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木乃美は学校につき、周防が車を停めに行く間、校舎を一周した。集合住宅に囲まれた校舎は、形は違えど自分の小学校を思い出させた。校庭にある複数の遊具が記憶をより鮮明にした。
「引田君は、遊んでいた遊具とかある?」
透が隣を歩いている。夢のような時間だ。
「…、透でいいよ。僕はブランコかな。靴飛ばしが流行していたよ。木乃美さんは?」
「私は平均台かな。その頃の親友と二人で、秘密の時間、みたいなことしてたな」
「へえ、仲良しだったんだね」
「よく遊んでいたけど、その子引っ越しちゃって、最後にお手紙交換したな」
「いい思い出だね。男の子はドッチボールとか、サッカーとか、当たると痛い記憶が多いな」
「何それ」
「中学とかになると遊具とかも学校になくなって、校庭自体が運動部の空間って印象だったな」
「あー、そうかも。体育の時間だけお借りします、みたいな」
「木乃美さんはそんなに運動できるのに、部活してなかったの?」
「うん。私の場合は家が部活みたいな感じだった。全然青春の感じがなかったけど」
「僕は進学のことばかり言われる家庭だったからな。理由は違えど家族が原因ってとこなのかな」
「そうだね」
「僕ね、中学二年生のころ事件に合ったんだ」
木乃美は胸の高鳴りを感じた。
「中学のころ学内に強盗が出てたんだ」
「へえ、強盗ですか」
「木乃美さんは地区が違ったのかもね。僕の地域では有名だったんだ」
「怖いね」
「そう、それに遭遇しちゃったんだ」
木乃美はその先の展開をどう言うのか。彼の来ていた黄緑色のジャージと関係する話なのか。緊張して上唇を噛んでしまう。
「でもその時ね、同じく僕の街で有名だった人がいて、リアルライフヒーローってわかる?」
木乃美は心臓が飛び出しそうだった。
「最初はびっくりしたんだ。コスプレして街中に繰り出しているわけだからね」
透からの印象が心配になる。思わず手のひらを強く握ってしまう。
「その彼が強盗団から助けてくれたんだ」
木乃美は愕然とする“彼”、そう透は言った。そうなのだ。木乃美は透の前で男のように振る舞っていた。
「彼は僕と身長もさほど変わらないのに、大の大人を軽くなぎ倒していったんだ。まるで昨日の木乃美さん…、みたいに…」
木乃美は顔を上げる。気づいてくれたのだろうか。どうしよう。今なのか。心配するふりをして志望校を聞いて、同じ高校を目指したことを。ずっと、気にかけていたことを。入学式の日に自己紹介できただけで舞い上がってしまっていたことを。すべてを打ち明けるべきときなのか。
「おおい、二人ともお待たせ。学校に入ろうか」
澄川が手を振っていた。
透は不思議に思っていた。周防が警察に電話してからゆうに数十分は経過していた。木乃美と学校を一周している間、予想に反して警察車両を見かけなかった。路上駐車している車両すら見られない。犯人を警戒して潜んでいるということだろうか。透の感覚では、警察といえど、人数的優位がなくては苦戦しそうな一団に犯人たちは思われた。
周防が職員室に出向いて話を通そうとしている。透たちは職員入り口前で時間を潰していた。いくら周防が事件当時者の一人とはいえ、話は通じるのだろうか。仮に警察があたりに潜んでいるのだとしたら、自分たちは彼らの捜査を妨害しているのではないだろうか、と考えだす不安になってくる。警察に託して、自分は病院に行っておくべきだったのではないだろうか。
周防が職員入り口から出てきた。浮かない表情だ。
「ダメだった。警察の話を持ち出したが、逆に通報されそうになってしまった」
「え、警察からのアプローチもなかったってことでしょうか」
「そう、そうなるな。澄川携帯電話を貸してくれないか?もう一度警察にとりあってみる」
「いいけど、なんていうつもりだ?今現場にいて姿が見当たらないが仕事してますか?ってか」
「それは…、上手く伝えてみる」
周防は携帯電話を名刺片手に素早くタップした。しばらく掛けているが、電話がつながらないようだ。
「ダメだ。つながらない。まさか寝ているなんてことはないだろうが。通話できない状態なのか」
「あの、私たちでなら学内にはいれるかもしれません」
木乃美の発言だった。
周防は学校周辺に異変がないか散策している。手当たり次第で心もとなく、久志のことを思うと気が気でなかった。二人と学校の職員玄関前で別れたあと、何かできることはないか、と落ち着かない周防を澄川が機転を利かせて、今に至る。透に言われた通り、学校を一周するうちに警察車両は一台も見かけられなかった。今は学校から一本道を外れた通りを巡回していた。それは小学校周辺を男二人でうろついていたら、学校関係者でなくとも通報されてしまう、という考えもあった。澄川は公園のトイレに入っている。周防は子どもたちも含めて、昨日からほとんど何も口にしていない。澄川の車に飴玉があったので、それを口にした程度だ。周防は事が解決したら、太田とまた会社近くのお気に入りランチに出かけようと考えた。その時は久志も一緒に、と思いを巡らせる。
「おいっ。周防、来てくれ」
澄川の大きな声が静かな住宅街に響いた。周防は公園の男子便所へ急ぐ。
「どうした?」
入り口から澄川が指し示している個室の床を見る。赤黒い液体が広がっていた。
「これは血、なのか」
鉄臭い臭気がそれを肯定していた。
「澄川通報頼む」
「分かった」
澄川は電波状況を気にしてか、匂いが耐えがたかったのか、公園の敷地へでてから通話を始めた。
個室の鍵はどうなっている。殺した後絞められはしないだろう。隣の個室の扉は開いている。鍵を閉めないと開く構造のようだ。個室の施錠状況をロックの色で確認する。施錠はやはりされていなかった。扉は内側に開く作りになっている。扉を押してみる。思ったより重いが、動く。片手では押し開けられない。今度は両手で体重をかけて押してみる。重いものが移動する感覚。どん、という鈍い音の後扉が軽くなった。男が一人個室のなかで横になっていた。正確には周防の手によって横倒しになっていた。頭から血が流れている。周防は見る状態に既視感があった。男の片方の眼球から細い棒が突き出ていた。そして、男の容貌は周防の知っている顔だった。昨日病院で会った刑事の一人だった。
周防は混乱する頭を整理する。トイレを出る。通話している澄川と視線が合う。公園の水道に向かう。捻りを回して水を流す。顔を洗う。頭の中を整理する。周防から連絡を受けた現場に向かったのは電話を受けた刑事だけだったのか。アジトの方にもう一方の刑事が向かったのか。いや、刑事は二人一組で行動すると聞いたことがある。周防の話に信ぴょう性がなく、学校へ向かったのが二人組だけだったのか。それならば、もう一人も生きていないかもしれない。電話がつながらなかったのはこのためか。
澄川が肩をゆする。
「周防、通報はできた」
「分かった」
周防は顔を上げる。久志の安否に不安が募る。大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「あまりよくないが、犯人たちの痕跡がないか調べてみる」
「おい、正気か?」
「手口が奴らのものだった。久志が心配だ」
「…」
周防は澄川の静止を振り切ってトイレに戻った。遺体の懐をあさる。携帯電話があった。履歴には澄川の番号がある。あの時点でもう殺されていたのだろうか。他には、手帳が出てきた。中を見てみる。内容に久志の事件関与を疑う記載があり、ため息をつく。ページをめくる。アジトの住所だろうか。書きなぐられている。
「これは」
最後のページに車の車種とナンバーを記したメモがあった。他の事件ではあるまい。周防はそのページを破りとり、メモ帳を遺体の懐に戻した。
トイレを出ると澄川の不安そうな視線を感じた。
「すまない。ここの対応は任せていいか」
「わかった。周防は?」
「ちょっと調べ物をしてくる」
「気を付けろよ」
「ありがとう」
周防は足早に公園を後にした。
「引田君は、遊んでいた遊具とかある?」
透が隣を歩いている。夢のような時間だ。
「…、透でいいよ。僕はブランコかな。靴飛ばしが流行していたよ。木乃美さんは?」
「私は平均台かな。その頃の親友と二人で、秘密の時間、みたいなことしてたな」
「へえ、仲良しだったんだね」
「よく遊んでいたけど、その子引っ越しちゃって、最後にお手紙交換したな」
「いい思い出だね。男の子はドッチボールとか、サッカーとか、当たると痛い記憶が多いな」
「何それ」
「中学とかになると遊具とかも学校になくなって、校庭自体が運動部の空間って印象だったな」
「あー、そうかも。体育の時間だけお借りします、みたいな」
「木乃美さんはそんなに運動できるのに、部活してなかったの?」
「うん。私の場合は家が部活みたいな感じだった。全然青春の感じがなかったけど」
「僕は進学のことばかり言われる家庭だったからな。理由は違えど家族が原因ってとこなのかな」
「そうだね」
「僕ね、中学二年生のころ事件に合ったんだ」
木乃美は胸の高鳴りを感じた。
「中学のころ学内に強盗が出てたんだ」
「へえ、強盗ですか」
「木乃美さんは地区が違ったのかもね。僕の地域では有名だったんだ」
「怖いね」
「そう、それに遭遇しちゃったんだ」
木乃美はその先の展開をどう言うのか。彼の来ていた黄緑色のジャージと関係する話なのか。緊張して上唇を噛んでしまう。
「でもその時ね、同じく僕の街で有名だった人がいて、リアルライフヒーローってわかる?」
木乃美は心臓が飛び出しそうだった。
「最初はびっくりしたんだ。コスプレして街中に繰り出しているわけだからね」
透からの印象が心配になる。思わず手のひらを強く握ってしまう。
「その彼が強盗団から助けてくれたんだ」
木乃美は愕然とする“彼”、そう透は言った。そうなのだ。木乃美は透の前で男のように振る舞っていた。
「彼は僕と身長もさほど変わらないのに、大の大人を軽くなぎ倒していったんだ。まるで昨日の木乃美さん…、みたいに…」
木乃美は顔を上げる。気づいてくれたのだろうか。どうしよう。今なのか。心配するふりをして志望校を聞いて、同じ高校を目指したことを。ずっと、気にかけていたことを。入学式の日に自己紹介できただけで舞い上がってしまっていたことを。すべてを打ち明けるべきときなのか。
「おおい、二人ともお待たせ。学校に入ろうか」
澄川が手を振っていた。
透は不思議に思っていた。周防が警察に電話してからゆうに数十分は経過していた。木乃美と学校を一周している間、予想に反して警察車両を見かけなかった。路上駐車している車両すら見られない。犯人を警戒して潜んでいるということだろうか。透の感覚では、警察といえど、人数的優位がなくては苦戦しそうな一団に犯人たちは思われた。
周防が職員室に出向いて話を通そうとしている。透たちは職員入り口前で時間を潰していた。いくら周防が事件当時者の一人とはいえ、話は通じるのだろうか。仮に警察があたりに潜んでいるのだとしたら、自分たちは彼らの捜査を妨害しているのではないだろうか、と考えだす不安になってくる。警察に託して、自分は病院に行っておくべきだったのではないだろうか。
周防が職員入り口から出てきた。浮かない表情だ。
「ダメだった。警察の話を持ち出したが、逆に通報されそうになってしまった」
「え、警察からのアプローチもなかったってことでしょうか」
「そう、そうなるな。澄川携帯電話を貸してくれないか?もう一度警察にとりあってみる」
「いいけど、なんていうつもりだ?今現場にいて姿が見当たらないが仕事してますか?ってか」
「それは…、上手く伝えてみる」
周防は携帯電話を名刺片手に素早くタップした。しばらく掛けているが、電話がつながらないようだ。
「ダメだ。つながらない。まさか寝ているなんてことはないだろうが。通話できない状態なのか」
「あの、私たちでなら学内にはいれるかもしれません」
木乃美の発言だった。
周防は学校周辺に異変がないか散策している。手当たり次第で心もとなく、久志のことを思うと気が気でなかった。二人と学校の職員玄関前で別れたあと、何かできることはないか、と落ち着かない周防を澄川が機転を利かせて、今に至る。透に言われた通り、学校を一周するうちに警察車両は一台も見かけられなかった。今は学校から一本道を外れた通りを巡回していた。それは小学校周辺を男二人でうろついていたら、学校関係者でなくとも通報されてしまう、という考えもあった。澄川は公園のトイレに入っている。周防は子どもたちも含めて、昨日からほとんど何も口にしていない。澄川の車に飴玉があったので、それを口にした程度だ。周防は事が解決したら、太田とまた会社近くのお気に入りランチに出かけようと考えた。その時は久志も一緒に、と思いを巡らせる。
「おいっ。周防、来てくれ」
澄川の大きな声が静かな住宅街に響いた。周防は公園の男子便所へ急ぐ。
「どうした?」
入り口から澄川が指し示している個室の床を見る。赤黒い液体が広がっていた。
「これは血、なのか」
鉄臭い臭気がそれを肯定していた。
「澄川通報頼む」
「分かった」
澄川は電波状況を気にしてか、匂いが耐えがたかったのか、公園の敷地へでてから通話を始めた。
個室の鍵はどうなっている。殺した後絞められはしないだろう。隣の個室の扉は開いている。鍵を閉めないと開く構造のようだ。個室の施錠状況をロックの色で確認する。施錠はやはりされていなかった。扉は内側に開く作りになっている。扉を押してみる。思ったより重いが、動く。片手では押し開けられない。今度は両手で体重をかけて押してみる。重いものが移動する感覚。どん、という鈍い音の後扉が軽くなった。男が一人個室のなかで横になっていた。正確には周防の手によって横倒しになっていた。頭から血が流れている。周防は見る状態に既視感があった。男の片方の眼球から細い棒が突き出ていた。そして、男の容貌は周防の知っている顔だった。昨日病院で会った刑事の一人だった。
周防は混乱する頭を整理する。トイレを出る。通話している澄川と視線が合う。公園の水道に向かう。捻りを回して水を流す。顔を洗う。頭の中を整理する。周防から連絡を受けた現場に向かったのは電話を受けた刑事だけだったのか。アジトの方にもう一方の刑事が向かったのか。いや、刑事は二人一組で行動すると聞いたことがある。周防の話に信ぴょう性がなく、学校へ向かったのが二人組だけだったのか。それならば、もう一人も生きていないかもしれない。電話がつながらなかったのはこのためか。
澄川が肩をゆする。
「周防、通報はできた」
「分かった」
周防は顔を上げる。久志の安否に不安が募る。大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「あまりよくないが、犯人たちの痕跡がないか調べてみる」
「おい、正気か?」
「手口が奴らのものだった。久志が心配だ」
「…」
周防は澄川の静止を振り切ってトイレに戻った。遺体の懐をあさる。携帯電話があった。履歴には澄川の番号がある。あの時点でもう殺されていたのだろうか。他には、手帳が出てきた。中を見てみる。内容に久志の事件関与を疑う記載があり、ため息をつく。ページをめくる。アジトの住所だろうか。書きなぐられている。
「これは」
最後のページに車の車種とナンバーを記したメモがあった。他の事件ではあるまい。周防はそのページを破りとり、メモ帳を遺体の懐に戻した。
トイレを出ると澄川の不安そうな視線を感じた。
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