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第10章 ムンバイへの道(新7日目)
10ー3 ロナヴァラ(新7日目)
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ホーフォッ! ルォーンロンロンロンロンロンロンローーン!
奇声をあげ手に手に棒や武器を持った男たちが軽トラの行く手を阻む。
「あ!」
「済みません」
「こちらこそごめん」
恐怖のあまり運転席に身を寄せてしまいシフトを握るロハンの手に腰がぶつかってしまった。
震えが止まらない足の横でアンビカは固くライフルを押さえる。
(見えたら逆上されるかもしれないから)
肘の下、隠して握る手も汗で滑る。
「そのまま行け!」
後方からスンダルが叫ぶ。
「んなこと……間隔がよくわからねえ……」
ハンドルを握りしめロハンは焦る。
左も右も、軽トラが動く先に男たちが群がる。行く手を阻まれ軽トラックはゆっくりと停止にかかった。
出発時、荷台で仮眠をとるプラサットの代わりのようにアンビカが助手席に座った。
ロナヴァラ市街地に向かう道にはぽつぽつと店が見受けられ、右手に見えた八角形の建物は食堂のようだ。と屋上に、
「何か光っ……」
たみたい、と言い終わる前に男たちが出現した。
先ほどと違い軍人のような恰好ではない。シャツ姿の若い男たちが総勢十人以上、雄たけびをあげて襲って来た。
トラックは間もなく止まってしまう。
もし奴らが押し入って来たら、
(これで撃つ)
撃てるのか? じりじりとドア側へ銃口を動かす手も腕も震えている。
ダン! ダーン!
続けて、
ドン!
後方から三回銃声が響いた。
(荷台からだ)
「銃だ!」
「銃を持っているぞ!」
男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去る。
「銃なんて聞いてねえっちゅーの!」
路肩の木々向こうに消える男の声に、
「こっちこそ聞いてねえよ」
ロハンはげっそりと呟いた。
運転席に向かい右側板に腕を固定してイムラーンが、スンダルは立ったまま運転席左に銃を固定した。
「脅しだ。頭上を狙え」
所詮素人、銃を支えきれずどちらにしろ弾道はかなり上がる。最初は殺さない。
合図して同時に一発、スンダルは追加でもう一度撃った。二発目はとりわけあらぬ方にぶっ飛んだが奴らが逃げて行く路肩へ追う形になったので結果は良好だ。
叩き起こしたプラサットはレイチェルを奥にかばい左右を警戒している。
軽トラはようやく元のスピードに戻って直進しスンダルはため息を吐いた。
(何やってるんだ)
「今度はそのまま轢き殺せ!」
運転席に向かって叫ぶ。
あの建物を脱出する時自分はそうした。
「死亡事故のもみ消しくらい出来るんだろうが!」
「出来るとは思うけど……」
後方の怒号にロハンは前かがみでぶつぶつ呟く。
「あ、やったことはないですから、俺」
「うん」
「うわっ!」
ガラガラ、ドスン!
両脇から鉄の棒や鎌が道路に投げ渡された。
(っっっ!)
アンビカは身を縮める。
「進め!」
「無理だって」
後ろから好き勝手に言いやがって。
バン! ドンッッ!
何か投げられた。
(チッ)
投石か。右サイドミラーに当たって弾ける。
と荷台からも応戦し始めた。石に加え木箱が夜の路上に飛ぶ。
(迂回する!)
ロハンは一度車を止めるとすぐバックし、左方の脇道に軽トラを滑り込ませた。
しばらくの後。
軽トラックはロナヴァラを完全に通過してムンバイ方面へ向かっていた。
荷台ではプラサットが仮眠に戻り、レイチェルも木箱に寄りかかって目をつぶっている。眠れているのかは知らない。彼女の前方でイムラーンがライフルを握って警戒し、スンダルは反対側で主に前方に注意を払う。
イムラーンはあくびを連発しているが、こちらは肩や腕、首のぴりぴりとした痛みが眠気を払ってくれるのがありがたい。
ロナヴァラ市街、中心らしい方向へ入ろうとする度にチンピラめいた男たちに妨害された。
手を替え品を替え、人も入れ替わり、途中バイクを使う者も含めースンダルが見るところ三グループだった。
軍や警官崩れのプロをすぐ手配するのは難しくても、荒くれ共に暴れさせる程度なら人は集められる。ロナヴァラほど大きな街ならたやすいだろう。
最初の攻撃でアンビカがスマホのような光を見ている。
チンピラの強盗もどきかとも思ったが、執拗に、要所要所で街の外へ誘導したことからは「奴ら」の関与は明らかだ。「連中」は自分たちを標的と周知しロナヴァラに入れないよう指示したのだろう。
(何がまずかったんだ)
彼らの本拠地がロナヴァラなのか。
いやそれならもっとましな人員の手配も出来るだろうし殺しも辞さないだろう。一方先ほどの連中は「脅し」目的のようだった。
(この後、ムンバイへの間に大きな罠を仕掛けている?)
ラクシュミたちは無事だろうか?
どうであれ素直に彼らの誘導に従うのは馬鹿げている。ルートはー
(ん?)
ごとごとと道が荒れ出した。急な下り坂にのめり運転席後部を右手で支え痛みに眉を寄せる。
「オイ! どこ行くんだ!」
先ほど脇道にそれたのには気付いていた。小用か軽い修理でもするのかと見ていたが、軽トラは国道を離れ土道を進み続ける。
「町へ、行きます」
前方を凝視しつつロハンは言った。
国道を離れれば外灯はなくなる。光のない初めての道は慎重にならざるを得ない。
ついでにトラックの運転も初めてだ。ハンドルは重く切りにくく、高い運転席からは周りがよく見えない。
ラクシュミは普通に運転していたというが、あり得ない。
『私は運転のことわからないから、普通に見えただけかも。ただロハンの方が安定はしてる。もっとがつんがつん動いてたから苦労したんだとは思う』
そして、
『ラクシュミは右腕傷めてたんだっけ。おまけに撃たれてたよね』
『傷めたなんてもんじゃない。かなりの負傷でしたよ』
武装警備員とやりあったところをアンビカは見ていない。
『化け物かよ、あの人』
「ムンバイまでなんてとてもじゃないけど行けない」
「うん……」
下方から声がした。
ロナヴァラ市街の途中でアンビカは足元に無理に体を入れて身を隠し、そのまま助手席に座ろうとしない。
ロナヴァラからはそれなりに離れた。標高が下がったのか垂れる汗が増える。
左折した先に町があるとの標識を見た。
ここまで来ればもう違う地域だろう。「村」では小さすぎて何があるかわからず、派出所だけで首輪に対応出来ない可能性も高い。
だが町なら警察署のひとつくらいあるだろう。大きな署に連絡してくれさえすればいい。自分のことを州知事サイドに問い合わせてもらえればー
ドン!
凄まじい音が耳の後ろから響いた。
「止まれ! 次は本気で撃つぞ」
スンダルの怒号。
銃弾は後方から運転席と助手席の間を抜けウインドウ上端に穴を開けた。
(嘘だろ?!)
アンビカが両手で頭を抱えるのが見えた。
奇声をあげ手に手に棒や武器を持った男たちが軽トラの行く手を阻む。
「あ!」
「済みません」
「こちらこそごめん」
恐怖のあまり運転席に身を寄せてしまいシフトを握るロハンの手に腰がぶつかってしまった。
震えが止まらない足の横でアンビカは固くライフルを押さえる。
(見えたら逆上されるかもしれないから)
肘の下、隠して握る手も汗で滑る。
「そのまま行け!」
後方からスンダルが叫ぶ。
「んなこと……間隔がよくわからねえ……」
ハンドルを握りしめロハンは焦る。
左も右も、軽トラが動く先に男たちが群がる。行く手を阻まれ軽トラックはゆっくりと停止にかかった。
出発時、荷台で仮眠をとるプラサットの代わりのようにアンビカが助手席に座った。
ロナヴァラ市街地に向かう道にはぽつぽつと店が見受けられ、右手に見えた八角形の建物は食堂のようだ。と屋上に、
「何か光っ……」
たみたい、と言い終わる前に男たちが出現した。
先ほどと違い軍人のような恰好ではない。シャツ姿の若い男たちが総勢十人以上、雄たけびをあげて襲って来た。
トラックは間もなく止まってしまう。
もし奴らが押し入って来たら、
(これで撃つ)
撃てるのか? じりじりとドア側へ銃口を動かす手も腕も震えている。
ダン! ダーン!
続けて、
ドン!
後方から三回銃声が響いた。
(荷台からだ)
「銃だ!」
「銃を持っているぞ!」
男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去る。
「銃なんて聞いてねえっちゅーの!」
路肩の木々向こうに消える男の声に、
「こっちこそ聞いてねえよ」
ロハンはげっそりと呟いた。
運転席に向かい右側板に腕を固定してイムラーンが、スンダルは立ったまま運転席左に銃を固定した。
「脅しだ。頭上を狙え」
所詮素人、銃を支えきれずどちらにしろ弾道はかなり上がる。最初は殺さない。
合図して同時に一発、スンダルは追加でもう一度撃った。二発目はとりわけあらぬ方にぶっ飛んだが奴らが逃げて行く路肩へ追う形になったので結果は良好だ。
叩き起こしたプラサットはレイチェルを奥にかばい左右を警戒している。
軽トラはようやく元のスピードに戻って直進しスンダルはため息を吐いた。
(何やってるんだ)
「今度はそのまま轢き殺せ!」
運転席に向かって叫ぶ。
あの建物を脱出する時自分はそうした。
「死亡事故のもみ消しくらい出来るんだろうが!」
「出来るとは思うけど……」
後方の怒号にロハンは前かがみでぶつぶつ呟く。
「あ、やったことはないですから、俺」
「うん」
「うわっ!」
ガラガラ、ドスン!
両脇から鉄の棒や鎌が道路に投げ渡された。
(っっっ!)
アンビカは身を縮める。
「進め!」
「無理だって」
後ろから好き勝手に言いやがって。
バン! ドンッッ!
何か投げられた。
(チッ)
投石か。右サイドミラーに当たって弾ける。
と荷台からも応戦し始めた。石に加え木箱が夜の路上に飛ぶ。
(迂回する!)
ロハンは一度車を止めるとすぐバックし、左方の脇道に軽トラを滑り込ませた。
しばらくの後。
軽トラックはロナヴァラを完全に通過してムンバイ方面へ向かっていた。
荷台ではプラサットが仮眠に戻り、レイチェルも木箱に寄りかかって目をつぶっている。眠れているのかは知らない。彼女の前方でイムラーンがライフルを握って警戒し、スンダルは反対側で主に前方に注意を払う。
イムラーンはあくびを連発しているが、こちらは肩や腕、首のぴりぴりとした痛みが眠気を払ってくれるのがありがたい。
ロナヴァラ市街、中心らしい方向へ入ろうとする度にチンピラめいた男たちに妨害された。
手を替え品を替え、人も入れ替わり、途中バイクを使う者も含めースンダルが見るところ三グループだった。
軍や警官崩れのプロをすぐ手配するのは難しくても、荒くれ共に暴れさせる程度なら人は集められる。ロナヴァラほど大きな街ならたやすいだろう。
最初の攻撃でアンビカがスマホのような光を見ている。
チンピラの強盗もどきかとも思ったが、執拗に、要所要所で街の外へ誘導したことからは「奴ら」の関与は明らかだ。「連中」は自分たちを標的と周知しロナヴァラに入れないよう指示したのだろう。
(何がまずかったんだ)
彼らの本拠地がロナヴァラなのか。
いやそれならもっとましな人員の手配も出来るだろうし殺しも辞さないだろう。一方先ほどの連中は「脅し」目的のようだった。
(この後、ムンバイへの間に大きな罠を仕掛けている?)
ラクシュミたちは無事だろうか?
どうであれ素直に彼らの誘導に従うのは馬鹿げている。ルートはー
(ん?)
ごとごとと道が荒れ出した。急な下り坂にのめり運転席後部を右手で支え痛みに眉を寄せる。
「オイ! どこ行くんだ!」
先ほど脇道にそれたのには気付いていた。小用か軽い修理でもするのかと見ていたが、軽トラは国道を離れ土道を進み続ける。
「町へ、行きます」
前方を凝視しつつロハンは言った。
国道を離れれば外灯はなくなる。光のない初めての道は慎重にならざるを得ない。
ついでにトラックの運転も初めてだ。ハンドルは重く切りにくく、高い運転席からは周りがよく見えない。
ラクシュミは普通に運転していたというが、あり得ない。
『私は運転のことわからないから、普通に見えただけかも。ただロハンの方が安定はしてる。もっとがつんがつん動いてたから苦労したんだとは思う』
そして、
『ラクシュミは右腕傷めてたんだっけ。おまけに撃たれてたよね』
『傷めたなんてもんじゃない。かなりの負傷でしたよ』
武装警備員とやりあったところをアンビカは見ていない。
『化け物かよ、あの人』
「ムンバイまでなんてとてもじゃないけど行けない」
「うん……」
下方から声がした。
ロナヴァラ市街の途中でアンビカは足元に無理に体を入れて身を隠し、そのまま助手席に座ろうとしない。
ロナヴァラからはそれなりに離れた。標高が下がったのか垂れる汗が増える。
左折した先に町があるとの標識を見た。
ここまで来ればもう違う地域だろう。「村」では小さすぎて何があるかわからず、派出所だけで首輪に対応出来ない可能性も高い。
だが町なら警察署のひとつくらいあるだろう。大きな署に連絡してくれさえすればいい。自分のことを州知事サイドに問い合わせてもらえればー
ドン!
凄まじい音が耳の後ろから響いた。
「止まれ! 次は本気で撃つぞ」
スンダルの怒号。
銃弾は後方から運転席と助手席の間を抜けウインドウ上端に穴を開けた。
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(2022.04.04)
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