朱に交われば緋になる=神子と呪いの魔法陣=

誘蛾灯之

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グレムリン ※

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 昨日、勝手に掃除していた事をメイド長と紹介されたヘリオドルに窘められた。

 曰く、客人という立場なのですから勝手にウロウロしたり物を持ち出したり動かしたりしないで欲しいとの事。はい、と返事はしたが、瑛士は日本で社畜であった。社畜とは会社にとって都合の良い人間にされた者の意である。休みは悪と叩き込まれた今動くなと言われて社畜である瑛士がのんびりすると思うのか?否。むしろ仕事を探して動き回るのは当然であると言えよう。
 その度にメイドに見つかり、ヘリオドルへと通達され静かに怒られるがこれはもうどうしようもないものだった。何か…お仕事を下さい…と絞る出すように懇願すれば、ヘリオドルは呆れた顔をしながらもご自分のお部屋の掃除なら良いですよと掃除セットを頂けた。

 昨日掃除したばかりだが、この部屋は日本に居たときの部屋よりも大きいし物も多い。
 棚の裏ひっくり返し物品移動させれば何処までも掃除が出来た。
 スマホが無い今、こんなことでしか暇が潰せないのは悲しかった。
 本当なら外に出て軽く仕事をしたいのですがと昨夜アレキサンドライトに相談してみたのだが「それはできない」と却下された。
 納得できずに問い詰めたら、俺こと栗原瑛士という存在は死んだ、もしくは存在していない扱いになっているから今の状態では難しいとのこと。

 つまり、今んところ難民的な扱いなのか。難民住所不定無職のフルコンボは精神的にキているので本当にどうにかしたい。

 言葉もわかるし、昨日判明したけれど文字も読めた。何かしらの補佐なら出来そうな感じはしたのだけれど、アレキサンドライトの仕事は関係者でないとダメな仕事らしいから無理だろう。



 □□□グレムリン□□□




 仕方がないので台所でひき肉作りに向かうと、なにやら料理人とメイドがコンロの方にしゃがみこんで話し込んでいる。「こりゃダメだな」とか「またアレかぁ。急は困るよ…。誰か代用品の在庫あるか知らないか?」とか言っている。話の内容からするにコンロが壊れたみたいだった。
 その時、台所の戸棚の方から黒い小動物みたいなのが現れた。ネズミではない。なんだろうと瑛士が小動物を見詰めていると、その小動物がこちらの方に走ってきて、足を避けるようにして部屋を出ると廊下の方へと消えていった。
 流石異世界だ。害獣も姿が違うんだな。

「よおひき肉係」

 突然そう言われて肩を叩かれた。振り返ると料理長。ひき肉係とは、昨日の包丁乱舞所縁のあだ名である。止めてくれ言ったが、ここの料理人達は昨日から瑛士の事をこう呼ぶのを止めてくれない。

「今日から数日はあの炎台(※コンロ)は使えねーから」
「何でですか?」

 質問してみると、料理長は忌々しげにコンロを睨み付けてこう言った。

「グレムリンだよ。ここがやられたのなら周りの魔法陣にもやられてねーか後で確認する必要があるから、お前はもう帰れ。台所の何処にも触るんじゃねーぞ」

 そう言うと料理人達とメイドは何処かに行ってしまった。

「グレムリン?」

 なんだろうか、聞いたことあるような無いような。瑛士は今まで培ったファンタジー知識を引っ張り出して端から端まで探し回ってみたが、途中で割り込んできたクラムポンがかぷかぷ笑い出したので断念することにした。
 それよりも故障したらしいコンロが気になり、思考を中断してコンロの魔法陣を確認してみた。

「…………あれ?」

 目を擦ってもう一度見てみた。コンロの魔法陣が以前見たものと変わっていた。色が一種類から三種類に増えていた。
 変わらないものは青白いものと灰色に分かれ、その灰色の場所に新たに赤い色の線や模様が付け足されていた。

「なるほど、もしかしてこの余計な線で上手く作動できなくなっているのか」

 だとしたら書き直せば良いんじゃないかと瑛士は魔法陣に手を伸ばして赤い線を擦って消した。赤いチョークで描いたようなものは、細かい粉を指先に付着させながらも消えた。
 これで元の形だ。早速作動させようとつまみを動かしたが、点灯しない。
 赤いのを消しても作動しないとすると、この灰色のが問題だろう。とはいえここには白いチョークなどは持っていない。

「…これも消えないかな」

 試しに灰色の線を指でなぞってみると元の色に戻っていく。やけにあっさりと色が消えるのが面白く、無我夢中ですべての線の色を戻した。
 さて、これならどうだとつまみを動かすと点灯した。瑛士は満足そうに立ち上がり手を洗おうとシンクに向かおうとした時、ぐらりと視界が傾いて倒れ掛けた。慌てて台に手を突いたが、次第に眩暈と吐き気が込み上げてきた。
 ヤバい。込み上げる吐き気を口に手を当ててなんとか耐えていると次第に落ち着いていった。

「…………、今日は止めておこう」

 疲れが出たのか、それとも風邪か。どちらにせよ体調不良のときにひき肉は作るものじゃないなと、瑛士は手を洗い早々と部屋に戻ることにした。





 仮眠を取ると少しばかり体調が良くなった。
 やはり疲れが出たのだと納得し、窓の外を見る。日はだいぶ傾いてきていた。そろそろアレキサンドライトが戻ってくる時間だ。
 主が帰ってくるというのに居候がだらしない格好をしていては不味いと急いで身なりを整える。寝癖をきちんと直し終えると、遠くの方で馬の嘶く声が聞こえてきた。どうやら帰ってきたらしい。
 お出迎えの事は特に何も言われていないが、一応どういう風にやるのかは確認しておいた方が良いだろうと部屋を出てメイド達の後を追った。

 柱の影から様子を伺う。なるほど、ああやるのか。
 覚えるために掌にエアメモを取っていると、マントを執事に手渡ししていたアレキサンドライトがこちらに気が付いた。

「なんだ、お迎えか?クー」

 アレキサンドライトが意地悪そうに笑う。クーとは、栗原のクから取った瑛士のあだ名である。ここの人達は相当のあだ名好きである。アレキサンドライトの笑顔に何故だかムッとなったが、瑛士は慌てて取り繕った。

「ええ、居候なので」
「ふーん。まぁいいや、今日も私と一緒に食べろよ。いいな」

 ということで、今晩も一緒に夕飯を取ることになった。
 料理を運んできたメイドの様子がどことなくおかしかった気がするけど、料理は相変わらずの味であったから気のせいだろう。唯一パンだけは少し柔らかくなっていた。

「今日は何をしていたんだ?」
「掃除です」
「好きだな、掃除」

 そういうわけでは無いんだけどな。だけど、ここで否定したらせっかく貸して貰った暇潰しの為の掃除セットを取り上げられてはたまらない。

「まぁ、人並みには」

 無難な答えだけど、納得して貰えたらしい。そういえば、と昼間の会話を思い出した。

「あの、ちょっとお伺いしたいことが」
「なんだ?」
「グレム──」

 ぐらりとまた視界が揺れた。嘘だろ何でこんなタイミングで、と慌ててテーブルに手を付こうとしたが、付いた手すら力が抜けてそのまま床に体を打ち付けた。

「クー!?」

 アレキサンドライトの切羽詰まった声を聞きながら瑛士は意識を手放した。







 異様な程に寒かった。気持ち悪いし、体の感覚が恐ろしく遠い。
 そのまま死ぬかもしれないなと思っていると、何故だか体がほんの少しだけ温かくなった。
 特に温かいのが口だ。温かくて柔い何かが口を撫で回している。
 なんだろうと目を僅かに開くと、視界いっぱいにオレンジ色が揺れていた。いや、違う、これは髪だ。アレキサンドライト様の──。
 そこまで考え、瑛士の意識が急激に浮上してきた。それと同時に何をされているのかを理解した。何故か、俺はいまアレキサンドライトにキスをされている。しかも、舌を突っ込むディープなやつ!!なんで!??大混乱している瑛士をよそにアレキサンドライトは口の中を蹂躙していく。

 くすぐったい中に快感を感じ始めて、どうにかして止めさせたいと瑛士が震える手でアレキサンドライトの体を押し退けようとしたところで、「ん?」と、アレキサンドライトが気が付いた。


「ああ、良かった。気が付いたか…」
「な…なにをしているんですか…?」

 口の中に快感が後を引いている。心臓がうるさく早鐘を打っているが、アレキサンドライトは離れずに瑛士の服を脱がし始めた。

「ちょ、なにして…!」

 必死に抵抗しようとすると、いまだに体に力が入らずにアレキサンドライトの腕に手を添えるだけになってしまっている。

「魔力を流し込んでいる。といっても、今のお前は枯渇寸前だ。なんで一日でこんなに減っているのかは後で問い詰めるとして、まずは安全値まで魔力を戻すぞ」
「まって、まってください!言っている意味はなんとなく理解出来ましたけど、やっている行為がおかしくないですか!?ぅあっ!?」

 ぐちゅりとパンツの中に手が入れられ、更には人様には到底触られたくない箇所に指が突っ込まれた。

「今は説明している時間がない。命に関わる。最初は苦しいかもしれんが、この前みたいにすぐに良くなる。我慢しろ」

 この前とは?と、疑問が浮かんだ瞬間、とある夢を思い出した。
 オレンジ色の物体にマッサージされていた夢だ。だが、瑛士は朝の謎の腰の痛みとその夢を関連付け、血の気を無くした。そういえば、行為がどうたら言っていたな…、と。
 つまり、それから示唆されるものは一つしかない。

 瑛士は既に一度アレキサンドライトにヤられているし、ついでにいえば、これからアレキサンドライトにヤられるのだ。

「アレキサンドライトさ──ヒッ!」

 体内に埋まった指が動かされ、その感覚に声が漏れた。気持ちが悪いのに、その身に覚えのある感覚に思考が停止した。

「大丈夫だ。ゆっくりしてやるから」

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