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第3章 少年期 デュシス大陸編
第四十七話 「脱獄作戦」
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---ベル視点---
「だーかーら!
僕は何もしてませんって!」
ワイ、取り調べなう。
普通投獄前にやるもんだろ。
無実だったらどうするんだ。
実際俺は無実だぞ。
と、何度も無実を主張しているのだが。
「いい加減、吐いたらどうなんだ。
いくら子供だとはいえ、上流貴族の徽章を盗むなんて……」
「してないって言ってるじゃないですか……」
このように、全くもって聞く耳を持ってくれない。
俺の罪状は、この検察官の言う通り、『上流貴族の徽章の窃盗』である。
罪状も何も、俺はやってないつってんのに。
「早く終わらせたいならとっとと吐け」だの、「自白するなら罪が軽くなる」だの言って、俺の言うことなんか聞こうとすらしてくれない。
この国には傲慢な人間しかいないのだろうか。
自分が一番偉いと思い込んでいる奴らばかりだ。
はぁ。
あの時、大人しく宿にいればな。
なんて後悔を、俺はこの二日間で何度もした。
エリーゼからの謎の冷たい対応で気が狂ったんだ。
エリーゼが悪いとは言わない。
悪いのは全部俺だ。
その後数十分間、取調室に拘束されたが、否認をし続けたら今日の所は許してもらえた。
次の取り調べは一週間後だという。
何があっても、俺は罪を認めたりしない。
「おっ、戻ったか」
「どうだった?」
「奴ら、全然僕の話を聞いてくれません。
いくら容疑を否認しても、『さっさと吐け』の一点張りで」
「ははっ。 まあ、そうだろうよ。
この監獄にいる奴らは、揃って頭がイカれてやがるからな」
「私達ははっきり有罪なのだ。
お前にそんなことを言う資格はないだろう」
「なんだと?」
「ま、まあまあ……」
ゾルトとシェインは、あまり仲が良くなさそうなんだよな。
シェインが無神経なのか、ゾルトが短気なのか。
原因はどちらにもあるような気もするが。
「んがぁぁぁぁ……」
ダリアは爆睡中である。
あの後、ゾルトと夜通しトランプをしていたらしい。
俺は途中で寝落ちしていた。
ゾルトは物凄い体力だな。
オールでトランプなんて、飽き性の俺からしたら考えられない。
「おい、ダリア。起きろ。
今日から、もう計画を立て始めるんだろう?」
「んん……わがった……」
ダリアはゆっくりと体を起こし、体中の骨から音を鳴らしながら背伸びをした。
あんなに骨が鳴るのは羨ましいな。
かつては俺も生粋の骨鳴らしマスターだったんだが……
「じゃ、第一回脱獄会議を始めまーす。
はーい、拍手ー」
軽い感じで始まったな。
とりあえず手を叩いておくか。
「何か意見がある奴はいるかい?」
ダリアが言った瞬間、沈黙が流れた。
ま、そんなに急に意見を求められても答えられないわな。
ちなみに俺は、色々考えた。
例えば、このトイレからの脱出だ。
これを頑張って外すことができれば、排水管から海に出られる。
だが、これには懸念点がいくつもある。
まず第一に、汚い。
大小便が通るところなんだから、汚いに決まっている。
それに、海には殺人鬼であるサメがいる。
なるべく海からの脱出は避けるべきだ。
これまでに脱出を試みた奴らは、その全てが溺死かサメに殺されたかだ。
やめておくのが賢明だろう。
後は、俺の魔術による牢獄からの正面突破だ。
俺の土魔術で、この鍵穴に適合する形の鍵をいくらでも作れる。
ほら、ナルシスの件の時に一度やったことがあるやつだ。
だが、こちらにも懸念点がある。
正面突破なんてしようとしたら、確実に他の衛兵やらに見つかってしまう。
そうなってしまえば、大人しく捕まるか、衛兵の命を奪うしかなくなってしまう。
もちろんまた捕まってしまうのは避けたいが、犠牲は払いたくない。
人を殺してしまえば、いよいよ殺人の罪に問われてしまう。
それだけは、絶対にナシだ。
それ以外にも、色々考えた。
考えた結果、辿り着いた結論。
それは、
「正面突破です」
ズバリ、これだ。
---
俺の発言に、再び沈黙が生まれた。
無理もないだろう。
色々な小細工をしたり、盗賊ならではの悪知恵を働かせたり。
脱獄ってのは、大体そんなものだろう。
正面突破なんて、馬鹿の考えることだ。
そう、俺は馬鹿だ。
馬鹿だから、他に方法が思いつかなかったのだ。
「正面突破って……アンタ、正気かい?」
「もちろんですとも」
「この牢屋を出られたとして、この監獄はかなり入り組んでるって聞くぜ。
それに、何人の見張りの衛兵がいると思ってんだ?」
「誰も、『監獄の中から』とは言っていませんよ?」
「どういう意味だ?」
正面突破というワードだけでは、ちょっと抽象的すぎる。
まあ、捉えようによっては正面ではないと思うかもしれないが。
「海からですよ。 海から」
「は?」
三人は、声を揃えて懐疑的な眼差しを俺に向ける。
海からの脱獄は、成功者が一人もいない。
かといって、内部からの突破も困難だろう。
なるべく人間の犠牲は払いたくない。
「海から脱出だと?
どうやってやるのだ?」
「殺すんですよ。 サメを」
「あの化け物を、殺すだって?
アタイは、何回アンタの正気を疑えばいいんだよ」
冗談で言っているのではない。
俺はいつだって本気だ。
俺が払いたくないのは、俺達四人やこの監獄にいる衛兵達の犠牲だ。
海で何人も人を喰ってるサメなんて、知ったこっちゃない。
俺の話を全然聞いてくれない奴らに腹が立つのは事実だが、殺しまではしたくない。
人間を殺せば、罪に問われる。
だが、動物ならあるいは、って話だ。
なんて言ったら、動物愛護団体に怒られそうだが。
殺されそうになったから正当防衛で殺したということにすれば大丈夫なはずだ。
犬とか猫とか、害を及ぼさない動物を殺すのは、心が痛む。
でも、あのサメはいくつもの命を奪ってきた。
極悪人だっていたかもしれないが、俺みたいに冤罪にかけられた人だっているかもしれない。
なにせ、あの衛兵たちのことだからな。
だから俺は、微塵も心が痛まない。
俺は何もやっていない。
それでも聞く耳を持たないなら、どんな手を使ってでもここから出る。
そして、エリーゼ達のもとに帰って、また旅を続けるのだ。
俺はこの監獄を、旅の終着点にするつもりはない。
「第一、オレ達はあんまし戦えねえぞ?
だって、相手はサメだろ?
ってことは、海で戦わなきゃならないじゃないか」
「地上ならある程度は戦えるんだけどね。
海の上となると、魔術も使えないアタイらには無理だよ」
「私も、魔術の類は使えない」
おっと。
雲行きが怪しい。
そうだ、忘れていた。
こいつらは、ランスロット達とは違う。
バケモノみたいな強さのランスロット、
凄腕魔術師のシャルロッテ、
そしてウルトラ可愛くて強い剣士のエリーゼ。
俺の今の仲間は、その三人ではない。
まともに戦えるのは、俺だけってことか。
「いいでしょう。
僕がサメの相手をします」
「お前一人でか?
そんなに小さな体で、あのサメの相手をすると言うのか?」
「はい。 逆に、それ以外の方法があるんですか?」
「ベル、アンタはまだ若いんだ。
命は大事にしなきゃならない。
そんなに投げやりになる必要なんて……」
「僕を待っていてくれる人たちがいるのに、投げやりになんてなれませんよ」
実際の所、どうなのかは分からない。
俺が居なくなったことで、エリーゼ達はどうなっているだろうか。
もう俺のことは諦めて、三人でラニカを目指すことになっているかもしれない。
なんてことを、俺はこの一晩で何度も考えた。
でも、俺は信じている。
エリーゼ達は、俺のことを探している。
明確な根拠なんてものはない。
これまでみんなと一緒にいた時間が、俺を信じさせてくれている。
俺を、待ってくれている。
それか、俺を助けに来るかもしれない。
脱獄なんてしなくても、助けを待つことだってできる。
何とかして、この監獄から俺を連れ出してくれるかもしれない。
だが、それではダメだ。
きっと、皆は殺しを厭わないだろう。
ここにいる衛兵や見張りが全員極悪人なら、話は変わる。
違うだろう。
何も悪いことなんてしていない人間は、殺されるべきではない。
確かに、俺を間違えて捕らえたことは許されざることだ。
でも、それは絶対悪ではない。
あの時、俺は学んだ。
人は、簡単に死んでしまうのだと。
だから、そんなに簡単に、命を奪ってはいけない。
……この三人が盗賊であることであることは間違いない。
もし脱獄に成功すれば、俺は犯罪者の脱獄に加担したことになる。
それによって、今度はちゃんと罪に問われるかもしれない。
でも、人の命に比べれば安いものだろう。
俺は、やるぞ。
一人も犠牲にさせずに、脱獄してみせる。
「分かった。
その方向で固めるか」
「ゾルト、アンタ……」
「ベルはきっと、自分のためだけじゃなく、オレ達のことまで考えてくれてるんだよ。
オレ達はベルと違って有罪だ。
ベルは無実なのに、更に罪を重ねようとしているオレ達の肩を持ってくれようとしてくれてるんだぜ。
ヒヨってられるかよ」
昨日から、思うことがある。
ダリアよりも、実はゾルトの方がリーダー適性があったりして。
いや、シェインの意見にも影響されがちだな。
そもそもが流されやすい性格なのかもしれないな。
「それをやるとするなら、いつやる?
アタイらにも、心の準備ってもんがあるんだけど」
「今すぐに……と言いたいところですが、僕も流石に心の準備ができてませんからね。
明日か、明後日かにしましょう」
どこかホッとしたような表情を見せるダリア。
これ、ダリアは相当ビビってる説があるな。
実際戦うのは俺だってのに。
とりあえず、作戦は思ったよりも早く決まった。
二週間くらいかけるとか言ってたが、俺の意見によって一気に短くなった。
最短で明日、最遅で明後日。
どちらにせよ、決行の日は近い。
それまでに、色々と準備をしなきゃな。
「だーかーら!
僕は何もしてませんって!」
ワイ、取り調べなう。
普通投獄前にやるもんだろ。
無実だったらどうするんだ。
実際俺は無実だぞ。
と、何度も無実を主張しているのだが。
「いい加減、吐いたらどうなんだ。
いくら子供だとはいえ、上流貴族の徽章を盗むなんて……」
「してないって言ってるじゃないですか……」
このように、全くもって聞く耳を持ってくれない。
俺の罪状は、この検察官の言う通り、『上流貴族の徽章の窃盗』である。
罪状も何も、俺はやってないつってんのに。
「早く終わらせたいならとっとと吐け」だの、「自白するなら罪が軽くなる」だの言って、俺の言うことなんか聞こうとすらしてくれない。
この国には傲慢な人間しかいないのだろうか。
自分が一番偉いと思い込んでいる奴らばかりだ。
はぁ。
あの時、大人しく宿にいればな。
なんて後悔を、俺はこの二日間で何度もした。
エリーゼからの謎の冷たい対応で気が狂ったんだ。
エリーゼが悪いとは言わない。
悪いのは全部俺だ。
その後数十分間、取調室に拘束されたが、否認をし続けたら今日の所は許してもらえた。
次の取り調べは一週間後だという。
何があっても、俺は罪を認めたりしない。
「おっ、戻ったか」
「どうだった?」
「奴ら、全然僕の話を聞いてくれません。
いくら容疑を否認しても、『さっさと吐け』の一点張りで」
「ははっ。 まあ、そうだろうよ。
この監獄にいる奴らは、揃って頭がイカれてやがるからな」
「私達ははっきり有罪なのだ。
お前にそんなことを言う資格はないだろう」
「なんだと?」
「ま、まあまあ……」
ゾルトとシェインは、あまり仲が良くなさそうなんだよな。
シェインが無神経なのか、ゾルトが短気なのか。
原因はどちらにもあるような気もするが。
「んがぁぁぁぁ……」
ダリアは爆睡中である。
あの後、ゾルトと夜通しトランプをしていたらしい。
俺は途中で寝落ちしていた。
ゾルトは物凄い体力だな。
オールでトランプなんて、飽き性の俺からしたら考えられない。
「おい、ダリア。起きろ。
今日から、もう計画を立て始めるんだろう?」
「んん……わがった……」
ダリアはゆっくりと体を起こし、体中の骨から音を鳴らしながら背伸びをした。
あんなに骨が鳴るのは羨ましいな。
かつては俺も生粋の骨鳴らしマスターだったんだが……
「じゃ、第一回脱獄会議を始めまーす。
はーい、拍手ー」
軽い感じで始まったな。
とりあえず手を叩いておくか。
「何か意見がある奴はいるかい?」
ダリアが言った瞬間、沈黙が流れた。
ま、そんなに急に意見を求められても答えられないわな。
ちなみに俺は、色々考えた。
例えば、このトイレからの脱出だ。
これを頑張って外すことができれば、排水管から海に出られる。
だが、これには懸念点がいくつもある。
まず第一に、汚い。
大小便が通るところなんだから、汚いに決まっている。
それに、海には殺人鬼であるサメがいる。
なるべく海からの脱出は避けるべきだ。
これまでに脱出を試みた奴らは、その全てが溺死かサメに殺されたかだ。
やめておくのが賢明だろう。
後は、俺の魔術による牢獄からの正面突破だ。
俺の土魔術で、この鍵穴に適合する形の鍵をいくらでも作れる。
ほら、ナルシスの件の時に一度やったことがあるやつだ。
だが、こちらにも懸念点がある。
正面突破なんてしようとしたら、確実に他の衛兵やらに見つかってしまう。
そうなってしまえば、大人しく捕まるか、衛兵の命を奪うしかなくなってしまう。
もちろんまた捕まってしまうのは避けたいが、犠牲は払いたくない。
人を殺してしまえば、いよいよ殺人の罪に問われてしまう。
それだけは、絶対にナシだ。
それ以外にも、色々考えた。
考えた結果、辿り着いた結論。
それは、
「正面突破です」
ズバリ、これだ。
---
俺の発言に、再び沈黙が生まれた。
無理もないだろう。
色々な小細工をしたり、盗賊ならではの悪知恵を働かせたり。
脱獄ってのは、大体そんなものだろう。
正面突破なんて、馬鹿の考えることだ。
そう、俺は馬鹿だ。
馬鹿だから、他に方法が思いつかなかったのだ。
「正面突破って……アンタ、正気かい?」
「もちろんですとも」
「この牢屋を出られたとして、この監獄はかなり入り組んでるって聞くぜ。
それに、何人の見張りの衛兵がいると思ってんだ?」
「誰も、『監獄の中から』とは言っていませんよ?」
「どういう意味だ?」
正面突破というワードだけでは、ちょっと抽象的すぎる。
まあ、捉えようによっては正面ではないと思うかもしれないが。
「海からですよ。 海から」
「は?」
三人は、声を揃えて懐疑的な眼差しを俺に向ける。
海からの脱獄は、成功者が一人もいない。
かといって、内部からの突破も困難だろう。
なるべく人間の犠牲は払いたくない。
「海から脱出だと?
どうやってやるのだ?」
「殺すんですよ。 サメを」
「あの化け物を、殺すだって?
アタイは、何回アンタの正気を疑えばいいんだよ」
冗談で言っているのではない。
俺はいつだって本気だ。
俺が払いたくないのは、俺達四人やこの監獄にいる衛兵達の犠牲だ。
海で何人も人を喰ってるサメなんて、知ったこっちゃない。
俺の話を全然聞いてくれない奴らに腹が立つのは事実だが、殺しまではしたくない。
人間を殺せば、罪に問われる。
だが、動物ならあるいは、って話だ。
なんて言ったら、動物愛護団体に怒られそうだが。
殺されそうになったから正当防衛で殺したということにすれば大丈夫なはずだ。
犬とか猫とか、害を及ぼさない動物を殺すのは、心が痛む。
でも、あのサメはいくつもの命を奪ってきた。
極悪人だっていたかもしれないが、俺みたいに冤罪にかけられた人だっているかもしれない。
なにせ、あの衛兵たちのことだからな。
だから俺は、微塵も心が痛まない。
俺は何もやっていない。
それでも聞く耳を持たないなら、どんな手を使ってでもここから出る。
そして、エリーゼ達のもとに帰って、また旅を続けるのだ。
俺はこの監獄を、旅の終着点にするつもりはない。
「第一、オレ達はあんまし戦えねえぞ?
だって、相手はサメだろ?
ってことは、海で戦わなきゃならないじゃないか」
「地上ならある程度は戦えるんだけどね。
海の上となると、魔術も使えないアタイらには無理だよ」
「私も、魔術の類は使えない」
おっと。
雲行きが怪しい。
そうだ、忘れていた。
こいつらは、ランスロット達とは違う。
バケモノみたいな強さのランスロット、
凄腕魔術師のシャルロッテ、
そしてウルトラ可愛くて強い剣士のエリーゼ。
俺の今の仲間は、その三人ではない。
まともに戦えるのは、俺だけってことか。
「いいでしょう。
僕がサメの相手をします」
「お前一人でか?
そんなに小さな体で、あのサメの相手をすると言うのか?」
「はい。 逆に、それ以外の方法があるんですか?」
「ベル、アンタはまだ若いんだ。
命は大事にしなきゃならない。
そんなに投げやりになる必要なんて……」
「僕を待っていてくれる人たちがいるのに、投げやりになんてなれませんよ」
実際の所、どうなのかは分からない。
俺が居なくなったことで、エリーゼ達はどうなっているだろうか。
もう俺のことは諦めて、三人でラニカを目指すことになっているかもしれない。
なんてことを、俺はこの一晩で何度も考えた。
でも、俺は信じている。
エリーゼ達は、俺のことを探している。
明確な根拠なんてものはない。
これまでみんなと一緒にいた時間が、俺を信じさせてくれている。
俺を、待ってくれている。
それか、俺を助けに来るかもしれない。
脱獄なんてしなくても、助けを待つことだってできる。
何とかして、この監獄から俺を連れ出してくれるかもしれない。
だが、それではダメだ。
きっと、皆は殺しを厭わないだろう。
ここにいる衛兵や見張りが全員極悪人なら、話は変わる。
違うだろう。
何も悪いことなんてしていない人間は、殺されるべきではない。
確かに、俺を間違えて捕らえたことは許されざることだ。
でも、それは絶対悪ではない。
あの時、俺は学んだ。
人は、簡単に死んでしまうのだと。
だから、そんなに簡単に、命を奪ってはいけない。
……この三人が盗賊であることであることは間違いない。
もし脱獄に成功すれば、俺は犯罪者の脱獄に加担したことになる。
それによって、今度はちゃんと罪に問われるかもしれない。
でも、人の命に比べれば安いものだろう。
俺は、やるぞ。
一人も犠牲にさせずに、脱獄してみせる。
「分かった。
その方向で固めるか」
「ゾルト、アンタ……」
「ベルはきっと、自分のためだけじゃなく、オレ達のことまで考えてくれてるんだよ。
オレ達はベルと違って有罪だ。
ベルは無実なのに、更に罪を重ねようとしているオレ達の肩を持ってくれようとしてくれてるんだぜ。
ヒヨってられるかよ」
昨日から、思うことがある。
ダリアよりも、実はゾルトの方がリーダー適性があったりして。
いや、シェインの意見にも影響されがちだな。
そもそもが流されやすい性格なのかもしれないな。
「それをやるとするなら、いつやる?
アタイらにも、心の準備ってもんがあるんだけど」
「今すぐに……と言いたいところですが、僕も流石に心の準備ができてませんからね。
明日か、明後日かにしましょう」
どこかホッとしたような表情を見せるダリア。
これ、ダリアは相当ビビってる説があるな。
実際戦うのは俺だってのに。
とりあえず、作戦は思ったよりも早く決まった。
二週間くらいかけるとか言ってたが、俺の意見によって一気に短くなった。
最短で明日、最遅で明後日。
どちらにせよ、決行の日は近い。
それまでに、色々と準備をしなきゃな。
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