リアル人狼ゲーム in India〈リターン&リベンジ!〉

大友有無那

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第3章 仲間ではいられない(3日目)

3ー5 交渉

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「学校に雇われているってことでいいんだよね。寮の仕事だけ?」
「寮と、昼間は学校の職員室のお仕事もしています」
 ルチアーノの問いにラジューは答える。
 モーニング・チャイや掃除で寮の雑役人のひとりとしてラジューを知っていた。
 学校の雑務全般が仕事の範囲らしい。しかし、ここでの生徒の身の回りの世話は入らないと指摘すると、
「でも、先生が!」
 バスでルクミニー先生が仕事にしてくれると言ったと主張する。
「電話なさってー」
「それは校外学習の間なんだろ? ここは違う」
 手のひらで広間を示す。
 外に出たら殺される、綺麗で広々とした監獄ー

 自分が雇っている訳でもないのに命令を下す生徒たちを何だかなぁと苦く眺めていた。
 施設の先輩から話を聞き、また自分のアルバイトでも注意するが給料は最初に決まった内容でのみ発生する。ラジューにとって何日間か分の給料が出るか出ないかは死活問題だろう。
 ルクミニー先生のことを思い出し胸が詰まるが隠して話を続ける。
「学校は契約で決まった以外の仕事にはお金を出さないと思うよ」
「契約書は? 読んだか?」
 スティーブンが尋ねるが父親が持っているかなと首を傾げるだけだ。
(うちの学校なら契約書英語じゃないか?)
 ヒンディー語だったとしても長文を読むのは苦手かもしれない。ほとんど意味がない問いだ。

「ならいい。私が雇う。1日100ルピーでどう?」
 唐突なナイナの宣言だ。
「もう少しいただきたいのですが」
 ラジューは下手から交渉にかかる
「駄目だよ」
 ルチアーノは即座に斬った。
「何が?」
 ナイナは小首を傾げる。
「もし……万が一君が亡くなったらラジューは金をもらい損なう。クラス全員と契約しなきゃ」
「……ふざけないでよ」
 切羽詰まった声音にぎょっとしたがナイナはこちらを見ず下に向かってつぶやいていた。彼女が死ぬことが冗談ではない、というのか。

「それならクラスでお前を雇おう。身の回りの世話は必要だ」
 すぐスティーブンが提案した。
(……)
「日給か月給か? どれくらいで働いているんだ?」
「月に一万ルピーです」
 尋ねたスティーブンにナイナと何人かが首を横に振る。
(かなり盛ったな)
 ルチアーノも思う。1日に直せば300ルピー以上だ。

「僕たちは学生だしそんな大金は出せない。それと、僕はラジューが学校からお金がもらえるのが一番だと思っている。無事に戻ったら僕たちからしっかり働いてくれたと先生方に伝えるから、まずは学校と相談しろ」
「はい」
「もしそれでも給料を削ると言われてしまったら、その時は僕たちが払う。それでいいか」
「かしこまりました」
「金額は日に150ルピー」
(あともう少しだけ上げた方がいいんじゃないか)
 言い出せないのは全額自分で払えと言われたら困るからだ。
 奨学金の他に教科書代なども支給されているが、それ以外の小遣いは全くないので週に二回、製本工場の雑用をしてノートやペン、友達と食べに行く時の費用にあてている。
 皆で出し合うならルチアーノも協力するが100ルピー以上はきつい。
 言い出したナイナやスティーブンなどひとりで全額払える人間もここには何人もいるのだろうが。
「160! それでいいだろ」
 アッバースの一声にラジューも了承して話は決まった。

 いざとなったら雇うにしても、
「彼にも食事や身の回りのことをする時間が必要だ」
 早速仕事にとラジューはシンクの方に去った。お金がはっきりしたためか心なし元気な足取りだ。
 その背を見ながらスティーブンがナイナに小声で何か言った。と、
「甘やかしちゃ駄目。そんなのは使用人の側で時間をやりくりすればいい」
「ナイナ。今は普通じゃない。夕食の後は『会議』で、三十分で身支度を済ませ部屋のPCの前で待機だ。使用人だって同じ人間なんだから、生活を支える時間を与えなかったら人権の問題、差別だ」
 ラジューに仕事を割り振り過ぎたとでも言っているのだろうか。
 我が国が「法律上」不当な差別を許していないのは授業でも習うが、
(……)
 ルチアーノは唇を歪めて笑い、
「差別なら君も結構酷いよ」
 思わず口に出した。
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