すべての出会いに

ヨージー

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 男の話では調査対象の相手はあるアパレル店のオーナーらしい。どうにもそのスタッフのうちの一人と関係を疑われているとのことだ。以前にも尾行の際にこのビルのバーに行って以降、姿を見失ったそうだ。もちろん、店の外を張り込んでいたわけだが、疑惑の相手の入店どころか、オーナーの退店にも会うことがかなわなかったという。高層ビルのバーに隠し通路があるとは思えないが、スタッフ通路などを利用して密会の相手との待ち合わせに利用していると考えているらしい。
「あとそうそう、あなたには特段お願いすることはないのですが、できることならあまり周囲に目を向けず、自然に私と会話を楽しんでいるようにしていただけると助かります。具体的には企業秘密なのですが、私は常に周囲を撮影しています。なので、特別、私やあなたが何らかのアクションを起こす必要はないです。え、あ、今回のお代ですか?それは私がもちろん支払います。とはいっても、依頼主からの調査費に上乗せするだけですが。いえ、横領とかそんなことではないです。あなたにはそう映ってしまったかもしれませんが、これは業務上必要な経費です」
私は彼に連れられ、ビルのエントランスを通り、エレベーターに乗り込んだ。
「あとその、一応こういった形で入店するので、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「小島由香里です」
「ありがとうございます。私は名刺の通り田倉宗次といいます。が、それは職業上の偽名です」
「…」
「そちらで業界では通していますが、それを大衆の面前で使うのは今後の仕事に差し支えます。なので、宗太というファストネームで呼んでください。…、実はそちらが本名になります」
男はそういうと少し躊躇してから私の目を見て続けた。
「由香里さん、よろしくお願いします」
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