5 / 5
5.
しおりを挟む
萩山淳吾は布団からのっそりと起きた。長い夢を見ていた気がする。そう、あれは中学校のころの。西宮すみか、懐かしい。懐かしくて悲しい。目元が濡れていることに気づいた。西宮すみかは中学の頃両親が離婚して、母親に連れられる形で転校していった。淳吾は西宮すみかからそのことについてよく相談を受けていた。彼女の表情が徐々に暗くなっていくことに淳吾だけは気づいていた。明るくて気さくだった彼女は、最後までクラスのみんなに明るく振る舞っていた。
淳吾は西宮すみかの連絡先を知らない。中学を卒業して高校に入学、それから大学、就職と人生の歩みを進めていくうちに淳吾の中での存在も少しずつ消えていっていた。先月中村涼太の結婚式に出席したとき、当時のクラスメイトから彼女の名前がでた。西宮すみかは式に出席していなかった。彼女と連絡をとっていたクラスメイトによれば彼女を引き取った母親も西宮すみかが大学に進学したころに他界してしまっていたという。その後彼女は母方の実家へ引き取られたらしい。
「淳吾」
中村涼太は淳吾の脇腹に肘をあてる。
「しばらくだな」
「お前は身長伸びたな」
「いつと比較してるんだよ」
「お前は西宮さんとどうなんだ」
「いつの話してるんだよ」
「いや、俺の立場からしたらそう過去として切れる話でもない」
涼太は隣の席へ視線を送る。
「今回西宮さんにも出欠確認送ってるんだ」
「これなかったらしいな」
「残念だったな」
「いや、もう忘れていたよ」
「ふうん」
「なんだよ」
「あのさ、引き出物あるんだ」
「そりゃあるだろうな」
「そう、届けてくれない?」
「誰に?」
「西宮さんに」
「普通出席者にしか渡さないだろう」
「普通はな」
「…」
涼太に押しきられる形で淳吾は西宮すみか宛の贈り物と彼女の今の住所を聞いた。郵送しようとも思った。今からどうやって話せばいいかわからなかった。けれど、淳吾の部屋の玄関には結婚式からそのまま包みが残されていた。
「まずは電話かけないとな」
淳吾は布団から立ち上がった。
淳吾は西宮すみかの連絡先を知らない。中学を卒業して高校に入学、それから大学、就職と人生の歩みを進めていくうちに淳吾の中での存在も少しずつ消えていっていた。先月中村涼太の結婚式に出席したとき、当時のクラスメイトから彼女の名前がでた。西宮すみかは式に出席していなかった。彼女と連絡をとっていたクラスメイトによれば彼女を引き取った母親も西宮すみかが大学に進学したころに他界してしまっていたという。その後彼女は母方の実家へ引き取られたらしい。
「淳吾」
中村涼太は淳吾の脇腹に肘をあてる。
「しばらくだな」
「お前は身長伸びたな」
「いつと比較してるんだよ」
「お前は西宮さんとどうなんだ」
「いつの話してるんだよ」
「いや、俺の立場からしたらそう過去として切れる話でもない」
涼太は隣の席へ視線を送る。
「今回西宮さんにも出欠確認送ってるんだ」
「これなかったらしいな」
「残念だったな」
「いや、もう忘れていたよ」
「ふうん」
「なんだよ」
「あのさ、引き出物あるんだ」
「そりゃあるだろうな」
「そう、届けてくれない?」
「誰に?」
「西宮さんに」
「普通出席者にしか渡さないだろう」
「普通はな」
「…」
涼太に押しきられる形で淳吾は西宮すみか宛の贈り物と彼女の今の住所を聞いた。郵送しようとも思った。今からどうやって話せばいいかわからなかった。けれど、淳吾の部屋の玄関には結婚式からそのまま包みが残されていた。
「まずは電話かけないとな」
淳吾は布団から立ち上がった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる