345 / 357
第十五章:とある狂人の育成記
50(5)
「だめだなァ、波折。完璧な生徒会長が魔術なんて使っちゃだめだろう。それに波折が使わなきゃ神藤くんが使ってくれたかもしれないのに……」
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」
「俺に逆らうとかどうしたの、波折。おまえは俺の一生隷属するはずなんだけど」
「ごめんなさい……」
必死に謝る波折は恐怖のあまりガタガタと震えている。沙良はこんな波折を初めて見たため、動揺してしまった。しかしその波折の姿は、「淺羽が波折のご主人様である」ということにより真実味をもたせている。尊敬していた先生が、波折の「ご主人様」で、そして魔女の仲間だなんて。
「……鑓水先輩は、どうして淺羽先生と一緒に、」
「ああ、彼?」
淺羽は波折の頭を掴みながら、笑う。沙良の問がなにやら面白かったのか、くつくつと肩を震わせた。
「彼も、俺達の仲間だからだ」
「……前から?」
「いやあ、最近。波折のことを知ったら一緒に来るって言ってくれた」
「なっ……」
ばちり、と沙良と鑓水の目が合った。
「……鑓水先輩……脅されてたりします?」
「いや……」
「……じゃあなんで波折先輩が魔女だって知って、一緒にいるんですか?」
「……波折が一人で魔女として生きるの、辛いだろ。だから支えたいって思った」
ぼそりと返された答えに、沙良は閉口した。そして、口元をひきつらせて、言う。
「……本気で言ってるんですか?」
沙良がズカズカと歩いて行って、鑓水の胸ぐらをつかむ。お、と小さく反応をみせた淺羽は無視して、怒鳴りつけた。
「波折先輩が魔女ってことは……犯罪者ってことですよ……! これからどんどん人を殺していくんですよ! それを、鑓水先輩は助長するんですか! 波折先輩が手を汚していくのを、推し進めるっていうんですか!」
「うるせえ! あいつは、もう後戻りできない……それなら俺はあいつのそばにいることしかできないんだよ!」
「好きな人が犯罪に手を染めるのを手助けすることの何が愛だよ! 止めろよ命がけで!」
「止めるにはあいつを殺すしかねえだろうが! 俺にはそれができないって言ってんだよ!」
「――ッ」
殺すしか、ない。法律で許可されている範囲を超えて魔術を使った時点で、その人間は魔女になる。だから波折が魔女になったのなら、もう魔女であるという事実を変えることはできない。それにもうすでに人を殺しているらしい波折は、まともな人間には戻れない。加えて――淺羽という存在。先ほどの必死の謝罪をみた時に痛感した、波折は「ご主人様」に逆らうことは絶対にできない。「命令違反」で魔術を使ったらしいが、あれは淺羽の目がなかったからだろう。波折が彼の支配の下から完全に逃れることは、おそらく不可能だ。だから……本当に波折を止めたいのなら殺すという方法しかない。
てしまった。
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」
「俺に逆らうとかどうしたの、波折。おまえは俺の一生隷属するはずなんだけど」
「ごめんなさい……」
必死に謝る波折は恐怖のあまりガタガタと震えている。沙良はこんな波折を初めて見たため、動揺してしまった。しかしその波折の姿は、「淺羽が波折のご主人様である」ということにより真実味をもたせている。尊敬していた先生が、波折の「ご主人様」で、そして魔女の仲間だなんて。
「……鑓水先輩は、どうして淺羽先生と一緒に、」
「ああ、彼?」
淺羽は波折の頭を掴みながら、笑う。沙良の問がなにやら面白かったのか、くつくつと肩を震わせた。
「彼も、俺達の仲間だからだ」
「……前から?」
「いやあ、最近。波折のことを知ったら一緒に来るって言ってくれた」
「なっ……」
ばちり、と沙良と鑓水の目が合った。
「……鑓水先輩……脅されてたりします?」
「いや……」
「……じゃあなんで波折先輩が魔女だって知って、一緒にいるんですか?」
「……波折が一人で魔女として生きるの、辛いだろ。だから支えたいって思った」
ぼそりと返された答えに、沙良は閉口した。そして、口元をひきつらせて、言う。
「……本気で言ってるんですか?」
沙良がズカズカと歩いて行って、鑓水の胸ぐらをつかむ。お、と小さく反応をみせた淺羽は無視して、怒鳴りつけた。
「波折先輩が魔女ってことは……犯罪者ってことですよ……! これからどんどん人を殺していくんですよ! それを、鑓水先輩は助長するんですか! 波折先輩が手を汚していくのを、推し進めるっていうんですか!」
「うるせえ! あいつは、もう後戻りできない……それなら俺はあいつのそばにいることしかできないんだよ!」
「好きな人が犯罪に手を染めるのを手助けすることの何が愛だよ! 止めろよ命がけで!」
「止めるにはあいつを殺すしかねえだろうが! 俺にはそれができないって言ってんだよ!」
「――ッ」
殺すしか、ない。法律で許可されている範囲を超えて魔術を使った時点で、その人間は魔女になる。だから波折が魔女になったのなら、もう魔女であるという事実を変えることはできない。それにもうすでに人を殺しているらしい波折は、まともな人間には戻れない。加えて――淺羽という存在。先ほどの必死の謝罪をみた時に痛感した、波折は「ご主人様」に逆らうことは絶対にできない。「命令違反」で魔術を使ったらしいが、あれは淺羽の目がなかったからだろう。波折が彼の支配の下から完全に逃れることは、おそらく不可能だ。だから……本当に波折を止めたいのなら殺すという方法しかない。
てしまった。
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。