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第十五章:とある狂人の育成記
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「……あの魔女の言葉、もしかして本当なんですか」
沙良の瞳をみて、波折は心臓を貫かれたような胸の痛みを覚えた。激しいショックを受けたような、悲しげな瞳。今にも眼球がころりと転げ落ちて深い闇を生んでしまいそうなほど、沙良は絶望したような目をしていた。あたりまえだ。大好きで大好きでたまらなかった人が魔女の仲間だったなんて。自分が最も忌み嫌う存在だったなんて知ったなら、そうなるに決まっている。
「先輩……何か、言って……」
「……あの、……俺は……この魔女たちと一緒に何かをしているわけじゃ、……」
「先輩が魔女なのかどうか……それをはっきり教えてください……」
裏切ったのか。沙良はそういった表情をしている。
――ちがう、裏切ったんじゃない、騙していたわけじゃない、違う、違うんだ、俺は本当に沙良のこと……
「……魔女、……だよ。俺は、魔女。きっとこいつらよりもずっと非道な、魔女だ!」
――先輩何言ってんの。その言葉がぽろりと沙良の唇から転がった。いつの間にか魔女たちは攻撃を止めて、二人を眺めている。急激にしんとした空間で、沙良の絶望の眼差しを受けて、波折はよろりと後ずさった。
「ずっと昔から……俺は魔女だよ……だから、言っただろ……俺のことを好きになるなって……」
「……先輩」
たん、と沙良が一歩踏み出した足音が響く。びく、と波折は震えて、沙良から目を逸らした。沙良はそんな波折の手を掴み、そしてすがりつくような声で問い詰める。
「……騙してました? 俺のこと……ずっと……」
「……ちがう……」
「俺が先輩のこと好きって言って、それで馬鹿だなって嘲笑っていたんですか……!」
「違う……!」
「どんな気持ちで俺と一緒にいたんですか! 俺は……俺は本気で波折先輩のことが好きだった……先輩は……先輩は俺のこと……」
ぽろりと沙良の瞳から涙が落ちる。沙良は波折を責めているのではない。本気で悲しんでいるのだ。今の状況では、沙良は波折が自分を騙したと捉えるしかできないだろう。実際に自分が魔女であると波折が黙っていたということも事実。弁解もできない、謝っても何も起こらない……追い詰められ、波折まで泣きだしてしまう。
「沙良……俺は……」
「先輩は……どのくらい人を殺めてきたんですか」
「……っ」
「JSの生徒会長と名乗る裏で、みんなのことを裏切って、どれだけの人を傷つけたんですか……!」
波折は、その場でがくんと崩れ落ちた。沙良が悲しんでいるのは、波折が魔女であることを黙っていたこと、そして魔女であるということそれ自体。好きな人が人を殺めていた、その事実を悲しんでいるのだ。
幼いころから魔女として生きてきた波折にとって、その沙良の哀しみは――波折の存在の否定だ。
これでいい。沙良にははっきりと魔女である自分を否定して欲しかったから、これでいい。なのに、いざその感情を向けられるとショックでたまらなかった。沙良に事実を黙っていたこと、彼が魔女を嫌いだと知りながらずっとそばにいたこと、全部悪いのは自分だとわかっていながらも沙良に糾弾されると辛くて仕方ない。泣いていいのは沙良だけ、自分は泣く資格なんてない。そうわかっているのにぼろぼろと涙は止まらない。
沙良の瞳をみて、波折は心臓を貫かれたような胸の痛みを覚えた。激しいショックを受けたような、悲しげな瞳。今にも眼球がころりと転げ落ちて深い闇を生んでしまいそうなほど、沙良は絶望したような目をしていた。あたりまえだ。大好きで大好きでたまらなかった人が魔女の仲間だったなんて。自分が最も忌み嫌う存在だったなんて知ったなら、そうなるに決まっている。
「先輩……何か、言って……」
「……あの、……俺は……この魔女たちと一緒に何かをしているわけじゃ、……」
「先輩が魔女なのかどうか……それをはっきり教えてください……」
裏切ったのか。沙良はそういった表情をしている。
――ちがう、裏切ったんじゃない、騙していたわけじゃない、違う、違うんだ、俺は本当に沙良のこと……
「……魔女、……だよ。俺は、魔女。きっとこいつらよりもずっと非道な、魔女だ!」
――先輩何言ってんの。その言葉がぽろりと沙良の唇から転がった。いつの間にか魔女たちは攻撃を止めて、二人を眺めている。急激にしんとした空間で、沙良の絶望の眼差しを受けて、波折はよろりと後ずさった。
「ずっと昔から……俺は魔女だよ……だから、言っただろ……俺のことを好きになるなって……」
「……先輩」
たん、と沙良が一歩踏み出した足音が響く。びく、と波折は震えて、沙良から目を逸らした。沙良はそんな波折の手を掴み、そしてすがりつくような声で問い詰める。
「……騙してました? 俺のこと……ずっと……」
「……ちがう……」
「俺が先輩のこと好きって言って、それで馬鹿だなって嘲笑っていたんですか……!」
「違う……!」
「どんな気持ちで俺と一緒にいたんですか! 俺は……俺は本気で波折先輩のことが好きだった……先輩は……先輩は俺のこと……」
ぽろりと沙良の瞳から涙が落ちる。沙良は波折を責めているのではない。本気で悲しんでいるのだ。今の状況では、沙良は波折が自分を騙したと捉えるしかできないだろう。実際に自分が魔女であると波折が黙っていたということも事実。弁解もできない、謝っても何も起こらない……追い詰められ、波折まで泣きだしてしまう。
「沙良……俺は……」
「先輩は……どのくらい人を殺めてきたんですか」
「……っ」
「JSの生徒会長と名乗る裏で、みんなのことを裏切って、どれだけの人を傷つけたんですか……!」
波折は、その場でがくんと崩れ落ちた。沙良が悲しんでいるのは、波折が魔女であることを黙っていたこと、そして魔女であるということそれ自体。好きな人が人を殺めていた、その事実を悲しんでいるのだ。
幼いころから魔女として生きてきた波折にとって、その沙良の哀しみは――波折の存在の否定だ。
これでいい。沙良にははっきりと魔女である自分を否定して欲しかったから、これでいい。なのに、いざその感情を向けられるとショックでたまらなかった。沙良に事実を黙っていたこと、彼が魔女を嫌いだと知りながらずっとそばにいたこと、全部悪いのは自分だとわかっていながらも沙良に糾弾されると辛くて仕方ない。泣いていいのは沙良だけ、自分は泣く資格なんてない。そうわかっているのにぼろぼろと涙は止まらない。
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