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第29話 後編・覚醒
彼方の輪郭が、わずかに揺らぎ、
まるで光に溶けるように、透け始めていく。
「……っ」
彼方は、自分の腕を見下ろし、
次いで、恐怖に歪んだ顔で直哉を見つめた。
(まだ……
何も、伝えられてないのに!)
焦燥が、その瞳に浮かぶ。
「なお……
や、さ……』
彼方の声が空気に溶け、
直哉と蓮には、聞こえなくなる。
春は、考えるより先に駆け出していた。
蓮の叫び声と、
春の手が彼方に触れた瞬間が、重なる。
春の命が、彼方へと流れ込んでいく。
だが、それは、不思議な感覚だった。
己の中の白鷺の力を、完全に理解し、支配している感覚。
理由はわからない。
ただ――
彼方に残された時間と、与えるべき命の量が、はっきりとわかった。
命を吸われるのではない。
自らの意思で、命を与える。
削られる感覚は一切なかった。
体の奥深くから、無限に湧き出る力が“視える”。
「……春……?」
姿を取り戻した彼方が、
呆然と春を見つめる。
やがて、その顔がくしゃりと歪んだ。
「春……ごめん。ありがとう。
本当に……ごめん」
震える声で、何度も「ごめん」と「ありがとう」を繰り返す。
春は、彼方の手を取り、優しく笑った。
「行ってきなよ。
願いを、叶えるんだろう?」
彼方は、春の言葉に力強く頷くと、
直哉と共に夜の闇へと姿を消した。
「……本当に、お前は無茶をする」
背後から、深いため息が聞こえた。
振り返ると、腕を組み、呆れ混じりの視線を向ける蓮と目が合う。
「彼方も直哉さんも……大丈夫ですよね?」
「ああ」
蓮は、柔らかく微笑んだ。
「きっと大丈夫だ。
二人とも、覚悟を決めた目をしていた」
春は、静かに頷く。
もう、心配する必要はない――
どこかで、そう確信していた。
ふと、春ははっとして蓮を仰ぎ見た。
「蓮さん……
僕、今、すごく不思議な感覚がするんです。
何か……今までの自分じゃないみたいで」
蓮は、春の体をじっと見据えた。
「だろうな。
理由はわからないが、封印が解けかけている。
力が……目覚めている状態だ」
「だから……彼方に与える命の量がわかったり、
与えた後でも体調に変化がないんですね。
すごく……気分がいいんです」
まるで、見えない何かに守られているような。
春が自分の体を確かめていると、蓮がふいに言った。
「一度、命が空になりかけたからか。
命を落とせば、当然、封印も消滅する。
彼方に根こそぎ命を奪われて、
封印自体の効力が弱まった――そう考えるのが妥当だが……」
そこで、蓮は言葉を切り、春を見つめた。
「……?」
「それか――」
蓮の口元に、不敵な笑みが浮かぶ
「お前の中に、たっぷり注ぎ込んだからかもな」
一瞬、沈黙が流れる。
意味を理解した瞬間。
「な……っ!?」
春の顔が、真っ赤に染まる。
「な、何てこと言うんですか!?」
顔だけでなく、首まで真っ赤になって抗議する春に、
蓮の楽しげな笑い声が、玄関ホールに響き渡ったのだった。
まるで光に溶けるように、透け始めていく。
「……っ」
彼方は、自分の腕を見下ろし、
次いで、恐怖に歪んだ顔で直哉を見つめた。
(まだ……
何も、伝えられてないのに!)
焦燥が、その瞳に浮かぶ。
「なお……
や、さ……』
彼方の声が空気に溶け、
直哉と蓮には、聞こえなくなる。
春は、考えるより先に駆け出していた。
蓮の叫び声と、
春の手が彼方に触れた瞬間が、重なる。
春の命が、彼方へと流れ込んでいく。
だが、それは、不思議な感覚だった。
己の中の白鷺の力を、完全に理解し、支配している感覚。
理由はわからない。
ただ――
彼方に残された時間と、与えるべき命の量が、はっきりとわかった。
命を吸われるのではない。
自らの意思で、命を与える。
削られる感覚は一切なかった。
体の奥深くから、無限に湧き出る力が“視える”。
「……春……?」
姿を取り戻した彼方が、
呆然と春を見つめる。
やがて、その顔がくしゃりと歪んだ。
「春……ごめん。ありがとう。
本当に……ごめん」
震える声で、何度も「ごめん」と「ありがとう」を繰り返す。
春は、彼方の手を取り、優しく笑った。
「行ってきなよ。
願いを、叶えるんだろう?」
彼方は、春の言葉に力強く頷くと、
直哉と共に夜の闇へと姿を消した。
「……本当に、お前は無茶をする」
背後から、深いため息が聞こえた。
振り返ると、腕を組み、呆れ混じりの視線を向ける蓮と目が合う。
「彼方も直哉さんも……大丈夫ですよね?」
「ああ」
蓮は、柔らかく微笑んだ。
「きっと大丈夫だ。
二人とも、覚悟を決めた目をしていた」
春は、静かに頷く。
もう、心配する必要はない――
どこかで、そう確信していた。
ふと、春ははっとして蓮を仰ぎ見た。
「蓮さん……
僕、今、すごく不思議な感覚がするんです。
何か……今までの自分じゃないみたいで」
蓮は、春の体をじっと見据えた。
「だろうな。
理由はわからないが、封印が解けかけている。
力が……目覚めている状態だ」
「だから……彼方に与える命の量がわかったり、
与えた後でも体調に変化がないんですね。
すごく……気分がいいんです」
まるで、見えない何かに守られているような。
春が自分の体を確かめていると、蓮がふいに言った。
「一度、命が空になりかけたからか。
命を落とせば、当然、封印も消滅する。
彼方に根こそぎ命を奪われて、
封印自体の効力が弱まった――そう考えるのが妥当だが……」
そこで、蓮は言葉を切り、春を見つめた。
「……?」
「それか――」
蓮の口元に、不敵な笑みが浮かぶ
「お前の中に、たっぷり注ぎ込んだからかもな」
一瞬、沈黙が流れる。
意味を理解した瞬間。
「な……っ!?」
春の顔が、真っ赤に染まる。
「な、何てこと言うんですか!?」
顔だけでなく、首まで真っ赤になって抗議する春に、
蓮の楽しげな笑い声が、玄関ホールに響き渡ったのだった。
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