誰の目にも輝きを

ヨージー

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 放課後、弥伊子は獅童宰都の居ない図書室を一目見て帰路についた。家へ向かう間、弥伊子は獅童宰都へ連絡しようか迷った。けれど、弥伊子はまだ自分が獅童宰都にとってどれ程の仲の人物なのか掴めていない。それに気づくと、なんだか悲しくなってしまった。
 その日獅童宰都から連絡はなく、翌日も獅童宰都は学校へ現れなかった。弥伊子は虚ろな日々を過ごした。獅童宰都に会えないことで自分がどれ程の喪失感を感じているのかと考えるほどに獅童宰都は弥伊子に会えないことで何も感じてはいないのではないかという考えが大きくなっていった。弥伊子は初めて獅童宰都と出掛けた日を除くと学校でしか彼に会えていなかった。

 金曜日の夕方、弥伊子は図書室へ寄らずに校門へ向かった。すると電話の着信があった。鞄から端末を取り出す。表示は獅童宰都だった。
「もしもし」
「もしもし、南洞さん?」
「うん、こんにちは獅童くん」
「こんにちは、南洞さん」
「学校、どうしたの?」
弥伊子は噂と自分が見聞きした内容からおおよそ検討がついていたが、それでも獅童宰都へ問いかけた。
「本当はもっと早く連絡したかった」
弥伊子は獅童宰都のその言葉に動揺する。
「僕の親は独特で、そのあまり学校へ通わなくてもいいと考えているみたいなんだ」
「…」
「だから、そのあまり普通に通学させてくれないんだ」
「そう、なんだ」
「図書室に行けなくて、ごめん」
「ううん、だって、その私たち別に今までも約束なんてしてなかったし、、」
「…、そうだね」
「だから、」
「初めて会ったときのことを覚えている?」
獅童宰都のその言葉に弥伊子はどの時ことだろうか、と少し考えてしまう。弥伊子はメイクされていた自分を思い描く。普段のさえない自分の姿と比較して明らかに印象が代わるはずだ。獅童宰都にとっても。
「あの日君は図書室に現れた」
弥伊子は気持ちが揺らいだ。今獅童宰都が目の前にいなくてよかった。きっと人前にだせないような緩んだ顔をしてしまっているに違いないのだから。
「あの時僕は人魚姫を読んでいた」
「あ、」
弥伊子は聞くに聞けずにいたことをようやく知ることができた。気になってはいたけれど、覚えていなかったときにどうしていいかわからなくて、怖くて聞けなかった話だ。
「あの話では初めての人間界でみるもの全てを新鮮に楽しむ人魚姫が描かれていて、それで、そのそれがすごく愛らしい話なんだ」
「うん」
「人魚姫は願いのために人になろうとした」
「願い?」
「愛する人に会うために」
弥伊子の視線の先には獅童宰都が立っていた。
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