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あくる週末。朝日が穏やかに駅前を照らしている。集合場所が駅になったのは、学校近隣でおきた放火事件ではあるが、その場所が転々としていて、バスを利用した方がいい、という貴音の判断の元だった。友也は自販機でコーンポタージュの缶を買っていた。
「気が利くね」
友也が振り向くと、黒のピーコートを羽織った貴音が手を差し出していた。
「え、と?」
友也が自販機の取り出し口から缶を取り出すと、貴音はそれを奪い取った。
「あ、そう。そうですか」
友也はため息一つで諦めた。慎吾は不安を抱えながらも部活に参加している。異臭のあったロケットはかごごと使わないようにしているらしい。
「最初の一件って一番遠いですよね」
「まあ、そこ以外はバスを使わなくてもいいね」
「だんだん学校に近づいてきてるとか」
「どうでしょうね。もしそうだとしても理由を考えるほどのことをまだ知らない」
二人は数分遅れのバスに乗り込むまで、それ以上事件については話さなかった。
一件目の事件はいわゆる団地の部屋の一つで発生した。部屋の扉の郵便受けからはみ出した郵便物に火が放たれた。その火は屋内側に燃え落ち、スニーカーを燃やし、散らかった靴を経由して玄関マットまで燃え移ったそうだ。幸い、住人がそこで気づいて、外に駆け出し消火したそうだ。住人は火を乗り越えた際に軽い焼けどを負ったらしい。
「ここは、なんで選ばれたんでしょうね」
友也が他の部屋を眺めながら言う。
「するどい話かもね」
「単に、郵便受けを狙うつもりで目にはいっただけかもしれませんけど」
友也の見る限り他に郵便物を放置している部屋は見当たらなかった。もっとも、事件後住人たちが気を付けている方が見方としては正しいかもしれない。
二件目の犯行は一件目の二週間後だった。住宅街にある平屋で発生した。住人の不注意で窓枠に挟み込んだカーテンが標的となった。建物の外から点火された炎はカーテンを伝い、屋内へ。カーテン全体に燃え移った。焼け落ちたカーテンが絨毯に火を付け、同じ部屋にあった床に触れていた掛け布団を経由してベッドを焼いた。住人は外出していたが、カーテンが炎上する様子が通りから見えていたため、早期通報できた。
「ここは運悪くって感じですよね」
友也の声に貴音は反応しない。
「俺もたまに窓でカーテン挟み込んじゃってたことあるんですよね。一階ですし気を付けないと」
「佐切くんの部屋にベランダの囲いはないの?」
「え、いや囲われてたと思います。あ、ここはないですね。どうりで狙われた訳だ」
三件目は一軒家の庭先に放置されていたホースに灯油が注入されていた。ホースの口から点火された炎は、ホースの中を通って、ホースの巻かれたケースを炎上させた。その脇には犬小屋があり、燃え移った。犬は逃げ延びたが、小屋の炎は干されていた洗濯物に燃え移った。二階にいた住人が異変に気づき通報。白昼の犯行だった。消防が駆けつけたときには洗濯物とホースの火によって庭全体に燃え移っていたそうだ。ホースに注入された灯油は恐らく前夜に用意されていたと思われる。
「すごいですね、ネットニュースにかなり鮮明な話が書き込まれてます」
「まあ、真偽のほどはわきまえて考えましょう」
「にしても、今回は計画だてられてますね」
「灯油のこと?」
「はい、この惨状を見ると、徐々に手慣れてきた感じがあります」
「気が利くね」
友也が振り向くと、黒のピーコートを羽織った貴音が手を差し出していた。
「え、と?」
友也が自販機の取り出し口から缶を取り出すと、貴音はそれを奪い取った。
「あ、そう。そうですか」
友也はため息一つで諦めた。慎吾は不安を抱えながらも部活に参加している。異臭のあったロケットはかごごと使わないようにしているらしい。
「最初の一件って一番遠いですよね」
「まあ、そこ以外はバスを使わなくてもいいね」
「だんだん学校に近づいてきてるとか」
「どうでしょうね。もしそうだとしても理由を考えるほどのことをまだ知らない」
二人は数分遅れのバスに乗り込むまで、それ以上事件については話さなかった。
一件目の事件はいわゆる団地の部屋の一つで発生した。部屋の扉の郵便受けからはみ出した郵便物に火が放たれた。その火は屋内側に燃え落ち、スニーカーを燃やし、散らかった靴を経由して玄関マットまで燃え移ったそうだ。幸い、住人がそこで気づいて、外に駆け出し消火したそうだ。住人は火を乗り越えた際に軽い焼けどを負ったらしい。
「ここは、なんで選ばれたんでしょうね」
友也が他の部屋を眺めながら言う。
「するどい話かもね」
「単に、郵便受けを狙うつもりで目にはいっただけかもしれませんけど」
友也の見る限り他に郵便物を放置している部屋は見当たらなかった。もっとも、事件後住人たちが気を付けている方が見方としては正しいかもしれない。
二件目の犯行は一件目の二週間後だった。住宅街にある平屋で発生した。住人の不注意で窓枠に挟み込んだカーテンが標的となった。建物の外から点火された炎はカーテンを伝い、屋内へ。カーテン全体に燃え移った。焼け落ちたカーテンが絨毯に火を付け、同じ部屋にあった床に触れていた掛け布団を経由してベッドを焼いた。住人は外出していたが、カーテンが炎上する様子が通りから見えていたため、早期通報できた。
「ここは運悪くって感じですよね」
友也の声に貴音は反応しない。
「俺もたまに窓でカーテン挟み込んじゃってたことあるんですよね。一階ですし気を付けないと」
「佐切くんの部屋にベランダの囲いはないの?」
「え、いや囲われてたと思います。あ、ここはないですね。どうりで狙われた訳だ」
三件目は一軒家の庭先に放置されていたホースに灯油が注入されていた。ホースの口から点火された炎は、ホースの中を通って、ホースの巻かれたケースを炎上させた。その脇には犬小屋があり、燃え移った。犬は逃げ延びたが、小屋の炎は干されていた洗濯物に燃え移った。二階にいた住人が異変に気づき通報。白昼の犯行だった。消防が駆けつけたときには洗濯物とホースの火によって庭全体に燃え移っていたそうだ。ホースに注入された灯油は恐らく前夜に用意されていたと思われる。
「すごいですね、ネットニュースにかなり鮮明な話が書き込まれてます」
「まあ、真偽のほどはわきまえて考えましょう」
「にしても、今回は計画だてられてますね」
「灯油のこと?」
「はい、この惨状を見ると、徐々に手慣れてきた感じがあります」
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