39 / 43
第28話 修復後の余韻
乱れたシーツが、
つい先ほどまでの熱をそのまま閉じ込めていた。
窓から入り込む風が
火照った体を少しだけ覚ましてくれる。
室内には、
まだ「事後」の空気が色濃く漂っていた。
体が、ひどく重たくてだるい。
思わず、眉間にしわが寄ってしまうほどに。
春は上半身だけを起こし、ベッドの上で両手を投げ出していた。
指先に力が入らない。
秘部には、じんじんとした鈍痛が、今なお残っている。
命を削られたときの異常とは、明らかに違う感覚。
それが、先ほどの激しい行為の余韻だという事実に、
春はどうにかなってしまいそうになる。
「どうした? ぶすくれて」
蓮の楽し気な声が、頭上から降ってきた。
すでに身支度を済ませ、涼しげな顔で見下ろしてくる。
――余裕なのが、腹立たしい。
自分は、心も体もぐずぐずに溶かされて、
わけがわからなくなるほど乱されたというのに……。
春は上目遣いで蓮を睨みつけると、
「誰のせいで……」
不満を口にした。
「力を吹き込んだから、体はそこまで辛くないはずだが」
「……すごく、だるくて重たい」
特に、下半身が。
鈍痛とともに、
まだ体内に蓮が入っているような、
生々しい感覚が消えない。
春は誰にともなく呟いた。
「いつもは、すぐ元に戻るのに……なんで今日は……」
命を削られたあと、
蓮に修復してもらえば、体の不調は一気に引いていく。
なのに、今回は違う。
やはり、情事の末に残る不調は、
力の及ぶ範囲外という事なのだろうか。
そんな春の逡巡を見透かしたように、
蓮が隣に腰を下ろした。
距離が、一気に縮まり、
至近距離で、視線が絡む。
「それは、わざと残したから当然だ」
春は、唖然とした。
「な…なんで? 痛いんですけど」
「だろうな」
蓮は目を細めると、
口元に笑みを浮かべた。
なぜ、笑うのか。
蓮はひょっとして、そっちの気でもあるのだろうか。
そんな思考が顔に出ていたのか、
次の瞬間、額を軽く弾かれた。
「痛い!」
「俺と繋がった事実を、
お前の体に刻みつけて残すためだ」
笑みを浮かべているのに、目だけは、ひどく真剣で。
それが、嘘や冗談ではないと告げている。
「ど、して? だって、あれは……」
――命を修復するための行為。
必要だったから。
仕方がなかったから。
そう、理解しているはずなのに、
言葉が、喉につかえて出てこない。
胸の奥が、ズキンと痛む。
俯いた瞬間、顎を取られ、強引に仰のかされた。
そのまま、唇が塞がれる。
「……ん」
まるで罰を与るかのような、荒々しい口づけに、
春は蓮の腕に力なく縋り付いた。
舌を絡めとられ、口腔内を激しく蹂躙されて
唇の隙間から、甘ったるい声が零れ落ちる。
「ふ……ぁ、や」
情事の余韻が、まだ体中に残っている状態で、
激しく唇を奪われ、
意思に反して
下半身に再び熱が集中していく。
「れん、さ……も、やめ……っ」
抵抗は、ほとんど意味を成さず、
むしろ、よけい煽るだけで。
下半身の熱がどんどん高まっていき、
疼きを伴う痺れに、春の指先が小刻みに震えだす。
ーーほんとに、もう、ダメ……っ!
そう思った瞬間、
ふいに唇が解放された。
名残惜しそうに糸を引く唇が、やけに艶めかしい。
頭が、くらりと揺れる。
「……な、んで……?」
息を整えきれないまま問いかけると、
蓮の親指が、春の濡れた唇に押しあてられた。
「お前は、俺が人助けで抱くような男だと思っているのか?」
切れ長の瞳が、真っ直ぐ射抜いてくる。
そこには、わずかな怒りが滲んでいた。
春の喉が、ひくりと震える。
(……どうして? なんでそんな……)
「それじゃ……まるで、僕のこと……」
「ーー好きだ」
はっきりと、告げられた。
春は、完全に言葉を失う。
「別荘の近くの森でキスした時も、
体を重ねた時も
……途中から、抑えが利かなくなった」
蓮はそこで一度、言葉を切った。
張りつめていた空気が、わずかに緩む。
そして、口元に笑みを浮かべて言った。
「お前の痴態が、
あまりにも艶めかしくて」
「なっ……!!」
痴態!?
艶めかしい!??
それは、どう考えても蓮のほうだろう――!
春が真っ赤になって言い返そうとした、そのとき。
ぞわりと、室内の空気が一変した。
異変を察知し、
二人同時に窓の外へと視線を向ける。
――彼方の気配がした。
なぜ春にも、それがわかったのかはわからない。
だが、確かに彼方だった。
「蓮さん、彼方は……!?」
彼方は、あの後どうなったのだろう。
春は、焦りを滲ませた顔で問いかけた。
蓮は、一瞬沈黙し、一言告げた。
「……よみがえった」
実態を、取り戻したのだと知る。
胸騒ぎに駆られ、
春は急いでベッドから降りようとしたが、足に力が入らない。
前のめりに倒れそうになった体を
蓮の力強い腕に抱き止められた。
春は、恨めしそうに蓮を見上げる。
「やっぱり……体、元に戻してください。できますよね?」
「ダメだ」
即答される。
「どうせ、いつか消える痕跡なら……
今、消してくれてもいいのに……」
「消える前に、またここに俺を刻み込めばいい」
下腹部を撫で上げながら、とんでもない事を言われる。
春は再び顔を真っ赤にして抗議しかけたが、
蓮に制される。
「行くぞ」
まだ言いたいことは、山ほどあった。
それでも春は、意識を切り替え、真剣な眼差しで頷いた。
つい先ほどまでの熱をそのまま閉じ込めていた。
窓から入り込む風が
火照った体を少しだけ覚ましてくれる。
室内には、
まだ「事後」の空気が色濃く漂っていた。
体が、ひどく重たくてだるい。
思わず、眉間にしわが寄ってしまうほどに。
春は上半身だけを起こし、ベッドの上で両手を投げ出していた。
指先に力が入らない。
秘部には、じんじんとした鈍痛が、今なお残っている。
命を削られたときの異常とは、明らかに違う感覚。
それが、先ほどの激しい行為の余韻だという事実に、
春はどうにかなってしまいそうになる。
「どうした? ぶすくれて」
蓮の楽し気な声が、頭上から降ってきた。
すでに身支度を済ませ、涼しげな顔で見下ろしてくる。
――余裕なのが、腹立たしい。
自分は、心も体もぐずぐずに溶かされて、
わけがわからなくなるほど乱されたというのに……。
春は上目遣いで蓮を睨みつけると、
「誰のせいで……」
不満を口にした。
「力を吹き込んだから、体はそこまで辛くないはずだが」
「……すごく、だるくて重たい」
特に、下半身が。
鈍痛とともに、
まだ体内に蓮が入っているような、
生々しい感覚が消えない。
春は誰にともなく呟いた。
「いつもは、すぐ元に戻るのに……なんで今日は……」
命を削られたあと、
蓮に修復してもらえば、体の不調は一気に引いていく。
なのに、今回は違う。
やはり、情事の末に残る不調は、
力の及ぶ範囲外という事なのだろうか。
そんな春の逡巡を見透かしたように、
蓮が隣に腰を下ろした。
距離が、一気に縮まり、
至近距離で、視線が絡む。
「それは、わざと残したから当然だ」
春は、唖然とした。
「な…なんで? 痛いんですけど」
「だろうな」
蓮は目を細めると、
口元に笑みを浮かべた。
なぜ、笑うのか。
蓮はひょっとして、そっちの気でもあるのだろうか。
そんな思考が顔に出ていたのか、
次の瞬間、額を軽く弾かれた。
「痛い!」
「俺と繋がった事実を、
お前の体に刻みつけて残すためだ」
笑みを浮かべているのに、目だけは、ひどく真剣で。
それが、嘘や冗談ではないと告げている。
「ど、して? だって、あれは……」
――命を修復するための行為。
必要だったから。
仕方がなかったから。
そう、理解しているはずなのに、
言葉が、喉につかえて出てこない。
胸の奥が、ズキンと痛む。
俯いた瞬間、顎を取られ、強引に仰のかされた。
そのまま、唇が塞がれる。
「……ん」
まるで罰を与るかのような、荒々しい口づけに、
春は蓮の腕に力なく縋り付いた。
舌を絡めとられ、口腔内を激しく蹂躙されて
唇の隙間から、甘ったるい声が零れ落ちる。
「ふ……ぁ、や」
情事の余韻が、まだ体中に残っている状態で、
激しく唇を奪われ、
意思に反して
下半身に再び熱が集中していく。
「れん、さ……も、やめ……っ」
抵抗は、ほとんど意味を成さず、
むしろ、よけい煽るだけで。
下半身の熱がどんどん高まっていき、
疼きを伴う痺れに、春の指先が小刻みに震えだす。
ーーほんとに、もう、ダメ……っ!
そう思った瞬間、
ふいに唇が解放された。
名残惜しそうに糸を引く唇が、やけに艶めかしい。
頭が、くらりと揺れる。
「……な、んで……?」
息を整えきれないまま問いかけると、
蓮の親指が、春の濡れた唇に押しあてられた。
「お前は、俺が人助けで抱くような男だと思っているのか?」
切れ長の瞳が、真っ直ぐ射抜いてくる。
そこには、わずかな怒りが滲んでいた。
春の喉が、ひくりと震える。
(……どうして? なんでそんな……)
「それじゃ……まるで、僕のこと……」
「ーー好きだ」
はっきりと、告げられた。
春は、完全に言葉を失う。
「別荘の近くの森でキスした時も、
体を重ねた時も
……途中から、抑えが利かなくなった」
蓮はそこで一度、言葉を切った。
張りつめていた空気が、わずかに緩む。
そして、口元に笑みを浮かべて言った。
「お前の痴態が、
あまりにも艶めかしくて」
「なっ……!!」
痴態!?
艶めかしい!??
それは、どう考えても蓮のほうだろう――!
春が真っ赤になって言い返そうとした、そのとき。
ぞわりと、室内の空気が一変した。
異変を察知し、
二人同時に窓の外へと視線を向ける。
――彼方の気配がした。
なぜ春にも、それがわかったのかはわからない。
だが、確かに彼方だった。
「蓮さん、彼方は……!?」
彼方は、あの後どうなったのだろう。
春は、焦りを滲ませた顔で問いかけた。
蓮は、一瞬沈黙し、一言告げた。
「……よみがえった」
実態を、取り戻したのだと知る。
胸騒ぎに駆られ、
春は急いでベッドから降りようとしたが、足に力が入らない。
前のめりに倒れそうになった体を
蓮の力強い腕に抱き止められた。
春は、恨めしそうに蓮を見上げる。
「やっぱり……体、元に戻してください。できますよね?」
「ダメだ」
即答される。
「どうせ、いつか消える痕跡なら……
今、消してくれてもいいのに……」
「消える前に、またここに俺を刻み込めばいい」
下腹部を撫で上げながら、とんでもない事を言われる。
春は再び顔を真っ赤にして抗議しかけたが、
蓮に制される。
「行くぞ」
まだ言いたいことは、山ほどあった。
それでも春は、意識を切り替え、真剣な眼差しで頷いた。
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。