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第六章:雨と虹
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雨は激しく、傘をさしていても身体が濡れるほどだった。それにもかかわらず、フレヤは走ってゆく。ときおりペンデュラムで位置を確認しながらダイムを探そうとしたが、ダイムはどうやら小川の傍から動かないでいるらしい。どこかで雨宿りでもしているのだろうか。
しばらく探していると、小川の傍にあった木の下に、小さな黒い影があった。目をこらせば、それは黒猫だった。フレヤは黒猫を見ると「ダイム!」と叫ぶ。
「待ってください、フレヤさん! 危険です!」
ダイムは小川を挟んで向こう側にいた。小川は氾濫していて、渡っていけば足を取られてしまうだろう。
「少し、待ってください。安全に小川を渡る魔術を……いや、猫をこっち側に移動させる魔術を使えば……」
イリスは考え込む。どうすれば、ダイムを安全に捕まえることができるだろうかと。
その間にも、フレヤはダイムが逃げてしまわないか気が気でないようだった。
その様子を、モアは見つめる。フレヤが猫を想う気持ち。それは――どんな気持ちなのだろうと。
今の彼女にそんなことを聞く余裕はなかった。だから、モアは一人で考える。
もしも――イリスが、危険にさらされたら。イリスが、いなくなってしまったら。そう考えると怖くてたまらなかった。哀しくてたまらなかった。自分がイリスに対して想う気持ちと、フレヤがダイムに想う気持ちは……同じなのだろうか。……きっと、同じものなのかもしれない。
モアがそうして考えていると、ダイムがスッと動き始めた。フレヤが咄嗟に「ダイム!」と叫んだが――それよりも早く、モアが飛び出す。
「モアッ!」
イリスが手を伸ばして制止をかけるも、モアは構わず小川に足を突っ込んだ。
だって、イリスがいなくなったらイヤだ。この気持ちは、きっとフレヤも一緒。そう思うと、足が勝手に動いてしまったのだ。
小川は浅かったが、氾濫していて流れが激しい。気を抜けば、ざあっと流れる水に足をとられ――いや、とられてしまった。
「うあっ!」
ぐらっと視界が揺れる。そして――モアは勢いよく転んでしまった。バシャッと大きく水ははじけて、モアは小川に倒れ込んでしまう。
「モアッ……!」
全身がずぶ濡れ。服が水を吸って重たい。それでもモアは立ち上がって、ダイムを探す。ダイムは小川の傍から離れなかった。モアはほっとして、小川をゆっくりと渡り、ダイムに近づいてゆく。
ダイムは人懐っこかった。モアが近づいてゆくと、ミー、と鳴いてそばに寄ってくる。モアがそっと抱き上げれば、嬉しそうに、またミーと鳴いた。
「ああ、ダイム……」
フレヤは安心したのか、ふにゃっと座り込む。対してイリスはハラハラとした様子でモアを見つめていた。
しばらく探していると、小川の傍にあった木の下に、小さな黒い影があった。目をこらせば、それは黒猫だった。フレヤは黒猫を見ると「ダイム!」と叫ぶ。
「待ってください、フレヤさん! 危険です!」
ダイムは小川を挟んで向こう側にいた。小川は氾濫していて、渡っていけば足を取られてしまうだろう。
「少し、待ってください。安全に小川を渡る魔術を……いや、猫をこっち側に移動させる魔術を使えば……」
イリスは考え込む。どうすれば、ダイムを安全に捕まえることができるだろうかと。
その間にも、フレヤはダイムが逃げてしまわないか気が気でないようだった。
その様子を、モアは見つめる。フレヤが猫を想う気持ち。それは――どんな気持ちなのだろうと。
今の彼女にそんなことを聞く余裕はなかった。だから、モアは一人で考える。
もしも――イリスが、危険にさらされたら。イリスが、いなくなってしまったら。そう考えると怖くてたまらなかった。哀しくてたまらなかった。自分がイリスに対して想う気持ちと、フレヤがダイムに想う気持ちは……同じなのだろうか。……きっと、同じものなのかもしれない。
モアがそうして考えていると、ダイムがスッと動き始めた。フレヤが咄嗟に「ダイム!」と叫んだが――それよりも早く、モアが飛び出す。
「モアッ!」
イリスが手を伸ばして制止をかけるも、モアは構わず小川に足を突っ込んだ。
だって、イリスがいなくなったらイヤだ。この気持ちは、きっとフレヤも一緒。そう思うと、足が勝手に動いてしまったのだ。
小川は浅かったが、氾濫していて流れが激しい。気を抜けば、ざあっと流れる水に足をとられ――いや、とられてしまった。
「うあっ!」
ぐらっと視界が揺れる。そして――モアは勢いよく転んでしまった。バシャッと大きく水ははじけて、モアは小川に倒れ込んでしまう。
「モアッ……!」
全身がずぶ濡れ。服が水を吸って重たい。それでもモアは立ち上がって、ダイムを探す。ダイムは小川の傍から離れなかった。モアはほっとして、小川をゆっくりと渡り、ダイムに近づいてゆく。
ダイムは人懐っこかった。モアが近づいてゆくと、ミー、と鳴いてそばに寄ってくる。モアがそっと抱き上げれば、嬉しそうに、またミーと鳴いた。
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