すみっこ屋敷の魔法使い

うめこ

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第六章:雨と虹

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「本当に、本当に……ありがとうございます」

 
 フレヤは何度も何度も頭をさげてモアに感謝の言葉を贈る。ダイムはフレヤの腕の中で、のんきにミーと鳴いていた。


「モアのおかげだね。ありがとう、モア」

「……」


 イリスが声をかけてくるなか、モアはジッとフレヤを見つめていた。ダイムを慈しむように撫でている彼女。そんな彼女は――ダイムをどう思っているのだろう。


「あの、フレヤ様」

「なにかしら?」

「……フレヤ様にとって、ダイムはどのような存在なのですか?」


 自然と、モアはフレヤと自分を重ねていた。失いたくない者を持つ者として。だから、彼女がダイムへ抱く気持ちを教えてもらいたかったのだ。

 モアが訪ねれば、フレヤはふふっと笑う。そして、


「大切な、大切な――愛する家族よ」


 そう言った。

 ――愛。

 ――愛ってなんですか?

 モアのなかで、そんな疑問がわく。けれどもなぜか、聞けなかった。

 失いたくない人のことを、愛する人というのですか?

 大切な人のことを、愛する人というのですか?

 ――愛ってなんですか?

 
 フレヤは繰り返しお礼を言って、去って行く。彼女を見送ったイリスは、「帰ろうか」とモアに声をかけてくれた。

 モアはじっとイリスを見つめる。

「? モア、どうしたの?」

「イリス……」

「うん?」

「……いえ。なんでもありません」


 愛とはなんだろう。

 その答えは、どうすれば見つかるのだろう。

 なんとなく、モアはイリスに聞くのをためらった。

 なぜだかは、わからなかったけれど。

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