誰の目にも輝きを

ヨージー

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「諸君待たせた」
芦屋恭子に連れられて電車を降りた頃には昼過ぎになっていた。早朝に芦屋恭子に連れられて家に向かったことを思うと半日以上なにも口にしていなかった。
「遅かったね、私はいいけど」
弥伊子はその声に聞き覚えがあった。あのときの巻き髪の生徒だった。
「綾悪いね」
「写真部を悪用しないでよね」
「今日の写真でコンペだしていいからさ」
「え、」
弥伊子はぎょっとしてしまう。
「私は風景写真専門なんですけど」
「風景ごと撮ればいい」
「ああ、それは、どうだろう」
「コンペなんて恥ずかしい」
弥伊子は小声で芦屋恭子に言う。
「あ、あなたあの有名人の」
「ゆ、有名人?」
「須藤さん、困らせちゃだめだよ」
「獅童くん」
須藤綾が弾んだ声をあげる。
「…、どうして」
「モデルが揃ったな」
「モデルって、恭子。理由も言わずに呼びつけて、どういうこと?」
弥伊子は獅童宰都の声を反芻する。音、響き、そして彼は芦屋恭子を名前で呼ぶ。
「須藤、はしゃぐな」
「田代こそバスケ行ってきなよ」
「ふん、お前を獅童が扱いきれないだろうから助けに来たんだ」
「帰れ邪魔者。お前さえ来なければ、、」
「な、なんだと。あ、おれ田代啓司です。よろしく」
「ほらほら外野は黙ってな、主役はこいつらだ」
示された獅童宰都と弥伊子はふと見つめ合う。
「この間の、獅童宰都です。よろしく」
「な、南洞弥伊子です」
「よし、今日は君たちはカップルだ」
「へ、ひえ」
弥伊子は声にならない声をあげる。
「恭子、南洞さんが困ってるよ」
「こらこら、カップルなんだから名前で呼ぶ!」
「…!」
弥伊子は口ごもる。獅童宰都に名前で呼ばれる。そう考えて胸が踊った。そうしたら、私も名前で呼ぶのだろうか。弥伊子は頬が緩んでいないか、頬をつねろうとした。
「こら、そこメイクを崩さない」
「は、はい」
「恭子!ごめんね、南洞さん」
南洞さん、か。弥伊子は頭の中のビジョンをもみ消した。さすがにないよね。
「もう、写真に写るときはちゃんとそれらしくしておいてよ」
「仕方ないな」
「わ、わかりました」
弥伊子は動転している。写真のためとは言え、私はこれから獅童宰都とデートするのかもしれない。
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