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3 それは危険だけどららたむのためだから
3ー1 かくしごと
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人間は汚い。
自分もそうだ。
広がる空のような曇りない美しい心をどうして掴み取れないのか。
エゴも執着もない、分け隔てなく広大な慈悲はどうしたらこの胸に宿る?
窓の外、緑の三角形に尖る山なみに白い雲が腹を乗せ、その上には水色の空が果てなく広がるー
「空に問う?」
ガタガタッ。
「オイッ!」
ーーーーー
「今回思い出した前世ではサラリーマンだったんだね。他にどんなことを覚えている? 地域はどのあたりの雰囲気だった?」
「日本です! それも今とあまり違わない感じの……。今回の直前の前世だったのかもしれません」
「そうか。結構珍しいんじゃないかな。それで君はどんなことをしていた?」
「アイドルファンでした。かなり熱心な」
「ふうん」
「そういうどうでもいいことに心をのめらせていた報いはすぐにきました。悪い噂が報道されて彼女は引退してしまったんです。それからの僕は抜け殻みたいに過ごして、人生の目的を見失った挙げ句事故で死にました。酷いんです。公園みたいな所をぼんやり歩いていて低い植え込みに気付かなくて、転んだ拍子に偶然枝先が首の急所に刺さって……即死だったみたいです」
「最後に何を考えてた?」
「空を見ていました」
「……」
「会えなくなったアイドルのことを空から連想して、ぼおーっとしてました」
「芸能人なんかに入れ上げる愚かさを今際の際、痛切に感じた。それも今世の徳に繋がったんだろうね。いつまでも輪廻をさ迷う空しい人生を送らないよう君は『シュンニャーの道』に縁付いて生まれたんだ」
「……」
「死の瞬間の意識は次の生を規定するからね。あと、そのアイドルの名前は思い出せる?」
「はい?」
「教団では生まれ変わりの証拠を集めているんだ。そうやって輪廻転生の真実を証明していけば頼りになるのは唯一真実の宗教『シュンニャーの道』だけだと世界に明かしていける。……何か覚えていれば、だけどね」
「名前は分かりません。ただ、『ららたむ』と呼ばれていた気がします」
「ららたむか。調べてみよう」
「……」
「これで面談は終わりだ。これから祭りに戻っても自分を見失わず絶えず心を見つめて過ごしなさい。脚立から落ちたことに説教はしないよ。痛い思いをしたのは君だし、転生前の記憶をまたひとつ思い出すこともできた。君が気絶している間多くの仲間が心配していたことだけは覚えておいてね」
「はい、申し訳ありませんでした。スワミ」
「そうだ待ってくれ! 君に伝えることがあった。これー」
手渡された小さなものに胸がどくりと鳴る。
この緊張を、悟りの階梯を昇り超人的なものを見通す目を持ったと言う上司に気づかれないように忠実な信者の顔を作って部屋を辞した。
時間がない。
ららたむのためになってもならなくても、やるだけはやろう。
「ここ」にいるのもあとわずかだからー
自分もそうだ。
広がる空のような曇りない美しい心をどうして掴み取れないのか。
エゴも執着もない、分け隔てなく広大な慈悲はどうしたらこの胸に宿る?
窓の外、緑の三角形に尖る山なみに白い雲が腹を乗せ、その上には水色の空が果てなく広がるー
「空に問う?」
ガタガタッ。
「オイッ!」
ーーーーー
「今回思い出した前世ではサラリーマンだったんだね。他にどんなことを覚えている? 地域はどのあたりの雰囲気だった?」
「日本です! それも今とあまり違わない感じの……。今回の直前の前世だったのかもしれません」
「そうか。結構珍しいんじゃないかな。それで君はどんなことをしていた?」
「アイドルファンでした。かなり熱心な」
「ふうん」
「そういうどうでもいいことに心をのめらせていた報いはすぐにきました。悪い噂が報道されて彼女は引退してしまったんです。それからの僕は抜け殻みたいに過ごして、人生の目的を見失った挙げ句事故で死にました。酷いんです。公園みたいな所をぼんやり歩いていて低い植え込みに気付かなくて、転んだ拍子に偶然枝先が首の急所に刺さって……即死だったみたいです」
「最後に何を考えてた?」
「空を見ていました」
「……」
「会えなくなったアイドルのことを空から連想して、ぼおーっとしてました」
「芸能人なんかに入れ上げる愚かさを今際の際、痛切に感じた。それも今世の徳に繋がったんだろうね。いつまでも輪廻をさ迷う空しい人生を送らないよう君は『シュンニャーの道』に縁付いて生まれたんだ」
「……」
「死の瞬間の意識は次の生を規定するからね。あと、そのアイドルの名前は思い出せる?」
「はい?」
「教団では生まれ変わりの証拠を集めているんだ。そうやって輪廻転生の真実を証明していけば頼りになるのは唯一真実の宗教『シュンニャーの道』だけだと世界に明かしていける。……何か覚えていれば、だけどね」
「名前は分かりません。ただ、『ららたむ』と呼ばれていた気がします」
「ららたむか。調べてみよう」
「……」
「これで面談は終わりだ。これから祭りに戻っても自分を見失わず絶えず心を見つめて過ごしなさい。脚立から落ちたことに説教はしないよ。痛い思いをしたのは君だし、転生前の記憶をまたひとつ思い出すこともできた。君が気絶している間多くの仲間が心配していたことだけは覚えておいてね」
「はい、申し訳ありませんでした。スワミ」
「そうだ待ってくれ! 君に伝えることがあった。これー」
手渡された小さなものに胸がどくりと鳴る。
この緊張を、悟りの階梯を昇り超人的なものを見通す目を持ったと言う上司に気づかれないように忠実な信者の顔を作って部屋を辞した。
時間がない。
ららたむのためになってもならなくても、やるだけはやろう。
「ここ」にいるのもあとわずかだからー
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