記憶の中で

ヨージー

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 萩山淳吾は校舎を歩く。見慣れた校舎に新鮮味はないが親しみは感じる。古い校舎にはひび割れが多い。以前はひび割れからコウモリが姿を現して一騒動起こしたこともあった。淳吾の学校の校舎は北と南に四階建ての二棟があり、北側に教室、南側には音楽室や理科室など、移動授業に使われる部屋、職員室などが入っている。北と南の二棟の間には二階分の通路が東西に作られ四角形の作りになっている。それらの中央には多少管理のずさんな中庭が広がっている。
 中村涼太が後ろから飛び付いてきた。
「淳吾、今日は暇?」
そう聞く涼太はテニス部で部活があるはずだ。淳吾の中学校では部活の入部義務があるため、涼太も淳吾も放課後にすぐ帰ることはない。夕方遅くまで続く部活の後に空腹と親の視線を交わして遊びにでられる生徒はそう多くいないだろう。
「部活、雨だしすぐ終わる」
「俺は剣道なんだから天気で変わらないよ」
「抜け出られないの?」
「自分がやらないことを人に求めるなよ」
「お前には感謝してるんだぜ」
「え、ああ咲ちゃん?」
「そう、今もうさ、幸せってやつ?最高って感じ」
「惚気るなよ。恥ずかしい」
「いや、だからさ、忙しい運動部生同士、感謝の機会をどこかで」
淳吾は首に後ろからまわされた涼太の腕を振りほどく。
「また今度な」
二人は北と南の校舎へそれぞれ向かい離れていく。二階の窓から淳吾は中庭を覗く、かろうじて花壇のていをなしている区画では強い雨で花びらが痛め付けられているように見えた。あれでは散ってしまうだろう。
「淳吾くん」
今度は正面から話しかけられた。西宮すみかだ。西宮すみかはなんだか泣き腫らしたような表情だった。
「今日はね、お別れを言いに来たんだ」
「お別れ、そうか、、」
「うん、ダメだった」
「仕方ない、、」
「ありがとう、それでね、さようなら」
西宮すみかは泣き腫らした疲れた表情でそれでも淳吾へ精一杯の笑顔を見せてくれた。
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