5 / 14
5 僕の婚約者(ミゲル視点)
しおりを挟む
「君みたいな幼い顔立ちの子は好みじゃない」
今思えば、何故あんな事を言ってしまったのか?
僕はあれからずっと後悔している。
「私も貴方のように線の細いタイプの男性は好みではありません。
そもそも、この縁談は政略であり、私達の異性の好みは関係ありません」
ツンと澄ました顔で、キッパリ言い切った彼女の言葉に、横っ面を引っ叩かれた様な感覚がした。
僕の容姿は、貴族令嬢達には概ね好まれる。ちやほやされて、良い気になっていたのかもしれない。
或いは、事前になんの説明もなく、婚約者と引き合わされた事に対する苛立ちを、何の非もない彼女にぶつけてしまったのか。
どちらにしても、彼女にとっては、暴言以外の何物でも無い。
僕に好みがある様に、彼女にだって好みはあるのだ。
それでも彼女は、政略結婚という自分の責務を全うしようと、僕に誠意を持って接してくれていたというのに・・・・・・
幼いのは、僕の方だ。
急に自分が恥ずかしくなり、小さく謝罪の言葉を吐き出した。
「分かって頂けたのなら、結構ですわ」
そう言って微笑んだ彼女は、幼い顔立ちの筈なのに、実年齢よりひどく大人びて見えて、美しかった。
僕の心臓がドクリと音を立てる。
「ねぇ、コレどうかしら?」
二人で街を歩いている途中。
ナディアが、露店で売られていた黄色いリボンを手に取り、自分の髪に当てた。
「コッチの方が、絶対に似合うよ」
クリーム色のレース編みのリボンを手渡すと、ナディアは満足気に頷く。
最初に濃い色を手に取ったとしても、彼女が最終的に選ぶのは、必ず淡い色なのだ。
色なら、パステルカラー。
花なら、ガーベラ。
舞台なら、恋愛物。
菓子なら、チーズケーキ。
他にも色々・・・・・・。
彼女を観察して、好きなものを探る。
少しでも喜ばせたくて必死だ。
最初から大きなマイナスポイントが付いてしまった僕の好感度は、それでもなかなか上がらない。
鍛錬に励んだりもしたが、剣の技術は良い線まで行っても、体型は変わらなかった。
どうやら、僕は筋肉が付きにくい体質の様だ。
彼女はその可愛らしい見た目に反して、とてもしっかりしている。
僕の好みだった「美人系」では無いけれど、芯の強い女性だった。
初めて会った時と同様に、僕が間違った事をしそうな時には、ハッキリと意見してくれる所も好ましい。
気が付けば、好みじゃなかったはずの彼女の容姿も含めて、全てが愛しいと感じる様になっていた。
いや、本当は最初から・・・僕の謝罪を受け入れてくれた、あの時から、僕の心は彼女に囚われていたのかもしれない。
しかし、今更どのツラ下げて、愛の言葉を伝えれば良いのか。
伝えた所で、義務感からだろうと言われるのがオチだ。
今迄どんなにプレゼントを贈ろうと、優しく接しようと〝婚約者の義務を果たしてくれている〟程度にしか思われていないのだから。
それに・・・・・・
もしも、僕の気持ちが伝わったとしても、きっと彼女を困らせるだけだ。
結局彼女が好きになるのは、サムディオ侯爵令息の様な容姿の男なのだから。
彼女の事をずっと観察してきたのだから、それくらいは解っている。
そのリカルド・サムディオが・・・、僕のナディアの白魚の様な指に、口付けを落とした。
ナディアの頬が、みるみる内に薔薇色に染まるのを見た時、心臓が握り潰されたかのように痛んだ。
ーーーやっぱり、そうなのか。
『貴方のように線の細いタイプの男性は好みではありません。
騎士様のように筋肉質で、頼れる殿方が好みです』
彼女の言葉が頭の中に蘇る。
背中に嫌な汗が伝って、眩暈がしそうだ。
「サムディオ様、この子は僕の婚約者です。
気軽に触れられては困ります!」
自分でも驚く程に、低い声が出た。
リカルド・サムディオの余裕の表情が癪に触る。
あの日の彼女の言葉は小さな棘となり、僕の心の深い所に刺さったまま。
今でも時折ズキズキと疼く。
僕が先に放ったあの言葉も、彼女の心を今もまだ、傷付け続けているのだろうか?
もしそうなら・・・彼女もこんなに苦しい思いをしているならと考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
しかし、同時に仄暗い悦びを感じてしまう自分がいるのだ。
ナディアが僕の言葉を全く気にしていないのなら、彼女にとっての僕の存在が、その程度の大きさだという事になってしまうのだから。
だったらいっそ、棘でも良いから、彼女の中に僕の一部が残っていれば良い。
今思えば、何故あんな事を言ってしまったのか?
僕はあれからずっと後悔している。
「私も貴方のように線の細いタイプの男性は好みではありません。
そもそも、この縁談は政略であり、私達の異性の好みは関係ありません」
ツンと澄ました顔で、キッパリ言い切った彼女の言葉に、横っ面を引っ叩かれた様な感覚がした。
僕の容姿は、貴族令嬢達には概ね好まれる。ちやほやされて、良い気になっていたのかもしれない。
或いは、事前になんの説明もなく、婚約者と引き合わされた事に対する苛立ちを、何の非もない彼女にぶつけてしまったのか。
どちらにしても、彼女にとっては、暴言以外の何物でも無い。
僕に好みがある様に、彼女にだって好みはあるのだ。
それでも彼女は、政略結婚という自分の責務を全うしようと、僕に誠意を持って接してくれていたというのに・・・・・・
幼いのは、僕の方だ。
急に自分が恥ずかしくなり、小さく謝罪の言葉を吐き出した。
「分かって頂けたのなら、結構ですわ」
そう言って微笑んだ彼女は、幼い顔立ちの筈なのに、実年齢よりひどく大人びて見えて、美しかった。
僕の心臓がドクリと音を立てる。
「ねぇ、コレどうかしら?」
二人で街を歩いている途中。
ナディアが、露店で売られていた黄色いリボンを手に取り、自分の髪に当てた。
「コッチの方が、絶対に似合うよ」
クリーム色のレース編みのリボンを手渡すと、ナディアは満足気に頷く。
最初に濃い色を手に取ったとしても、彼女が最終的に選ぶのは、必ず淡い色なのだ。
色なら、パステルカラー。
花なら、ガーベラ。
舞台なら、恋愛物。
菓子なら、チーズケーキ。
他にも色々・・・・・・。
彼女を観察して、好きなものを探る。
少しでも喜ばせたくて必死だ。
最初から大きなマイナスポイントが付いてしまった僕の好感度は、それでもなかなか上がらない。
鍛錬に励んだりもしたが、剣の技術は良い線まで行っても、体型は変わらなかった。
どうやら、僕は筋肉が付きにくい体質の様だ。
彼女はその可愛らしい見た目に反して、とてもしっかりしている。
僕の好みだった「美人系」では無いけれど、芯の強い女性だった。
初めて会った時と同様に、僕が間違った事をしそうな時には、ハッキリと意見してくれる所も好ましい。
気が付けば、好みじゃなかったはずの彼女の容姿も含めて、全てが愛しいと感じる様になっていた。
いや、本当は最初から・・・僕の謝罪を受け入れてくれた、あの時から、僕の心は彼女に囚われていたのかもしれない。
しかし、今更どのツラ下げて、愛の言葉を伝えれば良いのか。
伝えた所で、義務感からだろうと言われるのがオチだ。
今迄どんなにプレゼントを贈ろうと、優しく接しようと〝婚約者の義務を果たしてくれている〟程度にしか思われていないのだから。
それに・・・・・・
もしも、僕の気持ちが伝わったとしても、きっと彼女を困らせるだけだ。
結局彼女が好きになるのは、サムディオ侯爵令息の様な容姿の男なのだから。
彼女の事をずっと観察してきたのだから、それくらいは解っている。
そのリカルド・サムディオが・・・、僕のナディアの白魚の様な指に、口付けを落とした。
ナディアの頬が、みるみる内に薔薇色に染まるのを見た時、心臓が握り潰されたかのように痛んだ。
ーーーやっぱり、そうなのか。
『貴方のように線の細いタイプの男性は好みではありません。
騎士様のように筋肉質で、頼れる殿方が好みです』
彼女の言葉が頭の中に蘇る。
背中に嫌な汗が伝って、眩暈がしそうだ。
「サムディオ様、この子は僕の婚約者です。
気軽に触れられては困ります!」
自分でも驚く程に、低い声が出た。
リカルド・サムディオの余裕の表情が癪に触る。
あの日の彼女の言葉は小さな棘となり、僕の心の深い所に刺さったまま。
今でも時折ズキズキと疼く。
僕が先に放ったあの言葉も、彼女の心を今もまだ、傷付け続けているのだろうか?
もしそうなら・・・彼女もこんなに苦しい思いをしているならと考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
しかし、同時に仄暗い悦びを感じてしまう自分がいるのだ。
ナディアが僕の言葉を全く気にしていないのなら、彼女にとっての僕の存在が、その程度の大きさだという事になってしまうのだから。
だったらいっそ、棘でも良いから、彼女の中に僕の一部が残っていれば良い。
196
あなたにおすすめの小説
殿下の愛しのハズレ姫 ~婚約解消後も、王子は愛する人を諦めない~
はづも
恋愛
「すまない。アメリ。婚約を解消してほしい」
伯爵令嬢アメリ・フローレインにそう告げるのは、この国の第一王子テオバルトだ。
しかし、そう言った彼はひどく悲し気で、アメリに「ごめん」と繰り返し謝って……。
ハズレ能力が原因で婚約解消された伯爵令嬢と、別の婚約者を探すよう王に命じられても諦めることができなかった王子のお話。
全6話です。
このお話は小説家になろう、アルファポリスに掲載されています。
私と貴方の報われない恋
梨丸
恋愛
田舎の男爵家の少女、アーシャには好きな人がいた。
家族同然の幼馴染を好きになってしまったアーシャの恋は報われない……。
主な登場人物
アーシャ 本作の主人公
フェルナン アーシャの初恋
※アーシャ編とフェルナン編の二編を投稿します。
※完結後も番外編を追加するかもしれないです。
11/3 完結いたしました。
11/4HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
優柔不断な公爵子息の後悔
有川カナデ
恋愛
フレッグ国では、第一王女のアクセリナと第一王子のヴィルフェルムが次期国王となるべく日々切磋琢磨している。アクセリナににはエドヴァルドという婚約者がおり、互いに想い合う仲だった。「あなたに相応しい男になりたい」――彼の口癖である。アクセリナはそんな彼を信じ続けていたが、ある日聖女と彼がただならぬ仲であるとの噂を聞いてしまった。彼を信じ続けたいが、生まれる疑心は彼女の心を傷つける。そしてエドヴァルドから告げられた言葉に、疑心は確信に変わって……。
いつも通りのご都合主義ゆるんゆるん設定。やかましいフランクな喋り方の王子とかが出てきます。受け取り方によってはバッドエンドかもしれません。
後味悪かったら申し訳ないです。
沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―
柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。
最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。
しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。
カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。
離婚届の上に、涙が落ちる。
それでもシャルロッテは信じたい。
あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。
すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる