学園祭

ヨージー

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 友也はサークル塔の階段を上る。いつものようにミス研の部屋に入る。中には慎吾がいた。
「おつかれ、佐切」
「お疲れ様です武井さん」
 慎吾は狭い部屋の向かいの席に友也を誘導した。
「今日は、課題図書に使われていた表現技法について、俺から説明と、あとで意見交換をするよ」
 慎吾はすらすらと説明を行い、鞄から課題とされていた小説をとりだした。友也は戸惑う。
「あの、本庄さんを待たなくていいんですか?」
「ああ、別にいいんじゃない?」
 慎吾の軽い口ぶりに友也は動揺してしまう。
「え、いや。なんていうか本庄さんがいないと…!」

 冷たい風が頬に当たった。寒い。そして、痛い。頭に痛みが走った。
「…くっ」
「お目覚めかい?眠り姫」
「…?本庄さん!」
 友也は思い出す。学園祭の最中、貴音を探して学内を歩き回っていたことを。
「なにしてたんですか?探したんですよ…」
 体に違和感。背後で動かない両手。拘束されている。背中でがたつく硬い何か。友也は両手の拘束で動きづらいなか、振り返ろうとする。背中側に大きな樹脂製のプレートが鉄柵越しに見えた。友也はさらに思い出す。
「これはファン…?」
「そう、まさしくファンだな」
 友也は自分が貴音を探してたどり着いた部屋の状況を思い出した。それでも現状の説明がつかない。
「どうして、おれ…」
「教えてやろう」
 貴音もまた、後ろ手に装置に拘束されているようだ。
「…お願いします」
「佐切くんは私を発見して気をとられた隙に、あろうことか後ろから犯人にスタンガンで気絶させられたのだ」
「…、え、スタンガン?電気ですか?」
 頭の痛み方を考えたが、今までスタンガンを使われたことがなかったので比較できない。それよりも。
「犯人って、何かに巻き込まれてるんですか?」
「察しが悪いな佐切くん。ファンの裏手を見ただろう?」
友也はポリバケツと塩ビ管、そして小さな装置を思い出す。
「…中夜祭」
 友也の学校では学園祭の一日目の夜に花火をあげるなどの区切りを行う。その事を中夜祭と表現している。そして、先ほど見た装置についたタイマー。それが花火の時刻に設定されていたことを思い出す。
「ああ、なるほどね。だけど、重要なのはタイマーで何が起こるかだ」
 貴音は自信ありげに続ける。
「ファンの裏手にあった装置は攪拌器だ。両脇のバケツの溶剤を混ぜるわけだ」
「は?」
「攪拌器の蓋は開いていたからな、ファンがガスの拡散用に使われるのだろう」
「ガスって…!」
「なんだ、タイマーのことはわかっても装置を見てなかったのか。まだまだだな」
「本庄さんでも、ここは三階ですよ?ガスなんてここで撒いても」
「佐切くん、ガスがみんな空気より軽いとは限らない。無知のアピールはお腹一杯だよ」
「そんなの、どうしてわかるんですか?」
「材料だよ。佐切くんはそれに気づいてここに来たんじゃないのか。さらに減点」
「材料って」
「私はこの建物から大量洗剤の容器がまとめて捨てられるのを見てね。調べてみたわけだ」
「そんな、洗剤の容器だけで」
「みんなお祭り気分で気づかれないと思ったのか、犯人の頭が抜けているのか、ごみ捨て場は凄い状態だったよ。メーカーのロゴの入った段ボールが何箱も捨てられていた。一目で普通に使う量でないとわかる」
「そんな物どこから…。あ、強盗」
「そう、そういうことだ。理由のわからない強盗の答えがこの装置のようだ」
「かなりまずいじゃないですか…!大惨事になりますよ!」
 友也は慌てるも、腕の拘束で動けない。
「そうだ、にもかかわらず、油断してすやすや眠って、夢の中とは、減点」
 眠り姫、そう言われたことを友也は思い出した。
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