 たく、好き勝手に言うな。あいつは男で、最初から膜なんてものはないんだ。

「行く気がしない」と、私はぼそっと零すと女が嬉しそうな顔をして、私の首に巻きついた。

 どうやら、正妻より愛人を選んだと思ったのだろう。別に、あいつが女ならこんなまどろっこしいことはしないんだが、な。

「イザベラ様には、頼るお方が一人もいないのに。ご友人と呼べる方も、気を許し合った人間も全てハイランドに置き、単身でカイト様の下に嫁いで来られ…日中は気丈に振る舞い、夫のために努力をして。夜は一人寂しくベッドに横になる。きっとお辛いでしょうねえ」

 ドリュが、首を左右に揺らしながら、『嘆かわしい』と言わんばかりに、言葉を紡ぐ。

「わかった、わかった。行けばいいんだろ、行けば」
 私が部屋に足を向けない限り、ドリュの話が永遠と終わらないと感じた。女も渋々、私の上から退くが、むすっとした表情で私を睨んだ。

「朝までお戻りにならなくて結構ですよ」
 ベッドから降りる私に向かって、ドリュがにこっと作り笑顔を向けた。

 あいつの部屋で、適当に時間をつぶしたら、即刻私の部屋に戻る。心の中で、ドリュに返事を返すと全裸にガウンだけ引っ掛けて、大股で歩き始めた。

 今夜は最悪の夜になりそうだ。
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