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第1章 幼・少年期 新たな人生編
間話 「『剣帝』と『剣王』」
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リベラータ・アンデルは、周囲からは天才と称されていた。
並々ならぬ剣才、馴れ合いをよしとしないまさに「一匹狼」な性格。
共に道場で学ぶ剣士達は、彼女に憧れない人間はいなかった。
リベラが天才と呼ばれるようになった理由は、その生まれにある。
彼女を語るには、ある人物について紹介しておかなければならない。
――『剣神』アベル。
この世界で最も強い七人として名高い『七神』の第五位に数えられる実力者であり、世界最高峰の道場である『聖剣道場』で多くの剣士の面倒を見ている。
アベル・アルベアルは、この世界の東に位置し、南北に長く伸びるボレアス大陸の港町、スネロポートというところに生まれた。
父親が元剣士だったこともあり、アベルはまだ幼い頃から剣術を叩き込まれていた。
勉強よりも剣術、三度の飯より剣術。
そんなハードな生活を送っていたせいか、彼は齢九歳にして聖級剣士となった。
父親はアベルを「化け物だ」と罵り、捨てようとした。
アベルはそんな父親を、己の剣で斬り殺した。
母親は物心つく前に他界していたため、彼はそれから約八年間孤独な人生を過ごした。
貨物船に乗り込んで中央大陸に渡ったアベルは、盗みを繰り返しながらしぶとく生き延びた。
八年もの間、彼は単身で世界を流浪したのだ。
限界ともいえる彼の人生を大きく変えたのは、オリビアという一人の女性だった。
アベルが空腹で倒れていたところを拾い上げ、家に連れ帰って介抱した。
それがきっかけで、アベルはオリビアに恩義を感じるとともに、恋に落ちてしまった。
自らが特級剣士であることも忘れて、オリビアと過ごす毎日を心から楽しんだ。
そして、出会って僅か一年足らずで、結婚を約束することになった。
それから一年後に子供も生まれた。
この子供が、リベラータである。
十年前からは考えられないような、幸せに満ちた生活を送っていた。
そんな時、事件は起きた。
『九星』執行官の、襲撃。
なんの理由もなしに破壊と殺戮を繰り返す組織の幹部が、突如として街を襲った。
アベルはオリビアと出会ってから隠し通してきたその剣術の才能を、満を持して解き放った。
だが、当時のアベルではとても太刀打ちできなかった。
それもそのはず。
後に『剣帝』の称号を授かる特級剣士のルドルフと、特級魔術師のロトアが相手でも、撃退するのがやっとであった。
ルドルフとロトアが戦った相手は、第四位のアスラという執行官だ。
一方、アベルが戦ったのは第六位のユピテル。
序列的にはアベルが戦った執行官のほうが下だが、その強さに大差はない。
アベルはユピテルに、悉く叩きのめされた。
それでも、愛する妻となったオリビアと愛する娘のために戦い抜いた。
片腕を失い、片目を失明してもなお、彼は剣を振り続けた。
街中を巻き込んだその戦いは多数の犠牲者と負傷者を出し、引き分けに終わった。
その犠牲者の中には、オリビアも含まれていた。
アベルは、オリビアを守り抜くことができなかったのだ。
オリビアの亡骸を見たアベルは、その時、初めて泣いた。
この世に生を受けた瞬間ですら泣かなかったアベルは、声をあげて泣いた。
街の復興活動には加担せず、辛うじて一命を取り留めていたリベラを連れて、再び旅に出た。
リベラだけは、何があっても守り抜く。
そう心に誓った。
それから三年かけて、ケントロン大陸に渡った。
彼が二十二の時、ある道場に弟子入りした。
飯も一日に三回出るし、寝るところもある。
加えて、特別にまだ幼児だったリベラの面倒も見てくれた。
この道場こそが、現在の『聖剣道場』にあたる。
そして、道場を管理していた男は、先代の『剣神』だった。
『七神』の中には、世代交代をする者もいる。
第一位である『龍神』も、もう三代目だ。
道場で剣を学び、僅か四年で『神級剣士』となったアベルは、先代『剣神』によって二代目の剣神に任命された。
小さな娘もいるアベルだったが、自分を強くしてくれた剣神の頼みを断れず、称号を継いだ。
それからは、『剣神』として、そして多くの剣士の『師範』として、剣術を指導するようになった。
娘であるリベラにも、彼女が一人前になって道場を出るまで、剣術を叩き込んだ。
---
「リベラ! 一戦いいか?」
「ああ」
一人の少年が、リベラに声をかけた。
とっ散らかった長い黒髪を乱雑に一つにくくり、木剣を片手に握った少年。
「お前、どうして他の剣士とは打ち合わない?」
「だって、相手にならねえんだもん」
「……もっと言い方があるだろう、ルドルフ。
他者へのリスペクトは大切だ」
ルドルフ・パノヴァ。
後に『剣帝』となる少年だ。
ルドルフは最近入門した剣士だが、成長速度が凄まじい。
道場に来た時には中級剣士だったルドルフは、二か月で上級剣士になった。
聖級剣士であったリベラにとっても、ルドルフの存在は脅威になりつつあった。
そんなルドルフは、最近はリベラとしか剣を交えなくなっていた。
彼の言った通り、他の剣士ではルドルフの相手が務まらなくなっていたのだ。
リベラには、ルドルフの言っていることが理解できない。
リベラ以外にも三人ほど、聖級剣士がいる。
その剣士達ですら、ルドルフに敵わない。
そんなことがあるはずない、と。
剣術において、階級の差は実力の差ともいえる。
魔術ならば戦い方次第でどうとでもなるが、剣術はそうはいかない。
階級が一つ違うだけで、階級の低い方は圧倒的に不利である。
そのため、上級剣士のルドルフが聖級剣士に勝つなど、普通ならばほとんどあり得ないのだ。
可能性としては二つある。
まずは、彼が何らかのズルをしていること。
聖級剣士といえど、あまりにもイレギュラーなことが起きてしまえば対処ができないこともある。
それを利用して勝ったという可能性も十分あるだろう。
リベラはルドルフと関わり始めてまだ日が浅い。
絶対にそんな狡猾なことをしないとは言い切れまい。
もう一つの可能性は極めて単純。
彼自身の実力が、それを可能にしているというものだ。
リベラは当然、後者の可能性を切り捨てた。
「師範! 打ち合いを始めてもよろしいでしょうか!」
「構わん」
リベラがアベルに確認をとり、互いに位置に着く。
実の父親にかしこまった態度で接しなければならないことに未だに違和感があるリベラだが、そんなことを気にしている暇もなく打ち合いは始まる。
合図は、打ち合いの審判が行う。
今回の場合は師範であるアベルだ。
「よろしくお願いします!」
リベラとルドルフは互いに、そして審判であるアベルに向けて挨拶をした。
そして、
「――始め」
アベルの始まりの合図とともに、リベラは地面を蹴った。
ルドルフは動いていない。
リベラは剣を振りかぶらず、突きの姿勢でルドルフに突っ込む。
不用意に振りかぶれば、体の大部分ががら空きになる。
「振りかぶる」という行為自体が、剣術においては自殺行為になりかねない。
ほとんど隙のないリベラの動きを、ルドルフは冷静に目で追う。
リベラはルドルフの間合いに入った瞬間、剣の握りを変えた。
「『砕氷』!」
呼吸を整え、凍るように冷たい斬撃を繰り出した。
いくら模擬戦とはいっても、手を抜くことは許されない。
相手を殺すつもりで、常に本気で戦うのがセオリーである。
ルドルフはリベラの繰り出した斬撃を受け流し、次の攻撃をかわす。
そして、ルドルフも仕掛ける。
「『蒼炎の雷』!」
紫紺の斬撃が、リベラを襲う。
この道場で使われている木剣は特殊な素材で作られているため、このように技を繰り出しても問題ない。
その斬撃はリベラの頬を掠め、掠めた箇所からは血が噴き出す。
皮膚が焼けるような痛みにリベラは少しだけ顔を歪め、次の攻撃に備える。
ルドルフは凄まじい速度で剣を振る。
実際、この時のルドルフは既に道場でも十本の指に入るくらいの剣の速度にまで達していた。
道場で一番速いリベラの剣に、迫るほどに。
「くっ……!」
リベラは防戦一方だ。
先手は確実にリベラが取っていたが、一瞬でルドルフのペースになっていた。
それでも負けじと、食らいつく。
「『滄海の円舞曲』」
リベラはルドルフを剣で弾き飛ばして距離を取り、技を繰り出す。
ワルツを踊るようなしなやかな動きで、斬撃を繰り出す。
ルドルフは近づこうにも近づけない。
この技は、そのしなやかな動きの中で何発もの斬撃を飛ばす技だ。
まるで魔術であるかのように、空気を斬り裂きながら、ルドルフを斬り刻もうとする。
ルドルフは必死に斬撃を受け流す。
リベラはそれを目に捉えると、すかさず距離を詰めた。
「甘い!」
だが、ルドルフは対応して見せた。
攻撃を弾かれて一瞬だけ動揺したリベラを見て、ルドルフはすかさず追い打ちをかける。
最悪な体勢ながらなんとか攻撃を防ぐことができたリベラだったが、背中から壁に激突した。
頑丈なつくりでなければ、道場はとっくに壊れているだろう。
それほどまでに、凄まじい戦いである。
審判が再び合図をするまで、戦いは終わらない。
リベラはすぐさま立ち上がり、ルドルフの姿を探す。
しかし、見渡す限りルドルフはいない。
次の瞬間、ルドルフは視界の外から突然姿を現した。
リベラは間一髪でそれをかわし、続く追撃をカウンターで返す。
壁に叩き付けられたルドルフは、衝撃で視界が揺らぐ。
勝負を決めにかかったリベラは、容赦なく木剣を振り下ろす。
しかし、ルドルフはギリギリのところでそれを受け止めた。
リベラは力いっぱいに押す。
ルドルフもまた、力いっぱいそれを跳ね返そうとする。
「くぅっ……!」
「うぅ……!」
地面に背中をつき、歯を食いしばるルドルフ。
倒れ込むルドルフに馬乗りになり、必死の形相でそれを押すリベラ。
誰が見ても、リベラが優勢だ。
だがルドルフだけは、自分が劣勢に追い込まれているとは思っていなかった。
「何っ!?」
ルドルフの握る木剣は、赤く染まった。
そして、リベラの木剣を空高く飛ばしてしまった。
「――そこまで」
それとほぼ同時に、アベルの低い声が聞こえた。
模擬戦でありながら、まさに「死闘」と呼ぶに相応しい戦いだった。
間違いなくこの二人が道場最強だということは、誰の目にも明らかであった。
---
「クソ……負けた……」
ルドルフとの打ち合いを終え、タオルで汗を拭くリベラ。
その口からは、思わず言葉が漏れた。
先ほどの死闘は、ルドルフの勝利に終わった。
これまでにほとんど負けたことがなかったリベラにとって、この敗北はかなりメンタルに来るものとなった。
「お疲れ、リベラ」
「……ああ」
風に当たって涼んでいるリベラのもとにやって来たのは、青髪の少女。
長い髪の毛はくくらずに下ろしているため、かなり傷んでいる。
「すごかったね、彼」
「……そうだな」
「そんなに悔しかったの?」
「……今は放っておいてくれないか、エリナ」
「まぁまぁ、そう言わずに」
彼女の名は、エリナ・グリーン。
リベラと同じ十六歳の少女だ。
エリナは、ルドルフと同じ上級剣士。
その青い髪から連想できる通り、水剣術を得意とする。
友好的にリベラと接するエリナだが、そもそもあまり馴れ合いを好まないリベラにとっては正直苦手な部類の人間だった。
「負けることだってあるよ。
彼は師範が認めた本物の逸材なんだから」
「……アタシは、その師範の娘だがな」
「あっ……その、ええっと……」
「気にするな。 後、早くどっか行ってくれないか」
「も、もうちょっとだけ!」
「お願いっ!」と手を合わせて頼んでくるエリナにため息をついたリベラは、その場に仰向けに寝転んだ。
(何がいけなかったんだ?
どこに無駄な動きがあった?
どうすれば、もっと楽に……)
「おい、リベラ?
汗かいてんのにこんなとこいちゃ風邪引くぞ?」
そう言いながらリベラとエリナに近づいてきたのは、ルドルフだ。
タオルを首にかけ、上半身裸で二人の隣に座った。
「ちょっと! 胴着着なさいよね!」
「あれ、暑いんだよ」
「知らないわよ!」
「動いた後にこの格好になると涼しくて気持ちいいんだ。
お前も今度やってみるといい」
「やるわけないでしょ! 変態!」
ルドルフとエリナは、とても仲がいい。
タオルで目元を隠して目を閉じるリベラの隣でギャアギャアと騒ぎ立てる二人。
リベラは内心では少しばかり腹を立てている。
「……風邪を引くだと?
その格好の奴に言われても説得力に欠けるな」
「馬鹿は風邪引かないからこいつは大丈夫なのよ」
「おい、誰が誰を馬鹿だっつったんだ?」
「私があなたに言ったのよ。
耳まで馬鹿になったのかしらね」
「んだとテメェ!
剣術じゃオレに勝てないくせに」
「それは今関係ないでしょう?!」
(ここじゃ休めん……)
リベラは口論を始める二人のもとをしれっと離れ、部屋へ戻ろうとした。
「リベラ! どっちの方が馬鹿だと思う!」
「お前に決まってんだろ?」
「あんた、前にこの大陸の名前を間違えてたじゃない!
それのどこが馬鹿じゃないって言えるわけ?!」
「……どっちも馬鹿だ」
「何よそれ!」
「何だそれ!」
リベラが吐き捨てるようにそう言うと、エリナとルドルフは声を揃えて怒った。
怒りの矛先が自分に向けられる前にと、リベラは今度こそ部屋へ戻った。
この道場には、五十人余りの剣士がいる。
その中でリベラはずば抜けた剣才を持っており、他の剣士との打ち合いではほとんど負けることはなかった。
たまにリベラと同じ聖級剣士に負けることはあったものの、基本的には誰にも負けなかった。
しかしながら、突然現れたルドルフはそんなリベラを打ち負かした。
入ったばかりの時はまだリベラの方が強かったが、最近になって段々と彼に勝てなくなってきた。
彼はリベラの知る常識を優に超えていく。
階級の差なんて関係なく、地力で相手を負かす。
ルドルフは、リベラを超える剣才を持っているのかもしれない。
そう考えると、リベラは再び悔しさがこみあげてきた。
リベラには、様々なプレッシャーがのしかかっている。
人よりも優れた才能を持つことから「天才」と言われること。
その剣才を持っていながら他の剣士に負けることは許されないこと。
そして、自らが『剣神』の娘であること。
どんなに大きな岩よりも重たい重圧が、リベラを圧し潰そうとしている。
故に、此度の敗北はリベラの心に深い傷を与えた。
「……クソッ!」
自室に置いてある机を叩く。
かなり強く叩いた分、手に痛みが響き渡る。
リベラは目に涙を浮かべる。
しかしこれは痛みからではない。
……否、ある意味痛みからかもしれない。
「リベラ」
扉の向こうから、声が聞こえた。
ルドルフだ。
「……何だ」
「入ってもいいか?」
「……勝手にしろ」
そう言うと、ルドルフは扉を開けてリベラの部屋に入ってきた。
今度はきちんと胴着を着ている。
「どうした、急にいなくなりやがって」
「アタシはゆっくり休みたかっただけなのに、お前達が次々に邪魔をしに来たんだ」
「そりゃすまん」
ルドルフはそう言いながら、床に胡坐をかいた。
リベラは「ちっとも休めないじゃないか」と呟きながら、布団に横になった。
「変なことしたら斬り殺すからな」
「いやしねぇよ」
「馬鹿は何をしでかすかわからんからな」
「なっ……お前までオレを馬鹿にしやがって」
ルドルフは顔をしかめる。
リベラはそれを見てふっと笑い、頬杖をつく。
「何をしに来たんだ?
さっきの一戦のことを煽りに来たのか?」
「んなわけねえだろ。
むしろ逆だ」
「逆だと?
慰めに来たというなら、アタシはそれも煽りだと捉えるぞ」
「だから違うって。
……さっきの打ち合いを、一緒に振り返ろうと思ってな」
「一緒に?」
意外な行動をとったルドルフに、リベラは目を丸くする。
戦いを振り返るという行為は、リベラはしたことがない。
故に、その言葉の響き自体がリベラにとって新鮮であった。
「剣を打ち合った後は、必ずその戦いを振り返るのが大切だろう?
戦いの中で出た錆を洗い流さないことには、いつまで経っても成長しない」
「うっ……そうなのか?」
「少なくとも、オレはそう思ってる」
ルドルフの発言は、剣術のことに関しては不思議と説得力がある。
先ほどまでエリナと言い合いをしていた人間とはまるで別人のようである。
「階級はオレの方が下だが、色々口出しすることになるかもしれない。
そこは許してくれ」
「あ、ああ」
「まず、最初の動きだ。
オレはお前が他の剣士と打ち合っているところを何度か見ているが、お前はこの道場の中で間違いなく一番速い。
だから、それを利用するんだ。
一直線に突っ込むよりも、相手が予想できないような動きをする。
例えば、最初に横に動いて、相手の視界から消えてみたりな」
ルドルフはそうして、リベラに様々なアドバイスをした。
リベラはそれを聞きながら、脳内で呟く。
(こいつこそ、天才と呼ばれるべきなんじゃないのか)
リベラはルドルフの言ったことを、紙に書いてみることにした。
読み書きはアベルから教わっていたので、問題なくできる。
この世界の人間は、思っているほど識字率は高くない。
エリーゼのように、勉強していない人間はできなかったりする。
「だが、それでいうと――」
「いや、アタシはあそこで――」
そうして、互いの考えを言い合うこと一時間。
「それで、オレのキ○タマに木剣が直撃してよ……
腹が割れるかと思ったぜ……」
「ギャッハッハッハッハ!」
いつからか、雑談へと切り替わっていた。
二人とて年頃の男女。
思春期真っただ中のリベラはそういう話が大好きであった。
「……もう……やめてくれ……」
「って、いつからこんな話になったんだ……?」
ルドルフも、自分が何を皮切りにそのような話をし始めたのかを全く覚えていないらしい。
しかし、ルドルフの助言は全て的確だった。
リベラはこの日、戦いながらきちんと相手の動きを見るのがどれだけ重要なのか、そして、戦い終えた後にこうして課題を洗い出すことがどれだけ次につながるのかを学んだ。
その日から道場を出るまでにリベラの剣術の階級が上がることはなかったが、ルドルフはそれから階級を二つも上げた。
そしてのちに、リベラは『剣王』、ルドルフは『剣帝』の称号を授かることとなる。
並々ならぬ剣才、馴れ合いをよしとしないまさに「一匹狼」な性格。
共に道場で学ぶ剣士達は、彼女に憧れない人間はいなかった。
リベラが天才と呼ばれるようになった理由は、その生まれにある。
彼女を語るには、ある人物について紹介しておかなければならない。
――『剣神』アベル。
この世界で最も強い七人として名高い『七神』の第五位に数えられる実力者であり、世界最高峰の道場である『聖剣道場』で多くの剣士の面倒を見ている。
アベル・アルベアルは、この世界の東に位置し、南北に長く伸びるボレアス大陸の港町、スネロポートというところに生まれた。
父親が元剣士だったこともあり、アベルはまだ幼い頃から剣術を叩き込まれていた。
勉強よりも剣術、三度の飯より剣術。
そんなハードな生活を送っていたせいか、彼は齢九歳にして聖級剣士となった。
父親はアベルを「化け物だ」と罵り、捨てようとした。
アベルはそんな父親を、己の剣で斬り殺した。
母親は物心つく前に他界していたため、彼はそれから約八年間孤独な人生を過ごした。
貨物船に乗り込んで中央大陸に渡ったアベルは、盗みを繰り返しながらしぶとく生き延びた。
八年もの間、彼は単身で世界を流浪したのだ。
限界ともいえる彼の人生を大きく変えたのは、オリビアという一人の女性だった。
アベルが空腹で倒れていたところを拾い上げ、家に連れ帰って介抱した。
それがきっかけで、アベルはオリビアに恩義を感じるとともに、恋に落ちてしまった。
自らが特級剣士であることも忘れて、オリビアと過ごす毎日を心から楽しんだ。
そして、出会って僅か一年足らずで、結婚を約束することになった。
それから一年後に子供も生まれた。
この子供が、リベラータである。
十年前からは考えられないような、幸せに満ちた生活を送っていた。
そんな時、事件は起きた。
『九星』執行官の、襲撃。
なんの理由もなしに破壊と殺戮を繰り返す組織の幹部が、突如として街を襲った。
アベルはオリビアと出会ってから隠し通してきたその剣術の才能を、満を持して解き放った。
だが、当時のアベルではとても太刀打ちできなかった。
それもそのはず。
後に『剣帝』の称号を授かる特級剣士のルドルフと、特級魔術師のロトアが相手でも、撃退するのがやっとであった。
ルドルフとロトアが戦った相手は、第四位のアスラという執行官だ。
一方、アベルが戦ったのは第六位のユピテル。
序列的にはアベルが戦った執行官のほうが下だが、その強さに大差はない。
アベルはユピテルに、悉く叩きのめされた。
それでも、愛する妻となったオリビアと愛する娘のために戦い抜いた。
片腕を失い、片目を失明してもなお、彼は剣を振り続けた。
街中を巻き込んだその戦いは多数の犠牲者と負傷者を出し、引き分けに終わった。
その犠牲者の中には、オリビアも含まれていた。
アベルは、オリビアを守り抜くことができなかったのだ。
オリビアの亡骸を見たアベルは、その時、初めて泣いた。
この世に生を受けた瞬間ですら泣かなかったアベルは、声をあげて泣いた。
街の復興活動には加担せず、辛うじて一命を取り留めていたリベラを連れて、再び旅に出た。
リベラだけは、何があっても守り抜く。
そう心に誓った。
それから三年かけて、ケントロン大陸に渡った。
彼が二十二の時、ある道場に弟子入りした。
飯も一日に三回出るし、寝るところもある。
加えて、特別にまだ幼児だったリベラの面倒も見てくれた。
この道場こそが、現在の『聖剣道場』にあたる。
そして、道場を管理していた男は、先代の『剣神』だった。
『七神』の中には、世代交代をする者もいる。
第一位である『龍神』も、もう三代目だ。
道場で剣を学び、僅か四年で『神級剣士』となったアベルは、先代『剣神』によって二代目の剣神に任命された。
小さな娘もいるアベルだったが、自分を強くしてくれた剣神の頼みを断れず、称号を継いだ。
それからは、『剣神』として、そして多くの剣士の『師範』として、剣術を指導するようになった。
娘であるリベラにも、彼女が一人前になって道場を出るまで、剣術を叩き込んだ。
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「リベラ! 一戦いいか?」
「ああ」
一人の少年が、リベラに声をかけた。
とっ散らかった長い黒髪を乱雑に一つにくくり、木剣を片手に握った少年。
「お前、どうして他の剣士とは打ち合わない?」
「だって、相手にならねえんだもん」
「……もっと言い方があるだろう、ルドルフ。
他者へのリスペクトは大切だ」
ルドルフ・パノヴァ。
後に『剣帝』となる少年だ。
ルドルフは最近入門した剣士だが、成長速度が凄まじい。
道場に来た時には中級剣士だったルドルフは、二か月で上級剣士になった。
聖級剣士であったリベラにとっても、ルドルフの存在は脅威になりつつあった。
そんなルドルフは、最近はリベラとしか剣を交えなくなっていた。
彼の言った通り、他の剣士ではルドルフの相手が務まらなくなっていたのだ。
リベラには、ルドルフの言っていることが理解できない。
リベラ以外にも三人ほど、聖級剣士がいる。
その剣士達ですら、ルドルフに敵わない。
そんなことがあるはずない、と。
剣術において、階級の差は実力の差ともいえる。
魔術ならば戦い方次第でどうとでもなるが、剣術はそうはいかない。
階級が一つ違うだけで、階級の低い方は圧倒的に不利である。
そのため、上級剣士のルドルフが聖級剣士に勝つなど、普通ならばほとんどあり得ないのだ。
可能性としては二つある。
まずは、彼が何らかのズルをしていること。
聖級剣士といえど、あまりにもイレギュラーなことが起きてしまえば対処ができないこともある。
それを利用して勝ったという可能性も十分あるだろう。
リベラはルドルフと関わり始めてまだ日が浅い。
絶対にそんな狡猾なことをしないとは言い切れまい。
もう一つの可能性は極めて単純。
彼自身の実力が、それを可能にしているというものだ。
リベラは当然、後者の可能性を切り捨てた。
「師範! 打ち合いを始めてもよろしいでしょうか!」
「構わん」
リベラがアベルに確認をとり、互いに位置に着く。
実の父親にかしこまった態度で接しなければならないことに未だに違和感があるリベラだが、そんなことを気にしている暇もなく打ち合いは始まる。
合図は、打ち合いの審判が行う。
今回の場合は師範であるアベルだ。
「よろしくお願いします!」
リベラとルドルフは互いに、そして審判であるアベルに向けて挨拶をした。
そして、
「――始め」
アベルの始まりの合図とともに、リベラは地面を蹴った。
ルドルフは動いていない。
リベラは剣を振りかぶらず、突きの姿勢でルドルフに突っ込む。
不用意に振りかぶれば、体の大部分ががら空きになる。
「振りかぶる」という行為自体が、剣術においては自殺行為になりかねない。
ほとんど隙のないリベラの動きを、ルドルフは冷静に目で追う。
リベラはルドルフの間合いに入った瞬間、剣の握りを変えた。
「『砕氷』!」
呼吸を整え、凍るように冷たい斬撃を繰り出した。
いくら模擬戦とはいっても、手を抜くことは許されない。
相手を殺すつもりで、常に本気で戦うのがセオリーである。
ルドルフはリベラの繰り出した斬撃を受け流し、次の攻撃をかわす。
そして、ルドルフも仕掛ける。
「『蒼炎の雷』!」
紫紺の斬撃が、リベラを襲う。
この道場で使われている木剣は特殊な素材で作られているため、このように技を繰り出しても問題ない。
その斬撃はリベラの頬を掠め、掠めた箇所からは血が噴き出す。
皮膚が焼けるような痛みにリベラは少しだけ顔を歪め、次の攻撃に備える。
ルドルフは凄まじい速度で剣を振る。
実際、この時のルドルフは既に道場でも十本の指に入るくらいの剣の速度にまで達していた。
道場で一番速いリベラの剣に、迫るほどに。
「くっ……!」
リベラは防戦一方だ。
先手は確実にリベラが取っていたが、一瞬でルドルフのペースになっていた。
それでも負けじと、食らいつく。
「『滄海の円舞曲』」
リベラはルドルフを剣で弾き飛ばして距離を取り、技を繰り出す。
ワルツを踊るようなしなやかな動きで、斬撃を繰り出す。
ルドルフは近づこうにも近づけない。
この技は、そのしなやかな動きの中で何発もの斬撃を飛ばす技だ。
まるで魔術であるかのように、空気を斬り裂きながら、ルドルフを斬り刻もうとする。
ルドルフは必死に斬撃を受け流す。
リベラはそれを目に捉えると、すかさず距離を詰めた。
「甘い!」
だが、ルドルフは対応して見せた。
攻撃を弾かれて一瞬だけ動揺したリベラを見て、ルドルフはすかさず追い打ちをかける。
最悪な体勢ながらなんとか攻撃を防ぐことができたリベラだったが、背中から壁に激突した。
頑丈なつくりでなければ、道場はとっくに壊れているだろう。
それほどまでに、凄まじい戦いである。
審判が再び合図をするまで、戦いは終わらない。
リベラはすぐさま立ち上がり、ルドルフの姿を探す。
しかし、見渡す限りルドルフはいない。
次の瞬間、ルドルフは視界の外から突然姿を現した。
リベラは間一髪でそれをかわし、続く追撃をカウンターで返す。
壁に叩き付けられたルドルフは、衝撃で視界が揺らぐ。
勝負を決めにかかったリベラは、容赦なく木剣を振り下ろす。
しかし、ルドルフはギリギリのところでそれを受け止めた。
リベラは力いっぱいに押す。
ルドルフもまた、力いっぱいそれを跳ね返そうとする。
「くぅっ……!」
「うぅ……!」
地面に背中をつき、歯を食いしばるルドルフ。
倒れ込むルドルフに馬乗りになり、必死の形相でそれを押すリベラ。
誰が見ても、リベラが優勢だ。
だがルドルフだけは、自分が劣勢に追い込まれているとは思っていなかった。
「何っ!?」
ルドルフの握る木剣は、赤く染まった。
そして、リベラの木剣を空高く飛ばしてしまった。
「――そこまで」
それとほぼ同時に、アベルの低い声が聞こえた。
模擬戦でありながら、まさに「死闘」と呼ぶに相応しい戦いだった。
間違いなくこの二人が道場最強だということは、誰の目にも明らかであった。
---
「クソ……負けた……」
ルドルフとの打ち合いを終え、タオルで汗を拭くリベラ。
その口からは、思わず言葉が漏れた。
先ほどの死闘は、ルドルフの勝利に終わった。
これまでにほとんど負けたことがなかったリベラにとって、この敗北はかなりメンタルに来るものとなった。
「お疲れ、リベラ」
「……ああ」
風に当たって涼んでいるリベラのもとにやって来たのは、青髪の少女。
長い髪の毛はくくらずに下ろしているため、かなり傷んでいる。
「すごかったね、彼」
「……そうだな」
「そんなに悔しかったの?」
「……今は放っておいてくれないか、エリナ」
「まぁまぁ、そう言わずに」
彼女の名は、エリナ・グリーン。
リベラと同じ十六歳の少女だ。
エリナは、ルドルフと同じ上級剣士。
その青い髪から連想できる通り、水剣術を得意とする。
友好的にリベラと接するエリナだが、そもそもあまり馴れ合いを好まないリベラにとっては正直苦手な部類の人間だった。
「負けることだってあるよ。
彼は師範が認めた本物の逸材なんだから」
「……アタシは、その師範の娘だがな」
「あっ……その、ええっと……」
「気にするな。 後、早くどっか行ってくれないか」
「も、もうちょっとだけ!」
「お願いっ!」と手を合わせて頼んでくるエリナにため息をついたリベラは、その場に仰向けに寝転んだ。
(何がいけなかったんだ?
どこに無駄な動きがあった?
どうすれば、もっと楽に……)
「おい、リベラ?
汗かいてんのにこんなとこいちゃ風邪引くぞ?」
そう言いながらリベラとエリナに近づいてきたのは、ルドルフだ。
タオルを首にかけ、上半身裸で二人の隣に座った。
「ちょっと! 胴着着なさいよね!」
「あれ、暑いんだよ」
「知らないわよ!」
「動いた後にこの格好になると涼しくて気持ちいいんだ。
お前も今度やってみるといい」
「やるわけないでしょ! 変態!」
ルドルフとエリナは、とても仲がいい。
タオルで目元を隠して目を閉じるリベラの隣でギャアギャアと騒ぎ立てる二人。
リベラは内心では少しばかり腹を立てている。
「……風邪を引くだと?
その格好の奴に言われても説得力に欠けるな」
「馬鹿は風邪引かないからこいつは大丈夫なのよ」
「おい、誰が誰を馬鹿だっつったんだ?」
「私があなたに言ったのよ。
耳まで馬鹿になったのかしらね」
「んだとテメェ!
剣術じゃオレに勝てないくせに」
「それは今関係ないでしょう?!」
(ここじゃ休めん……)
リベラは口論を始める二人のもとをしれっと離れ、部屋へ戻ろうとした。
「リベラ! どっちの方が馬鹿だと思う!」
「お前に決まってんだろ?」
「あんた、前にこの大陸の名前を間違えてたじゃない!
それのどこが馬鹿じゃないって言えるわけ?!」
「……どっちも馬鹿だ」
「何よそれ!」
「何だそれ!」
リベラが吐き捨てるようにそう言うと、エリナとルドルフは声を揃えて怒った。
怒りの矛先が自分に向けられる前にと、リベラは今度こそ部屋へ戻った。
この道場には、五十人余りの剣士がいる。
その中でリベラはずば抜けた剣才を持っており、他の剣士との打ち合いではほとんど負けることはなかった。
たまにリベラと同じ聖級剣士に負けることはあったものの、基本的には誰にも負けなかった。
しかしながら、突然現れたルドルフはそんなリベラを打ち負かした。
入ったばかりの時はまだリベラの方が強かったが、最近になって段々と彼に勝てなくなってきた。
彼はリベラの知る常識を優に超えていく。
階級の差なんて関係なく、地力で相手を負かす。
ルドルフは、リベラを超える剣才を持っているのかもしれない。
そう考えると、リベラは再び悔しさがこみあげてきた。
リベラには、様々なプレッシャーがのしかかっている。
人よりも優れた才能を持つことから「天才」と言われること。
その剣才を持っていながら他の剣士に負けることは許されないこと。
そして、自らが『剣神』の娘であること。
どんなに大きな岩よりも重たい重圧が、リベラを圧し潰そうとしている。
故に、此度の敗北はリベラの心に深い傷を与えた。
「……クソッ!」
自室に置いてある机を叩く。
かなり強く叩いた分、手に痛みが響き渡る。
リベラは目に涙を浮かべる。
しかしこれは痛みからではない。
……否、ある意味痛みからかもしれない。
「リベラ」
扉の向こうから、声が聞こえた。
ルドルフだ。
「……何だ」
「入ってもいいか?」
「……勝手にしろ」
そう言うと、ルドルフは扉を開けてリベラの部屋に入ってきた。
今度はきちんと胴着を着ている。
「どうした、急にいなくなりやがって」
「アタシはゆっくり休みたかっただけなのに、お前達が次々に邪魔をしに来たんだ」
「そりゃすまん」
ルドルフはそう言いながら、床に胡坐をかいた。
リベラは「ちっとも休めないじゃないか」と呟きながら、布団に横になった。
「変なことしたら斬り殺すからな」
「いやしねぇよ」
「馬鹿は何をしでかすかわからんからな」
「なっ……お前までオレを馬鹿にしやがって」
ルドルフは顔をしかめる。
リベラはそれを見てふっと笑い、頬杖をつく。
「何をしに来たんだ?
さっきの一戦のことを煽りに来たのか?」
「んなわけねえだろ。
むしろ逆だ」
「逆だと?
慰めに来たというなら、アタシはそれも煽りだと捉えるぞ」
「だから違うって。
……さっきの打ち合いを、一緒に振り返ろうと思ってな」
「一緒に?」
意外な行動をとったルドルフに、リベラは目を丸くする。
戦いを振り返るという行為は、リベラはしたことがない。
故に、その言葉の響き自体がリベラにとって新鮮であった。
「剣を打ち合った後は、必ずその戦いを振り返るのが大切だろう?
戦いの中で出た錆を洗い流さないことには、いつまで経っても成長しない」
「うっ……そうなのか?」
「少なくとも、オレはそう思ってる」
ルドルフの発言は、剣術のことに関しては不思議と説得力がある。
先ほどまでエリナと言い合いをしていた人間とはまるで別人のようである。
「階級はオレの方が下だが、色々口出しすることになるかもしれない。
そこは許してくれ」
「あ、ああ」
「まず、最初の動きだ。
オレはお前が他の剣士と打ち合っているところを何度か見ているが、お前はこの道場の中で間違いなく一番速い。
だから、それを利用するんだ。
一直線に突っ込むよりも、相手が予想できないような動きをする。
例えば、最初に横に動いて、相手の視界から消えてみたりな」
ルドルフはそうして、リベラに様々なアドバイスをした。
リベラはそれを聞きながら、脳内で呟く。
(こいつこそ、天才と呼ばれるべきなんじゃないのか)
リベラはルドルフの言ったことを、紙に書いてみることにした。
読み書きはアベルから教わっていたので、問題なくできる。
この世界の人間は、思っているほど識字率は高くない。
エリーゼのように、勉強していない人間はできなかったりする。
「だが、それでいうと――」
「いや、アタシはあそこで――」
そうして、互いの考えを言い合うこと一時間。
「それで、オレのキ○タマに木剣が直撃してよ……
腹が割れるかと思ったぜ……」
「ギャッハッハッハッハ!」
いつからか、雑談へと切り替わっていた。
二人とて年頃の男女。
思春期真っただ中のリベラはそういう話が大好きであった。
「……もう……やめてくれ……」
「って、いつからこんな話になったんだ……?」
ルドルフも、自分が何を皮切りにそのような話をし始めたのかを全く覚えていないらしい。
しかし、ルドルフの助言は全て的確だった。
リベラはこの日、戦いながらきちんと相手の動きを見るのがどれだけ重要なのか、そして、戦い終えた後にこうして課題を洗い出すことがどれだけ次につながるのかを学んだ。
その日から道場を出るまでにリベラの剣術の階級が上がることはなかったが、ルドルフはそれから階級を二つも上げた。
そしてのちに、リベラは『剣王』、ルドルフは『剣帝』の称号を授かることとなる。
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