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病室の入り口にいる警察から周防雅人は話を聞いた。病室にいる咲からはとても話が効ける状態ではなかった。美紀は呼吸器を付けていて、今は安定しているように見えた。今日の朝から事件は始まっていたらしい。美紀が幼稚園バスに乗って一時間と経たないうちに幼稚園のアドレスから脅迫文がメッセージとして送られてきたという。この件に関して幼稚園側は何もわからないということだが、咲と夫の久志の連絡先が漏れたのも幼稚園からだろうと見当がついているらしい。警察の話では、狙う人が狙えば、一般企業だろうが、これくらいのことはされてしまうらしい。脅迫文は咲と久志に同様のものが一件と、具体的な指示が記されたものが久志だけに送られたらしい。指示の内容はわからないが、写真付きの脅迫文が送られた後、夫婦の通話の際に、久志からすでに急がないと間に合わない内容の指示が匂わされていたと咲が語ったそうだ。咲に警察対応を任せて、久志は脅迫された指示に従った、というのが犯人の思惑だったとも考えられるらしい。しかも、驚くべきことに、同じような内容で、同じ通園バス利用の子どもを持つ家庭が脅迫されていたという。この通報で、警察は朝からてんてこ舞いだったようだ。それは雅人が咲の病室前で待機する二人組の警察を見た印象でもある。疲労の色が見て取れた。久志が指示された内容は雅人に心当たりがあり、そこは警察に対して大きく捜査協力ができたと思っている。
事件は終わっていない。久志は指示に従った後、行方不明のままだ。誘拐された子どもたちもまた指示に従ったから解放されたとは言い難い話だった。発見場所から少年の声で救急へ通報があり、通園バスごとガスで中毒死させられそうだったところを救助できたとのことだ。しかし、通報した少年は現場で発見することはできず、残された携帯電話や、置き去りになった所持品から、犯人に捕まったのではないか、とも言われている。営為捜索中とのことだ。現場では犯人の遺留品を確認しているそうだが、バイクがガソリンを振りかけられて燃やされていたり、と証拠の処理もそれなりにされていそうな話だった。
「周防雅人さん」
先ほど話した警察の一人が病室前のベンチでうなだれていた周防に声をかけた。
「さきほど伺ったお話で犯人の本来の目的がお義兄さんの会社の研究品ではないか、ということがわかってきました」
周防は興奮気味の警察の話を聞く。解決に近づけたのだろうか。
「詳しくは言えないのですが、今回の誘拐で指示を出されたご家族は多数いらしたのですが、うち数件において、お義兄さんが会社から運び出したと思われる小包を運搬させられた方々がいらっしゃいました。他のご家族ではとりとめもない指示でしたが、やっと、つながりが見えてきました。そこで、なのですが、お姉さんは憔悴していらっしゃいます。雅人さんはお義兄さんと同じ会社だそうですね。会社の方と連絡をとりたいので、連絡先などお伺いさせていただいてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん。協力させていただきます」
透は首筋の痛みで目が覚めた。床の冷たさが、車内から移動されていたことを気づかせた。手首に金属の感触があった。手錠、だろうか。後ろ手に固定されている為、手元が見えない。手錠をイメージしたときに、拘束されていた人たちを思い出した。
「清水さん…!」
透は立ち上がろうとして、後ろ手の拘束によって、引き戻された。手錠が何かを通して両腕を拘束しているようだ。何もしに行くことができない。清水や一樹の安否も確かめることもできない。全身を確認したが、携帯電話は無くしてしまっているようだ。部屋は広くない。自分の部屋と変わらない。配管に囲まれている。手錠も配管を通してつながれているようだ。部屋は暗いが、通路からの漏れた明かりでかろうじて視界がある。カビ臭い。湿気がこもるのだろうか。あまり整備が行き届いた環境には見えない。透は体を上下に動かしてみる。配管が壁に固定されている金具同士の間のスペースだけが透に許された移動範囲のようだ。透は背中側の壁に耳を当ててみる。特に何も聞こえない。外部に面していないのか、壁が厚いだけなのかもしれない。幸い足は拘束されていない。自由に動かせる。試しに配管の一つを蹴ってみた。管の中を響くような大きな音が鳴る。透が起きたことが捕らえた奴にバレただろうか。意識を失ったと思われていた方が有利だったかもしれない。そこでふと気づいた。奴は誘拐した人たちを明らかに殺そうとしていた。ではなぜ、自分は殺されなかったのか。透は捕らえられるまでの記憶を手繰る。殺す時間がなかったのだろうか。確かに透は救急車を呼んでから見つかった記憶があった。しかし、透を捕らえた男と透の実力差は歴然で、なんなら最初の一撃で透を殺せる方法もあったかもしれない。そう、最初透は背後の男に気づかなかった。そんな有利な状況で男は自分をただ突き飛ばしただけだ。なぜだろう。犯罪の現場を抑えられている上に、殺害計画を邪魔されたというのに。余裕、だろうか。男の気持ちの余裕が、透の命を救ったのだろうか。透は男の顔を見ている。こういう時は、口封じという動機のもと殺されるのではないのだろうか。バスに捕らえられた人たちも、その理由で殺される状況に追い込まれていたのではないのだろうか。あの時点で、バスの人たちが死ぬことが確実に見込めていたのか。透は清水と一樹を思い、胸が苦しくなる。透には、人がどの程度の有毒ガスに耐えられるのか見当もつかない。いや、男にだってそんなことが確実に分かっただろうか。透は清水たちの生存する道筋を懸命に考えた。男にあの人数を救急車のサイレン近づく中で、対処する余裕はなかったはずだ。男は自由に動ける透をまず対処しようとしたのだ。そう思うと、無駄にしか思えなかった、透の抵抗の一つ一つが、清水たちを救う可能性を広げたとするならば、気持ちのよりどころとなりそうだった。たとえ、この先、透自身が死ぬことになったとしても。透は死への恐怖を、かぶりを振って振り払い、冷静に考えようとする。男は異変に気付き、異変の理由、透を見つけた。何を考えたのだろう。ガスによる殺害失敗の焦り?それを引き起こそうとした透への憎しみ?いや、どちらも感じなかった。男とじかに接した透の感覚がそれらを否定した。そもそも男は何がしたかったのだろう。誘拐といえば身代金だが、そのために、幼稚園バスなんて目立つものを抑える必要があっただろうか。あの男がそんなリスクを負うほど冷静さを欠いた人物だとは思えなかった。そういえば、バスは塗装されていた。雑ではあったが、一人でできることだろうか。仲間がいるのか?透は考える。透が連れ出される状況は、明らかに現場にいる誘拐犯が一人だと思わせた。バンにもとから男の仲間が乗り込んでいたということは考えられるだろうか。いや、男はライダースジャケットを身につけていた。一人だったんだ。仲間がいたのかもしれないが、あの時はあの男一人しかいなかったんだ。男はバイクを捨てていくと言っていた。意識を失う直前、透はものすごい熱を感じた。あれは、バイクを燃やしたに違いない。燃やす?そう、そうだ。あそこには赤いタンクがあった。今思えば、灯油の運搬に使われるものだ。中身が必ずそうとは限らない、ガソリンだったのかもしれない。けれど、あそこから男は一人で証拠を隠滅しつつ逃げ出す用意をしていたのだ。いや、でも、いくら人気の少ない工業地帯とはいえ、バイクや車が炎上していたら、遅かれ早かれ誰かに通報されるのではないか。そうしてしまったら、バスだって見つかってしまう。もしかしたら、誰か生き残ってしまうかもしれない。そもそも、誘拐事件にしては展開が早すぎないだろうか。身代金のやり取りなんて、一日で終わるかどうか、といった印象だ。目的が予想と違うかもしれない。透が施設を訪れた時点で、男たちにとって、誘拐した清水たちの価値は失われていたのかもしれない。その生死ですらも。顔を見られたかもしれない人質の生死が重要ではない。どういうことだろう。もし誘拐事件がそんな形で展開したらどうなるだろう。報道は病院を中継しながら、そこまでの情報を反芻し、人質一人一人の安否を伝え続けるだろう。病院は、多くの急患を抱えることになり手一杯になるのかもしれない。警察なんて、被害者家族一件、一件に捜査をすることで、疲弊するだろう。まだ、何かするのかもしれない。そう透は直感した。人質の身を危険な状態で発見させて、事態をより混乱させる。そのことが、逃走車両を故意に炎上という事実から憶測させられ、透に事件の次の展開の存在を想像させた。透は焦燥感を意識した。これから何が起こるのか、これから自分の身に何が起こるのか。男は言っていた。透に後悔させる、と。おそらく透は殺されるのだろう。それも恐ろしい手段で。清水は助かっただろうか。透に確かめる術はこの先もないだろう。透にはもう自分からできることはない。透はただ待つことしかできなかった。
事件は終わっていない。久志は指示に従った後、行方不明のままだ。誘拐された子どもたちもまた指示に従ったから解放されたとは言い難い話だった。発見場所から少年の声で救急へ通報があり、通園バスごとガスで中毒死させられそうだったところを救助できたとのことだ。しかし、通報した少年は現場で発見することはできず、残された携帯電話や、置き去りになった所持品から、犯人に捕まったのではないか、とも言われている。営為捜索中とのことだ。現場では犯人の遺留品を確認しているそうだが、バイクがガソリンを振りかけられて燃やされていたり、と証拠の処理もそれなりにされていそうな話だった。
「周防雅人さん」
先ほど話した警察の一人が病室前のベンチでうなだれていた周防に声をかけた。
「さきほど伺ったお話で犯人の本来の目的がお義兄さんの会社の研究品ではないか、ということがわかってきました」
周防は興奮気味の警察の話を聞く。解決に近づけたのだろうか。
「詳しくは言えないのですが、今回の誘拐で指示を出されたご家族は多数いらしたのですが、うち数件において、お義兄さんが会社から運び出したと思われる小包を運搬させられた方々がいらっしゃいました。他のご家族ではとりとめもない指示でしたが、やっと、つながりが見えてきました。そこで、なのですが、お姉さんは憔悴していらっしゃいます。雅人さんはお義兄さんと同じ会社だそうですね。会社の方と連絡をとりたいので、連絡先などお伺いさせていただいてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん。協力させていただきます」
透は首筋の痛みで目が覚めた。床の冷たさが、車内から移動されていたことを気づかせた。手首に金属の感触があった。手錠、だろうか。後ろ手に固定されている為、手元が見えない。手錠をイメージしたときに、拘束されていた人たちを思い出した。
「清水さん…!」
透は立ち上がろうとして、後ろ手の拘束によって、引き戻された。手錠が何かを通して両腕を拘束しているようだ。何もしに行くことができない。清水や一樹の安否も確かめることもできない。全身を確認したが、携帯電話は無くしてしまっているようだ。部屋は広くない。自分の部屋と変わらない。配管に囲まれている。手錠も配管を通してつながれているようだ。部屋は暗いが、通路からの漏れた明かりでかろうじて視界がある。カビ臭い。湿気がこもるのだろうか。あまり整備が行き届いた環境には見えない。透は体を上下に動かしてみる。配管が壁に固定されている金具同士の間のスペースだけが透に許された移動範囲のようだ。透は背中側の壁に耳を当ててみる。特に何も聞こえない。外部に面していないのか、壁が厚いだけなのかもしれない。幸い足は拘束されていない。自由に動かせる。試しに配管の一つを蹴ってみた。管の中を響くような大きな音が鳴る。透が起きたことが捕らえた奴にバレただろうか。意識を失ったと思われていた方が有利だったかもしれない。そこでふと気づいた。奴は誘拐した人たちを明らかに殺そうとしていた。ではなぜ、自分は殺されなかったのか。透は捕らえられるまでの記憶を手繰る。殺す時間がなかったのだろうか。確かに透は救急車を呼んでから見つかった記憶があった。しかし、透を捕らえた男と透の実力差は歴然で、なんなら最初の一撃で透を殺せる方法もあったかもしれない。そう、最初透は背後の男に気づかなかった。そんな有利な状況で男は自分をただ突き飛ばしただけだ。なぜだろう。犯罪の現場を抑えられている上に、殺害計画を邪魔されたというのに。余裕、だろうか。男の気持ちの余裕が、透の命を救ったのだろうか。透は男の顔を見ている。こういう時は、口封じという動機のもと殺されるのではないのだろうか。バスに捕らえられた人たちも、その理由で殺される状況に追い込まれていたのではないのだろうか。あの時点で、バスの人たちが死ぬことが確実に見込めていたのか。透は清水と一樹を思い、胸が苦しくなる。透には、人がどの程度の有毒ガスに耐えられるのか見当もつかない。いや、男にだってそんなことが確実に分かっただろうか。透は清水たちの生存する道筋を懸命に考えた。男にあの人数を救急車のサイレン近づく中で、対処する余裕はなかったはずだ。男は自由に動ける透をまず対処しようとしたのだ。そう思うと、無駄にしか思えなかった、透の抵抗の一つ一つが、清水たちを救う可能性を広げたとするならば、気持ちのよりどころとなりそうだった。たとえ、この先、透自身が死ぬことになったとしても。透は死への恐怖を、かぶりを振って振り払い、冷静に考えようとする。男は異変に気付き、異変の理由、透を見つけた。何を考えたのだろう。ガスによる殺害失敗の焦り?それを引き起こそうとした透への憎しみ?いや、どちらも感じなかった。男とじかに接した透の感覚がそれらを否定した。そもそも男は何がしたかったのだろう。誘拐といえば身代金だが、そのために、幼稚園バスなんて目立つものを抑える必要があっただろうか。あの男がそんなリスクを負うほど冷静さを欠いた人物だとは思えなかった。そういえば、バスは塗装されていた。雑ではあったが、一人でできることだろうか。仲間がいるのか?透は考える。透が連れ出される状況は、明らかに現場にいる誘拐犯が一人だと思わせた。バンにもとから男の仲間が乗り込んでいたということは考えられるだろうか。いや、男はライダースジャケットを身につけていた。一人だったんだ。仲間がいたのかもしれないが、あの時はあの男一人しかいなかったんだ。男はバイクを捨てていくと言っていた。意識を失う直前、透はものすごい熱を感じた。あれは、バイクを燃やしたに違いない。燃やす?そう、そうだ。あそこには赤いタンクがあった。今思えば、灯油の運搬に使われるものだ。中身が必ずそうとは限らない、ガソリンだったのかもしれない。けれど、あそこから男は一人で証拠を隠滅しつつ逃げ出す用意をしていたのだ。いや、でも、いくら人気の少ない工業地帯とはいえ、バイクや車が炎上していたら、遅かれ早かれ誰かに通報されるのではないか。そうしてしまったら、バスだって見つかってしまう。もしかしたら、誰か生き残ってしまうかもしれない。そもそも、誘拐事件にしては展開が早すぎないだろうか。身代金のやり取りなんて、一日で終わるかどうか、といった印象だ。目的が予想と違うかもしれない。透が施設を訪れた時点で、男たちにとって、誘拐した清水たちの価値は失われていたのかもしれない。その生死ですらも。顔を見られたかもしれない人質の生死が重要ではない。どういうことだろう。もし誘拐事件がそんな形で展開したらどうなるだろう。報道は病院を中継しながら、そこまでの情報を反芻し、人質一人一人の安否を伝え続けるだろう。病院は、多くの急患を抱えることになり手一杯になるのかもしれない。警察なんて、被害者家族一件、一件に捜査をすることで、疲弊するだろう。まだ、何かするのかもしれない。そう透は直感した。人質の身を危険な状態で発見させて、事態をより混乱させる。そのことが、逃走車両を故意に炎上という事実から憶測させられ、透に事件の次の展開の存在を想像させた。透は焦燥感を意識した。これから何が起こるのか、これから自分の身に何が起こるのか。男は言っていた。透に後悔させる、と。おそらく透は殺されるのだろう。それも恐ろしい手段で。清水は助かっただろうか。透に確かめる術はこの先もないだろう。透にはもう自分からできることはない。透はただ待つことしかできなかった。
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