ヒーロー

ヨージー

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6.接触

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 ライダースーツを着た男が歩み寄ってくるのが倒れた透の横目に見えた。背中に熱を感じた。何かで思い切り打ちつけられたようだ。痛みが背中を駆け上がってくる。透は痛みをこらえて食いしばる。男が透に手をかけようとしたときを見計らって、透は飛びのいた。透は手元にあった石を男に投げつける。男は石を片手でそれをはじいた。息つく間もなく男に頭をつかまれ地面に押し倒される。顎を打ち付ける。帽子が脱げた。透が立ち上がろうと片手をつくと、男に手の甲を踏みつけられた。透がうめき声をあげると、男は足をどけた。見上げると男が足を振りかぶっていた。衝撃。工場の屋外に蹴りだされた。男はすぐに透の目前に寄り、透の襟首をひねりあげた。男は長身で、透は足先が地面から離れてしまった。透は男に工場の外壁に押し付けられる。
「お前は何者だ」
男は透の襟元をつかむ力を緩めない。透は足をばたつかせて、男を蹴ろうとするが、男は当たっても全く動じない。サイレンが聞こえた。救急車両だろう。男の注意がそちらにそれる。透は右手の平を男の鼻先に打ち付ける。襟元をつかんだ男の腕の力が緩んだ。透は着地と同時に飛びのき、男から距離をとった。男を振り向く。しかし、視界にあったのは男のこぶしだった。透はしりもちをつく。姿勢を崩し切らないように耐えて、跳ね起きる。男の居た位置をみる。距離がつまっていた。首に衝撃。首だけを狙って突き飛ばされた。
「…っく」
 声にならないうめき声がでた。首の後ろ、ジャージをつかまれた。強い力で引きずられる。自分のシャツの襟が首に食い込む息ができない。
「折角のバイクを乗り捨てなくちゃならなくなった。この借りは高いよ」
男の低い声が恐怖心をあおった。工場の裏口には黒のバンと、バイクが一台あった。脇に赤いタンクが見えた。男は透をバンの後部座席に押し込むと、タンク中身をバイクに振りかけた。液体がバイクのシートを濡らした。透は逃げようとバンのドアを掴む。首元に強い痛みを感じた。力が抜ける。意識が遠のく。透は車の振動と、ドア越しに猛烈な熱を感じたところで意識を失った。

「あんな、あんな子どもを手に掛けるなんて聞いていない」
 石井の声は壁に反響した。
「おい、そんな理由で、追手がいる場合のプランに変更したのか?」
「そんなことはいい。包みは回収できただろう?パルスの増幅はできたのか?」
 石井は勢いに任せてまくし立てている。石井の他に少なくとも二人、人影が確認できる。
「調整はほぼ終わっている。チェック作業を監視の下で進めさせている」
長身の男が石井をなだめるように話している。もう一人の細身の男が言葉を挟む。
「子どもをって、明日の話を聞いていないのか?それに今日だって…」
「何の話をしている?」
 石井の声は動揺している。
「お前、誘拐した子どもらを生かしたままにしておくと思っているのか?」
 細身の男は石井をあおるようにおどけた口ぶりだ。
「少し静かにしてくれ。佐田」
 長身の男が佐田という細身の男の肩をたたく。
「…、誘拐した子どもを、そんな、どうして」
 石井は頭を抱えている。
「まあ落ち着け」
長身の男が石井の方に近づこうとする。
「近寄るな。なんて、野蛮で、愚かなんだ」
 石井が長身の男の手を払いのける。石井はぶつぶつと何かを言いながら後ずさっている。長身の男と佐田という男が顔を見合わせた。
「着いてきてしまった子どもはどうした?」
 長身の男は石井に優しく語り掛ける。
「ん、ああ、車で待たせてある。あたりを見てくると伝えている」
「そうか…」
バシュ。軽い音が聞こえた。石井がぐらついているように見えた。長身の男がピストルのようなものを構えている。
「館山さん、それは?」
 佐田が興味津々といった様子で質問している。状況がのみ込めなかった。
「ん、ああ、今回の計画に向けて念のために用意したものの一つだ。弾が竹製だから、軽い。ガスを使うから、天気には注意が必要だが、ちゃんとねらって打てば、大人でも一発で済む」
 館山という長身の男が言葉を話し終わるころ、ぐらついていた石井がひざから崩れた。
「ひっ…」
 木乃美は思わず声が出てしまう。
「おいおい、車で待ってなきゃダメなんじゃないの?」
 佐田のおどけた口調が部屋に響く。木乃美は駆けだした。
「捕まえてくるんで、あとでそれかしてください」
 佐田の言葉に館山は肩をすくめた。
「一応外部に連絡の取れないようにしておくが、早めに処理してくれ。郷田が戻ったら明日のミーティングだ」
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