誰の目にも輝きを

ヨージー

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「ここが、我が家だ」
芦屋恭子に紹介された建物は二人で暮らしているにしては広いマンションだった。弥伊子は実家が二階建てのこともあり、五階に位置するそのマンションからの景色は新鮮だった。もちろん初めての高さではないのだけれど、人の家という認識では初めてだと思う。
エントランスが、明るく広い。弥伊子のマンションへのイメージが更新された。部屋までのエレベーターは無音で振動も少ない。弥伊子の頭の中のエレベーターとは同じものと思えなかった。
「その、なんていうか。すごく豪華だね」
「そうかな」
「私なら私の家みたいなところよりもこっちに帰っていくよ」
「はは、まあ最初はそう思うのかもしれない」
「最初はって、贅沢な悩みね」
「うーん、でも広い部屋に自分だけって言うのはなんとも言えないのよ」
「そんなにお母さん帰ってこないの?」
「そうだね」
「そうなんだ」
「暗くなる話じゃない」
弥伊子は芦屋恭子に肩を押されてエレベーターからフロアへ押し出された。エレベーターは背面に外の景色が見えていたので、弥伊子は一瞬飛び降りたかのような感覚を覚えて恐怖した。
 芦屋恭子の部屋はフロアの隅にあり、明るい印象を受けた。芦屋恭子の部屋に通された。部屋にはさまざまな恐らくメイク道具であろう物たちに溢れていた。
「先に服を選んできちゃうから少し待ってて」
芦屋恭子はそう言うと弥伊子を置いて部屋を離れた。弥伊子は芦屋恭子の部屋を見回した。なんというか、生活感が感じられない。ベッドこそあるけど、そう、まるで舞台の控え室みたいな印象を受けた。芦屋恭子はこの部屋をそれほど使ってはいないのではないか、そう弥伊子は考えた。
「お待たせ」
そう言って芦屋恭子が持ち込んできた服装はなかなかにガーリーな組み合わせだった。
「それは、芦屋さんの趣味?」
「ん、ああ、弥伊子はこんなイメージ」
「それは」
弥伊子は思わず芦屋恭子の顔をまじまじと見つめてしまった。
「私も一緒に探すよ」
「どうして?」
「どうしても」
芦屋恭子に案内してもらい洋服の在処へ連れていってもらった。
「え、ここが?」
「ん、そうだ」
芦屋恭子の案内したのは棚ではなく、部屋だった。一部屋丸々が洋服の収納スペースと化していた。ウォークインクローゼットが幾つか並んでいるというべきか、服屋に来たような洋服の量だった。
「ここからどうやってサイズに合うものを探してきたの」
「直感」
弥伊子は芦屋恭子を無言で見つめた。
「なんだよ」
弥伊子はため息をついて、服の山へ挑戦していった。
「まだ見てるのかよ」
「待ってて」
「別にさっきのでいいだろう」
「あの内容だと私は舞踏会にしか居場所がないわ」
「どういうこと?」
「上はそのままで行くから、もう少し待ってて」
「人を待たせてるんだ」
「わかったから」
弥伊子はしばらくしてなんとか街に溶け込めそうな程度の派手さにおさえた服装を見つけた。芦屋恭子からは地味だと言われたが、譲らなかった。着替えた弥伊子はそこから、学校へ遅刻した日以上に手のかかったメイクを受けた。正直時間がどれ程過ぎたのかわからない。弥伊子はその合間に獅童宰都への気持ちを自分のなかで整理しようと試みた。そういえば芦屋恭子と獅童宰都との関係はまだ聞けていなかった。
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