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第1章 リアル人狼ゲームへようこそ(1日目)

1ー13 初日の切り札

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『Your role is……

 Villager(15) 』

 四角い緑地のアイコンに中世ヨーロッパ風? の農民が描かれている。
 村人という役は一番人数が多く無難そうだ。夜中に変な恐いことをしろとも言われていないしーシュルティは少し気を緩めた。
 切り札はというと、

『あなたの切り札は……

 1日目脱出権(9)

 です。

・同じ切り札のプレイヤーは9人います
・初日、つまり本日に限り二十三時から〇時までの間、部屋及び建物の外に出ることが出来ます
・この間あなたのカードキーで建物の玄関ドアが開きます
・条件をクリアし敷地の外に出られたならその瞬間からあなたは自由です。首輪も無効化されます。同時にリアル人狼ゲームの出場権を失い賞金の対象外となりますので熟考の上行使してください  』

 NEXT

『切り札についての最後にー

・この部屋は「1日目脱出権」部屋です
 全員が同じ切り札を持っています   』

(ということはー)
 シュルティが黒幕から顔を出すとキランが、
「役何だった? あたしは象使い」
 軽く尋ねる。
(へっ?)
「村人だったよ」
「タヒラは?」
「占星術師。キランはチームが違うんだね」
 心持ち眉を曇らせる。
(チーム違うなら点を取り合う感じ?)
 気にした様子もないキランに聞かれるより早く、
「わたしも村人。そんなことより切り札でしょう。……わたしは行使する!」
 サニタはいきなりクローゼットを漁り始めた。
「私も」
(お家に帰れるなら!)
 逃げられるなら逃げなきゃとシュルティもぴょこんと椅子から立つ。残りふたりも後に続いた。

 まだ夜は冷える。初めセーターを手に取ったがマヤが好きではないと言っていたのを思い出し、願掛けの気分でウールのショールを選んで巻き付ける。クリーム色に茶色の幾何学模様のそれはシュルティの好みからは渋過ぎるデザインだ。
 それぞれ防寒具を見繕い気配を殺して部屋を出た。
 広間のシャンデリアは消え、間の照明も間引かれて全体に薄暗かった。

「ここガーラブたちが死んだ所だよね」
「あの子が掃除してたから大丈夫だと思う」
 一瞬躊躇するがサニタの返事に白い石の床を踏んで玄関を通過する。
 カードキーをかざすとキープレートの赤ランプが緑に変わった。カチッと小さな機械音が聞こえる。
 彼らの蹴り跡が残る木のドアは無事に開いた。

「っ!」
 すぐ前に男が立っていた。室内の灯りを映してその眼鏡が光った。
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