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第4章 いつまで耐えねばならないのか(4日目)
4ー2 土
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「チャイをどうぞ」
ラジューに手渡されたガラスコップのチャイをルチアーノは反射的に受け取る。
「どうぞ」
目の端にスディープが手を振り断るのが見える。
「あんた、今そんな気分じゃないってわかんないの!」
コップを差し出されナイナが怒鳴る。申し訳ございませんと後ずさるラジューにマリアがすっくと立って寄った。自分にはわからない響きーマラヤラム語だろうーでささやいた後、
「チャイ、テーブルの方に置いてもらうね」
あたりに言う。声は小さく反応する者もいない。
十分ほど前。
アッバースがカマリを弔うと広間に声をかけたが火葬室前に来た男子はアッバースとナラヤン、ラジューと義務感で体を引きずった自分だけだった。四人で彼女の亡骸を運び親しかったナイナが寄り添う。
カマリは両肩を切られていた。顔や手は綺麗に拭われていたが染まるどころか血に浸ったサルワールが凄惨な殺され方を物語った。
七時には皆カエルのように広間の中央窓にへばり着いた。
スティーブンとの別れを惜しみシャッターが降りるにつれ腰をかがめ膝で立つ。
後ろに立っていたルチアーノをアッバースが素早く振り返り手で呼んだ。窓前で膝立ちの彼は自分の首後ろをぐいと抑え横に持ってきた。
人は土から作られ、土に帰る。
その通り乾いた土の上に転がったスティーブンの姿を目に焼き付ける。痛いほど首を抑えるアッバースの手は別れを促す優しさであり、断罪でもあるように思えた。
放心状態で広間に座り込むクラスメートの多くはチャイを飲む気力もないようだ。ルチアーノはぐびぐびとチャイを喉に送り込んだ。寮でのモーニング・チャイと同じなのはラジューがいれているから当たり前だが、ミルクが多くカルダモンだけが効いたいつもの味がまたルチアーノを打ちのめした。
動き出す者、交わされる会話。
そろそろ台所に行かなくては、料理でくらい役に立たないと。
思いつつ白い石の床の心地よい冷たさから離れられないでいた時、
「ちょっと、ちょっと待ってよバーラム!」
慌てたナイナの声が響いた。
「女子ちょっと来て!」
ルチアーノは薄紙で隔てたようにその様子を見て、立ち上がった。
ラジューに手渡されたガラスコップのチャイをルチアーノは反射的に受け取る。
「どうぞ」
目の端にスディープが手を振り断るのが見える。
「あんた、今そんな気分じゃないってわかんないの!」
コップを差し出されナイナが怒鳴る。申し訳ございませんと後ずさるラジューにマリアがすっくと立って寄った。自分にはわからない響きーマラヤラム語だろうーでささやいた後、
「チャイ、テーブルの方に置いてもらうね」
あたりに言う。声は小さく反応する者もいない。
十分ほど前。
アッバースがカマリを弔うと広間に声をかけたが火葬室前に来た男子はアッバースとナラヤン、ラジューと義務感で体を引きずった自分だけだった。四人で彼女の亡骸を運び親しかったナイナが寄り添う。
カマリは両肩を切られていた。顔や手は綺麗に拭われていたが染まるどころか血に浸ったサルワールが凄惨な殺され方を物語った。
七時には皆カエルのように広間の中央窓にへばり着いた。
スティーブンとの別れを惜しみシャッターが降りるにつれ腰をかがめ膝で立つ。
後ろに立っていたルチアーノをアッバースが素早く振り返り手で呼んだ。窓前で膝立ちの彼は自分の首後ろをぐいと抑え横に持ってきた。
人は土から作られ、土に帰る。
その通り乾いた土の上に転がったスティーブンの姿を目に焼き付ける。痛いほど首を抑えるアッバースの手は別れを促す優しさであり、断罪でもあるように思えた。
放心状態で広間に座り込むクラスメートの多くはチャイを飲む気力もないようだ。ルチアーノはぐびぐびとチャイを喉に送り込んだ。寮でのモーニング・チャイと同じなのはラジューがいれているから当たり前だが、ミルクが多くカルダモンだけが効いたいつもの味がまたルチアーノを打ちのめした。
動き出す者、交わされる会話。
そろそろ台所に行かなくては、料理でくらい役に立たないと。
思いつつ白い石の床の心地よい冷たさから離れられないでいた時、
「ちょっと、ちょっと待ってよバーラム!」
慌てたナイナの声が響いた。
「女子ちょっと来て!」
ルチアーノは薄紙で隔てたようにその様子を見て、立ち上がった。
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