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第九章:青と深淵
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「波折先輩」
「ん?」
「昨日……鑓水先輩と一緒にいたんですよね」
「うん」
波折が手本をみせて、それを沙良が真似をして。そんな風にして料理を進めていく。すぐ側に波折がいるから、やっぱりいい匂いがしてどきどきするけれど、だから何かできるというわけではない。シチュエーションだけは恋人のそれと何ら変わりないのに、手を出してはいけないなんて苦しすぎて、鬱々としてしまう。
「……どんなことするんですか、鑓水先輩と」
「それ聞くの?」
「あっ、ですよね。聞いちゃだめっていうか……」
波折の首筋に散る鬱血痕をちらりとみて、沙良はため息をつく。やっぱりセックスしていたのか……と思うと嫉妬でおかしくなってしまいそうだった。この波折先輩の甘い声とか可愛い顔とかを独り占めできるなんて。波折先輩の熱視線を一身に浴びることができるなんて……。
「……鑓水先輩の、どういうところが好きですか?」
「好き?」
「……聞いてみたいなーって。俺も鑓水先輩に追い付きたい」
「えー……好きなところ? かっこいいところ? セックスが上手なところ?」
「めっちゃヤってんじゃん! ちくしょーもーやだ!」
「?」
波折の口からはっきりと「鑓水がセックスが上手い」と聞かされて、沙良は癇癪をおこしてしまう。鶏もも肉にタレを揉み込む手の動きが激しくなってしまった。泣きそうになりながらぐちゃぐちゃと肉を揉んでいれば、波折が「もういいかな、」と言って肉の入ったボウルを取り上げる。
「まあ、でも慧太の一番好きなところは賢いところだから、」
波折がビニール袋に味を揉み込ませた肉をいれてゆく。沙良はぼんやりとそんな波折を眺めていた。ショックで頭が動かない。波折がすました顔で作業を進めているのが、ものすごく遠い光景に感じる。
「――あいつが莫迦なところをみせたら離れるよ」
だから、波折の言葉の意味はよくわからなかった。
「ん?」
「昨日……鑓水先輩と一緒にいたんですよね」
「うん」
波折が手本をみせて、それを沙良が真似をして。そんな風にして料理を進めていく。すぐ側に波折がいるから、やっぱりいい匂いがしてどきどきするけれど、だから何かできるというわけではない。シチュエーションだけは恋人のそれと何ら変わりないのに、手を出してはいけないなんて苦しすぎて、鬱々としてしまう。
「……どんなことするんですか、鑓水先輩と」
「それ聞くの?」
「あっ、ですよね。聞いちゃだめっていうか……」
波折の首筋に散る鬱血痕をちらりとみて、沙良はため息をつく。やっぱりセックスしていたのか……と思うと嫉妬でおかしくなってしまいそうだった。この波折先輩の甘い声とか可愛い顔とかを独り占めできるなんて。波折先輩の熱視線を一身に浴びることができるなんて……。
「……鑓水先輩の、どういうところが好きですか?」
「好き?」
「……聞いてみたいなーって。俺も鑓水先輩に追い付きたい」
「えー……好きなところ? かっこいいところ? セックスが上手なところ?」
「めっちゃヤってんじゃん! ちくしょーもーやだ!」
「?」
波折の口からはっきりと「鑓水がセックスが上手い」と聞かされて、沙良は癇癪をおこしてしまう。鶏もも肉にタレを揉み込む手の動きが激しくなってしまった。泣きそうになりながらぐちゃぐちゃと肉を揉んでいれば、波折が「もういいかな、」と言って肉の入ったボウルを取り上げる。
「まあ、でも慧太の一番好きなところは賢いところだから、」
波折がビニール袋に味を揉み込ませた肉をいれてゆく。沙良はぼんやりとそんな波折を眺めていた。ショックで頭が動かない。波折がすました顔で作業を進めているのが、ものすごく遠い光景に感じる。
「――あいつが莫迦なところをみせたら離れるよ」
だから、波折の言葉の意味はよくわからなかった。
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